真空フランジとは
真空フランジとは、真空装置に使用されるフランジです。
フランジは円形または正方形の板状部品であり、圧力容器に使用されます。容器の気密を保持しつつ、他の機器と接続したり、のぞき窓を取り付けたりするための部品です。その中でも真空フランジは、装置内部に真空環境を構築する際に使用されます。
外周にネジ穴や溝が設けられており、ボルトやナットを使用してフランジ同士を締結します。密封のために、ガスケットやパッキンによってシールを施されることが多いです。NWやKF、 JISなどの様々な規格が存在します。
真空フランジの使用用途
真空フランジは真空装置を必要とする様々な産業で広く使用されます。以下はその使用用途です。
1. 半導体産業
半導体産業では、真空環境がウエハー製造プロセスにおいて不可欠です。蒸着やエッチングなどのプロセスを真空下で実施することで、高品質の半導体デバイスを製造することが可能です。真空フランジによって真空チャンバーを確実に気密し、不純物の侵入を防止しつつ、ガスや反応物質の導入を確実に実施するために使用されます。
2. 光学装置産業
光学装置産業では、レンズや鏡などの光学部品コーティングプロセスに真空環境が用いられます。真空環境下でコーティングを実施することで、高精度かつ均一な膜厚の薄膜を塗布することができ、光学性能を向上させます。真空フランジはコーティング材料の蒸着過程で真空チャンバー内の気密を確保し、不純物の混入を防ぐために重要です。
3. 発電事業
発電のために使用される蒸気タービンは、蒸気を純水へ変換するために復水器と呼ばれる装置を使用します。復水器内部では蒸気を冷却して純水に戻すため、内部が真空状態となります。真空フランジは復水器の接続点において、真空状態を維持するために重要な部品です。
4. 材料研究・開発
研究開発分野では、新しい材料の合成や物性研究に真空装置が使用されます。特に物理・化学の実験では、真空下での反応や試料の分析を求められることが多く、外部の空気や不純物の侵入を防ぎながら実験を行うことが不可欠です。これにより、より高純度の試料を用いた実験が可能になり、科学的発見や技術革新を加速します。
真空フランジの原理
真空フランジは、真空システムにおける気密性を確保するために使用されます。2つ以上の配管やチューブなどを繋ぐために使用される機械的な接続部品です。内部の真空状態を維持しながら、外部からの不純物や空気の侵入を防ぐために重要な役割を果たします。
真空フランジは、フランジ間の接合部にガスケットやパッキンなどのシーリング材料を使用することで気密性を確保します。シーリング材料をフランジの接触面間に挟み込み、ボルトやナットによる締め付けることで圧縮する仕組みです。これにより、微細な隙間も塞がれ、外部からガス漏れが防止します。
真空フランジにはSUS316LやSUS304などのステンレス材料を使用することが多いです。インコネルなどのニッケル合金を使用することで、耐食性を向上させる場合もあります。気密のためのシーリング材には、テフロンパッキンや銅ガスケットが使用されます。
真空フランジの種類
真空フランジは規格に応じて、様々な種類が存在します。以下はその種類一例です。
1. KF・NWフランジ
KF (Klein Flansche) フランジまたはNW (Normschliff) フランジとも呼ばれ、中真空から高真空の範囲で広く使用されています。モジュラー設計であり、シーリング材料とクランプを使用して気密接続を実現します。取り付けと取り外しが容易で、頻繁に構成を変更する装置に最適です。
2. CFフランジ
CF (Conflat Flang) フランジは、超高真空用途向けに設計されており、銅またはステンレス鋼による金属ガスケットを使用して接続します。非常に高い気密性と真空レベルを達成することが可能で、熱サイクルや化学的腐食にも強いです。
3. ANSIフランジ
ANSI (American National Standards Institute) フランジはアメリカの規格であり、主に低真空用途で使用されます。一般的な配管系統にも使用され、ボルト・ナットでの接続が一般的です。
4. JISフランジ
JISは日本の産業標準を定める規格で、多くの工業製品や技術に対して規格を設定しています。真空フランジに関してもJIS規格があり、主に日本国内で製造される真空機器に適用されます。ボルト・ナットによる締結が一般的です。