遠沈管

遠沈管とは

遠沈管とは、別名スピッチともいい、遠心分離機を用いて、液体同士の分離や、固体と液体への分離などを行う実験や検査などに用いる容器のことを指します。

材質には、ガラスやプラスチックが使用されており、衝撃や強度に耐性が強いものや、温度変化に適して耐寒性や耐熱性に優れているもの、耐薬品性に優れているものなど、用途に合わせて選択することができます。

また、目盛りが付いているものや、容器に書き込めるもの、キャップの密閉性が高いものなどもあります。

遠沈管の使用用途

1. 遠心分離機を用いる使用

一般的な遠沈管の模式図

図1. 一般的な遠沈管の模式図

遠沈管は図1のような形状をしており、これに懸濁状態の試料を注入し、遠心分離機を用いて、不溶物質を沈殿として回収する目的で用いられます。なお、遠心分離機とは、遠沈管をセットする事ができるローターを高速で回転させる装置であり、遠心力によって、液体と固体や、比重が異なる液体同士などを分離することができます。

2. サンプルの回収・保存のための使用

スクリュー式のキャップ構造を有する遠沈管は、その密閉性、保存性に優れている形状から、繊細な扱いが要求されるサンプルなどの回収、運搬、保管などの目的にも用いられる事があります。

また、生化学実験の分野においては、遠心分離により沈殿として回収した細胞を分離したり、細胞から核酸を抽出したりする際にも用いられ、成分ごとの保存や微調整にも用いることができます。

遠沈管を用いた遠心分離の特徴とその原理

1.比重が異なる液体成分の分離について

遠心分離とは、遠心力を用いて、比重が異なるものを分離することで、自然に沈降が起きるまでに時間がかかるものを、高速に回転させて遠心力を生じさせ、沈降までの時間を小さくすることができます。比重が重い液体成分は、比重が軽い液体成分よりも早く沈降しますので、比重が異なる複数の液体成分を、その比重に応じて遠沈管の中で液相として分離する事ができます。

2. 懸濁液からの不溶物質の分離

物質が液体中で溶解する事なく分散している状態の事を懸濁状態と呼びます。このような試料から不溶成分のみを分取する場合は、懸濁液を遠沈管に注入してこれを遠心分離に供する事で、不溶成分だけが沈殿として得られます。そのため、懸濁液中に含まれる微量で微細な不溶物質を回収する目的に用いられます。例えば微生物や細胞を用いる実験においては、培養液中から細胞のみを分離する目的で用いられます。

3. エマルジョンの分離

水と油のような混ざり合わない液体が分散した状態の液体の事をエマルジョンと呼びます。身近な例では、牛乳、マヨネーズなどがこれに該当します。このような液体からそれぞれの液体成分を分離するためにも遠心分離が利用されています。

遠沈管の構造上の特徴

1.強度について

遠沈管の主な用途は、遠沈管の内部へのサンプルの封入と遠心分離装置にサンプルをセットするための容器としの利用であり、その使用においては、強い物理的な刺激が加わります。そのため、遠沈管は、遠心力に耐えうる構造をしており、密閉性が高く、負荷がかかってもひび割れなどが起きないよう、強度に優れた構造になっています。

2. 形状について

遠沈管は、不溶成分が高密度かつ狭い表面積で沈殿するよう、先端部分が細い形状をしています。この独特の形状のおかげで、不溶成分を遠沈管の底部に効率良く回収する事が可能です。また、遠沈管には様々な種類のものが市販されていますが、その中には、擦れなどによる目盛りが消えてしまうことなどが発生しないよう、チューブの成形として目盛りが刻印されているものや、側面やキャップ上に書き込みやすい材質を用いているものなど、工夫されているものも多くあります。

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