カムフォロア

カムフォロアとは

カムフォロア

カムフォロアとは、運動方向を変換するカム機構において、カムとリンクとの接触抵抗を低減させるための部品です。

カムフォロアは構造で見ると、ベアリングの内輪にスタッド (ねじ) がついているのが大きな特徴です。このスタッドは、カムフォロアをリンク部品などに取り付けるために使われます。カム機構とは、運動の方向を変えるための機構です。

例えば、カムの回転運動、リンクの直線運動へと変換したり、逆に直線運動を回転運動に変換したりします。広く用いられている例としては、車のガソリンエンジンです。エンジンには複数の気筒があり、各気筒において混合気をピストン室内に吸入したり、燃焼後のガスをピストン室の外部に排気したりするための吸気弁、排気弁を開閉するための直進運動をエンジン出力軸の回転運動から得るために、カム機構が用いられています。

カムフォロアはカムとリンクとの接点に取り付けられ、2つの部品が滑らかに接しながら運動するために必要となる部品です。

カムフォロアの使用用途

カムフォロアは、さまざまな機械のカム機構に用いられています。基本的には、回転の要素が組み込まれている機械の内部に設置される場合が多いです。

カム機構以外にも、レールなどの上を直進運動する際のリニアガイドとして、滑らかな運動をさせるために使われたり、ローラーの上を製品や荷物が転がることによって軽い力でも移動させるための搬送ローラとして使われたりします。

リニアガイドは産業用機械だけでなく、コピー機やプリンタなどのOA機器においても、給紙や廃紙する部分にも多く用いられています。カムフォロアがリニアガイドやローラ搬送で用いられる際は、ローラフォロアなどとも呼ばれます。

カムフォロアの原理

ここでは、回転運動を直線運動に変換するカム機構の場合について説明します。カムは回転軸に取り付けられ、円以外の形状をした部品です。カムが回転する際にカムの外側の一点でカムの端部を観察し続けていると、端部はカムの回転中心からの距離の違いから、観察点においてある往復運動をすることになります。

この観察点において、リンクに取り付けられたカムフォロアがカムに常時接することによって、リンクが直線運動をすることができます。この回転運動と直線運動の変換点において、2つの部品が擦れて過度な摩擦が発生することを防ぐ役割を果たすのがカムフォロアです。

具体的には、カムフォロアの内部にあるニードルが転がり運動をすることによって、摩擦を大幅に低減させています。構造はニードルベアリングと同じなので、大きな荷重を支えることも可能です。

カムフォロアのその他情報

カムフォロアを扱う上での注意点

1. 取り付ける際につば部を直接叩かない
カムフォロアを取り付ける際に、特につば部などに衝撃を与えてはいけません。カムフォロアの機構はニードルベアリングです。

大きな衝撃荷重を受けた際には転動面が損傷し、早期破損の原因になることがあります。

2. 適切な位置に取り付ける
カムフォロアには、ニードルを潤滑するための油穴があります。カムフォロアを取り付ける際は、油穴の位置が荷重を受ける負荷域とは反対側になるように取り付けます。

負荷域に油穴があるように取り付けると、カムフォロアの寿命が短くなる恐れがあります。

3. スタッドが緩まないように取り付ける
カムフォロアはニードルベアリング同様に、大きな荷重を受けながら使用されるので、強固に固定されなければなりません。カムフォロアは通常、スタッドがねじ込まれた部品に片持ち支持されます。

スタッドが緩んで支持軸が不安定になると、ニードルにも偏荷重がかかってしまいます。機械が運転する最中にスタッドが緩んでしまわないよう、確実に固定することが重要です。緩みを防止するために、座金を入れたり、ダブルナットで固定したりする方法も効果的です。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/d0007.html
http://www.takahiro.co.jp/product/index.html

キュプラ

キュプラとは

キュプラ

キュプラとは、天然繊維の一種です。

銅アンモニアレーヨンとも呼ばれ、原料はコットンリンターです。コットンリンターは、綿の原料でもあるコットンの種 (綿実) の周りに密生している繊維を指します。

コットンは天然原料のため環境にも人体にもやさしく、化学繊維が体質的に合わずにかゆみなどが出てしまう方でも使用しやすい繊維です。また、このキュプラは吸湿性や放湿性、風合いに優れているなど、綿に似たような特徴を持っています。

キュプラの使用用途

キュプラの使用用途は、高級生地として身に着ける衣服が主です。スーツや背広などの裏地、肌着、下着のように心地よい肌触りが求められる部分に用いられるほか、和装小物や和服にも利用されます。また、インテリア用として、カーテンや布団、座布団などにも用いられることが多いです。

キュプラの原料であるコットンリンターは、綿花の中に含まれる種子部分 (綿実) のみからしか採れないため、綿花より生産数量が少ないです。また、キュプラは断面が円形であることや、表面が滑らかであることから、光沢や柔らかい肌ざわりが特徴で、高級感があります。これらの理由から、比較的高い価格で販売されている繊維です。

洗濯による摩擦には弱く、家庭でのケアが難しいため、他素材と混紡することで耐摩擦性を補っている製品も多くあります。最近ではキュプラの価格が下がってきたこともあり、衣服などの耐久品だけでなくマスクなどの消耗品にも使われるようになってきました。キュプラは吸湿性・放湿性が高いため、蒸れにくいマスクの生産が可能です。

