硫酸アルミニウム

硫酸アルミニウムとは

硫酸アルミニウムとは、アルミニウムの硫酸塩です。

硫酸アルミニウムは、硫酸ばんどやアラム、礬土とも呼ばれています。硫酸アルミニウムには、無水和物の他、多くの水和物が存在しますが、14~18水和物が一般的です。

日本国内で硫酸アルミニウムは、毎年約60万トン生産され、工業消費量は約9万トンです。硫酸アルミニウムの水溶液は、酸性で収斂性を有し、中和することで、水酸化アルミニウムが析出します。

硫酸アルミニウムの使用用途

硫酸アルミニウムは、都市上下水道・工業用水・産業廃水等の浄水剤 (凝集剤) として広く用いられています。その他にも、染色助剤、土壌中和剤、医薬品、顔料、建材、コンクリート急結剤、皮革なめし剤など、幅広い分野で利用可能です。

硫酸アルミニウムは、製紙分野において、サイズ剤として利用されています。インキのしみ止めを代表とする液体の浸透防止や毛羽立ち防止のほか、平滑性の付与も含めて、紙質を向上させるのに用いられています。

硫酸アルミニウムは、泡沫消火器に消火剤として使用されている他、アルミナホワイト・ミョウバン等の原料としても使用可能です。

硫酸アルミニウムの性質

硫酸アルミニウムの無水和物は、空気中で安定です。770℃まで熱すると、SO3、SO2、Al2O3に分解します。約850℃になると熱分解が完了し、アルミナが生成します。

硫酸アルミニウムは水に可溶です。具体的には、0℃の100gの水に86.9g、20℃の100gの水に107.4g溶解します。水溶液中の硫酸アルミニウムは[Al(H2O)6]3+を含む錯塩を形成しています。硫酸アルミニウムの水溶液は加水分解して、[Al(OH)(H2O)5]2+とH3O+を生成するため、かなり酸性が強いです。さらに水溶液は、酸味や渋い味がします。

また、硫酸アルミニウムは希酸に溶けますが、エタノールには溶けません。複塩を生成しやすい性質を用いて、他のアルミニウム塩の原料として利用されています。

硫酸アルミニウムの構造

硫酸アルミニウムの無水物の化学式はAl2(SO4)3で、式量は342.14g/molです。硫酸アルミニウムの無水物は無色結晶であり、密度は2.71g/cm3です。

硫酸アルミニウムの十六水和物の化学式は、Al2(SO4)3·16H2Oと表されます。比重が1.96の無色の針状結晶です。

硫酸アルミニウムのその他情報

1. 硫酸アルミニウムの合成法

工業的に硫酸アルミニウムは、ボーキサイト (英: bauxite) や粘土などを硫酸で処理し、不純物を取り除いて得ています。鉄イオンを含んでいない高純度品は、水酸化アルミニウムの硫酸溶液を濃縮し冷却することで、硫酸アルミニウムの十六水和物として得られます。

硫酸アルミニウムの十六水和物は、穏やかに熱し続けると、泡を出しながら結晶水を失って、350℃で無水和物に変わります。水溶液から結晶化させると、−19〜95°Cで硫酸アルミニウムの十六水和物を得ることが可能です。他にも硫酸アルミニウムの水和物には、6、10、18、27水和物などが知られています。

2. 酸性紙としての硫酸アルミニウム

硫酸アルミニウムを製造過程で使った酸性の洋紙のことを、酸性紙 (英: acid paper) と呼びます。硫酸根が紙に残って、紙の酸性度が高まるため、数十年で劣化しやすいです。したがって、酸性紙の長期保存には問題があります。

3. 硫酸アルミニウムの関連化合物

ミョウバンの1種であるカリウムミョウバン (英: potassium alum) は、硫酸カリウムアルミニウムとも呼ばれています。硫酸イオン、カリウムイオン、水和アルミニウムイオンを含んだ複塩の結晶です。

当量の硫酸アルミニウムと硫酸カリウム水溶液の反応によって、カリウムミョウバンが生成します。水酸化カリウムにアルミニウムを溶解させて、硫酸を用いてもカリウムミョウバンは得られます。

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