硫化鉄とは
硫化鉄とは、鉄と硫黄の化合物です。
硫化鉄は硫化第一鉄と硫化第二鉄と二硫化鉄に分類されます。硫化第一鉄は化学式がFeSで鉄粉と硫黄を坩堝内で融解して作ります。灰黒色または淡褐色の結晶です。希酸に溶けて硫化水素を発生します。天然では磁硫鉄鉱として採取します。硫化第二鉄は化学式がFe2S3 で黒色の粉末です。塩酸と反応して硫化水素を発生します。天然では銅との複塩をなす黄銅鉱として採取します。二硫化鉄は化学式がFeS2 で黄金色の結晶です。硫酸の原料で天然では黄鉄鉱として採取します。
硫化鉄の使用用途
硫化鉄第一鉄は、水に溶けやすく手軽に施用できる鉄剤で、主に土壌施用、葉面散布にて使用します。硫化鉄第二鉄は、ポリ硫化鉄第二鉄として、し尿、都市下水、食品加工廃水の三次処理 (脱水および脱臭) として使用されます。二硫化鉄は、電池の原料として使用されています。
硫化鉄は「黄金の金」とされる鉱物黄鉄鉱です。水素の脆化抑制のために、合金およびステンレス鋼の製造にも使用されています。かつては硫酸や硫酸アンモニウムの原料として使用されていました。しかし、石油精製工程での脱硫処理により硫黄が副次的にに生産されるようになったこと、石炭や胴、鉛、亜鉛の精錬による排ガスから硫酸が製造されるようになったことから、硫酸や硫酸アンモニウムの原料としては使用されなくなりました。
また、種々の鋼部品の製造に使用される鋼鋳造機の溶鋼品質を改良するための分解剤として使用されています。粗リン酸の精製において、硫化鉄はリン酸から重い不純物を除去するための還元剤としても使用されています。
硫化鉄の性質
硫化第一鉄 (硫化鉄II) の分子量は87.91で融点は1195℃、比重は4.84です。CAS番号は1317-37-9です。水には溶けません。また、硫化第一鉄は7水和物として安定して存在します。薄い青緑色の結晶です。硫化鉄(II)七水和物の分子量は278.02、融点は64℃、比重は1.898です。CAS番号は7782-63-0です。水には溶けやすく、エタノールにはほとんど溶けません。硫化第二鉄は不安定であるため、結晶構造や磁気的性質は明確ではありません。
二硫化鉄の分子量は120.0で融点 (分解温度) は600℃です。比重は結晶構造によって異なり、斜方晶では4.88、立方晶は5.00です。CAS番号は12068-85-8です。水には溶けず、硝酸には溶けます。硫化鉄は乾燥状態で大気と接触すると、酸化発熱が進み自然発火する危険性があリます。
硫化鉄の種類
地球上に存在する硫化鉄は以下が挙げられます。鉄の硫化鉱物は硫化鉄鉱と呼ばれます。
1. 黄鉄鉱 (Pyrite) (FeS2)
硫化鉱物では最も広く、多量に産出します。六面体や八面体、正十二面体、立方体等の結晶形です。薄黄色で金属光沢をもつため、金と間違えられることも多く、「愚者の黄金」と呼ばれています。
2. 白鉄鉱 (Marcasite) (FeS2)
黄鉄鉱と同じ組成ですが、白鉄鉱は斜方晶形です。黄鉄鉱より低温環境で生成し、450℃以上では黄鉄鉱に変化します。
3. トロイライト (FeS)
地球上ではほとんど産出されませんが、隕石中には広く見出されます。
4. 磁硫鉄鉱 (ピロータイト) (Fe1-xS)
鉄と硫黄の割合に応じて、結晶構造が異なります。
5. グレイガイト (Fe3S4)
磁硫鉄鉱とともに、強磁性を示す鉱物です。
6. マッキナワイト ((Fe Ni)1+xS) (x=0~0.11)
鉄とニッケルの硫化鉱物で、正方晶の結晶です。
硫化鉄のその他情報
硫化鉄以外の硫化鉱物
鉄以外にも、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、水銀、モリブデン、コバルト、アンチモンなどの硫化鉱物があります。代表的な硫化鉱物は、黄銅鉱CuFeS2、黄鉄鉱FeS2、方鉛鉱PbS、閃亜鉛鉱ZnSです。硫化鉱物になる金属は硫黄の代わりに砒素、テルル、セレン、と結合し、砒化鉱物、テルル化鉱物、セレン化鉱物をつくります。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcorr1954/16/7/16_7_291/_pdf/-char/ja
http://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/geology/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ganko1941/66/2/66_2_76/_pdf/-char/ja