スパッタ付着防止剤

スパッタ付着防止剤とは

スパッタ付着防止剤とは、溶接作業時に発生する「スパッタ」が、溶接金属に付着するのを防ぐために使用される溶剤です。

「スパッタ」とは、溶接時に飛び散る金属粒やスラグのことを指します。細かいブツブツ状となって、溶接金属の表面に付着します。

これを取り除くには、タガネや圧縮空気を利用したジェットタガネなどを使用しなければなりません。このスパッタ除去作業を容易するのが、スパッタ付着防止剤です。

溶接作業前に溶接部にスプレーすることで、スパッタの付着を防ぎます。付着しても、ワイヤーブラシなどで取り除くことが可能です。タガネを使う必要はなくなり、作業性が向上します。

スパッタ付着防止剤の使用用途

スパッタ付着防止剤の使用用途は、主に以下の2つです。

  • 溶接する金属 (母材) の表面へスパッタが付着することを防ぐ
  • 溶接用ノズルの先端 (トーチ) へスパッタが付着することを防ぐ

1. 母材への使用

スパッタ付着防止剤は、母材へのスパッタの付着を防止するだけでなく、母材を傷めず容易にスパッタを除去することができます。防錆性能も高く、母材が錆たり腐食したりする恐れもありません。

母材によって種類が分かれているため、母材にあったものを選びます。また、溶接後に母材を塗装する場合、塗料となじみやすいものを選ベば、溶接後にスパッタ付着防止剤の塗膜を除去せず上塗りを行うことができます。

2. トーチへの使用

スパッタ付着防止剤は、溶接する金属に使用するだけでなく、溶接トーチに使用することで先端部の劣化を軽減し、作業性を向上させます。

半自動・自動溶接や、ロボット溶接、さらに溶断などの溶接に用いられるノズルやチップにあらかじめスプレーし、トーチ部を汚さず陽極性能を維持できるので便利です。

スパッタ付着防止剤の原理

スパッタ付着防止剤には、速乾性のある溶剤が配合されています。速乾性のある溶剤は塗布したあとすぐ蒸発するので、被膜がすばやく生成され、時間をおかずに溶接作業に入ることが可能です。

速乾性のある溶剤として以前はフロンが使われていましたが、地球温暖化防止の観点から現在では、特定化学物質や有機溶剤が使用される場合があります。

スパッタ付着防止剤の種類

スパッタ付着防止剤には、塗布する素材別に母材用とトーチ用があります。母材用のスパッタ付着防止剤はさらに母材の材質によって種類が分かれています。

1. トーチ用

溶接トーチのノズルやチップなどに使用されるスパッタ付着防止剤です。耐熱性の高い顔料が配合されています。

ノズルやチップなどの器具の先端にスパッタが付着することを防ぎ、陽極性能の維持に役立ちます。また、器具の寿命を延ばすのでコスト抑制が可能です。

さらに、器具の浄化の手間がかからないため、作業効率を向上させます。

2. 母材用

母材用のスパッタ付着防止剤には、次の2種類があります。

「高張力鋼・軟鋼用」には、高耐熱性の特殊樹脂が配合されています。高温になる厚い母材を溶接する際に、スパッタが付着しないようにするためです。また、塗料となじみやすいため、溶接後に塗料を塗る場合に対応しています。

「ステンレス用」は、無機系微粉体が配合された水溶性のスパッタ付着防止剤です。薄板から厚板まで幅広い母材に使用できます。水洗いで簡単に除去できえうので便利です。ただ、鉄材へ使用すると錆や腐食のリスクがあるため注意が必要です。

スパッタ付着防止剤のその他情報

水溶性への需要の高まりと注意点

環境負荷や健康安全性を考慮し、溶剤を使用しない水溶性スパッタ付着防止剤の需要が高まっています。

ただし、水溶性の場合、液の水分が溶接部に溜まってしまうと、その水分の蒸発によってブローホールなどの欠陥が発生するリスクがあります。特に、垂直面などで液だれを起こさないよう均一に塗布することが重要です。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0226.html
https://www.warner.co.jp/products.html#kiribijin

ジュラコンワッシャ

ジュラコンワッシャとは

ジュラコンワッシャとは、ジュラコン®を素材として成形された樹脂ワッシャ (平座金) です。

ジュラコン®はポリプラスチックス株式会社の日本やその他の国における登録商標で、POM (ポリアセタール樹脂) と呼ばれるエンジニアリングプラスチックの1つです。POMは高い電気絶縁性を有し、耐衝撃性、耐クリープ性、耐薬品性、耐摩耗性に優れています。こうしたPOMの利点を活かして、ジュラコンワッシャは、相手材料の保護や電気的絶縁を目的とし、ボルト締結部に使用されます。