また、キュプラやレーヨンは、繊維中にある程度の水分を含み、熱伝導率と熱拡散率が高いことなどから、接触冷感に優れており、夏用のマスクとしても好まれています。

キュプラの原理

キュプラは天然原料を使用しておりますが、分類上はレーヨンポリノジック、リオセルなどと同様の再生セルロース繊維と呼ばれる化学繊維の一つで、別名ベンベルグとも呼ばれています。天然素材のため環境にも身体にも優しいと話題の一方で、摩擦に弱く毛羽立ちやすいという特徴もあり、耐久性はあまり優れていません。

しかし、水に濡れたときの強度を示す湿潤強度は、通常の強度と大きく変わらず、レーヨンよりも水への耐性が強いです。また、耐熱性や耐熱温度については、レーヨンと同様に軟化せず、溶融もしませんが、約300℃で着色、分解します。

絹とは異なり、日光による変色への耐性は高いですが、屋外への長期暴露で強度が若干低下します。その他、静電気が起きにくいこと、柔らかくてしなやかであり、滑りがいいこと (ドレープ感があること) も特徴です。染色性にも優れており、色のバリエーションが多く、退色しにくく、深みのある色を発色することもできるため、高級感を高められます。

キュプラのその他情報

キュプラの製造方法

キュプラは、2〜6mmの短繊維であるコットンリンターを酸化銅アンモニア溶液で一度溶かしてセルロースのみを取り出し、再度繊維として加工することで製造されます。コットンリンターは短く、綿糸に加工することはできないため、上記のような手法 (銅アンモニア法) で繊維化されています。

キュプラは「」という意味であり、この製法が名前の由来です。レーヨンなどは木材のパルプを一度薬品で溶かしてセルロースを取り出して繊維にします。レーヨンとキュプラは同じような製法ですが、スタートの原料が異なります。

キュプラの原料であるコットンリンターは、コットンが繊維原料として使用され始めた頃から注目されていた原料にです。1884年にセルロースからレーヨン繊維を製造するノウハウが見つかり、レーヨン繊維とほぼ同時期の1890年というかなり昔から製造が開始された化学繊維になります。

参考文献
https://diacleaning.com/blog/cupla/

クロロプレンゴム

クロロプレンゴムとは

クロロプレンゴム

クロロプレンゴムは耐オゾン性、耐油性、耐熱性など様々な物性がバランスよく優れた合成ゴムで、自動車のベルトやホース、Oリング、接着剤など幅広い用途で用いられています。

クロロプレンゴムは主鎖構造の中に炭素原子同士の二重結合を有すること、二重結合を有する炭素原子に塩素原子が結合していることが特徴で、主鎖に塩素を含んでいるため耐油性、耐薬品性などが他の汎用ゴムに比べて優れています。

市販のクロロプレンゴムは主鎖の一部がクロロプレンモノマーとは異なる構造を有しています。一般的にはメルカプタン変性タイプのクロロプレンゴムが用いられていますが、機械的物性に優れたキサントゲン変性タイプ、混練時に大きな粘度低下を起こすことができる硫黄変性タイプといったクロロプレンゴムも用途に応じて使い分けられています。

クロロプレンゴムの使用用途

クロロプレンゴムは合成ゴムの一種で耐オゾン性、耐油性、耐熱性などに優れたゴムです。物性も含めた様々な観点でバランスの取れたゴムとも言え、数多くの業界で用いられています。

クロロプレンゴムの用途としては例えば自動車のベルトやホース、ワイヤーやケーブル、Oリングなどが挙げられます。また有機溶剤に溶解させて接着剤として用いることもあります。クロロプレンゴムを用いた接着剤はゴムや金属、硬質プラスチックなど幅広い材料に用いることが可能です。

クロロプレンゴムの構造

クロロプレンゴムの構造

図1. クロロプレンゴムの構造

クロロプレンゴムは主鎖に二重結合を有すること、二重結合を有する炭素に直接塩素が結合している構造であることが特徴の一つです。主鎖に塩素が含まれているため、他の汎用ゴムよりも耐油、耐薬品、耐熱性に優れています。

クロロプレンゴムの原料としてはアセチレンもしくはブタジエンが用いられます。アセチレンを二量化した後に塩酸を付加する、またはブタジエンを塩素と反応させた後に水酸化ナトリウムによって脱塩酸反応を起こすことでクロロプレンモノマーを得ることができます。ちなみにこれら2つの方法のうちアセチレン法は副反応によって爆発性の高い化合物も生成するため、一般的にはブタジエン法が採用されています。

このクロロプレンモノマーを重合させることでクロロプレンゴムを製造します。なお一般的に重合法としてラジカル乳化重合が採用されています。

クロロプレンゴムの物性

クロロプレンゴムには主鎖中の一部の化学構造を変性させることで物性を変化させたものも販売されています。一般的に用いられるのはメルカプタン変性タイプで様々な物性がバランスよく優れたゴムです。その他、分子鎖の末端で反応が起きやすいキサントゲン変性タイプでは分子鎖同士が反応することで高分子量化、網目構造化した機械的物性、防振特性に優れたゴムが得られます。また主鎖の中に比較的弱い結合である硫黄結合を含み、混練時に切断、低粘度化させることができる硫黄変性タイプというクロロプレンゴムも販売されています。

