熱可塑性エラストマー

熱可塑性エラストマーとは

熱可塑性エラストマ

熱可塑性エラストマーとは、常温ではゴム特有の弾性を示す一方、高温では流動性を示す高分子材料です。

熱可塑性樹脂と同様に、加熱によって容易に成形できます。このため、熱可塑性エラストマーは、合成ゴムと熱可塑性樹脂の中間的な素材として扱われます。

エラストマーの弾性は高分子の主鎖同士が架橋し、元の形状に戻ろうとする力によって説明可能です。熱可塑性エラストマーは、成形性に優れるだけでなく、再利用可能な特性も持っており、さまざまな領域で利用されています。

熱可塑性エラストマーの使用用途

熱可塑性エラストマーは、弾性を持ち成形性にも優れるため、様々な用途で利用されています。スマホケースやキッチン用品などの生活用品だけでなく、自動車部品や電動工具など耐摩耗性や弾性が求められる製品に有用です。

その他、軽量でありながら簡便に着色可能な点も各種用途に多用される一因となっています。また、熱可塑性エラストマーには、天然ゴムや合成ゴム中に存在するアレルギー物質を含まないため、ゴム手袋にも使用されています。

熱可塑性エラストマーの原理

熱可塑性エラストマーの原理

図1. 熱可塑性エラストマーの原理

1. 弾性の原理

熱可塑性エラストマーは、高分子で構成されるため、長い主鎖を持っています。この長い分子は、ハードセグメントとソフトセグメントと呼ばれる部分に分かれ、それぞれ異なる特性を示します。

ハードセグメント部分は、分子間の架橋を形成し、網目構造を作るための水素結合を通じて相互作用します。この水素結合による分子間の架橋が、疑似架橋です。一方、ソフトセグメントは自由に動くことができるため、弾性を発揮します。

一般的な合成ゴムでは、架橋構造は分子間の共有結合によって形成されます。熱可塑性エラストマーと合成ゴムの違いは、架橋が水素結合ではなく共有結合である点です。

2. 熱可塑性の原理

熱可塑性エラストマーの架橋を形成する水素結合は非常に弱く、高温に加熱すると簡単に切れてしまいます。そのため、加熱すると架橋構造が解消され、弾性が失われて流動性を示すようになります。再度冷却すると、水素結合が再形成され、架橋が復活し弾性が回復します。

一方、合成ゴムでは共有結合による架橋部分は切ないので、加熱しても流動性は生じません。加熱が進むと共有結合が解離し始め、結合が切れることで熱分解が起こりますが、解離した共有結合は元に戻ることはなく、弾性は回復しません。

熱可塑性エラストマーの種類

熱可塑性エラストマーには、いくつか種類があります。スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、アミド系などが一般的に使用されています。

1. スチレン系

ハードセグメントがポリスチレン、ソフトセグメントがポリブタジエンからなります。天然ゴムに似た触感でありながら軽量な特徴から、身近な製品に広く使用されています。

2. オレフィン系 (TPO)

エチレン、プロピレン、二重結合部位を2つもつジエンを共重合させたポリマーです耐候性や耐熱性に優れるため自動車部品に使われます。

3. ウレタン系 (TPU)

ポリオールとイソシアネートとの反応によって形成されるポリマーです。ポリオール部分がソフトセグメント、ウレタン結合部分がハードセグメントとして機能します。高い伸張性と強度を持ち、繊維や自動車部品の一部に使用されます。

4. エステル系 (TPC)

ポリエステル系の高分子であり、結晶性のハードセグメントと非晶性のソフトセグメントを持つ直鎖状の構造を有しています。ハードセグメントの剛性によって、高い耐衝撃性を有しており、耐熱性、耐薬品性、耐老化性も優れています。

5. アミド系 (TPA)

ソフトセグメントとしてポリエステルやポリエーテルを、ハードセグメントとしてポリアミドを含んだ高分子材料です。耐摩耗性と耐衝撃性に優れており、低温でも柔軟性を保持します。さらに、耐候性や耐薬品性にも優れています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/83/9/83_9_269/_pdf
http://www.wakoseisakusyo.co.jp/landing_c/index.html
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/plastic_mold_design/pl09/c0680.html

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