ジュラコンワッシャの使用用途

ワッシャは、ボルトの頭部の大きさに対して締結力が大きい場合に使用されます。ボルトの頭部よりも面積が大きいワッシャを挟むことで座面の面積を拡大し、締結部の座面の陥没および振動や外力による緩みを防止することが可能です。

ジュラコンワッシャを始めとする樹脂ワッシャは、樹脂の変形や絶縁性を利用して、締結力により相手材を変形させないよう保護する目的や、樹脂の絶縁性により通電部からボルトや他の部材を絶縁する目的で使用されます。

ゴム製のワッシャは、締結部に振動が加わる際の緩み防止や締結部の気密性を重視する場合などに使用されます。

ジュラコンワッシャの原理

ジュラコンワッシャは、ジュラコンの特性を活かして用いられる樹脂ワッシャです。以下でジュラコンの特性とその原理について説明します。

ジュラコン含むPOMは、化学名としてはポリオキシメチレン (polyoxymethylene) を省略した呼び方です。POMは主に (-CH2O-) の構造単位を持つ結晶性の熱可塑性樹脂になります。POMにはモノマーとコポリマーがありますが、ジュラコンはコポリマーに分類される樹脂です。

POMの特性の多くは、その比重の高さによるものです。POMの比重は1.4g/cm3で、エンジニアリングプラスチックの中でも高いです。POMの高い比重は、結晶内の分子間距離が短いことが影響しています。分子間距離が短いことによって分子同士の相対位置が変化しづらく、弾性率が高まります。また、繰り返し応力が作用したり、クリープという低い荷重が長時間作用することによって大きな変形に至ってしまうような機械部品で求められる特性においても優れています。

その他のPOMの大きな特徴に、耐摩耗性の高さが挙げられます。耐摩耗性は、結晶に取り込まれている分子が、他部材が近接しても移行しにくいという特徴によるものです。

ジュラコンワッシャのその他情報

ジュラコンワッシャの特徴

ジュラコン® (POM) は汎用エンジニアリングプラスチックに分類され、成形加工性、機械的強さ、耐衝撃性、耐摩耗性、耐疲労性、絶縁性、耐薬品性など多くの長所をもっています。これらの特徴の中で、樹脂ワッシャにおいては、特に絶縁性や材料強度、耐疲労性などが重視されます。同様の特徴を有するものとして、PTFE (テフロン樹脂) やPC (ポリカーボネート樹脂) などのエンジニアリングプラスチックもありますが、ジュラコンは安価で入手可能である点が利点です。

ジュラコンワッシャの短所としては、分子構造に酸素を含むため燃えやすい点、耐候性が低い点、接着性が悪く接着剤を用いた接着ができない点 (溶接は可能) 、強酸には耐えられない点などがあります。したがって、揮発性の有機溶剤を使用する施設など、防爆機器の使用が指定されているエリアや屋外や、強力な溶剤や洗浄剤が付着する環境での使用においては、異なる材料のワッシャを選定する必要があります。

また、限定的な用途ですが、ジュラコンワッシャは結晶性樹脂の特性上から、透明とすることができません。ジュラコンを含む結晶性樹脂には、高密度の結晶部分と低密度の非晶部分が存在しており、結晶部分と非晶部分とでは光の伝搬速度が異なります。光は結晶/非晶界面を通過する際に屈折あるいは反射するので、白く見えます。

参考文献
https://wilco.jp/products/special_topic12.html

サーボユニット

サーボユニットとは

サーボユニットとは、サーボモーターとともに、サーボモーターを動かすために必要となる機械要素を組み合わせて、1つのユニットにしたものです。

具体的には、サーボモーターの他に2つの要素が加えられています。サーボモーターを目的の動きになるように指令を出すプログラマブルコントローラ (PLC) とPLCの指令通りにサーボモーターを動かすために必要な交流電流を供給するサーボアンプです。

また、サーボユニットの「サーボ」は、「Servant:召使い」が語源になっていると言われています。つまり、サーボユニットは、指令通りの動きをするユニットを意味します。

サーボユニットの使用用途

サーボユニットは、さまざまな産業用ロボットや工業製品の生産機械に使われています。産業用ロボットでは、自動車工場で車体の溶接や塗装をしたり、部品のピッキングなどの動きをするために、サーボユニットが使われています。

その他の産業用機械では、射出成形機、プレス機械、ラベル梱包機など、動作する機械の動きと制御のために組み込まれています。また、サーボユニットは回転運動だけでなく、往復運動にも用いられる場合が多いです。

