自動搬送装置

自動搬送装置とは

自動搬送装置

自動搬送装置とは、物品や材料を自動的に運搬するための装置です。

製造工程や物流業界などで使用されます。自動搬送装置を使用することで、人の労力を軽減することが可能です。物品や材料の運搬作業は機械によって行われるため、人間の負担を減らすことができます。

これにより、作業効率が向上し、作業員はより重要なタスクに集中できるようになります。また、物品や材料の迅速な運搬を可能にするため、生産性の向上が実現されます。装置は連続的に作業を行うことが可能で、これにより運搬ラインの効率化や運搬量の増加が期待できます。

また、物品や材料を運搬する際の人的ミスや事故リスクの低減も実現可能です。装置は予めプログラムされた動作を実行し、正確かつ安全に物品を運搬します。

自動搬送装置の使用用途

自動搬送装置は、さまざまな産業や業界で広範に使用されています。特に製造業や物流業界で重宝されている装置です。

1. 製造業界

製造業において、生産ラインや工程間での物品の運搬に利用されます。組立ラインでの部品や製品の自動運搬や、生産プロセスの効率化に寄与します。

形態や形状もさまざまで、それぞれのラインに合わせて設計されるのが一般的です。組立系の工場だけでなく、化学プラントなどのプロセスを扱う工場でも重宝されます。粉体などの原料を運搬するベルトコンベアも、自動搬送装置の1種です。

2. 物流業界

物流業界でも、倉庫や配送センターにおける物品の受け渡しや保管作業に使用されます。コンベヤベルトやAGVなどの装置を使用して、効率的なピッキングや梱包・出荷作業を行うことが可能です。

自動搬送装置の原理

自動搬送装置の種類はさまざまで、それぞれ構造が異なります。ただし、センサーを使用して物理的な情報を取得し、制御プログラムに応じて動作する点では共通しています。

まず、自動搬送装置は周囲の状況を検知するためにセンサーを使用します。センサーには光センサーや近接センサーなどの種類があり、物品や環境の位置や状態を検知します。検知された情報は制御システムに送られ、制御動作の指針とされます。

センサーからの情報を基に、自動搬送装置の動作を制御します。制御アルゴリズムは、速度や加速度の制御などを行うのが役割です。また、特定のタスクや作業に応じて適切な操作を実行するためのプログラムも含まれます。

物品を移動させるためには、アクチュエータを使用します。アクチュエータはモーターや空圧装置などの形態であり、運搬装置やアームを駆動させます。制御システムからの指示に基づいてアクチュエータが動作し、物品を運搬します。

自動搬送装置の種類

自動搬送装置には、さまざまな種類があります。以下に代表的な自動搬送装置の一例です。

1. コンベア

ベルトやローラーなどの搬送部品を使用して物品を運搬するシステムです。直線や曲線、斜面などの搬送ルートを設定し、物品を連続的に移動させることができます。粉体などにも適用可能です。

2. AGV (自動誘導型搬送車)

AGVは自動的に操作される小型の無人車両です。センサーや制御システムを使用して周囲の環境を検知し、目的地に自律的に移動します。さまざまな形態があり、荷物やパレットの運搬に使用されます。

無人搬送車は、オペレーターがいません。荷物など物品搬送を目的とし、道路運送法で定められた道路で使用しないとされています。

一方で、近年ではAIやデータ分析の技術も進歩しています。磁気テープを使用せずに走行ルートを自ら判断し、自律走行できる種類が増加しつつあります。

3. ロボットアーム

ロボットアームは多関節のアームを使用して物品をつかんで運搬する装置です。工場や倉庫での自動化に使用され、高い精度と柔軟性を持ちます。ロボットアームの形態もさまざまで、パラレルロボット垂直多関節ロボットなどが存在します。

4. ドローン

空中を飛行して荷物や物品を運搬する無人航空機です。現在は高所の調査などで広く使用されています。近年、宅配業界での利用が注目されています。

脱泡装置

脱泡装置とは脱泡装置

脱泡装置とは、液体に含まれる気泡を効率的に除去するための装置です。

水や薬液のような低粘度の液体から、樹脂やオイルのような高粘度の液体まで、幅広い製品の生産プロセスで活用されています。脱泡装置にはさまざまな形式があり、液体や用途に応じて選ぶことが可能です。真空 (減圧) を利用したものや、加圧、遠心力を用いるものなどがあります。また、超音波を利用したり、ガス透過膜を活用する脱泡装置も存在します。

脱泡装置を使用することで、液体から気泡を効果的に取り除くことが可能です。製品の強度や性状、表面性状が均一化されるため、歩留まりや品質が向上し、さらに高品質な製品を効率的に生産できます。

脱泡装置の使用用途

脱泡装置は、製造業において多様な用途で使用されています。中でも真空脱泡装置を用いる場合が多いです。真空脱泡装置は、減圧することによって脱泡を行います。高粘度の液体に対しても効果的で、時間経過により気泡を減圧空気中に排出可能です。

シリコンゴムや各種樹脂などの脱泡に使用されており、液体表面に到達した泡の膜を壊れやすくする消泡剤と呼ばれる添加剤が併用されることもあります。そのほか、加圧脱泡装置も広く使用されています。加圧脱泡装置は、加圧によって一時的に気泡を圧縮し、極小さなサイズにできます。

