ブレードフレキ

ブレードフレキとは

ブレードフレキ (英: flexibletube covered with blade) とは、ステンレスなどの帯板や線材を外側に編み込んだ可とう管です。

ブレードフレキは、自在に折り曲げることができる柔軟性を持ちながら、ステンレスで周りを保護するため強度に優れています。ブレードフレキの特徴は、外的環境に強く振動を吸収し、熱や地盤沈下などに対応できることです。

ブレードフレキの使用用途

ブレードフレキは、気体や液体の配管に使用されます。気体の種類 (空気、ガス、蒸気) 、液体の種類 (化学薬品、水、油) 、圧力、雰囲気などに問わず対応可能です。

両端が変位できるため、油圧機器や空気圧機器の可動部の配管に使用されます。また、建物をつなぐ配管や免震機器などに使用され、地盤沈下や地震による地盤移動に耐えることができます振動があるポンプやコンプレッサ及びエンジンの排気管などの接続配管にも、ブレードフレキが使われます。

振動が配管に伝わることを減らして、配管の損傷防止が可能です。フレキシブルチューブの柔軟性を生かして、複雑な形状の配管に使用できます。配管の部品を減らし、工数の低減効果があります。

さらに、医療部材にも有用です。カテーテル用チューブは 、チューブにPTFEのライナー、ブレードにSS304・PEEKなどを使用し、さらに柔軟なチューブで覆った安全性の高いものです。

ブレードフレキの構造

ブレードフレキは、チューブ、外側のブレード、及び両端の管継手で構成されます。チューブは蛇腹加工されたSUS304などのステンレス、架橋ポリエチレン管、シリコンゴム、及びPTFEなどが使われます。また、ブレードは、SUS304などのステンレス、PEEKなどの線材・帯材が使用されます。

柔軟性に優れているフレキシブルチューブをステンレスで保護することで、強度を向上させ、耐圧を上げることが可能です。機械などから発生する振動は、ブレードフレキが吸収します。配管設備にダイレクトに振動が伝わらないため、配管に損傷を与えません。

また、地盤沈下や地震などが起こり、地盤が崩れたり揺れたりした際にも、ブレードフレキは地盤の動きに合わせて自在に曲がるため、配管の破損や損傷を防げます。

ブレードフレキの特徴

ブレードフレキの特徴は、強度・耐圧性能、耐熱性の向上、柔軟性、大きな変位に対応可能、機器の振動の伝達防止などに効果があることです。

1. 高性能

フレキシブルチューブの外面をブレードで覆うことで、柔軟性を保ちながら、強度・耐圧性能を上げています。適用できる流体は、空気・各種ガス・蒸気などの気体、水・油・溶剤・薬品・血液・調味料などの液体、各種粉体などに対応可能です。

また、低温から高温まで広範囲に使用できます。数百度で使用可能なものもあります。

2. 大変位に対応可能

ブレードフレキは、大変位に対応できます。可動部がある油圧・空気圧機器、ロボット、自動車のホイールブレーキなどです。また、免震設備や地中配管など地震時の地盤の動きによる損傷を抑えます。

3. 振動対策

ポンプ・コンプレッサ・排気管などの接続管にブレードフレキが使われます。機器からの振動伝達を抑えます。

ブレードフレキのその他情報

ブレードの種類

ブレードがステンレスの場合、主に3種類が使用されています。

1. 線ブレード
線ブレードはブレードの素材に、ステンレスの線材を使用し、数本の線材を平行に束ねてチューブ外面に編み込んだものです。柔軟性に優れ、繰り返し頻度が高い変位を吸収できます。丸線ブレードやワイヤーブレードとも呼ばれます。

2. 帯ブレード
帯ブレードは、ステンレスの板を帯板に切断した材料を使用して、竹かご状に手作業でチューブ外面に編み組んだものです。線ブレードと比較して内圧に対する強度は優れますが、柔軟性が劣るため繰返し頻度の低い変位を吸収するのに適しています。平線ブレード、リボンブレードとも呼ばれます。

3. 綾織ブレード
綾織ブレードは、線ブレードに用いる線材を平板状に編み組みし、これをチューブの外面に編み込んだものです。高強度で柔軟性に優れています。長尺にも対応できますが、最もコストがかかるブレードです。

参考文献
https://kudohkenzai.shop-pro.jp/?pid=32254092
https://www.technoflex.co.jp/about/products/flex/feature.html
https://www.technoflex.co.jp/about/products/flex/index.html
https://www.monotaro.com/g/00439553/
https://www.ork.co.jp/faq/braid/