往復運動する代表的なサーボユニットに、サーボモーターをボールネジに連結し、リニアガイドによって規制されたスライド上をボールネジのナット部と連結したテーブルを、任意の位置決めテーブルとして使用するユニットが挙げられます。

このようなシステムは一品一様に設計製作しますが、スライド長さやその推力によって、ラインナップを作成し、汎用的に使用されている場合もあります。マシニングセンサのテーブル面の様に、前後左右にプログラム通りに動かすことができるシステムは、同様のシステムが用いられたものです。

サーボユニットの原理

現在の多くのサーボモーターは、交流電流で動くACサーボモータです。ACサーボモータは、永久磁石でできたロータと、ロータを取り囲むように配置された複数の電磁石で成るステータで構成されています。ステータに交流電流を流し、電磁石のN極、S曲を順次切り替えて、ロータの回転運動を生み出します。

この交流電流をサーボモーターに送るのがサーボアンプであり、どのような動きをすべきかをサーボアンプに指令するのが、サーボコントローラです。また、サーボモーターの動きは、サーボモーターのロータに取り付けられたエンコーダで検出し、サーボアンプにフィードバック信号を送ります。

サーボユニットのその他情報

サーボモータの制御方法

サーボモーターの動きの制御方法には、位置制御、速度制御、トルク制御の3通りがあります。

1. 位置制御
位置制御は指令位置に対して、サーボモーターを高精度に移動・停止させます。数値制御旋盤や、マシニングセンタのテーブルの位置決めシステムで使われています。

2. 速度制御
速度制御は、目標速度になるようにサーボモーターを動かします。速度制御では、外部の影響によって回転速度が変化した場合にも素早く応答して、指令を修正していきます。

3. トルク制御
トルク制御は、サーボモーターが出力するトルクの大きさを制御します。トルク制御では負荷が変化しても、指令されたトルクで正確な運転になるように制御します。一定のトルクで締め付けるネジ締め機やサーボモーターの回転トルクを、ボールネジを介して、推進力に変換するプレス機などで用いられている制御方法です。

 

なお、サーボユニットは閉ループ制御という分類の制御システムです。閉ループ制御はフィードバック指令が加えられることによって、外乱などの影響を受けにくいのが特徴です。つまり、サーボユニットは、高精度な位置決めを実現できるユニットといえます。

参考文献
https://www.fujielectric.co.jp/products/column/servo/servo_01.html
https://www.keyence.co.jp/products/controls/motor/sv2/
https://www.jam-net.co.jp/product/press/list12/

グロスメーター

グロスメーターとはグロスメーター

グロスメーターとは、サンプル表面に光を当てて光沢を評価する装置です。

グロスメーターは、物質の表面の光沢を数値化する装置であり、光沢計とも呼ばれます。塗装や印刷業界では、発色の様子や光沢が品質に影響を与える重要な要素です。自動車の内装や建築物においても、光沢はデザインの重要な側面となっています。これらの製品の評価にはグロスメーターが活用されます。

この装置は軽量で持ち運びが可能なサイズであり、測定を行う際には、サンプルに装置を押し当てて電源を入れます。内部の光源からサンプルに光を照射し、表面から反射した光を解析して結果を表示します。グロスメーターは、測定角度、つまり光の当て方を変えることで、光沢の異なる側面を測定することも可能です。

グロスメーターの使用用途

グロスメーターは見た目を重視する製品に広く使用されます。製品の光沢は外観に大きく影響するため、多くの業界で活用されている測定器です。例えば、自動車の内装の開発や品質評価、建物の内装や清掃作業、フロアメンテナンスにおいても重要な役割を果たします。

特に塗装や印刷業界では、光沢は品質の重要な指標となるため、日常的にグロスメーターが使用されます。研究開発や品質評価の過程で光沢の評価が行われる他、ワックスがけ後の床や研磨後の製品の光沢を評価する際にも用いられます。

グロスメーターの特徴

見た目に大きく影響する光沢を評価するのに使用されるグロスメーターは、様々な角度からサンプルに光を照射し、その光沢を評価する装置です。光沢が高いとは、光の正反射が多く、散乱が少ない状態を意味し、結果として透明感がある見た目になります。

一方、光沢が低いと、光の正反射が少なく、散乱が多いため、表面がぼやけて見えます。色が同一であっても光沢が異なると見た目の印象が変わるため、デザインにおいて光沢は重要な要素の一つです。