なおクロロプレンゴムは製造プロセス、反応性の観点から他のモノマーとの共重合品を得るのは容易ではありません。そのため、他の合成ゴムと比較すると新たな特性を有するクロロプレンゴム共重合品の種類、数は限られています。しかし、その中でも例えばメタクリル酸と共重合させたゴム、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンと共重合させたゴムが存在し、前者は加硫特性や接着性などに、後者は低温特性に特徴を有するものとして用いられています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/78/2/78_2_81/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/58/3/58_3_167/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/89/11/89_330/_pdf/-char/ja

コンベックス

コンベックスとは

コンベックス

コンベックスとは、長さや距離を測定する巻き尺の1つで、目盛のテープが薄い金属でできたものです。

コンベックス (英: Convex) は、凸であることを意味する英語が由来で、正式には「コンベックスルール」と言います。英語圏では「Steel Tape (金属テープ) 」や「Tape Rule (テープ状ものさし) 」と呼ばれています。

プロから家庭でのDIYと使用頻度が高く、作業にはかかせないアイテムです。

コンベックスの使用用途

コンベックスは主に建築現場において木工や左官工事をするために用いられる他、工場での工作やオフィスでも使用されます。特に建築現場では重宝されるため、目盛がメートル単位のみならず、尺貫法 (寸) で書かれているコンベックスも存在します。

メジャーと混在されがちですが、メジャーは布やビニール製で柔らかく、主に身体測定や被服の寸法取りに使われているため、使用用途が異なります。

コンベックスの特徴

コンベックスは、測定しやすいようにさまざまな工夫が施されています。「ゼロ基点補正」という機能は、テープ先端の爪が移動する仕組みです。引っかけたり押し当てたりして爪の厚みを補正し、正確な長さを測定することができます。

また、内部に組まれているぜんまいばねの機構で伸ばした状態のテープを素早く巻き取ることが可能で、作業効率の向上につながります。

コンベックスの選び方

コンベックスは各メーカーから、色々な商品が販売されています。デザインはもちろん、長さや材質に違いがあるため、作業目的にあった商品を選ぶことが重要です。

1. 長さ

コンベックスの長さは、1mと短いモデルから10mと長いモデルまであります。家庭などで一般的な用途で用いる場合には、3.5m〜5m程度のモデル、建築現場などで使用するのであれば、テープの長さが5〜10m程度のモデルがおすすめです。

測れるテープが長いほど、サイズが大きくなり価格も高い傾向にあります。購入する際は、どの程度テープの長さが必要なのか、事前に確認しておくことが大切です。

2. テープの幅

テープの幅は6mm〜27mm程度まであり、様々なタイプから選ぶことができます。幅が広いものほどテープの湾曲が大きくなり折れにくく、幅が狭いものは折れやすくなります。

テープの幅が広ければ作業性は高くなりますが、その分サイズが大きくなり重くなるため、用途にあったタイプを選ぶようにします。

3. 目盛

コンベックスの目盛表記には「メートル目盛り」の他に、建築現場で使われる「尺相当目盛」が付いたものがあります。また、裏面にも目盛があるタイプは天井や壁面、柱などのマーキングに便利です。

通常、家庭での作業などでは「尺相当目盛」を使用することはあまりないため、「メートル目盛り」のみのタイプを選べば問題ありません。

4. テープの材質

ステンレス製
耐久性に優れ錆びにくいのが大きな特徴です。雨の日や、水回りなどで使用することが多い場合は、ステンレス製がおすすめです。

スチール製
一般的に使用されている材質で、多くのタイプに採用されています。強度が強く安価ですが、ステンレス製と比べ錆びやすい欠点があります。

5. コーティング剤の種類

アクリル樹脂コート・エポキシ樹脂コート
アクリル樹脂やエポキシ樹脂を施した、一般的なコーティングです。耐摩耗性に優れすり切れなどを防止します。

ポリエステルコート
ポリエステル樹脂を使って塗装を施したものです。耐摩耗性に加え、耐薬品性・耐水性にも優れているため、さまざまな環境で使用することができます。

ナイロンコート
薄いナイロンの被膜を表面に作り、目盛の耐久性を高めたコーティングです。砂やほこりの発生する、過酷な環境でも、問題なく使用することができます。

デュラコート
特殊樹脂コートを施した、サビや折れに強いコーティングです。ナイロンコートよりも耐摩耗性に優れ、テープを引き出して採寸することが多い場合に適しています。

シリカコート
シリカを配合したコーティング剤を施したものです。反射防止効果があり、目盛りの視認性を高めてくれます

6. ロック機能

ロック機能とは、テープの出し入れと固定をボタンやレバーでコントロールできる機能です。長い距離を1人で測定する際に役立ちます。

ボタンなどを押すことでロックするタイプや、テープを引き出せば自動でロックになるオートロックタイプ、強力なロックが可能なWロックタイプがあります。

コンベックスのその他情報

コンベックスの規格

コンベックスにはJIS規格 (JIS B 7512) が定められています。JIS1級を取得した製品の目盛の精度は、許容差が± (0.2+0.1 mmと定められています。