しかし、加圧を解除すると気泡が元の大きさに戻ってしまうのが欠点です。そのため、熱硬化性の樹脂や粘着テープ用の糊など、製品化した際に気泡の大きさが固定される材料に対して効果的に使用されます。

これらの脱泡装置は、製品の品質や性能を向上させるために欠かせない技術です。真空脱泡装置や加圧脱泡装置を適切に選択し、使用することで、高品質な製品を効率的に生産することが可能となります。

脱泡装置の原理

脱泡装置は、主に真空脱泡装置と遠心脱泡装置の2つのタイプがあり、原理が異なる点が特徴です。

1. 真空脱泡装置

真空脱泡装置は、真空ポンプを用いてサンプルが入った密閉容器内を減圧することで、液体内に含まれる気泡を膨張させます。膨張した気泡は浮力により液体表面まで浮き上がり、時間経過とともに表面の液体膜が破壊されることで減圧空気内に排出されます。減圧により液体が常温下で沸騰する可能性や、急速に減圧すると気体の温度が降下するため注意が必要です。

2. 遠心脱泡装置

遠心脱泡装置は、サンプルが入った容器が自転および公転する際の遠心力により、密度差のある液体と気体が分離する原理を利用しています。機種によっては、重力加速度の100倍以上の加速度を発生できます。

真空脱泡装置と遠心脱泡装置は併用されることもあり、この場合には減圧により膨張し密度が大きく低下した気泡が遠心力により液体から切り離されるため、より強力な脱泡作用を得ることが可能です。

脱泡装置のその他情報

脱泡装置と併用される機械

脱泡装置と併用される機械として、撹拌機、フィルター装置、温度調節装置の3種類があります。脱泡装置と組み合わせることで、製造プロセスの効率性や製品品質を向上させる効果が期待できます。

1. 撹拌機
撹拌機は、液体を均一に混ぜるために使用される機械です。脱泡装置と併用することで、気泡を効果的に液体表面に移動し、脱泡装置が気泡をより効率的に除去できます。

2. フィルター装置
フィルター装置は、液体中の不純物や固形物を取り除くために使用される機械です。脱泡装置と併用することで、液体中の不純物が気泡の生成を引き起こす可能性を減らせます。

また、不純物が除去された液体は、脱泡プロセスがより効果的に進行することが期待されます。

3. 温度調節装置
温度調節装置は、液体の温度を一定に保つために使用される機械です。脱泡装置と併用することで、液体の粘度や表面張力を最適化し、気泡の生成や脱泡の効率を向上させることが可能です。

特に、液体の温度が脱泡プロセスに大きく影響する場合、温度調節装置の使用が重要となります。

参考文献
https://ohtsukass.co.jp/07_dappo/
http://www.chiyoda-electric.co.jp/

絶縁ボルト

絶縁ボルトとは

絶縁ボルトとは、絶縁材料で覆われたボルトまたは絶縁材料で製作されたボルトです。

通常、絶縁ボルトは電気的な絶縁が必要な場合に使用され、ボルトの本体部分が絶縁材料で被覆されています。絶縁材料はプラスチックやゴムで作られており、電気の通電を防ぐ役割を果たします。

絶縁ボルトを使用することで、電気的なショートや回路の故障を防止することが可能です。また、全体が樹脂製の絶縁ボルトなども販売されており、さまざまな化学薬品や溶液に対して耐性があります。

特に腐食環境や化学プロセスにおいて、絶縁ボルトによって長期的な耐久性を得られる場合も多いです。

絶縁ボルトの使用用途

絶縁ボルトはさまざまな分野で使用されます。以下は絶縁ボルトの使用用途一例です。

1. 電気配線

絶縁ボルトは、電気配線において使用されます。路面電車などの装置は、車体と架線を絶縁することが必要です。一般的には碍子や絶縁ボルトを使用して両者を絶縁します。

また、配電盤や制御盤などの電気機器の取り付けにおいて、絶縁ボルトが使用されることがあります。幹線と筐体の接触を防止し、安全性を向上させます。

2. 化学プラント

化学プラントなどでは、絶縁ボルトが使用されることがあります。特に鉄管とSUS管をフランジ接続する場合がありますが、異種金属腐食と呼ばれる現象でSUSが腐食することが多いです。絶縁ボルトを使用することで鉄管とSUS管を絶縁し、異種金属腐食を防止します。

3. 金属電解プラント

金属電解プラントにおいても絶縁ボルトが広く使用されます。金属電解プラントは電解を行うことで純度の高い金属を採取するプラントです。金属板を電解液に浸し、直流電流を流すことで金属の純度を高めます。

ただし、通電を止めても金属板と電解液が電池の役割を果たし、電圧を持ってしまう場合も多いです。この金属板を交換する際は、天井クレーンなどを使用します。天井クレーンは構造物のほとんどが金属であるため、金属板の電圧によってスパークが発生する場合があります。

これは電食や人身事故の原因となるため、絶縁ボルトによって吊り出し治具を絶縁してスパークを防止します。

4. 電気メッキ工場

電気メッキ工場でも絶縁ボルトが使用されます。電気メッキは電解液に2種の金属を浸し、電流を流すことでメッキを施す方法です。金属構成部品や吊り出し治具を絶縁するために絶縁ボルトが使用されます。