ブリスターパック

ブリスターパックとは

ブリスターパックとは、医薬品や化粧品、食品などの小売製品の包装に使用される包装材料の1種です。

一般的には、透明なプラスチックフィルムで製品の形に沿って成形された容器に製品を入れます。その上に紙や不透明なシートで蓋をしたり、透明なプラスチックフィルムで被せたりすることで、製品を保護します。

なお、ブリスターとは、英語で水ぶくれという意味です。

ブリスターパックの使用用途

形状を自由に成型できるので、日用品やおもちゃ、医薬品など、さまざまな用途に幅広く使用されています。特に以下の用途に使用する場合が多いです。

1. 薬剤の包装

ブリスターパックは、薬剤の包装によく使用されます。薬剤を密閉し、外気や湿気から薬剤を保護することができます。また、薬剤の正確な用量を提供するために、一般的に個別に包装されます。

2. 食品の包装

ブリスターパックは、食品の包装にも使用されます。フルーツや野菜、肉類など、保管や輸送中に傷つきやすい食品を保護するために使用されます。また、個別に包装された食品は、鮮度を保ち、腐敗を防ぐことが可能です。

3. コスメティックの包装

一般的に、小型のコスメティック製品、特にリップスティックやアイシャドウパレットなどは、ブリスターパックで包装されます。製品を外部の影響から保護するだけでなく、消費者が製品を開けずに見れるためです。

4. 電子部品の包装

小型の電子部品、特にマイクロチップやLEDなどは、ブリスターパックで包装されます。これは、製品が静電気など外部の影響から保護され、消費者が製品を見ることができる透明な包装になるためです。

ブリスターパックの原理

ブリスターパックはプラスチックの熱可変性の特徴を生かし、熱したプラスチックシートを金型によって成型する真空成型という方法で形作られます。

真空成型では、商品の形状に合わせた金型を用意し、薄い板状にしたプラスチックを加熱します。ブリスターパックに用いられるプラスチックは、主にポリエチレンテレフタレート (PET) やポリスチレン (PS) です。

プラスチックが十分に変形する温度に達したら、金型に付着させます。付着した内部を更に減圧して真空状態にすることで、プラスチックを金型に密着させ成型します。冷却してプラスチックを十分に固めた後、金型から取り外し余分なプラスチック部分を除きます。

ブリスターパックには、台紙に直接圧着させたり、嵌めあわせたり、スライドさせたりなど方式はさまざまです。方式に合わせて熱圧着や折り曲げなどの加工を加えると、完成します。

ブリスターパックの特徴

ブリスターパックの大きな特徴は、透明なプラスチック製の包装で中身を容易に確認できることです。そのため、中身をアピールしたい小売商品の包装に適しています。

もちろん包装することにより、中に入っている物を汚れや劣化から守れる点も大きな長所です。対象物の大きさや形状に合わせて成型できるため、さまざまな物に対応可能です。

製品に合わせた形状は製品が包装材料の内部で動くことを防ぐため、製品を固定し、損傷を防ぐ効果もあります。その他、ブリスターパックは、箱詰めや瓶詰めなどに対し、比較的低コストで大量生産することができます製品が小売店の棚に並べられる際にも、コンパクトでスペースを取らず、収納や陳列もしやすいです。

ブリスターパックの種類

ブリスターパックには、主に次の3つの種類があり、入れる物や目的に応じて使い分けられます。

1. 熱圧着型

熱圧着型のブリスターパックは、成形済みのブリスターパックと台紙を熱圧着でくっつけるタイプです。ブリスターパックと台紙の間に隙間がなくなるため、商品が外に飛び出す危険性を排除できます。商品が薄い (または小さい) 場合に適しています。

2. 台紙差し込み型

台紙を差し込むタイプのブリスターパックで、台紙がスライドして開閉する仕組みです。商品の厚みに合わせて台紙の厚みを調整することができるため、商品の種類を選ばず使える汎用性があります。

また、台紙とプラスチック包装が分離しやすく分別が容易なため、環境にやさしい包装です。

3. シェルパックタイプ

シェルパックタイプは、前面・背面ともにブリスターパックで構成し、前後のブリスターパックをはめ込める形状にすることで、製品を覆う包装です。両面が透明であり、全体が製品形状に沿った包装であるため、中身を魅せたい場合や立体物の保護をしたい場合に適しています。