グロスメーターには様々な種類があり、用途に応じた装置の選定が可能です。これらの装置は持ち運び可能なサイズであり、製品に直接押し当てて光沢を測定することができます。現場で製品の様々な部位に押し当て、それぞれの位置での光沢を測定します。角度を変えると光沢の値が変わるため、複数の入射角で光を照射できるモデルもあります。

特に、自動車内装用に設計された専用グロスメーターは、自動車メーカーによって標準器として使用されています。その他、大型のグロスメーターもあり、これらは広範囲にわたる光照射が可能で、大型の試験片の測定に適しています。

グロスメーターの選び方

まず考慮すべきは、測定するサンプルの種類です。例えば、自動車の内装や塗装表面のような大きな平面を測定する場合と、小さなプラスチック部品や金属の表面のような小さなサンプルを測定する場合では、必要とされるグロスメーターの種類が異なります。

測定精度の要求レベルも考慮します。高精度が求められる研究開発や品質管理の場面では、より詳細なデータが得られる高性能なグロスメーターが必要です。また、光沢の測定角度も重要な選定基準の一つです。一般的に20度、60度、85度の角度で測定するモデルが多いですが、目的に応じて最適な角度を選ぶ必要があります。

さらに、使用環境も選定時の考慮事項です。場所を選ばずに使いたい場合は、持ち運びが容易で、操作が簡単なモデルを選ぶと良いでしょう。逆に、一定の場所でのみ使用し、より安定した測定が可能な設備が必要な場合は、大型で詳細設定が可能なスタンド型のグロスメーターが適しています。

予算も重要な選定基準です。一般的に、機能が多く、精度が高いほど価格も高くなりますが、長期的な視点でのコストパフォーマンスを考慮することが必要です。また、アフターサービスやメンテナンスの利便性も購入前に確認しておくと良いでしょう。

参考文献
https://www.sugatest.co.jp/productlist/plistcat/pcat3/%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC/
https://www.tetsutani.co.jp/sokutei/microgloss.html
https://www.horiba.com/jp/process-environmental/products-jp/gloss-checker/

真空チャック

真空チャックとは

真空チャックとは、真空によって生じた負圧により物体を吸着する固定具です。

バキュームチャックと呼ばれる場合もあります。真空チャックによりワークの固定を行うための装置の多くはテーブル状です。表面には内部の真空と繋がる小孔が複数設けられており、これらの小孔部分の負圧により物体を吸着します。

空気を通さない平面を有する物体であれば吸着が可能であるため、磁性材料のみをチャック可能である磁石を使用するチャック方法よりも、多くの種類の材料に対して使用できます。

真空チャックの使用用途

真空チャックは、研磨や梱包などの作業を行う際に、材料や製品を固定するために使用されます。具体的には、物理的に固定できない繊細な精密部品や衛生管理が重要な食品の容器、マグネットチャックを使用できないステンレス、アルミなどの非磁性材料や磁場によって故障の可能性がある電気素子などの吸着に使用されています。

特に、力を加えると破損しやすく、ほこりなどが付着しないようクリーンルームで扱われ、磁場により故障しやすい半導体材料の加工・塗工工程においては真空チャックが必須です。また、真空チャック内部から小孔に負圧ではなく、正圧をかけて空気を送り込むことでワークを浮かせる運搬台として活用することも可能です。

真空チャックの原理

真空チャックは、テーブル内部の空間を真空状態にすることによって、テーブル表面に設けられた小孔を通じ、負圧により物体を吸着するシステムです。物体底面がテーブル内部の真空空間と接触していると、物体は相対的に底面以外の面から大気圧による圧力を受けるため、物体をテーブルに押し付ける力が作用することでテーブルに吸着されます。

真空状態を解除すると、吸着力も解除されます。真空状態を発生させる手段は真空ポンプを使用する方法もしくは工場内で供給されている圧縮空気を利用して真空エジェクタによって真空状態とする装置を使う方法です。

真空ポンプや真空エジェクタの必要能力は、吸着する物体の底面積や材質、必要な吸着力に依存するため、吸着する対象によってシステムの規模も異なります。

真空チャックの構造

真空チャックは加工するワークを負圧により固定しますが、チャックに設けられている小孔の配置や大きさによっては構造上ワークの固定が行えない場合があります。

チャックの大きさとワークがもつ平面固定部面積の広さの差が小さい場合、大気が流入する小孔が少ないため負圧部の圧力は高くなりにくいです。しかし、チャックの大きさに対してワークの平面固定部が比較的狭い場合には小孔から大気が流入しやすく、確実に固定するための工夫が必要になります。