例えば、2メートルであれば、0.2 + 0.2 = ±0.4mm (爪を含む場合は更に±0.2mm加算) となります。精度を求められる作業で使用する場合は、JIS1規格取得品が望ましいです。

サクションホース

サクションホースとは

サクションホース

サクションホースとは、水や空気など何かを吸い込むために使用するホースのことです。

サクション (Suction) は、日本語で「吸引」を意味します。液体がホースの内部を流れる場合は、ホースの内側には液体による圧力がかかります。この時、圧力が大きい場合には、通常のホースではその圧力に耐えられずホースが折れ曲がってしまい、経路がふさがって液体が通らなくなります。

そのため、サクションホースは、ホース自体に柔らかい樹脂を使用していても強度をもたせるために、さらに硬質な樹脂をらせん状に埋め込んだような構造を有しているのが特徴です。このらせん状の硬質樹脂の埋め込み構造により、サクションホースは高い耐圧性や可撓性を持ち合わせています。

サクションホースの使用用途

サクションホースは、液体や気体、泥水などを吸引輸送し、吐き出す際に使用されています。使用用途の分野は非常に幅広いです。

建設や土木現場、農業用途、食品加工工場向け、衛生車両などに使用される場合が多く、使用される場面よってサクションホースを使い分けています。例えば、貯水タンクからの放水に使用する場合、高い位置からの放水になるため、用いられるのは軽量タイプのサクションホースです。

また、土木現場で泥水を吸い出す際に使用する場合は、砂を含んだ重たい液体を吸い上げるため、より耐圧性の高い頑丈なサクションホースを選定する必要があります。

サクションホースの原理

サクションホースは、軽量で持ち運びにも優れながらも高い耐圧特性を確保するために、金属や硬質樹脂がらせん状に埋め込まれています。サクションホースの構造には、「サクション」と呼ばれる吸い込み側と「デリバリー」と呼ばれる吐き出し側をつなぐ側の2つがあります。

通常のホースは、塩化ビニル素材を筒状にしただけの「単層」ホースですが、サクションホースでは塩化ビニルの他に合成樹脂や金属を補強材として埋め込むのが特徴です。そのため、「複層」ホースとも呼ばれています。

基本的には耐圧性が高くなればなるほどホース自体も重くなります。サクションホースは人が動かす場面も多く、できるだけ軽量かつデリバリー側から受ける圧力にもしっかりと耐えられるホースを選定することがポイントです。

サクションホースのその他情報

1. サニーホースとサクションホースの違い

サニーホース (フラットホース)
サニーホース (フラットホース) とは、化学繊維と軟質塩化ビニルを材質とする構造であり、通常のビニールシートのように平たく折った状態で円状に巻いて格納するタイプのホースです。軽量でコンパクトに格納できますので持ち運びには非常に優れますが、耐圧が限られます。

サクションホース
サクションホースの場合は、高耐圧タイプだと1MPを許容する製品もありますが、サニーホースにはそのレベルの耐圧の製品は基本的にないです。しかしながら、サクションホースは緩やかにしか構造上曲げることができないのに対して、サニーホースは形状の自由度が高く、取り回しの利便性は非常に高いです。

そのため、両者のホースは取り扱う液体の耐圧に応じて使い分けることをおすすめします。

2. サクションホースの材質と構造事例

サクションホースの材質は、メーカーによって、樹脂や金属、ゴム製などさまざまな材質が使われていますが、PVC (塩化ビニル) や硬質樹脂が一般的です。また、使用用途に合わせて、多種多様なサクションホースが存在します。

例をあげると、あえて透明な材質を用い内部の流体の状況を確認可能にしたタイプや、熱風を扱う作業現場用に耐熱性を向上させた仕様のもの、食品工場向けの耐油耐熱仕様品、静電気対策の特殊樹脂を配合し帯電防止特性に優れたタイプなどがあります。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0500.html

ジェットヒーター

ジェットヒーターとは

ジェットヒーター

ジェットヒーターとは、倉庫や工場などの広い空間を暖めるために使用する業務用の大型暖房器具です。

燃料に灯油を用いて燃焼して暖めた空気を大型のファンで送風し、広い空間を効率的に暖めます。

遠くまで暖かい空気を届けますが、ヒーターの近くは100°Cを超える高温のため、近づきすぎると火傷の恐れがあり注意が必要です。近くにガソリンなどの危険物を置くと爆発するため、危険物や可燃物を周辺に置くのは厳禁です。

ジェットヒーターの使用用途

ジェットヒーターは広い空間を暖めるため、学校の体育館、物流の倉庫、工場、イベント会場などの場所で使用されています。

バーナーの熱を直接ファンで送風する直火式は乾燥させる効果が高いため、建築現場で塗料の乾燥やコンクリートの養生などの目的でも使用可能です。

野菜や果物を栽培するためのビニールハウス内を暖めたり、食品の乾燥などにも使われ、幅広い分野で活躍する暖房器具です。

ジェットヒーターの原理

ジェットヒーターには大きく分けて3種類あります。

1. 赤外線型

別名「ブライトヒーター」といい、離れた場所でも体を暖めるスポット暖房です。使用感は家庭用ストーブと似ており、静音性が高く主に体育館での学校行事やイベント会場で使用されます。