参考文献
https://www.order-box.net/product/1310-2/
http://satopack.jp/about-vacumm-forming/blisterpacktoha/
https://www.shinwapax.co.jp/blog/397

ブランクパネル

ブランクパネルとは

ブランクパネルとは、空いてしまったスペースにはめ込んで隙間を埋める目的で使用されるパネルのことです。

ブランクパネルの「ブランク」とは、隙間のことを意味しています。

ブランクパネルの使用用途

空いているスペースや使用しないスペースにはめ込んで、埃やごみなどが入ることを防ぎます。

また、空気の通り道を作ることで通気性をよくして機材を熱から守るなど幅広い用途に用います。データセンターなどの空調や温度管理が重要視される場所で使用されています。

使われていないスペースの目隠しとして使用するほか、電子機器のパネルカットの目隠しでも使用します。

ブランクパネルのその他情報

目隠しや防埃効果以外にも、ブランクパネルによって、空気の流れを管理できます。

データセンターでは、機器から排出される熱気により室内温度が上昇しないための対策として、機器同士の間に隙間ができないようにすることがあります。サーバーを上下に配置すると、サーバー間に空気の流れが生まれ、かえって熱がこもってしまいます。その際、ブランクパネルで不要な隙間を埋めることで、熱気が環流し結果的に室内温度が約10度も変わる場合もあります。

参考文献
https://www.monotaro.com/k/store/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%91%E3%83%8D%E3%83%AB/
https://ntec.nito.co.jp/content/pcategory.html?code=C686-C833-C815
https://www.panduit.co.jp/column/naruhodo/4319/

ブラストキャビネット

ブラストキャビネットとは

ブラストキャビネットとは、金属表面を研磨したり清掃除去したりするための機器のことです。

ブラストには、圧縮空気によるエアーブラストと、圧縮空気中に砂を入れて勢いよく飛ばすことで加工性を高めるサンドブラストの2つがあります。また、ブラストにはレギュレーターやフィルター、集塵機などが必要になるため、それらの機能を搭載したものも存在します。

ブラストキャビネットは、金属製品の表面処理や塗装前の表面処理、汚れや錆の除去、歯科技工などの分野で幅広く使用されています。ブラストキャビネットは、作業者が機器内で行えるため、効率的で安全な作業が可能です。また、キャビネット内で研磨作業を行うことで、環境汚染や作業場の汚染防止につながります。

ブラストキャビネットには、スチール、アルミニウム、プラスチックなどの素材が使われており、サイズや形状もさまざまです。使用目的や作業スペースに合わせて、適切なブラストキャビネットを選択する必要があります。

ブラストキャビネットの使用用途

ブラストキャビネットは、金属非金属に関わらず、接着や塗装の精度が必要な前処理加工や仕上げ加工に使用されることが多いです。金属加工では、ブラストによって表面の凹凸を均一にすることで、塗装やプレス加工などの精度を上げることができます。

また、ブラストによって金属表面の汚れや錆を取り除くことも可能です。さらに、ブラスト加工は、加工する対象物の大きさや形状に左右されずに加工できるため、機械では加工が難しい細かい場所や複雑な形状の加工にも適しています。

そのため、航空機や自動車の部品、プラスチック製品、電子部品など使用分野は幅広いです。ただし、加工に使用する研磨材料の種類や粒度、加工圧力などによって、対象物の表面に傷をつけたり、変形させたりすることがあるため、ブラスト加工には注意が必要です。また、加工によって発生する塵や粉塵には有害な物質が含まれることがあるため、安全対策も行います。

ブラストキャビネットの原理

ブラストキャビネットを使用する加工は、研磨剤を圧縮空気に混ぜて高速で対象物に吹き付け、表面を研磨することで成り立ちます。ブラストキャビネットでは、エアーコンプレッサで空気を圧縮し、そこに研磨剤を混ぜ込んで、ノズルなどから直接加工対象物に吹き付けることで加工を行います。

対象物に均一に研磨剤を吹き付け、表面をより効率的に加工することが可能です。また、加工対象物の形状に左右されずに加工できるため、複雑な形状の加工にも対応できます。

さらに、加工時に発生する塵や砂などの微粒子を集塵機で吸引するため、加工現場も清潔に保てます。

ブラストキャビネットの種類

ブラストキャビネットには、主に圧力式ブラストキャビネットと吸引式ブラストキャビネットの2種類があります。

1. 圧力式ブラストキャビネット

圧力式ブラストキャビネットは、加工材料を圧縮空気の中に混ぜ、高圧で吹き付けることで加工を行います。研磨力が強く、大型の対象物や厚い部品などに効果的です。

また、研磨剤の種類によって表面の仕上げやクリーニングも行えます。ただし、高圧のため、音や振動が大きく、周囲への影響が出ることがあります。使用場所や環境には注意が必要です。