絶縁ボルトの原理

絶縁ボルトの原理は、絶縁材料による電気的な絶縁効果です。絶縁ボルトは一般的な金属製のボルトとは異なり、絶縁材料で被覆されます。

絶縁材料は、プラスチックやゴムなどの非導電性の材料です。これにより、絶縁ボルトは電気の通電を防ぎ、絶縁材料の表面に沿って電気的な絶縁を施します。絶縁材料によって電流の流れが遮断されるため、電気的なショートや漏洩を防ぐことができます。

ただし、強度的に金属製のボルトよりも劣る場合があります。そのため、強固な締結力が必要な箇所では使用することができません。また、同様に高温の箇所でも使用できない場合があります。

絶縁ボルトの種類

絶縁ボルトは絶縁材料の種類に応じて、いくつかの種類があります。以下は絶縁ボルトの種類一例です。

1. プラスチック被覆ボルト

金属のボルトにプラスチック被覆が施された製品です。プラスチック被覆によって電気絶縁性が向上し、金属部品との絶縁が施されます。一般的な絶縁ボルトであり、広く使用されています。

2. ゴム被覆ボルト

金属のボルトにゴム被覆が施された製品です。ゴム被覆によって耐薬品性や耐摩耗性が向上し、電気的にも絶縁されます。緩衝材などとして使用される場合もあります。

3. セラミック被覆ボルト

金属のボルトにセラミック被覆が施された製品です。セラミック被覆は高い耐熱性と耐電圧性を持ち、高温環境や高電圧環境で使用されます。特に電力送配電や高電圧装置での使用に適しています。

参考文献
http://www.daiko-jp.com/product/brand/sleep_washer_bolt.html
https://www.tomoe-works.co.jp/products/bolt-zetsuen/

紫外線殺菌装置

紫外線殺菌装置とは

紫外線殺菌装置

紫外線殺菌装置とは、微生物 (菌類・細菌類など) やウイルスなどを死滅させる殺菌装置の一つです。

短波長の電磁波である紫外線は、高いエネルギーにより分子にダメージを与えるため、微生物やウイルスなどを死滅させる作用があります。

特にUV-Cと呼ばれる280nm以下の波長の紫外線は、紫外線の中でも高い殺菌性能を持ちます。紫外線と光触媒を組み合わせた手法も開発され、紫外線殺菌装置を応用した新たな殺菌方法も登場しつつあります。

紫外線殺菌装置の使用用途

近年では、感染症対策として空気中の微生物やウイルスの殺菌・除去に関する需要が高まっています。その一つとして紫外線殺菌装置は有効な役割を果たしています。

特に冬季においてはインフルエンザウイルスやノロウイルスなどによるウイルス感染症が流行するため、紫外線殺菌装置を室内に取り付けることで、これらのウイルスを殺菌することへの注目が集まります。

また、食品製造や医薬品製造の場面では、安全性の観点から殺菌の工程は必要不可欠です。製品の衛生状態を維持するために工場などで多く利用されています。

このように紫外線殺菌装置は、家庭や工場、実験室など様々な場所で活用されています。

紫外線殺菌装置の原理

一般的に電磁波は波長が短くなるほど、その電磁波が持つエネルギーは高くなります。

人間の目で見える可視光は波長400~800nmほどですが、紫外線は200~300nmであるため、可視光よりもエネルギーが高い光といえます。エネルギーの高い電磁波である紫外線を様々な物質に照射すると構成する分子構造を壊すことがあります。微生物やウイルスなどもタンパク質や核酸 (DNA、RNA) などの分子から構成されているため、直接紫外線のような高いエネルギーの電磁波を浴びるとこれらの分子はダメージを受けます。

DNAはヌクレオチドという構成単位が連なった二重らせん構造を持ち、DNAに紫外線を照射するとヌクレオチドが損傷を受け、らせん構造が壊されます。紫外線殺菌装置では微生物のDNAを損傷させることでその細胞を死滅させます。

このプロセスはウイルスなどに限らず、ヒトや動物なども同様です。したがって、紫外線によるリスクや特徴を正しく認識して利用することが重要です。

紫外線殺菌装置のその他情報

1. 紫外線殺菌装置の特徴

紫外線殺菌装置は、水中や空気中の微生物やウイルスをも死滅させることができます。塩素による殺菌と比べると空気の殺菌にも利用でき、臭いや刺激もないことがメリットです。また、オゾンによる殺菌に比べると簡便な装置で殺菌でき、有害なガスを必要としない利点があります。

微生物やウイルスの死滅に有効な方法として高温高圧滅菌装置 (オートクレーブ) がありますが、処理時間が長く、高温高圧により物質の変性が起こります。それに対し紫外線殺菌装置は短時間で済み、物質への影響を最小限に抑える殺菌方法として選択されます。

環境への負荷が極めて小さく、安全性が高いという特徴により、紫外線による殺菌はさまざまな場面での応用が期待されます。

2. 紫外線殺菌装置の使用上の注意

紫外線は直接照射された部分にのみ殺菌効果を発揮するため、物によって遮られた部分の殺菌は不十分になることがあります。したがって、紫外線殺菌装置では紫外線の適切な照射が重要です。