また、ワークが薄物の場合には小孔に近い部分のみが大きく大気圧に押さえつけられるので、へこみや歪みが発生しやすいです。

真空チャックの種類

セラミック製の真空チャックは、高精度の小孔を持っているため部分吸着ができない欠点を克服できます。数μmの小孔を高精度で構成させることでワークがない部分でも負圧を維持できるためです。小孔の間隔が小さくなり小孔の大きさもとても小さくなっているため薄物についても扱いやすくなります。

このセラミック製の高精度真空チャックは、製品によって既存の真空チャックの上に載せるだけでも部分吸着が可能になります。真空チャックは主に平面のテーブル状ですが、同様の機能の持たせて円筒状にすればサクションロールとすることができます。

フィルム状のものを円筒状の真空チャックに吸着すれば運搬する際に活用可能です。逆に空気を送り出せば、浮遊させることもできます。真空チャックの制御機能に加え、エアーブローによって物体を動かしやすくする機能や僅かな流量の空気を排出し続けることで小孔内への異物の混入を防止する機能を搭載した製品も展開されています。

参考文献
https://www.supertool.co.jp/products/products.php?eid=00265
https://www.nabeya.co.jp/search.php?action=Detail&Key=1101
http://www.newstrong.co.jp/air/octopus/octopus1.htm

発泡スチロール減容機

発泡スチロール減容機とは

発泡スチロール減容機とは火や溶剤を用いることなく、搭載された熱源によって発泡スチロールを溶かし元の容積を減らすための機器です。

炎や溶剤を使わずに発泡スチロールを溶解するので、不完全燃焼した際の一酸化炭素や溶剤から発生する有害なガスが発生しないので安全に発泡スチロールを溶かすことができます。

また、高温の熱処理や溶剤などで発泡スチロールを溶解すると熱・溶剤による劣化のためにリサイクルしにくくなりますが、発砲スチロール減容機であればそういった劣化がほとんどないのでリサイクル利用することが可能になります。

発泡スチロール減容機の使用用途

発泡スチロールは日常の至る所で魚介類・農作物の容器や緩衝材、保温・保冷のための容器、また耐水性のためクーラーボックスなどの内容器に使用されています。

発泡スチロールはポリスチレンなどの樹脂の中に気泡を混ぜ合わせたものなので軽量にもかかわらず容積が大きくなり、廃材としての発泡スチロールをまとめて輸送する際に非常にコストがかかります。

そのため発泡スチロール減容機で発泡スチロールの容積を減らせば大幅に輸送コストが削減でき、また燃焼するよりも低温で発泡スチロールを溶解するのでリサイクル利用することが可能です。

発泡スチロール減容機の原理

発泡スチロール減容機による主な処理工程は破砕・溶解・冷却成形の3段階の工程からなります。

まず処理する発泡スチロールを内蔵の破砕機によって細く砕きます。こうすることでより効率的に発砲酢スチロールを溶解させることができます。

砕かれた発泡スチロールは電熱ヒーターや特殊形状の円盤の回転で発生しる摩擦熱または温水によって比較的低温(〜摂氏140度)で溶解され、その際に発泡スチロール内の空気が除去されます。空気が取り除かれることで発泡スチロールは最大で元の体積のおよそ100分の1まで縮小されます。

溶解した脱泡樹脂は棒状またはインゴット状に成形されます。このような形状により場所を取らずに処理した発泡スチロールを保管できます。

発泡スチロール減容機は平均的な大きさのもので1時間あたりおよそ40〜50kgの発泡スチロールを処理することが可能で、消費電力も通常の熱・溶剤処理をするものと比べてやく4分の1にまで削減できるので非常に省エネ・環境問題対策に配慮したものとなっています。

参考文献
https://www.elcom-jp.com/products/compactor/styros
https://lplanners.jp/products/styrol-compression/
http://www.replanning.jp/toriatsukai/371/

環境試験機

環境試験機とは

環境試験機

環境試験機とは、試験対象の環境による変化などを測定するために様々な環境条件を疑似的に作り出す装置です。

各種機器に実装する部品や材料の信頼性を確認するために、環境試験がおこなわれています。そして、環境試験機は、環境試験の試験環境、部品や材料がさらされる可能性がある様々な環境を人工的に作り出す装置です。

環境試験では、この環境試験機で作り出した環境下での部品や材料の変化や耐性を測定しています。例えば、部品であれば所定の環境下にさらす前とさらした後で動作を確認し、環境に対する耐性に問題がないかを確認しています。

環境試験機の使用用途

環境試験機は、各種部品や材料の環境に対する耐性を調べるための装置であり、様々な分野で使用されています。環境試験は各種部品の使用時の耐性を調べる以外に、開発時などに各種部品の設計面や製造面での不具合を検出する目的でも使用されています。