2. 吸引式ブラストキャビネット

吸引式ブラストキャビネットは、加工材料を加工対象物に向けて吹き付けることで加工を行います。圧力式ブラストキャビネットよりも低圧で研磨力が弱いため、繊細な部品や薄い板などの加工に向いています。

また、研磨剤の種類によって、表面の汚れを落とすこと、軽い研磨加工を行うことも可能です。加工材料を回収するための集塵機が搭載されている場合が多く、作業環境の改善にもつながります。ただし、吸引式なので、作業対象物によっては加工材料の回収が難しい場合があります。

参考文献
https://www.fa-mart.co.jp/atsuchi-ascon/01.html
http://www.jplampwork.com/sandbrast.htm

フロアヒンジ

フロアヒンジとは

フロアヒンジとは、床に埋め込まれた開き戸の荷重を支えることができる装置のことです。

ドアの軸側に設置されており、商業施設やマンションのエントランスで、大きなガラス扉など重量のある扉に採用されます。一般扉用や強化ガラス扉用、防火扉用などがあります。

扉の下の床に仕込まれており、意識してみる部分ではないため、あまり気づかれることはありませんが、ドアの開閉には重要なパーツです。

フロアヒンジの使用用途

フロアヒンジは、扉の開閉角度や扉が閉まる速度を調節する用途に用いられていて、ドアクローザーと同じ役割を果たしています。フロアヒンジには油圧ダンパーが内蔵されており、ダンパーを調節することにより、扉の開閉速度の調節が可能です。これによって、安全に通過できたり、バタンと大きな音で閉まったりすることがなくなります。

床の仕上げ材料や扉の大きさに合わせて選ぶことが可能で、石やじゅうたん、タイル床など周りで使用されている床仕上げ材を貼り付けられるよう、さまざまな材料に対応しているものがあります。また、扉の開く角度を調節する機能もあり、90°、120°、180°など設置箇所や用途により、設定することが可能です。しかし、戸当たりの設置は必須となります。

フロアヒンジは耐久性に優れているため、長期間使用可能ですが、内部の埃を取り除いたり、腐食が故障の原因となったりする可能性もゼロでがありません。水が溜まっていないかなど、こまめなメンテナンスは必要です。なお、メーカーの推奨する使用期間は、約10年程度と言われています。

フロアヒンジの原理

扉は壁の片側を軸にして取り付けられており、軸と反対側から開閉操作を行い、開閉動作が起こります。フロアヒンジ本体を扉の軸に取り付け、フロアヒンジの上部ではピボットと呼ばれる部品があり、ピボットとフロアヒンジの上下で支えることによって、扉を取り付けられ、動作や角度をコントロールします。

フロアヒンジの構成部品は、大きく分けて本体部分、床側に埋め込み本体を収めるセメントケース、上部を覆うフロアプレートの3種類です。本体を直接扉の軸に取り付けるために、床部分に本体を収納するセメントケースを埋め込みます。

このセメントケースが不安定だと、扉の立て付けが悪いと、スムーズな開閉ができないので、モルタルで固めたり、溶接などでしっかり固定することが重要です。扉の主軸に載せる本体のアーム部分を扉の底軸に取り付け、本体がむき出しになることを防ぐ目的で上から金属製のプレートをかぶせます。

フロアヒンジのその他情報

1. フロアヒンジを使用する上での注意点

床面の材質により特徴が異なります。石材用では一体感が出せるよう、フロアプレートと呼ばれるプレートが20ミリ、30ミリなど石材を貼っても綺麗に納まるように設計されていたり、じゅうたん張り用では5ミリや10ミリなどの厚みが確保されています。

仕上げに合わせたフロアヒンジを選ぶことにより、金属製のフロアプレートが隠せるため、その場の雰囲気を損なうことはありません。逆にPタイルやフロアタイルなど、薄い材質のものには対応してない点に注意が必要です。その場合、フロアプレートの金属部分が目立ってしまいます。