また、紫外線の直接照射は皮膚がんや失明のリスクがあるため、人体には直接照射しないよう細心の注意を払う必要があります。

参考文献
https://www.u-vix.com/appendix/UV/appendix03.html

精密レギュレータ

精密レギュレータとは

精密レギュレータとは、レギュレータの中でも圧力を高精度に設定することができる機器です。

高圧の流体を一定の圧力に下げるバルブをレギュレータまたは減圧弁と呼び、一般的には圧縮空気を扱う空圧機器を指します。一般的なレギュレータでは繰返し再現性がフルスパンの±1%程度であるのに対して、精密レギュレータではフルスパンの0.5%程度です。

また、繰返し再現性が0.1%以内という高精度を誇る超精密レギュレータも存在します。

精密レギュレータの使用用途

精密レギュレータは下流圧力を高精度に調整できるため、エアシリンダなどの空圧アクチュエータを精密に制御したい場合に使用されます。

具体的な事例としては、印刷機械やプラスチックフィルムの加工機械におけるテンションコントロール (張力制御) 、研磨機やカッターなどの押圧制御、薬液や試料の吐出量制御などです。

周囲に接続される空圧機器は一般的なレギュレータと同様に、エアフィルタミストセパレータなどが設置されます。

精密レギュレータの原理

精密レギュレータの調圧スプリングには調整つまみが接続されており、調整つまみを回転することで調圧スプリングの押さえ力を設定します。

1. 一次側が高圧の場合の圧力調整

一次側の方が高圧の場合には、一次側と二次側の圧力差が調圧スプリングの押さえ力以上であれば二次側に圧縮空気が流入し、押さえ力とつり合った状態になります。

2. 二次側が高圧の場合の圧力調整

また、二次側の方が高圧の場合には、リリーフ弁から二次側の空気が外部に放出されます。一次側と二次側の圧力差は調圧スプリングの押さえ力によって決定されるため、二次側の圧力を調整することが可能です。

3. その他の圧力調整方法

機種によってはリリーフ弁が無く、2次側が高圧になった場合の排気機能をもたない機種もあります。

また、使用する流量が多い場合には、二次側の圧力を利用してさらに大きなレギュレータを操作する構造のパイロット式レギュレータが使用される場合もあります。

精密レギュレータの構造

精密レギュレータは、主に一次側と二次側を仕切る弁と弁に接続された調圧スプリング、2次側に設けられたリリーフ弁によって構成されています。

ダイヤフラムは、給気が行われるとバルブを押し下げる給気ダイヤフラム、排気時に力が作用する排気ダイヤフラム、ノズルの隙間を調整するノズルダイヤフラムの3種類があります。

精密リギュレータのその他情報

1. リリーフ弁の役割

精密レギュレータ内の圧力が高まった際に、リリーフ弁は自動で開いて圧力の放出を行います。リリーフ弁があることで、タンクからの逆流等があっても確実な残圧排気が可能です。

タンクの設計圧力以上の圧力が発生してタンクの破裂すると大きな事故に繋がりますが、リリーフ弁がこの事故を未然に防ぎます。

2. ダイヤフラムの役割

ハンドルを回転させると、調圧スプリングを介して、ノズルとの隙間を広げます。一次側から流入した供給圧力は、ノズルの間を通り、ノズル背圧として給気ダイヤフラムに作用する仕組みです。

バルブを押し下げる力はこの給気ダイヤフラムに発生した力です。バルブが押し下がられることで、供給圧力は二次側へ流出します。流出した空気圧は、排気ダイヤフラムへ作用することで給気ダイヤフラムの発生力と対抗します。設定圧力が上昇し過ぎた際などで作動するのがノズルダイヤフラムです。

ノズルダイヤフラムが押し上げられることで、周辺に隙間が生じます。ノズル背圧が大気側に流入することで給気ダイヤフラムと排気ダイヤフラムとのバランスが崩れ、バルブが閉じた後排気弁が開き、余剰圧力が大気に放出されます。

このような機構で圧力偏差が鋭く検出されることで、精密な調圧作用が可能です。

参考文献
https://atc.azbil.com/products/regulator/precision_regulator.html
https://www.smcworld.com/products/ja/s.do?ca_id=121
https://www.fujikura-control.com/

粘度計

粘度計とは

粘度計

粘度計とは、主に液体の粘度を測定するための測定器です。

粘度計は例えば化学工業などで接着剤や塗料などの粘度を図るために使用します。また、食品工業や飲料工業や飲料工業でも粘度は非常に重要です。同じように作った食品でも粘度が違えば製品として成り立たない時もあるため、食品工業や飲料工業や飲料工業でも多く使用されている測定機器です。

粘度計は単に上部から液体を入れて通過時間を測定する物から、スピンドルを回転させるものの大きく分けると2種類に分かれます。

粘度計の使用用途

粘度計は食品、飲料、化学工業業界で製品の粘度測定に用いられ、食品工業や飲料工業分野で粘度が製品の規格に沿っているかを測定するために使用されます。

もし味が同じでも粘度が変わると容器に注いだときの感覚や、実際に飲んだときの喉越しなどが違うため、全く違う食品となってしまいます。その為、粘度は食品としての重要な指標となります。また、化学工業でも粘度は重要な指標です。粘度が高ければ例えば壁に塗る接着剤などは垂れ下がらず使いやすいですが、逆にハンドリングや取扱が難しい製品となります。