また、品質保証にも環境試験の結果が必要です。さらに、各種部品の使用時の環境耐性の結果は、顧客が購入時に製品を選択する目安にもなっています。

各種機器や部品には、使用される環境や製品の特性に応じて守るべき各種規定があり、国内規格はJIS (Japanese Industrial Standards:日本産業規格) です。グローバル規格はIEC (International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議) 規格です。これらの規格では、各種機器および使用条件毎に定める規定があり、規定の中には環境試験も含まれているため、環境試験機は規格の合否判断にも使用されます。

環境試験機の原理

環境試験機には、温度や湿度の条件を変える温湿度試験機や水を吹きかけたりする耐水試験機などがあります。ここでは、主な環境試験機を解説します。

1. 温湿度試験機

温湿度試験機は、試験対象である各種機器や部品、材料を温湿度試験機の中に入れて試験を行います。そして、製品の仕様や規格で定められた上限や下限の温度や湿度に装置を設定し、一定周期で上限と下限の温度と湿度の条件に切り替えて試験します。

試験前に機器や部品の動作を確認して試験終了後に再度確認し、試験前と同様もしくは所定の範囲内の動作確認ができれば試験は終了です。

2. 熱衝撃試験機

熱衝撃試験機での試験は、温度設定を低温と高温を短時間で切り替えて機器や部品の変化を見る試験です。環境温度が急激に変化すると、部品や機器の個々の構成物に熱膨張と熱収縮が生じます。接合部や表面にクラックなどの不具合が生じ、これは個々の構成物の熱膨張係数の違いによるものです。この不具合の度合で、試験の合否が決まります。

3. 耐水試験機

耐水試験機は、試験対象である電子部品や小型電子製品などが風雨や水しぶきを受けた場合の耐水性および防水性を評価する試験機です。試験対象に散水や噴水および浸水をおこなって試験をします。

4. 促進耐候性試験機

促進耐候性試験機は、太陽光や降雨、温度と湿度などの屋内外の条件を疑似的に再現して試験対象の劣化を促進する試験機です。人工光源を使って屋内での試験をおこない、短期間で結果を出します。

5. 腐食試験機

腐食試験機は、ガスや薬品、酸性雨および塩水などの試験対象への影響を調べる試験機です。酢酸に塩化銅を加えた塩化ナトリウム水溶液を用い、腐食の度合いを測定する「キャス試験機」が有名です。

硫化水素 (H2S) や二酸化硫黄 (SO2) 、二酸化窒素 (NO2) あるいは塩素 (Cl2) などの腐食性ガスを用い、腐食を測定する「ガス腐食試験機」もよく使用されます。

環境試験機のその他情報

その他の環境試験機

環境試験機には、温度や湿度などをコントロールせずに、物性を評価する試験機もあります。

1. 振動試験機
振動試験機は、機器や部品の輸送時の振動や工場などの比較的振動が発生しやすい場所での振動を想定し、これを上回る振動条件を機器や部品に与えます。試験の前後で動作確認を行い、同様の結果が得られれば試験は終了です。

2. 落下試験機
落下試験機は試験対象を落下させた衝撃や影響を調べるため、決められた条件を繰り返し維持しながら試験品を自然落下させる装置です。重量がある貨物や包装資材の耐衝撃性を確認する際に用いられます。

参考文献
https://www.oeg.co.jp/Rel/environment.html
https://how.jp/column/tech-explanations/kankyousiken

環境試験室

環境試験室とは

環境試験室

環境試験室とは、各種機器・部品が様々な条件下において適切に動作することを確認するため、様々な環境条件・自然環境を疑似的に作り出す試験室です。

可変恒温恒湿の設備を備え、様々な環境条件を人工的につくり出すことができます。温湿度、風速、気圧、霧などの様々な自然環境条件を再現し、各種製品の性能や耐久性を検証する試験を行います。自動車、航空機、電気機器、建材、金属材料などの幅広い分野の製品を試験対象とし、様々な製品開発で役立てられている装置です。

環境試験室の使用用途

1. 試験対象物

環境試験室は被試験機器である各種機器や部品を試験室の中に入れて試験を行います。非常に幅広い分野で使用されており、下記は試験対象物の一部です。

  • 自動車・タイヤ・エンジン・バイク
  • トラック・トラクター・農作業機器・ブルドーザー・パワーショベル・掘削機
  • 船舶関係
  • 航空・宇宙産業 (航空機及びロケット)
  • 建築用のコンクリートやモルタル、外壁材や屋根材などの各種建材
  • エンジン・航空機・ロケット・金属材料
  • インク・塗料
  • 紙製品
  • 家電 (テレビや冷蔵庫、洗濯機など)
  • 電子基板・モーターを含む電機製品