2. 防水型のフロアヒンジ

フロアヒンジが設置される場所によっては、水がかかったり湿気が多い場所もあります。フロアヒンジ内部の各所にシール材を使用しており、水や湿気、埃の侵入を防ぎます。ただ、完全防水ではないので、過信は禁物です。

3. 故障した場合

フロアヒンジは長期間での使用を想定していますが、使用頻度も高く、重量物を支えているため、当然故障することもあります。故障はダンパーが原因である場合が多く、扉が閉まりきらない、開閉スピードが速すぎる遅すぎる、扉が閉まらないなどの症状が発生します。

早めに修理・交換を行わないと、扉やドア枠にも影響が及び、扉や枠の変形したり破損したりする可能性が高いです。

参考文献
https://www.e-newstar.co.jp/support/select/select_fh/#yougo
https://www.e-newstar.co.jp/fh/
https://www.kagiyasan.co.jp/tategu/floor.html

遠沈管

遠沈管とは

遠沈管とは、別名スピッチともいい、遠心分離機を用いて、液体同士の分離や、固体と液体への分離などを行う実験や検査などに用いる容器のことを指します。

材質には、ガラスやプラスチックが使用されており、衝撃や強度に耐性が強いものや、温度変化に適して耐寒性や耐熱性に優れているもの、耐薬品性に優れているものなど、用途に合わせて選択することができます。

また、目盛りが付いているものや、容器に書き込めるもの、キャップの密閉性が高いものなどもあります。

遠沈管の使用用途

1. 遠心分離機を用いる使用

一般的な遠沈管の模式図

図1. 一般的な遠沈管の模式図

遠沈管は図1のような形状をしており、これに懸濁状態の試料を注入し、遠心分離機を用いて、不溶物質を沈殿として回収する目的で用いられます。なお、遠心分離機とは、遠沈管をセットする事ができるローターを高速で回転させる装置であり、遠心力によって、液体と固体や、比重が異なる液体同士などを分離することができます。

2. サンプルの回収・保存のための使用

スクリュー式のキャップ構造を有する遠沈管は、その密閉性、保存性に優れている形状から、繊細な扱いが要求されるサンプルなどの回収、運搬、保管などの目的にも用いられる事があります。

また、生化学実験の分野においては、遠心分離により沈殿として回収した細胞を分離したり、細胞から核酸を抽出したりする際にも用いられ、成分ごとの保存や微調整にも用いることができます。

遠沈管を用いた遠心分離の特徴とその原理

1.比重が異なる液体成分の分離について

遠心分離とは、遠心力を用いて、比重が異なるものを分離することで、自然に沈降が起きるまでに時間がかかるものを、高速に回転させて遠心力を生じさせ、沈降までの時間を小さくすることができます。比重が重い液体成分は、比重が軽い液体成分よりも早く沈降しますので、比重が異なる複数の液体成分を、その比重に応じて遠沈管の中で液相として分離する事ができます。

2. 懸濁液からの不溶物質の分離

物質が液体中で溶解する事なく分散している状態の事を懸濁状態と呼びます。このような試料から不溶成分のみを分取する場合は、懸濁液を遠沈管に注入してこれを遠心分離に供する事で、不溶成分だけが沈殿として得られます。そのため、懸濁液中に含まれる微量で微細な不溶物質を回収する目的に用いられます。例えば微生物や細胞を用いる実験においては、培養液中から細胞のみを分離する目的で用いられます。

3. エマルジョンの分離

水と油のような混ざり合わない液体が分散した状態の液体の事をエマルジョンと呼びます。身近な例では、牛乳、マヨネーズなどがこれに該当します。このような液体からそれぞれの液体成分を分離するためにも遠心分離が利用されています。

遠沈管の構造上の特徴

1.強度について

遠沈管の主な用途は、遠沈管の内部へのサンプルの封入と遠心分離装置にサンプルをセットするための容器としの利用であり、その使用においては、強い物理的な刺激が加わります。そのため、遠沈管は、遠心力に耐えうる構造をしており、密閉性が高く、負荷がかかってもひび割れなどが起きないよう、強度に優れた構造になっています。

2. 形状について

遠沈管は、不溶成分が高密度かつ狭い表面積で沈殿するよう、先端部分が細い形状をしています。この独特の形状のおかげで、不溶成分を遠沈管の底部に効率良く回収する事が可能です。また、遠沈管には様々な種類のものが市販されていますが、その中には、擦れなどによる目盛りが消えてしまうことなどが発生しないよう、チューブの成形として目盛りが刻印されているものや、側面やキャップ上に書き込みやすい材質を用いているものなど、工夫されているものも多くあります。

