窒化アルミニウムとは
窒化アルミニウムとは、アルミニウムの窒化物で、無色または灰色結晶の無機化合物です。
別名でアルミナイトライドとも呼ばれます。窒化アルミニウムは、電子伝導性が低いにも関わらず熱伝導性が高い材料です。窒化物のうちでは、最も酸化に対して安定です。
窒化アルミニウムの使用用途
窒化アルミニウムは、優れた熱伝導性、電気絶縁性、各種半導体に近い熱膨張性などの特性を有していることから、熱に弱い半導体等の電子部品の放熱材料として主に使用されています。
具体的な用途としては、パワートランジスタモジュール基板、LED用マウント基板、ICパッケージなどが挙げられます。その他、プラズマエッチャー用部品、ウエハーチャック用部品、ステッパー用ウエハー保持冶具、ダミーウエハー、ヒーター均熱板なども用途の1つです。
窒化アルミニウムには、フィラーとしての用途もあり、各種樹脂材料との混合で、樹脂の性能を高める効果があります。例えば、窒化アルミニウムの微粉末を、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、BTレジンなど各種樹脂との混合で、充填性、流動性、高放熱性を付与できます。
窒化アルミニウムの性質
窒化アルミニウムの分子式はAlNで、分子量が40.99の無色または灰色の結晶質の固体です。比重は3.3、常圧では融解せず2,150℃で分解します。化学的には非常に安定な物質で、焼結体は塩酸、硫酸、硝酸などの一般的な酸や塩基には溶けません。しかし、粉末状態の窒化アルミニウムの場合は、空気中の水と容易に反応して、水酸化アルミニウムとアンモニアを発生させます。 (AlN +3H2O → Al(OH)3 + NH3)
特にpHが高い水溶液の場合は、急速に分解します。このため、粉末を保管する場合は、高純度窒素ガス中か、乾燥空気中で保管することが重要です。粉体の窒化アルミニウムは加水分解の懸念がありますが、成形のために1,700℃以上で焼結処理された焼結体は加水分解せず、耐薬品性が高い特徴もあります。
焼結体は窒化アルミニウムの粉体をバインダー、可塑剤などと混合してガム状にして、成形したい形に加工され、高温で焼結させることで作成されます。窒化アルミニウムは、熱伝導率・熱放射率が大きく、均熱性が高い物質です。
室温での熱伝導率は70~200W/m・Kでアルミナ (Al2O3) の2~15倍ほどあります。熱膨張率がシリコンと同程度と低く、熱変形しにくいことも特徴です。熱変形しにくいため、耐熱衝撃性も他のセラミックと比較して高くなっています。
窒化アルミニウムのその他情報
窒化アルミニウムの製造方法
窒化アルミニウムの製造方法としては、酸化アルミニウムから作る方法と、単体のアルミニウムから作る方法、塩化アルミニウムから作る方法の3通りあります。
1. 酸化アルミニウムから作る方法
ボーキサイト (酸化アルミニウムを高含有率で含む鉱物) とコークスの混合物を、窒素中で1,700℃、高圧で反応させることで得られます。
Al2O3 + 3C + N2 → 2AlN + 3CO
2. アルミニウム粉と窒素の直接反応
アルミニウム粉を窒素雰囲気化で加熱すると600℃ぐらいから窒化反応が開始します。徐々に温度を上げて800~1,000℃で反応は完了します。アルミニウム粉は600℃で融解して凝集し始め、窒素との接触面積が減るため、凝集を防止しながら窒化反応を行う必要があります。
2Al + N2 → 2AlN
3. 塩化アルミニウムとアンモニアとの反応
塩化アルミニウムとアンモニアと1,200~1,500℃で反応させることで窒化アルミニウムが得られます。小規模で窒化アルミニウムの薄膜を形成する場合等に使われる方法です。
AlCl3 + NH3 → AlN + 3HCl
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvsj1958/9/5/9_5_183/_pdf