硫酸コバルト

硫酸コバルトとは

硫酸コバルトとは、コバルトの硫酸塩の無機化合物です。

硫酸コバルトには、硫酸コバルト (II) と硫酸コバルト (III) の2種類が存在します。硫酸コバルト (II) には、無水物、一水和物、七水和物が知られています。

硫酸コバルト (II) の七水和物は、濃紅色の柱状結晶です。別名、赤バン (英: bieberite) とも呼ばれています。日本で赤バンは、奈良県の堂ヶ谷鉱山や山梨県の鳳来鉱山などで確認されています。

硫酸コバルトの使用用途

硫酸コバルト (II) は、コバルトめっきや磁性材料、陶磁器の釉薬、コバルト塩の製造などに用いることが可能です。また、防錆材原料や各種表面処理蓄電池、ぺイント・インキの乾燥剤、ガラスや陶磁器の彩色用顔料、触媒、金属せっけん、不可視インク原料など、幅広い用途が挙げられます。

硫酸コバルト (II) は、医薬品分野では、貧血用薬にミネラル成分として配合されています。さらに、農業分野においても、同様の目的で、飼料添加物として使用可能です。

それに対して硫酸コバルト (III) は、強い酸化剤として使用されています。

硫酸コバルトの性質

1. 硫酸コバルト (II)

硫酸コバルト (II) の無水物の融点は735℃、七水和物の融点は74℃です。硫酸コバルト (II) の水和物は、空気中で風解します。水和物を250℃まで熱すると無水物が生じます。

硫酸コバルト (II) の無水物は、水、メタノールエタノールなどに溶かすことが可能です。

2. 硫酸コバルト (III)

硫酸コバルト (III) は酸化力が強く、エタノールからアセトアルデヒドに酸化して、塩酸から塩素を発生させます。

硫酸コバルトの構造

1. 硫酸コバルト(II)

硫酸コバルト (II) の化学式はCoSO4で、モル質量は155.00g/molです。硫酸コバルト (II) の一水和物の化学式はCoSO4・H2O、モル質量は173.01g/molであり、七水和物の化学式はCoSO4・7H2O、モル質量は281.103g/molです。

硫酸コバルト (II) の無水物と一水和物は赤みを帯びた結晶であり、硫酸コバルト (II) の七水和物はFeSO4・7H2Oと同形の柱状晶を作っています。硫酸コバルト (II) の無水物の密度は3.71g/cm3、一水和物の密度は3.08g/cm3、七水和物の密度は2.03g/cm3です。

2. 硫酸コバルト(III)

硫酸コバルト (III) の十八水和物は、青色をした針状の結晶です。硫酸コバルト(III)の十八水和物の化学式はCo2(SO4)3・18H2Oで、モル質量は730.33g/molです。

硫酸コバルトのその他情報

1. 硫酸コバルトの産出

天然にはビーバーライト (英: beaverite) として、硫酸コバルト (II) が得られます。ビーバーライトとは、マグネシウムを含んだハイドロカルシルタイト (英: hydrocalcilutite) で、米国ミシガン湖にあるビーバー島  (英: Beaver Island) で産出されます。

2. 硫酸コバルトの合成

酸化コバルト硫酸に溶かし、41.5℃以下で析出させることで、硫酸コバルト (II) の七水和物を生成できます。硫酸コバルト (III) は35℃で分解しますが、硫酸には分解せずに溶けます。硫酸コバルト (III) を加水分解すると、酸素が発生し、硫酸コバルト (II) を得ることが可能です。

その一方で硫酸コバルト (III) は、硫酸コバルト (II) の硫酸酸性溶液を低温で電気分解することによって生成されます。

3. 硫酸コバルトの危険性

マウスを用いた実験では、硫酸コバルト (II) の吸入によって、毒性や発癌性が確認されました。サルモネラ菌を使用した実験で、変異原性も確認されています。

カナダのケベック州にあるビール会社では、硫酸コバルト中毒によって、16名の死者を出しました。硫酸コバルト (II) は不燃性ですが、加熱によって分解するため、硫黄酸化物を含んだ有害ガスを生じます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/10124-43-3.html

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