メスフラスコ

メスフラスコとは

メスフラスコの模式図

図1. メスフラスコの模式図

メスフラスコとは、全量フラスコとも呼ばれ、実験のためのガラス器具の一種です。メスシリンダーと同様に液体の体積を計測し、一定にする際に使われ、メスシリンダーと比べて測定の精度が高いことが特徴です。

メスフラスコの材質は、プラスチックや樹脂でできたものもありますが、一般的にはガラスでできており、形状は、底が平らで球状になった部分から、胴部分が細長い円筒上に伸びた形になっています(図1参照)。開口部分を栓で塞ぐことで封をすることが可能です。また、色は、無色透明なタイプから、茶フラスコと呼ばれる褐色透明なものもあります。

メスフラスコの使用用途

メスフラスコは、溶液を一定の体積に定容するために使用します。

一般的には無色透明のメスフラスコを用い、実験に取り扱う物質に遮光が求められる場合は、褐色透明の茶フラスコと呼ばれるメスフラスコを用います。このような褐色のメスフラスコは、例えば硝酸銀水溶液のように、光と反応して着色する成分を使用する場合に用います。液体の出し入れが容易なように円筒部分が太くなっているものなど、用途によって形状のバリエーションが豊富です。

メスフラスコの原理

一般に、メスフラスコは、液体の体積を一定にするために用いられ、溶液の濃度を一定にしたい場合などに使われていますが、同じ用途で用いられるメスシリンダーと比べて、測定の精度が高い事が特徴の一つです。

その理由としては、細長い円筒状になっている首部分に測定に用いる標線と呼ばれる目盛りが入っているため、径が細く、目盛りの精度が高くなっており、そのため誤差が小さくなることが挙げられます。

目盛りは、20度の水を測定した場合を基準として、メスフラスコ内に入っている溶質の体積を示しており、壁面にかかれたTCという単語は受用の英略であり、標線まで加えた液量が表示されている体積と同じことを意味しています。測定するサイズに対して、容量公差と呼ばれる測定誤差が決められており、表記の誤差の範囲内で定量する事ができます。

メスフラスコのその他情報

メスフラスコとメスシリンダーの違い

メスシリンダーの模式図

図2. メスシリンダーの模式図

両者はどちらもガラス製の実験器具であり、液体の体積を測定するという意味では似ていますが、その用途と特徴には違いがあります。

メスフラスコには規定体積があり、例えば100mlのメスフラスコの場合は、液体成分を規定体積である100mlに希釈する場合に用います。言い換えると、『特定濃度の液体を、規定体積まで正確に定容するための器具』であるといえます。一方でメスシリンダーの場合は、その形状からわかるように筒型の本体に目盛りがふられており、流入した液体成分の量を目盛りから読み取ります(図2参照)。そのため、メスシリンダーは『液体の体積を測定するためのガラス器具』であり、その用途はメスフラスコとは異なります。

メスシリンダー

メスシリンダーとは

メスシリンダーとは、液体の体積を測るための実験器具です。

円筒状で側面に目盛りが記載されており、メスシリンダーに入れた液体の底面にあたる位置にある目盛りを目視で読み取ります。目視で読み取るため、目盛りの細かさで体積の測定精度は決まります。

なお、メスシリンダーの洗浄の際は研磨剤を用いると内部にキズが付き、わずかな体積変化が起こる可能性があるため使用することはできません。

また、測定する有機溶媒の種類によっては樹脂製のメスシリンダーを溶解、膨潤させる可能性があるため、有機溶媒を測定する際はガラス製のメスシリンダーの使用を推奨します。

メスシリンダーの使用用途

メスシリンダーは化学実験において液体の体積を測るための実験器具です。液体を入れて目盛りを読み取るだけで体積を測ることができるため、実験器具としてしばしば使用されます。また、特別な操作は不要なため理科実験などの学校教育においても用いられます。

メスシリンダーの容量は主に10mLから1L程度で、容量に応じて1目盛りあたりの体積量ならびに測定誤差は異なります。また、メスシリンダーの材質はガラスもしくは樹脂です。使用する際は測定したい液体の量、ならびに樹脂の耐薬品性から適切なメスシリンダーを選定して使用します。