粘度計の原理

粘度計は液体の粘度を測定するための装置であり、様々な原理が用いられていますが、主な原理としては以下の原理が使用されます。

1. 振動の減衰

振動体による振動の減衰を測定することによって液体の粘度を測定します。液体中で振動体が振動すると、液体に生じる粘性抵抗によって振動が減衰します。この減衰の程度を測定することで、液体の粘度を算出します。

2. 圧力損失

液体が管内を流れる際の流速と流体の圧力降下を測定することによって液体の粘度を測定します。一定の流量を流すように設定された管内に液体を流し、圧力降下を測定します。液体の粘度が高い場合には圧力降下が大きくなるため、粘度を測定することができます。

3. 落下速度 (時間)

液体中に落下する小さな球の速度や流れ落ちる流体の時間を測定することによって、液体の粘度を測定します。球の落下速度や流体の流れる時間は液体の粘度に依存するため、この速度を測定することによって、液体の粘度を算出します。

粘度計の種類

粘度を測定する手法は装置によって様々で、特徴や測定可能な範囲が異なります。主な粘度計は毛細管粘度計、落球粘度計、回転粘度計に分類されます。

1. 毛細管粘度計

毛細管粘度計は粘度を測定する方法としてはもっとも単純でシンプルな方法の1つです。これは温度一定下で毛細管に流体を流し込み、その通過時間を測定する物です。非常に単純な構造ですが、あまりにも高粘度になると容器内を通過するのに非常に時間がかかるか、もしくは圧力損失により全く流れなくなります。形状によってキャノン・フェンスケ型、ウベローデ型、オストワルド型などがあります。

2.粘度カップ

粘度カップは毛細管粘度計と同様に、カップから流れる流体の流出時間を測定するものです。カップごとに粘度範囲が決まっており概ねどのような粘度でも測定が可能ですが、測定ばらつきが大きいのが欠点です。

3. 落球粘度計

ヘプラー型落球式粘度計などの落球粘度計は小球の入った容器に流体を満たし、標線間を落下する小球の落下時間を測定するものです。粘度はストークスの式により求めます。粘度範囲は広範ですが、小球が見えない塗料やインクは測定ができません。

4. B型粘度計

工業用途としては回転粘度計であるB型粘度計が最も多く用いられます。これはスピンドルと呼ばれる回転体を液体の中で回転させて、その際のトルクを粘度として換算します。とても簡単に使用できますがスピンドルの太さなどで若干の誤差が発生する可能性があります。

5. 音叉型振動式粘度計

その他に音叉型振動式粘度計があります。音叉振動式は、液体中で振動子を共振させ、振動子を一定振幅で動かすのに必要となる加振力から粘度を求めます。音叉振動式は非常に感度が高いので精密な測定が必要な際に使用できます。

音叉振動式にはインラインで粘度が測定できる製品もあり同様に振動の変化を粘度として検知します。インライン粘度計は流れのある流体の中でも連続的に粘度を測定する事が出来るので、常時粘度測定が必要なラインやタンクなどに使用されます。

参考文献
https://www.aandd.co.jp/products/testmeasurement/analytical/ana-viscometer/
https://eko.co.jp/products/physical-property/liq_physical_property/st_viscometer

空気ばね

空気ばねとは

空気ばね

空気ばねとは、圧縮空気による反発力とゴムの弾力性を利用した緩衝装置です。

圧縮空気を充填したゴム製被膜をバネとして利用する装置で、多岐にわたる分野での使用実績があります。金属バネ (リーフスプリング・コイルスプリング) と比較して減衰能力が大きい点が特徴です。

負荷の増減に対する減衰力の変化が少なく、定荷重時にバネの高さを変化させることもできます。また、一般的なばねと比べて耐久性が高い点も特徴です。ゴム製のエアスプリングは衝撃や振動に対して優れた耐久性を持ち、長寿命です。

負荷の変動に対して柔軟に対応できるため、ショックアブソーバーの寿命を延ばすことができます。ただし、空気圧送用のエアコンプレッサやエア配管などの付帯部品を有するため、金属ばねに比べて高コストです。設計とメンテナンスが複雑になります。

空気ばねの使用用途

空気ばねはさまざまな用途で使用されます。特に、乗用車や貨物車、鉄道車両のサスペンションに採用されることが多く、機械製品の生産ラインや建造物の免震装置にも有用です。

1. 乗り物

使用時の乗り心地が良いことから、主に高級車のサスペンションスプリングなどに利用されます。また、薬品や精密機械を運搬する貨物輸送車両や、新幹線車両の枕バネなどにも適しています。快適性やNVH (騒音・振動・ガタピシ音) 性能が求められる製品の緩衝装置としても最適です。

また、後ろ2軸で最後輪軸がデッドアクスルの車両においては、積雪路面やぬかるみなどでの発進時に駆動輪の面圧を上がります。最後輪軸を持ち上げるリフトアクスル動作を可能とするために、空気ばねを採用する例があります。

2. 建造物

地震などの振動から建築物を保護する目的で使用されることもあります。建物の基礎や構造物に空気ばねを組み込むことで、地震時の振動を吸収しつつ建物の安定性を確保します。