2. 熱風式直火型

バーナーによって発生した熱風をファンで送風して暖める方式です。空間を暖めて乾燥させる力が強いため、工事現場や建築現場では塗料の乾燥やコンクリートの凍結防止、養生などの用途で威力を発揮します。

3. 熱風式間接型

バーナーの熱を一旦熱交換器を介してクリーンな温風と燃焼ガスに分け、クリーンな温風だけを届けます。燃焼ガスは煙突から外に放出され、室内をクリーンに保てます。食品の乾燥やビニールハウスの加温、仮設テントなどで使用可能です。

ジェットヒーターの種類

ジェットヒーターにはダクト型やブライト型があります。

1. ダクト型

食品や塗料の乾燥、コンクリートの養生、凍結部の解凍などに適しています。ダクト型には熱風式直火型と熱風式間接型の2種類があり、目的に応じてヒーターを選択可能です。

熱風式直火型は高出力なため、工事現場で塗料の乾燥やコンクリートの養生などで活躍します。素早く強い熱で乾燥できます。

それに対して熱風式間接型は間接的に温めるため、ビニールハウス内の暖房や食品の乾燥で利用可能です。出力よりクリーンな環境を重視する場合に向いています。

2. ブライト型

赤外線によって周辺を暖め、屋内外関係なく広い空間を暖める場合に役立ちます。イベント会場や体育館での集会で暖房として使用可能です。空間全体に作用して離れた位置でも暖かく、複数設置すると大きい空間でも暖を取れます。

ジェットヒーターの選び方

ジェットヒーターには種類が数多くあり、用途に合わせて選択可能です。

1. サイズ

使用する場所の面積を考慮し、ジェットヒーターの暖房能力とサイズの確認が重要です。

2. 燃費

灯油を燃焼に用いるため、ジェットヒーターの燃費は重要です。購入前に表示されている燃料消費量 (L/h) を確認する必要があります。

3. 静音性

卒業式などの集会やイベント会場で用いる場合は運転音が小さい静音モデルが向いています。一般的にブライト型の方がダクト型よりも運転音を抑えられます。デシベル (dB) 値で運転音は表現され、会話は約60dBです。静かな場所で使う場合には運転音が小さい60dB以下が適しています。

4. 出力調整

熱出力を調整できると寒すぎや暑すぎを防げます。燃料を節約してランニングコストを削減できます。

5. 安全機能

ジェットヒーターは高温で動作するため、安全機能は重要です。学校の教室や体育館で用いる際には床が熱で黒くなるのを防ぐミラーシートや子どもが接触しないための安全柵を有するタイプが適しています。人の接触や地震でヒーターが転倒したときに火事になるのを防止する自動消火機能も必要です。衝撃を受けると運転が停止し、緊急時に火傷や火事のリスクを減らせます。

参考文献
https://www.orionkikai.co.jp/product/heater/
https://www.labinox.co.jp/item_orion_023.html
https://www.orionkikai.co.jp/product/heater/jet/hs/

シャーリングマシン

シャーリングマシンとは

シャーリングマシン

シャーリングマシンとは、せん断加工により金属板を直線状に切断するための機械です。

せん断機とも呼ばれます。「シャー」とはせん断を意味する英語で、「シャーリング」はせん断することです。シャーリングマシンには、上刃と下刃が取り付けられています。

切断する金属板に対して上下方向から、機械的に圧力を加えることで切断します。シャーリングマシンの動力源には、メカ式と油圧式がありますが、コストやメンテナンスの負担などを考慮して選択するとよいです。

また、近年はターレットパンチプレス加工やレーザー加工が多く行われており、シャーリングマシンの需要は少なくなっています。

シャーリングマシンの使用用途

シャーリングマシンは板金加工を行う工場などで、板金の裁断を目的として使用されます。機種によって異なりますが、シャーリングマシンの中には、数メートル程度の金属板であっても切断可能です。ただし、刃物の長さの限界から、切断長さは6メートル程度までです。

このサイズに収まる金属板で、ステンレスや鋼板といった素材の板材を切断したい場合には、シャーリングマシンを使用することができます。また、シャーリングマシンでは対応できない、長い金属板を切断する場合には、レーザー加工機などを使うのが一般的です。

シャーリングマシンの原理

シャーリングマシンは、私たちが日常使うハサミで紙を切る原理と同じです。切断したい金属板をシャーリングマシンの刃が当たる位置に位置決めしたあ後に、上刃が降下して切断します。

シャーリングマシンは刃の駆動方式に応じて、メカ式と油圧式とに分類されます。

1. メカ式

メカ式の場合、モーターとクラッチで刃を駆動するもので、切断スピードが速いという特徴があります。後述する油圧式と比べて安価であり、油を使用しない分、メンテナンスも比較的単純です。

2. 油圧式

油圧式の場合、シリンダ中に発生する油圧を利用して、強力に刃を駆動するため、高い切断能力を発揮します。メカ式では困難な比較的厚みのある金属板であっても、切断することができます。一方で、油漏れなどのトラブルには注意が必要です。