メスシリンダーのその他情報

1. メスシリンダーの使い方と精度

メスシリンダーは細長い円筒状の容器に目盛りが記された器具です。体積を測る際はメスシリンダーの目盛りを読み取ります。目盛りを読み取る際はメスシリンダーを平らなところに置き、液の底面のあたる位置の目盛りを記録します。

メスシリンダーの使い方

図1. メスシリンダーの使い方

メスシリンダーの精度は目盛りの細かさによって決まります。目視で読み取ることができる体積はおよそ目盛りの10分の1程度であるため、測定値には目盛りの10分の1以上の誤差が含まれます。もし高精度の体積測定が必要な場合はメスシリンダーの代わりにメスフラスコを使用します。

2. メスシリンダーの洗い方

メスシリンダーの洗浄方法は他のガラス器具と基本的には同じです。使用した溶媒や溶液中に溶解している物質を溶解させる溶媒で洗浄します。ただし研磨剤を入れてブラシでこするとガラス表面にキズが付き、わずかな体積変化を引き起こす可能性があるため、洗浄時に研磨剤は使用できません。

また、樹脂性のメスシリンダーはアセトンなどの有機溶媒で洗浄すると樹脂の膨潤や溶解によって体積の変化を引き起こす可能性があるため、樹脂製のメスシリンダーは水、もしくは樹脂の耐薬品性が確認された溶媒で洗浄することを推奨します。

セルソーター

セルソーターとは

セルソーターのイメージ

図1. セルソーターのイメージ

セルソーターとは、特定の細胞を分離するために使用するための装置です。

近年の生物学の研究においては、生命現象を1細胞の単位で観察するシングルセル解析の重要が増しています。ハイスループットに個々の細胞を解析できる技術として代表的なものがフローサイトメトリーであり、なかでも細胞を分離、回収する機能を備えたものをセルソーターと呼びます。セルソーターは、フローサイトメーターと同様に特定のマーカーで標識した細胞を流しますが、その中から特定の細胞集団だけを別のチューブに無菌的に振り分けることが可能です。分離、回収された細胞はその後も培養やさらなる解析を行うことができます。

セルソーターの使用用途

1. 概要

セルソーターは、がん研究、遺伝子学、免疫学、培養工学など、細胞を取り扱う様々な研究分野で使用されています。代表的な用途には下記のものがあります。

  • 細胞サイクル解析 (特定の細胞周期の段階でソーティングする)
  • 細胞表面のタンパク質解析 (特定の表面タンパク質を発現する細胞をソーティングする)
  • 免疫細胞の解析
  • 抗原特異的な細胞のソーティング (免疫・ワクチン研究など)
  • 幹細胞の単離・分化段階の解析細菌やウイルスの解析
  • 微生物叢の研究
  • 創薬における薬剤スクリーニングや副作用評価

2. 臨床領域への応用

近年では臨床に近い領域にまでその技術の応用が進みつつあります。具体例としては

  • セルソーターで造血幹細胞だけを取り出し、白血病の患者さんに移植する
  • 再生医療の分野では、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞から、必要な細胞をin vitroで分化誘導し、それを移植治療や医薬品開発に利用する

などがあります。どちらの場合も、目的の細胞だけをいかに集めるかが重要であり、セルソーターの技術が特定の細胞だけを分離、回収するのに役立てられています。

セルソーターの原理

セルソーターの原理

図2. セルソーターの原理

セルソーターでは、細胞浮遊液を流したものに対してレーザー光を照射し、散乱光によって細胞を解析し、液滴ごとのソーティングを行います。下記は代表的なキュベットフローセル型のセルソーターの各ステップの具体的な様子です。

1. フローセルからの放出

サンプルの細胞浮遊液は、まずフローセルと呼ばれる部分に溜められ、その先端の非常に細いノズル (70から100ミクロン程度) から上から下へ向かって落下させられます。この時、トランスデューサ (振動子) を用いて、サンプルが落下の途中で液滴になるようフローセルに上下振動が与えられる仕組みです。

2. レーザー照射と解析

液滴となる前の細胞にレーザー光が照射され、散乱光を元に一つ一つの細胞が解析されます。この際、ソートリージョンを用いた分取条件に基づき、分取するべきか否かがソート論理回路で瞬時に判別されます。

3. 分離・捕集

分離すべき細胞が検出されると、液滴になる直前に+または-の電荷が付加され、電荷を持った液滴が発生します。電荷をもった液滴は、その後に続く2枚の偏光板の間を落下していきますが、+の電荷をもった液滴はマイナス極側の板に、-の電荷をもった液滴はプラス極側の板に引き寄せられる仕組みです。それぞれの偏光板下には試験管が設置され、細胞が捕集される仕組みです。荷電を与えられなかった液滴は、そのまま垂直に落下していき、通常は廃棄されます。

