硝酸アンモニウム

硝酸アンモニウムとは

硝酸アンモニウムとは、硝酸のアンモニウム塩で、無色の結晶です。

別名、硝酸アンモニアや硝安などとも呼ばれます。硝酸アンモニウムは、自然界でも生成されますが、50~70%の硝酸をアンモニアで中和することによって、大規模製造することが可能です。世界で年間およそ20百万トンの硝酸アンモニウムが生産されています。

これまでに偶然の硝酸アンモニウムの爆発によって、何千人もの人々が命を落としてきました。そのため、多くの国で誤用を懸念して、消費者向けの用途での利用を段階的に廃止しています。

硝酸アンモニウムの使用用途

硝酸アンモニウムは、主に肥料として使用されることが多い物質です。ただし、硝酸アンモニウムの肥料は、水によって脱窒しやすいため、水田には不向きとされています。

その他の用途として、火薬や花火製造、除草剤、殺虫剤、寒剤、酵母培養の養分、麻酔薬の製造、マッチの製造原料、ロケットエンジンの推進剤などが挙げられます。さらに、爆薬としても利用可能です。特に94%の硝酸アンモニウムと6%の燃料油を混合したANFO爆薬が有名で、採石場・セメント産業・石炭採掘用などで使用されています。 

硝酸アンモニウムの性質

硝酸アンモニウムは、アンモニウムイオンと硝酸イオンから構成されています。化学式はNH4NO3、モル質量は80.04、密度は1.7g/mLの化合物です。

融点は170℃であり、210℃で分解します。硝酸アンモニウムは、吸湿性が極めて高いです。ただし、水和物を形成しません。水によく溶け、エタノールにも溶解します。

空気中で硝酸アンモニウムは安定していますが、可燃性物質が混入したり、密閉容器中で加熱・衝撃・摩擦などを受けたりすると、爆発する恐れがあります。

硝酸アンモニウムのその他情報

1. 硝酸アンモニウムの合成法

工業的に硝酸アンモニウムは、硝酸とアンモニアの酸塩基反応によって得られます。非常に激しい発熱反応です。無水状態のアンモニアを使い、まず硝酸を濃縮します。溶液が形成された後、高濃度の硝酸アンモニウムを残すために、余計な水を蒸発させます。

通常は83%程度で、グレードによっては95%から99.9%の硝酸アンモニウムの溶融物を得ることが可能です。硝酸アンモニウムの溶融物は、スプレータワーでプリルや小さなビーズにするか、回転ドラムで噴霧やタンブリングすることにより顆粒にします。

プリルや顆粒は乾燥と冷却の後に、固結を防止するためにコーティングすることが可能です。

2. 硝酸アンモニウムの合成における原料と生成物

硝酸アンモニウムの合成に必要となるアンモニアは、ハーバー・ボッシュ法 (英: Haber–Bosch process) で水素と窒素から生成可能です。ハーバー・ボッシュ法によって得たアンモニアを、オストワルト法 (英: Ostwald process) によって硝酸へ酸化します。

硝酸アンモニウム以外の生成物である炭酸カルシウムは別々に精製できる他、硝酸カルシウムアンモニウム (英: calcium ammonium nitrate) として販売されています。

3. 硝酸アンモニウムの反応

硝酸アンモニウムを開放状態で加熱すると、融点以上で徐々にアンモニアと一酸化二窒素へ分解していきます。触媒として塩化物イオンを用いても、硝酸アンモニウムを分解することが可能です。

また、硝酸アンモニウムを密閉状態で加熱した場合には、容易に爆発反応が起こり、窒素・酸素・水に分解します。ニトロナフタリンや木粉を混ぜたものは、爆発反応を活用した硝安爆薬として使用可能です。

硫酸アンモニウム尿素と同じく、硝酸アンモニウムも水に溶解すると吸熱します。食塩と比べて吸熱反応のエネルギーが大きく、瞬間冷却パックなどの寒剤として用いることも可能です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/6484-52-2.html

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