2. 環境試験の目的

環境試験が行われる目的には、主に下記の3つがあります。

  • 一定の使用環境下において試験対象物の品質の変化が発生しないことを確認する
  • 高温環境や寒冷環境など、想定される過酷な使用環境における対象物の動作・機能を確認する
  • 製品を過酷な状況に置いて劣化を促進することにより、短期間で劣化の度合いを確認する (加速劣化試験) 

環境試験室は、これらの項目を確認し、製品の耐久性や安全性を担保する目的で、多くの開発現場で活用されています。

環境試験室の原理

環境試験室の試験対象である各種機器や部品は、様々な環境条件下で使用されます。環境試験室は温度・湿度・風速・日射など過酷な環境を再現することが可能です。

国内向けの民生用機器の場合、通常、真冬の北海道から真夏の沖縄までの温度条件を対象とするため、‐10度~+40度程度の範囲で試験を行います。環境試験室はこの様な条件を作り出すためにマイナス数十度からプラス50度以上の範囲での設定が可能です。

環境試験室は、上限および下限の温度および湿度の設定を行い、一定周期でこの上限と下限の温度と湿度の条件に切り替えて試験を行います。試験では、試験前に機器や部品の動作を確認し、試験終了後に再度同様の確認を行って動作に問題がなければ試験合格とされています。

環境試験室の種類

1. 規模

環境試験は、前述の通り様々な製品の開発現場で行われており、環境試験室は用途によって様々な種類があります。大きさは、実験室程度の小規模なものから、建屋や専用の電力源を必要とするものまで多岐に渡ります。住宅設備の性能を測定する環境試験室は、モデルルームを中に丸ごと一棟建設することができる大きさです。

環境試験室の維持には大きさに合った電力や水などが必要であり、定期的な校正や保守も必要となるため、あまり大きすぎるものを選択すると費用対効果が釣り合わない結果となります。用途に合わせて適切なものを選択することが必要です。

2. 機能の種類

個別の種類としては、例えば自動車用途では、車両の車体フレームに関連する性能試験を行うシャーシベンチ室、エンジンに関する性能試験を行うエンジンベンチ室などがあります。動的な気象環境試験を行うことができる大掛かりな環境試験室では、降雪、降雨、霧、日射、気流などの試験機能と恒温室機能とを組み合わせて試験を行うことが可能です。

また、音に関する環境試験を行う環境試験室としては無響室、残響室などがあり、宇宙開発用途では閉鎖環境に適応するための訓練設備も環境試験室の一種に分類されます。輸送環境試験装置は、輸送過程における振動や衝撃を再現する環境試験室です。輸送の安全性を確認・検証することができます。

参考文献
https://www.oeg.co.jp/Rel/environment.html
https://how.jp/column/tech-explanations/kankyousiken

熱量計

熱量計とは熱量計

熱量計とは、カロリーメーターとも呼ばれる装置で反応熱などを測定する装置です。

化学反応で生じる熱量や燃焼時に発生する熱量、相転移時に発生する熱量などを測定することが可能です。熱量計は断熱型熱量計、等温壁熱量計、等温熱量計の3種類に分けられます。

製造業においては非常に大きなスケールで原料の加熱、薬品の混合、反応などを行うため、プロセスの途中で発生する熱量を把握することは保安上重要です。熱量計を用いて、各プロセスの熱量を解析します。

熱量計の使用用途

1. 保安防災データの取得

熱量計は化学反応を行うメーカーにおいて、保安防災データの取得に用いられます。メーカーの製造現場では非常に大きなスケールで化学反応を行うため、プロセスで大きな熱量が発生すると暴走反応を引き起こす可能性があります。懸念がある反応やプロセスで熱量測定を行い、危険性を評価します。

2. 材料の熱分解温度の解析

その他の用途は、高分子や無機材料の相転移、熱分解時に発生する熱量を示差走査熱量計 (DSC) での評価用途です。化合物の化学構造、結晶構造によって相転移温度は異なるため、研究開発において熱量計を用いた相転移温度測定などが行われます。

熱量計の原理

熱量計は、反応中に発生する熱量を測定する装置です。化学反応のほか、化合物の溶解、混合、相転移時に反応系中で発熱、もしくは吸熱が起こります。

測定対象の熱を熱量計内の熱容量が既知の物質に置き換えて、その温度変化を測定します。もしくは、温度を一定として、融解を受けた潜熱量などから熱量の計算を行います。

1. 断熱型熱量計

断熱型熱量計では試料から発生した熱量は外壁を伝わらず、全て試料容器の温度変化に費やされます。断熱を実現するために、試料容器と取り巻く外壁との間の圧力を10-4 Pa以下に減圧しつつ両者の温度を同一に制御しています。