空気ばねの原理

空気ばねは、空気の圧力と体積の変化に基づいて作用する原理によって機能します。空気ばねの主要な部品は特殊なゴム製の袋です。これは圧縮空気を封入した空間を持ち、荷重や振動に応じて空気の圧力と体積が変化します。空気ばね内の圧縮空気の量を変化させることで、ばねの硬さを調整します。

圧縮空気の量が多い場合はばねは硬くなり、少ない場合は柔らかくなります。ゴム製被膜の反発力によって機械作動時などの高周波振動を吸収するため、製品の静粛性や加工精度を向上させることが可能です。

空気ばねのトラブルとしては、過負荷時の破裂や経年劣化によるエア漏れ、急激な減衰時の台座からの外れる恐れなどがあります。特に自動車用エアサスペンションでは、水分などの侵入によるエア漏れが多く発生しています。

空気ばねの種類

ゴム製被膜とそれを固定する金具の形状により、収縮時に内側にゴム製被膜が捲れるダイヤフラムタイプと大福状のゴム製被膜が潰れていくベローズタイプに大別されます。

1. ダイヤフラムタイプ

ダイヤフラムタイプは、ゴム製のダイヤフラムを使用する空気ばねです。ダイヤフラムは円盤状のゴム製の部品で、中央に空気の封入口があります。ダイヤフラムタイプの空気ばねは圧縮空気をダイヤフラム内に封入し、負荷に応じてダイヤフラムの膨らみや圧力を調整します。

柔軟なゴム製のダイヤフラムを使用するため、乗り心地が向上します。振動や衝撃を吸収し、滑らかで快適な乗り心地を提供します。コンパクトで軽量な設計のため、車両のサスペンションシステムに組み込む際にスペースを節約可能です。

また、空気圧を細かく制御するので、より高度な制御性能を発揮し、車両の安定性や操縦性を向上させることができます。振動吸収と静粛性に優れており、路面からの振動や騒音を効果的に軽減します。

2. ベローズタイプ

ゴム製のベローズ (波形) 状部品を使用した空気ばねです。ベローズは複数の円弧状の金属板から成り、ゴム製のシートで覆われています。圧縮空気をベローズ内に封入し、負荷に応じてベローズの形状や圧力を変化させます。

ベローズタイプは、一般的にトラックやバスなどの大型車両に使用されます。耐久性が高く、負荷への適応性に優れています。

参考文献
http://www.jsse-web.jp/youto/36-37.pdf

移動棚

移動棚とは

移動棚

移動棚 (移動ラック) とは、可動式の構造を持った特殊な収納棚です。

床面のレール上を動かす製品が多く、利点としてスペースを節約できることが挙げられます。固定棚と比較して収納量は150%~200%になり、スペースを有効活用できます。また、棚の密度を調整することで、さまざまなサイズや高さのアイテムを効果的に保管することが可能です。

また、移動棚は閲覧制御やセキュリティにも役立ちます。鍵などによって特定の書類の閲覧を制限できる製品もあり、重要情報や機密データの保護が可能です。また、一部の移動棚は防火や防塵などの特殊な要件にも対応しています。

流動性が低い商品や、書類や書籍など長期的に保管をする場合に適した収納棚です。

移動棚の使用用途

移動棚は、さまざまな場所や業界で使用されます。特定の需要や要件に合わせて、移動棚は柔軟に設計やカスタマイズが可能です。

1. オフィス

オフィス環境では、書類やファイルなどの収納に使用されます。可動するため、必要なときに特定のアイテムにアクセス可能です。オフィスのスペースを最大限に活用し、整理された環境を提供します。

2. 倉庫

倉庫では、効果的な在庫管理に使用されます。棚の密度を調整し、さまざまな製品やアイテムを収納可能です。また、棚が駆動するため、効率的に物品を取り出すことができます。

3. 図書館・アーカイブ施設

図書館やアーカイブ施設では、本や資料の保管に使用されています。多くの本や資料を効率的に収納できるだけでなく、特定のセクションだけ閲覧制限をすることも可能です。

移動棚の原理

移動棚はレールユニット、移動機構、棚ユニットなどの要素で構成されます。

1. レールユニット

レールユニットは、移動棚の軌道を決定するレールです。 移動棚システムには、複数の棚ユニットが設置されたレールや軌道が使用されます。これによって棚ユニットが水平方向に移動できるようになります。

2. 移動機構

移動機構は、棚を動作させる動力源です。手動と電動があります。通常は棚の下に車輪などが取付られており、動力源を通じて棚を動作させることが可能です。

3. 棚ユニット

棚ユニットは、収納や保管するアイテムを支持する構造です。通常は水平な棚板または引き出しの形状をしており、アイテムを収納するためのスペースとなっています。

移動棚の種類

移動棚には電動式、手動式、ハンドル式などの種類があります。

1. 電動式

電動モーターによって駆動される移動棚です。電動モーターは、レールや軌道上を移動する棚ユニットを制御します。ボタンやリモコンなどの操作装置を使用して、棚の移動などを簡単に制御できます。