シャーリングマシンのその他情報

シャーリングマシンを使う上でのポイント

シャーリングマシンを使って高品質な製品を製造する、安全に作業を行うためには、いくつかのポイントがあります。具体的な使用用途

1. クリアランスを調整する
シャーリングマシンでのクリアランスとは、上刃と下刃との間隔のことです。私たちが日常使うハサミでも、2つの刃の間の隙間が大きくなってしまったハサミでは、紙を上手く切ることができません。

同じ理由でシャーリングマシンにおいても、上刃と下刃とのクリアランスが重要であり、クリアランスの大きさによって、切断面の品質に違いが生まれます。クリアランスが狭すぎる場合には、刃にかかる負担が大きく刃が摩耗しやすくなるので、刃物の寿命が短くなります。

逆にクリアランスが大きいと、切断面にダレやバリが発生するため注意が必要です。適切なクリアランスは、切断する材質と板厚によって決まりますが、一般的に適切なクリアランスは、概ね板厚に対して6~10%程度です。

2. シャー角を調整する
シャー角とは、上刃と下刃との開き角度のことであり、ちょうどハサミを開いた時の2枚の刃の角度と同じものです。シャー角が大きい、ハサミで言うと切り始めで大きく開いた状態では、小さな力でも切断できます。

しかし、シャー角が大きすぎた場合には切断した材料に、ボウというたわみや、ツイストというねじれ、キャンバーという反りが発生しやすくなります。

3. 最大板厚を以上の材料を切断しない
シャーリングマシンには、切断できる最大板厚が決められています。最大板厚を超える板材を切断することは、シャーリングマシンに大きな負荷を与え、最悪の場合には故障になるかもしれません。

シャーリングマシンを扱う際は、最大板厚を確認し、能力以上の板厚の材料は切断しないように注意が必要です。

参考文献
https://www.amada.co.jp/columns/course/basis04/

シュリンク包装機

シュリンク包装機とは

シュリンク包装機

シュリンク包装機とは、透明なフィルムで各種商品を密閉包装する機械です。

シュリンク包装により商品全体を覆い、商品を保護して異物混入を防ぎます。複数の商品を集積化したい場合にも利点があり、商品をまとめてシュリンク包装すると商品がバラバラになるのを防げます。シールやラベルなどもフィルム上に貼り付けやすいです。 

シュリンク包装機は容器の一部または全体を覆うタイプに分類されます。容器の一部を覆うタイプには、ラベル、キャップ、Rシールなどのシュリンクがあります。容器全体を覆うタイプはL型シュリンクやピローシュリンクなどです。

シュリンク包装機の使用用途

シュリンク包装機は密閉包装を必要とする食品、化粧品、医薬品などの幅広い製造分野で使用可能です。具体的には出荷時に商品の保護が必要な肉類、野菜、パン、書籍、CD、DVDなどが挙げられます。

ラベルなどを添付すると商品のデザイン性が高くなり、商品を傷や汚れなどから保護する必要性がある場合にシュリンク包装機は役立ちます。

複数の商品を集積でき、例えばPETボトルをまとめてシュリンク包装して出荷可能です。

シュリンク包装機の原理

シュリンク包装機では「シュリンクトンネル」を通過時にパッケージされた商品が加熱されます。シュリンクトンネルはフィルムに熱を加えるために通過させる加熱炉です。シュリンクトンネルには蒸気式と熱風式があります。

蒸気式は熱伝導率が高く、パッケージの仕上がりが良いです。ただし収縮後に水滴が付着する可能性があり、処理が必要です。それに対して熱風式では従来手法に熱旋風式 (トルネードシュリンク) の改良が加わり、多方面から熱風を吹き付けるようになりました。そのため蒸気式と同様にシュリンクの仕上がり精度が向上しています。

上述した機械的な方法を用いず、少量の商品や微修正を加える場合にはヒートガンなども使用可能です。シュリンク包装を行う際には加熱により収縮するフィルム (シュリンクフィルム) を用います。ポリエステルなどを主な素材としており、高い熱収縮性を示します。

シュリンク包装機の種類

シュリンク包装機はドライヤー式とトンネル式に分けられます。

1. ドライヤー式

ドライヤー式のシュリンク方法は熱風式です。商品の入ったシュリンクフィルムに熱風を当てて縮めます。

ドライヤー式ではまずシュリンクに包んだ商品をシュリンクフィルムに入れ、余分な箇所を切り落とします。シーラー機による溶接や裁断の後にフィルムの中央に商品を置き、工業用ドライヤーで熱風を当ててフィルムを収縮可能です。

2. トンネル式

トンネル式はシュリンクフィルムで包んだ商品を熱風が吹くトンネル内を通過させて収縮させる方法です。熱が均一に当たるため、ドライヤー式よりも綺麗にシュリンクできます。

シュリンクの方法は蒸気式、熱風式、熱旋風式に分類可能です。蒸気式は蒸気熱で収縮させ、熱風式は熱風で収縮可能です。熱旋風式は旋回させながら熱風を当てる方式で、近年広がっています。