2. 等温壁熱量計

熱変化を起こさせる試料容器を一定の温度に保った等温容器の中に支え、測定容器と等温容器の間は可能な限り熱交換の小さい条件にした熱量計です。

両者の間に空隙をもうけており、試料容器の熱容量が大きい場合は空気が満たされており、小さい場合は真空状態です。測定容器の外部の温度条件を可能な限り一定にし、測定容器中で熱変化を発生させます。

温度-時間曲線を描くことで、みかけの温度上昇に熱のリーク補正を加える方法で熱量を算出します。

3. 等温熱量計

相変化等温熱量計を例に説明すると、ある物質の2つの相が共存する温度において熱の出入りがあると一方の相から他方の相に移り、その際に起こる体積変化等を測定することで熱量を求める熱量計です。

熱量を算出する手法としては、発生したガスの体積を測定したり、重量の変化を測定したりする手法があります。

熱量計の種類

試験管などの小さなスケールでは、化学反応で生じる発熱が問題となることは少ないです。しかし、工場で数十、数百リットル以上のスケールで反応を行った際に大きな熱が発生すると暴走反応や爆発が起こる危険性があります。

そのため、熱量計を用いて各プロセスで生じる熱量を解析します。用途に応じて様々な熱量計が販売されています。

1. プロセス安全性評価

プロセスの安全性を評価する用途では、工場の反応釜を模した系で反応プロセスを進めて途中で生じる熱量測定を行います。

2. DSC

材料評価に用いる示差走査熱量計 (DSC) は少量のサンプルを入れて温度を変えていき、それぞれの温度で生じる熱量を測定します。温度に対する熱量の変曲点、ピークから相転移や分解が起こる温度を解析可能です。

3. ARC

また、熱量計には暴走反応の解析に用いる装置もあります。この装置はARCと呼ばれ、分解時に発熱して暴走反応を引き起こす化合物の発熱量、発生圧力を測定します。

参考文献
https://www.mt.com/jp/ja/home/products/L1_AutochemProducts/Reaction-Calorimeters-RC1-HFCal.html

海水冷却装置

海水冷却装置とは

海水冷却装置とは近海・沿岸漁業などの漁船に搭載し、氷などを使わずに魚艙または生簀内の海水を冷却するための装置です。

魚艙内に漁獲した魚を生きたまま保管できるので鮮度が保たれます。特に暑い夏場の漁業では漁獲した魚の鮮度を保つために漁船において不可欠な装置となっています。

漁船のエンジンから直接電源をつなげることで比較的容易に設置することができ、また装置自身の大きさも場所を取ることなく漁船に搭載できます。

海水冷却装置の使用用途

魚艙内の海水を直接冷やすことで漁獲した魚の鮮度を効率的に保つことが可能になり、近海漁業では収益の増加に繋がるため漁船にとって非常に重要な装置になっています。

この装置が導入される以前は魚の鮮度を保つために氷を使っていましたが、氷を運ぶ・砕く作業なで漁業関連者の体にも負担がかかったり、魚も氷やけや氷による傷などで商品にならないこともありました。

海水冷却装置によってそういった漁業現場の悩みが解消され、漁獲した魚を新鮮なまま市場に届けることが可能です。

海水冷却装置の原理

海水冷却装置は氷などを用いずに魚艙または生簀内の海水を熱交換器や冷媒などを使って直接冷却します。魚艙内の海水を装置内の循環ポンプによって汲み上げ、熱交換器によって強制的に冷却し、それをまた魚艙内へ戻すことで冷却水を生成します。この操作を繰り返し行うことで漁獲した魚を新鮮に保てる水温にまで下げることが可能で、海水温は常温からおよそ摂氏0度近くまで下げることができます。また、循環式であるために海水をムラなく均一に冷やすことも可能です。

多くの海水冷却装置に搭載されている熱交換器にはチタン製のものが用いられています。チタンは金属の中でも熱伝導性が強く(冷却効率が高い)海水などに対して腐食しにくい、つまり有害な金属イオンが海水中に溶け出すことがないという特性を持ちます。そのため効率よく海水を冷却することができ、漁獲した魚を溶け出した金属イオンなどで汚染しないまま鮮度を保つことが可能です。

参考文献
https://www.projectk.co.jp/marine/shop/12100202.html