電動式の利点は操作性の高さです。電動モーターによる駆動により、ユーザーは簡単に棚を移動させることができます。手動よりも迅速で効率的な操作が可能です。

また、電動モーターによって駆動するため、重量物を収納することもできます。オプションとして自動ドア、センサー、セキュリティシステムなどの追加機能があります。ただし、手動式やハンドル式と比較して高価な場合が多いです。

2. 手動式

人力で操作される移動棚です。棚ユニットはレール上に滑らせることで移動します。小規模な収納や個人用途に適しています。

手動式移動棚は比較的低コストで導入できるため、予算に制約のある場合におすすめです。また、電源や電気設備の必要がないため、設置が比較的簡単です。電動部品がないため、静かで騒音が気になりません。

3. ハンドル式

操作にハンドルを使用する移動棚です。ハンドルは、移動棚の前面や側面に取り付けられており、回転させることで棚をスライドさせることが可能です。ハンドル式移動棚は、手動式移動棚と同様に小規模な収納や個人用途に適しています。

移動棚のその他情報

移動棚の設置方法

移動棚の設置方法は土台式、アンカー式、埋込式などがあります。

1. 土台式
床に合板パネルを敷いてレールを固定する方式です。フラット仕様や汚れ防止仕様などを選択可能です。

2. アンカー式
床に直接アンカーを打ち込んでレールを固定する方式です。耐震性に優れています。

3. 埋込式
床を削って作った溝にレールを埋め込む形でアンカー固定する方法です。台車の通行が可能であり、パレットラックに適しています。

参考文献
https://lplanners.jp/blog/idou-rack/
https://lplanners.jp/blog/move-rack/
https://www.jaroc.com/products/keep/auto/
https://www.jaroc.com/products/keep/hand/
https://www.taiyousetubi.com/product/move/

磁気シール

磁気シールとは

磁気シールとは、回転運動用のシールユニットのことで、磁石によって引き寄せられる磁気流体を利用して密閉するものです。

磁気流体シールや真空シールと呼ばれることもあります。回転シールとは、機器の機能を長期的に発揮させる作動油を密閉、シールするものです。

磁気シールは主に大気、ダスト、オイルミスト、ガス、真空などで使用されます。

磁気シールの使用用途

磁気流体シールの主な使用例は、パソコンなどのハードウェアに内蔵されるHDDの軸受です。磁気流体シールにより耐久性の向上、回転の騒音減少などの効果があります。

その他、半導体製造装置や分析装置など、真空場を確保しなければならない装置で使用されています。ただし、1つの真空シールではシールしきれません。そこで、複数の真空シールを多段構成することによって、真空を維持します。

また、希土類磁石を使用した磁気シールでは磁場が強いため、強力に磁気流体を保持することが可能です。特に1気圧差を保つことができる真空シールはCVD装置、RVD装置、イオン注入装置などに用いられます。

磁気シールの原理

磁気シールの仕組みは、磁性流体が磁石に引き付けられるという性質を利用したものです。シールする回転軸の周りに永久磁石と磁性流体を配置し、回転軸周りに磁性流体を留まらせることによってシールするもので、回転軸周りに留まっている磁性流体がOリングの役割を果たします。

通常磁力が強ければ強いほど、磁力流体の耐圧は大きくなりますが、1つの磁気シールで10段から20段といった多段構造で設計するのが一般的です。複数段を形成することにより、耐圧の大きな磁気流体シールが完成します。

なお、磁性流体には水ベースのもの、炭化水素油ベースのもの、ふっ素油ベースのもの、3種類があります。一般的に使用されるのは、炭化水素ベースのものです。水ベースの磁性流体は蒸発してしまうこともあり、種類と価格面から炭化水素ベースの磁性流体が適しています。ふっ素油ベースの磁性流体は、化学安定性、低蒸気圧性、耐熱性などの要求が高い場合に用いられます。

磁気シールのその他情報

1. 磁気シールの長所

密封性や非発塵性が高い
磁気シールは液体でシールするため、隙間ができにくいです。また、個体同士の接触ではないので、摩擦による摩耗粉が一切発生しません。

低摩擦トルクである
オイルシールのように接触圧力を持った個体接触ではないため、損失抵抗は極めて少なく保つことができます。

低発熱、低騒音である
個体と液体の接触によて生じる摩擦で、発熱や騒音はほとんど発生しません。

回転・静止時共に密封性を有する
個体のオイルシールが密封性を発揮するのは、軸が回転することによるポンプ効果によるものです。軸が回転することよって密封が保持されます。磁気シールは磁気さえ保持されていれば、軸の回転や静止に関わらず密封性を発揮します。

設計が比較的容易である
個体のオイルシールの場合は、回転軸と接触するリップ形状の詳細設計が必要です。それに対して、磁気シールは比較的容易に設計することができます。

2. 磁気シールの短所

耐熱性に限界がある
磁性流体は温度が高くなるにつれて磁性が弱まる性質があり、キュリー点という温度に達すると、完全に磁性が失われてしまいます。高温になるにつれて、密封できる圧力は低下するという性質があります。

液体のシールには向かない
磁性流体という液体でシールするものであるために、シールする液体によっては磁性流体が溶け出してしまう恐れがあります。

往復運動のシールに適さない
個体のOリングであれば往復運動のシールも可能ですが、磁性シールでは磁性流体が持ち出されてしまう恐れがあるため、往復運動のシールには不向きです。