トンネル式ではドライヤー式と同様に、まずシュリンクフィルムにシュリンク包装する商品を入れ、余分な箇所を切り落とします。シーラー機による溶接や裁断の後に、トンネル内に商品を通過させるとフィルムを収縮可能です。

シュリンク包装機の選び方

シュリンク包装機には種類によってメリットとデメリットがあり、用途に合わせて選択可能です。

1. ドライヤー式

トンネル式と比較して導入コストが低いため、手軽に始められて少量生産に適しています。省スペースでも利用でき、トンネルに入らない複雑な形状の商品に使用可能です。

ただしシュリンクに少し手間が掛かります。風量が調整できない機械も多く、手で持って熱を当てるため、シュリンクにムラが出やすいです。

2. トンネル式

ドライヤー式よりもシュリンクのムラが少なく、大量生産に適しています。細かい熱量調整も可能です。

しかしトンネル内に入るサイズの商品しか使用できません。導入コストも高く、大型機械のためのスペースが必要です。

参考文献
https://www.sunplastic.jp/?cn=100016
https://seikosan.com/products/shrink/
https://pack.solution.co.jp/shrink/index.html

シリコーンシーラント

シリコーンシーラントとは

シリコンシーラント

シリコーンシーラントとは、主成分にシリコーン樹脂を使用したシーリング材の種類です。

建物や工作機械、自動車などの防水性と気密性を保つため、つなぎ目や隙間に充填するものをシーラントと言いますが、シーリングやコーキングとも呼ばれています。シーラントは、液体の状態で出てきますが、施工後は固まってゴムのような性質を持つようになります。

シリコーンシーラントは、他のシーリング材に比べて価格が比較的安価で、ホームセンターにもよく取り扱っているベーシックなシーリング材です。そのうえ、耐久性や密着性にも優れてます。

シリコーンシーラントの使用用途

シリコーンシーラントは、その特性から広範な用途で使用されます。主な使用例としては、建築や自動車の製造、家庭でのDIYなどです。例えば、建築では窓枠や浴室の目地 (壁と壁、壁と床の接合部) などに使われ、水や風の侵入を防ぎます。家庭でのDIYでは、水周りの補修や雨漏り防止などに活用されます。

主に建築物の防水性、気密性を保つために使われますが、瓦屋根の補修や配線、部材の末端処理にも用いられます。シリコーンシーラントは、耐候性と耐熱性に加え、耐寒性にも優れているので、ガラスや廻りやサッシ、浴槽からキッチン廻りなどの水場で使用されることが多いです。

また、接着剤としても使用可能で、長尺屋根の突合せ時にシリコーンシーラントを用いて屋根を接着する工法もあり、建築現場で重宝されています。

シリコーンシーラントの原理

シリコーンシーラントは、容器から液状で出てきますが、施工された後、硬化してゴムのような弾性を発現し、隙間などをシーリングします。シリコーンシーラントの成分は、シリコーン樹脂、充填剤の他に、架橋剤、触媒などです。

この中の架橋剤が空気中の湿気と反応すると、シリコーン樹脂を架橋する成分に変化します。この架橋剤によりシリコーン樹脂の高分子量化が進むことにより、シーラントが硬化します。

湿気硬化型のシリコーンシーラントの硬化機構としては数種類あり、架橋剤が空気中の水と反応して発生する副生物の種類から、脱オキシム型、脱アルコール型、脱酢酸型などがあります。副生物の中にはシーラントの被着物によっては悪影響を与えるものがあるため、硬化機構を把握した上で、シーラントを選択することが重要です。

シーラントの選び方

シーラントは組成面で、シリコーン、変性シリコーン以外にも、アクリル系、ウレタン系、ブチルゴム系など様々なものがあります。また、施工方法も一液湿気硬化型以外に、主剤と硬化剤を混合して使用する2液型など多種多様です。

それぞれの特徴を理解して、最適なシーラントを選択することが重要となります。選定時は、以下のポイントを考慮すると良いです。

1. 耐久性

一度塗布すれば長期間その効果を発揮し続けることが望ましいです。商品のパッケージには使用年数が記載されていることが多いです。

2. 伸縮性

家の素材が木材の場合は特に、温度変化で伸縮することがあるので、シーラントもそれに合わせて伸縮性に追随できるものが必要です。

3. 色

用途によっては、目立たない色を選ぶことが必要です。浴室やキッチンなど、目につく場所で使用する場合は、周囲の色と合う色にすると良いです。

シリコーンシーラントのその他情報

1. シリコーンシーラントのメリット・デメリット

メリット
シリコーンシーラントのメリットとして、耐熱耐寒性、コストパフォーマンスに優れている点が挙げられます。また、他のシーリング材と比べて乾燥時間が短く、充填してから24時間後には完全硬化する上、密着性にも優れていて下塗り塗料なしでも施工ができるので、スピーディに施工ができます。

デメリット
シリコーンシーラントは、上からは塗装ができません。シリコーンオイルが表面にブリードアウトしてしまうため、塗料を剥がしてしまいます。また、シリコーンオイルが周辺の汚れを吸着して外観を悪くする現象も起こることもデメリットの1つです。

