硫酸

硫酸とは

硫酸とは、化学式H2SO4の化学物質で、無色無臭の酸性の液体です。

別名で緑バン油ともよばれ、純度の高いものは油状の液体です。一般的には、水溶液としたものが硫酸と呼ばれており、希釈され濃度が低くなるにつれて粘度も下がっていきます。

硫酸は「医薬用外劇物」に指定されており、皮膚に付くと重度の薬傷となる恐れがあります。取り扱いには注意が必要です。

硫酸の使用用途

硫酸は化学工業における基礎原料の1つで、肥料工業や繊維、金属製錬、製鋼、紡績、製紙・食料品工業、めっきなどの広い分野で利用されています。また、硫酸は化学実験に用いる試薬としても重要です。

そのほか、脱水剤、酸化剤、乾燥剤などとして用いられ、硫酸アンモニウム、火薬、染料、無機化学薬品の製造、有機化合物の合成、石油や油脂の精製、触媒、車のバッテリーに使われる鉛蓄電池の電解液など、工業分野で幅広く使用されています。

硫酸と各種金属から成る塩も重要な働きをしています。例えば、硫酸カリウムは肥料に利用されており、硫酸カルシウムは石膏の主成分となっています。

硫酸の性質

硫酸は分子量98.07で、濃度の高いものは油状の液体です。98%の硫酸の比重は1.841で融点は3.0℃で、比熱は0.3325 (15℃) です。

金属との反応で、水素、硫化水素、二酸化硫黄、硫黄および金属硫化物、硫酸塩を生成します。この反応生成物は、硫酸の濃度、温度、金属の種類によって異なります。また、金属酸化物と反応して、硫酸塩を生成します。

硫酸の水への溶解熱が非常に高いため、濃硫酸を水で希釈して希硫酸にする場合は、水へ濃硫酸を攪拌しながら少しずつ加える方法が採用されています。逆に濃硫酸に水を加えてしまうと、水が急速に沸騰してしまい混合物が溢れ出すことがあるため、非常に危険です。

有機化合物とは脱水、水和、スルホン化などの諸反応を起こします。また、触媒作用もありニトロ化などに使われます。硫酸は水溶液中では2段階で電離し、強い酸性を呈します。電離の第1段階では硫酸水素イオンが生じ、電離の第2段階では硫酸イオンが生じます。硫酸イオンは、多くの金属元素と安定な硫酸塩を形成します。

硫酸の種類

硫酸水溶液のうち、硫酸濃度が約90%未満と低いものを希硫酸、約90%以上の濃度の高いものを濃硫酸と呼びます。他にも濃硫酸を290℃以上に加熱した熱濃硫酸、三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させた発煙硫酸などがあります。

いずれの硫酸も強酸性であることは共通していますが、濃硫酸には希硫酸には見られない脱水作用や吸湿作用があり、さらに加熱した熱濃硫酸では酸化作用が出てきます。

硫酸のその他情報

硫酸の製造方法

硫酸の製造方法としては、硝酸式と接触式があります。しかし、硝酸式は製品濃度が低く、不純物が多くなり、さらに排ガス中に有害な窒素酸化物が含まれるため、現在国内で工業的に製造されているものは接触式のみです。

どちらの方法も二酸化硫黄を原料として、酸化により三酸化硫黄としてから、水に吸収させることで硫酸が得られます。

1. 二酸化硫黄の酸化
二酸化硫黄の原料は、別の工業製品を作る際の排ガスが用いられることが多く、このガスを純度の高い二酸化硫黄ガスに精製します。精製された二酸化硫黄は420~430℃に加熱され、五酸化バナジウムを主成分とする触媒を充填した転化器に導入し、三酸化硫黄に酸化されます。

2SO2 + O2 → SO3

2. 三酸化硫黄の水へ吸収
三酸化硫黄を水へ吸収させることで硫酸になります。実際は、水と直接反応させるのではなく、濃硫酸が循環する吸収塔に三酸化硫黄を導入して発煙硫酸にさせてから、これを希釈し、濃硫酸にしています。

H2SO4 + SO3 → H2SO4・nSO3
H2SO4・nSO+ nH2O → (n+1) H2SO4

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0626.html

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