高圧シールに適さない
磁性流体は、回転軸と磁性流体に磁力を与える磁極片との隙間を減らすことによって、密封圧力が高まります。しかし、個体のオイルシールほどの高圧はシールできません。

温度や回転速度によっても密封できる圧力は低下するため、使用環境に設計をすることが大切です。

参考文献
https://www.rigaku-mechatronics.com/technology/
https://www.moretec-inc.co.jp/about/magnetic-seals/99-cat02/320-2017-12-04-08-24-31

破砕機

破砕機とは

破砕機

破砕機 (読み方: はさいき) とは、刃のついたローラーを回転させて物体を破砕する機械です。

実験用に少量の岩石や木材、果実などを破砕する小型のものから、コンクリートや廃材を処分するための産業用まで様々な機種があります。

類似したものとして粉砕機がありますが、減速機 (ギア) を使用しており、20mm以上の物体に適用されるものが一般的に破砕機と呼ばれます。減速機によりトルクが上がり、大きなものや固いものを破砕することが可能です。このため、粉砕機の前処理として破砕機が使用されることがあります。

ステンレス鋼でできたローターを回転させ、物体を噛み砕くように破砕するので、ローターの回転速度と刃の細かさが重要です。最初は粗い刃を低速回転させて試運転し、少量ずつ破砕して様子を見ながら、細かい刃へ段階的に付け替えていきます。

破砕機の使用用途

破砕機は主に硬い物体を粗く砕く用途で使われます。粉末状まで細かくする場合は、破砕後に粉砕機で処理する必要があります。

抽出や反応に用いる素材を破砕すれば、体積あたりの表面積が大きくなるので抽出効率や反応速度が上がります。また、嵩が減るので保存スペースを削減したい場合も破砕が有効です。ただし空気中で酸化されやすいサンプルは破砕することで酸化が進みやすくなるなど、破砕のデメリットもあります。サンプルに応じた判断が必要です。

破砕機の原理

破砕機の基本的な構造と破砕の仕組みは以下の通りです。

1. 破砕物の投入

破砕したい物を投入口から入れます。投入しやすいように、ホッパーという漏斗の役割を果たす部品を投入口に装着します。

2. 破砕室への落下

投入された物品は破砕室へ落下します。破砕室内では歯車のように刃のついたローターが回転しており、投入された物品を巻き込んで破砕します。ローターの回転数と刃の細かさが、破砕能力を決定します。

回転数が速すぎると、投入した物が弾かれてしまい巻き込まれません。刃が細かすぎると、目詰まりを起こして回転が止まってしまいます。最初は粗い刃を低速回転させて試運転し、少量ずつ破砕して様子を見ながら回転数と刃を最適化させることが大切です。

3. ふるいにかける

破砕室の底部には、スクリーンという「ふるい」の役割をする部品が装着されています。スクリーンには一定サイズの穴が空いており、この穴よりも細かく破砕された破片のみ、スクリーンを通過して排出口へ落下します。

4. 破砕物の回収

排出口から出てくる破砕品を、袋やバットで受けて回収します。

破砕機のその他情報

1. 一軸と二軸の違い

破砕機の一軸と二軸の違い

図1. 破砕機の一軸と二軸の違い

破砕機は、破砕様式によって「一軸型」と「二軸型」に分類されます。それぞれ長所と短所があるため、この分類を知っておくと機種の選定に役立ちます。

一軸型破砕機は、破砕室の両壁に固定刃が並んでおり、それらの間をローターが駆動する構造です。投入口から入れられた物品は、プッシャという器具によって破砕室に押し込まれ、ローターに巻き込まれます。ローターと固定刃の間を何度も通過することで細かく切断され、スクリーンの目の細かさより小さくなった破片のみが排出されます。長所は裁断力が高く細かい断片にできる点、短所は処理速度が遅い点です。

二軸型破砕機は固定刃がなく、ローターが2つ並行に設置してあります。投入された物品は2つのローターの間へ巻き込まれて破砕されます。長所は処理速度が速い点、短所は断片が粗く、大きさも不揃いになりやすい点です。

破砕の細かさが求められる場合は一軸型、処理速度が求められる場合は二軸型が推奨されます。

2. 木材用破砕機

破砕機の中には、木材の破砕に特化した機種もあります。端材を廃棄したり木材ペレットを作製したりする用途に使われており、家庭用の小型機種から木材加工場の大型機種まで様々なものが販売されています。

家庭用の小型機種は、選定した枝や小型の木製家具を破砕するのが主な用途です。「ガーデンシュレッダー」や「ウッドチッパー」などの呼称で販売されており、3万〜10万円で購入できる機種もあります。

業務用の大型機種の中には、エンジンを搭載してキャタピラで走行できるものもあります。広い作業場の複数箇所に木材が積まれている場合、木材を運ぶのではなく破砕機が移動して作業することで、効率を上げることが可能です。

木材用破砕機を使用する際の注意点は、ローターの強度が低い点です。岩石やコンクリートの破砕を想定した設計ではないため、誤って石などの硬いものを投入してしまうと、刃こぼれを起こし故障につながるおそれがあります。

参考文献
https://www.fjtex.co.jp/kankyo/products/crusher/
https://www.tsuganemachine.jp
https://www.sun-earth.jp/kikuzu-hasaiki?lang=ja