塗装ができないため、基本的には外壁に使用できず、シリコーンシーラントは主に内装の水廻りに使用します。

2. 変性シリコーンシーラント

シリコーンシーラントと似た名前の製品で、変性シリコーンシーラントがあります。名前は似ていますが、成分としては、シリコーンシーラントとは大きく異なり、施工した上から塗装ができます。

また、シリコーンシーラントと比較すると耐久性が劣ります。同じような名前ですが、性能が全く異なるので、シーラント購入の際は、誤って購入しないように注意が必要です。

参考文献
https://www.sharpchem.co.jp/
https://gaiheki-com.com/cms/useful/post-1486/

スプレーノズル

スプレーノズルとは

スプレーノズル

スプレーノズルとは、一方向にため込んだ液体や気体に対し、流れる方向を定めて一気に噴出させるための装置のことです。

液体を噴出させるだけでなく、気体を噴出させるためにも使用することが可能で、これをエアノズルと呼びます。一方、液体用のスプレーノズルには1流体ノズルと2流体ノズルの2種類があります。

1流体ノズルとは、液体にかかる圧のみで液体を噴出させるスプレーノズルのことです。2流体ノズルとは、液体と圧縮空気を混合させることで液体を粉砕し、噴出させるスプレーノズルのことを指します。

スプレーノズルの使用用途

スプレーノズルは、液体や気体を欲しいスプレーパターンに応じて噴出させるすべての装置を指すため、産業用、工業用、家庭用問わず様々な用途で使用されています。最も身近なスプレーノズルを使用した製品でいえば、「霧吹き」です。

その他にも液体を微粒子にして拡散することで加湿したり、液体を満遍なく塗布したりと機能も多くあります。また、気体用のスプレーノズルでいえば、エアーを欲しい圧力でかけられるので細菌や目に見えないゴミをエアーシャワーで吹き飛ばしたり、切削した際のクズを吹き飛ばしたり冷却したりする用途があります。

スプレーノズルの原理

1流体ノズルと2流体ノズルの比較

図2. 1流体ノズルと2流体ノズルの比較

1. 1流体ノズル

1流体ノズルは、液体に圧力をかけることで噴出口まで液体を持ち上げるため、スプレーノズルの先端パターンを変更することで様々な噴出軌道を作り出せます。2流体ノズルよりも噴射角度も広くとることが可能です。コンプレッサなども不要で、液体供給設備さえあれば手軽に使えることも大きなメリットです。

そのため、使用シーンに合わせて噴出軌道を変更したい場合は1流体ノズルがおすすめですが、スプレーとして機能させるためには高圧になってしまい、微量での塗布ができないというデメリットも存在します。

2. 2流体ノズル

2流体ノズルは、圧力だけでなく気流の力を使用して液体を噴出させるため、1流体よりも低圧で液体の微粒化することができます。さらに、液体の噴射流量を広くとることが可能です。

そのため、低圧で液体を噴出させたい場合や噴出口から出す微粒子をより細かくしたい場合は、2流体ノズルの方が向いています。しかし、液体のポンプとは別に圧縮空気も必要となるため、コンプレッサなどの設備も用意しなければなりません。

また、ノズルも複雑な構造をとるためコストが高くなることがデメリットです。

スプレーノズルの選び方

スプレーノズルを選定する際は、以下のポイントを確認することが大切です。

1. 設備の確認

まずは、スプレーノズルを選定する前に、設備の仕様を確認します。液体を送液するポンプの性能や配管径・長さ、圧縮空気の圧力などにより、スプレーノズルに供給できる圧力や流量が決まるためです。

また、スプレーノズルを取りつけるスペースがあるかなど取り合いの確認も必要です。そのほか、対象物に塗布するためにどれくらい離すことができるのかなども確認します。

2. 環境の確認

次に、使用環境の確認を行います。周囲の温度や使用する液体の粘度・表面張力、内部の圧力などにより強度、耐熱性、摩耗しないような材質にするなどの工夫が必要です。

また、液体に固形分などが含まれる場合や温度が高い場合は、スプレーノズルの詰まりが発生する恐れがあります。固形分のサイズを把握しておくと、スプレーノズル内部の最小通路径を考慮した選定が可能になることもあります。

3. スプレーノズルの仕様の決定

スプレーノズルパターン

図2. スプレーノズルのパターン形状

目的を達成するためには、どういうパターンの塗布にする必要があるのか、流量はどれくらいか、どれくらいの範囲に吐出する必要があるのか、塗布量のばらつきの許容程度などを確認します。

スプレーパターンの形状にはフラット、フルコーン、ホロコーン、ストレート、カーテンなどがあります。スプレーノズルのカタログを参照し、スプレーパターンに合ったノズルの選定が必要です。

スプレーノズルのその他情報

スプレーノズル塗布性質

スプレーノズルの塗布性質変化

図3. スプレーノズルの塗布性質変化

スプレーノズルの種類決定後、所定の圧力下での流量及び角度を確認します。それぞれのパターンによって圧力を変えたときに、噴射角度の変化などに違いがあるため、注意が必要です。

一般的に、噴射圧力を高くすると噴射角度は広くなります。ただし、フルコーンノズルなど中子が入っているものは、ある圧力までは角度が広がり、それ以上の圧力になると角度が狭くなる場合もあります。

参考文献
https://www.kirinoikeuchi.co.jp/products/spray/01/