バリスタとは
バリスタとは、印可する電圧によって抵抗値が変わる、2つの電極を持つ半導体素子のひとつです。
変化する (英: Variable) +抵抗 (英: Resistor) で「変化する抵抗」という意味です。そのため、非直接抵抗や電圧依存性抵抗と呼ばれることがあります。
電圧と電流は比例関係にないことが特徴的で、バリスタにかかる電圧が小さいときは抵抗値が高く、電圧が大きいときは抵抗が低くなります。
バリスタの使用用途
バリスタは電圧によって抵抗値が変化します。この特性を活かし、静電気などからIC素子などを保護したり、雷サージから電子機器を保護するなどの目的で使用したりすることがあります。
もしICなどの素子や電子機器に異常電圧が印可された場合、誤作動や破壊につながる場合があります。また、バリスタに高電圧が印可されるとバリスタの抵抗値は低くなります。このことから回路に電流が流れやすくなり、ラインインピーダンスで電圧降下が生じることで電子機器への負荷を低減することができます。他の使用用途としては主に静電気による放電の防止、飛散防止などがあります。
1. 静電気による放電防止
身近に使用されている携帯電話や音楽プレーヤー、USBなどの外部インタフェース端子を持つ電子機器は、静電気シールドが困難であることから、静電気を防止するための部品を用いる必要があります。これらは製造上の技術的な高度さや困難さによって静電気放電を起こしやすくなっており、破壊されやすいためです。
これまで静電気防止のための方法としてツェナーダイオードと呼ばれる安定して一定の電圧を得る素子を使用していましたが、小型且つ低価格な積層チップバリスタが開発されたこためバリスタが用いられるようになりました。
2. 飛散防止
電気モーターや電力機器の総称である電動機の中で、流れる電流を回転位相に応じて切り替え、回転軸の力を一定方向に保つための機械的整流子とブラシを有するものが、整流子電動機です。
整流子電動機の一つとしてブラシと呼ばれる直接電流が流れる部品が付いたブラシ付きDCモーターがありますが、断続的に回転する整流子によって高電圧となり、火花が発生すると、ブラシの消耗やノイズ発生の原因となります。これを防止するためにバリスタが用いられます。
バリスタの原理
バリスタは酸化亜鉛を主成分としたセラミック半導体を2枚の電極で挟んだ構造を持ちます。バリスタ特性は電流をI、電圧をVとするとI=KV^αのように表すことができます。このとき、Kは素子固有の定数であり、αは電圧非直線係数 (α係数) です。
電圧非直線係数は、低抵抗から高抵抗に移行する点である屈折点以降の曲率を表す係数となっています。バリスタの等価回路はツェナーダイオードを逆さ向きに2つ接続したものに、コンデンサを並列接続させた回路です。
これより、バリスタにはコンデンサ成分があるということから、バリスタにかかる電圧は低いということ、またバリスタが高抵抗の際は少量の静電容量があることが分かります。
ある電圧までは高い抵抗を示すため電流を流さない構造になっていますが、ある一定の電圧を越えた負荷がかかった場合、抵抗力よりも電圧が高くなるため、量子力学的なトンネル効果によって大電流を流します。従って素子や電子機器に高電圧の負荷がかかった時、バリスタが静電気をグラウンドなどに逃がす役割を果たしてくれる仕組みとなっています。
バリスタのその他情報
バリスタの特徴
バリスタには寿命があります。バリスタにかかる電圧、バリスタの耐量、サージ波形と呼ばれる出力を解放した状態と短絡した状態との双方が規定された結果が示される線状のグラフを元に、寿命を適切に判断できるものを選択する必要があります。規定を大きく越えた場合、破損や飛散をし、怪我などにつながる恐れがあります。
また、似ている構造にツェナダイオードがありますが、電流-電圧特性が対称となっているため極性を有さないことから、若干の違いがあります。