機器によっては、捕集容器としてマイクロプレートを使い、プレートの各ウェルに細胞を分取することもできるようになっています。

セルソーターの種類

ジェットインエアー方式とキュベットフローセル方式

図3. ジェットインエアー方式とキュベットフローセル方式

セルソーターには様々な種類の製品があります。卓上型のコンパクトな製品や画像解析機能を搭載したもの、複数種類のレーザー光が搭載されているものなど、製品によって様々です。従来品よりも速く、収率と純度が優れている、次世代セルソーターと呼ばれる製品もあります。

また、細胞浮遊液を流す方法の種類にキュベットフローセル方式とジェットインエアー方式とがあります。キュベットフローセル方式ではキュベットの太い長方形の流れから、細い円形の流れに変化するため、速度と方向が変化する乱流です。一方、ジェットインエアー方式は、流れが速く、流れの形や幅は変化せずに常時狭くなっている (層流) という特徴があります。

参考文献
https://www.bc-cytometry.com/FCM/fcmprinciple_9-1.html
http://www.cdb.riken.jp/jp/millennium/print/technology_cell.html

クーラントポンプ

クーラントポンプとは

クーラントポンプとは、さまざまな産業用機械においてクーラント液や切削油などの液体を機械装置内で循環させるためのポンプです。

金属の切削加工機械では、クーラント液や切削油によって、切削部の冷却、潤滑、洗浄を行わなければなりません。また、車のエンジンでもエンジンで発生した熱を冷却するために、冷却水を循環させています。これら液体を循環させるのが、クーラントポンプです。

工作機械で使われるクーラントポンプは、本体部分を直接液面に沈めて使用することから、液体に対する耐久性に優れています。また、ポンプとしては比較的小型軽量で、耐環境性にも優れており、工場内で発生するミストなどにも強いという特徴もあります。

クーラントポンプの使用用途

クーラントポンプは主に、金属の切削加工を行う工作機械において使われています。具体的には旋盤研削盤フライス盤など、切削加工が行われる工作機械などです。

クーラント液は切削工具とワークの冷却、潤滑、洗浄を行った後に濾過して循環しなければなりません、そこでクーラントポンプは、洗浄装置 としても使用されています。

工作機械以外ではエンジンが挙げられます。自動車用のエンジンではウォーターポンプとも呼ばれていますが、エンジンで発生した熱をラジエーターで冷却するため、クーラントポンプがLLCと呼ばれるクーラント液を循環させています。

クーラントポンプの原理

一般的にポンプには、液体を吸い込む吸込能力と、吸い込んで取り入れた液体を目的とする場所まで押し出す吐出能力という2つの能力が求められます。

吸込能力は真空状態を作ることと大気の圧力を利用して生み出しており、吐出能力は液体に圧力を加えることによって作り出しています。この2つの能力を生み出すために、クーラントポンプには自吸型と浸漬型という構造があります。

1. 自吸型

自吸型は、ポンプと駆動部分のモーターが一体になっていることで、小型かつ軽量を実現しています。そのため、小型の工作機械などに組み込まれて用いられている場合が多いです。

2. 浸漬型

浸漬型は、ポンプと駆動部分のモーターが分離しており、ポンプを液面に直接沈めて用います。切削加工などで使用される旋盤研削盤フライス盤などで使用されています。

クーラントポンプのその他情報

クーラントポンプの内部リリーフ

ポンプは液体を供給、循環させるために、液体の循環経路は全て密閉されていることが基本です。しかし、クーラントポンプには、ノンシール構造と呼ばれるものがあります。

ノンシール構造とは、あえてメカニカルシールを用いず、微小な隙間から内部の液を流出させ、圧力が減少したことで内部リリーフしている構造です。シール部品が無いことで、部品代や組み立てコストも抑えることができます。

参考文献
https://www.teral.net/products/search/type?kishu=549620
https://www.teral.net/classification/coolant_pump/
https://www.goo-net.com/pit/magazine/30111.html
https://www.hitachi-ies.co.jp/products/pump/other/coolant/index.htm
https://www.monotaro.com/s/c-22683/
https://faq.teral.net/
https://www.mohno-pump.co.jp/learning/manabiya/a2.html