電磁波測定器

電磁波測定器とは

電磁波測定器(英語: Electromagnetic wave measuring instrument)は、電子機器や電気自動車などが発生する電磁波を測定しmG (ミリガウス)又はμT (マイクロテスラ)で数値化する測定器です。

環境電磁界で発生する電磁波を測定するために使用されます。

様々な種類の電磁波測定器が存在しており、求める測定精度によってハンディターミナルタイプから定置タイプまで存在します。

各種用途にあわせて適切な測定器を選定する必要性があります。

電磁波測定器の使用用途

電磁波測定器は主に環境試験のためにコンピューターモニター、テレビ、ビデオ機器、蛍光灯などの電化製品や高圧送電線や変電所周辺の環境電磁界などから生じる電磁波強度を測定するための測定器です。

電磁波測定器は応答性に優れた検出回路を実装した基板を採用しており、外部接続プローブから検出した発生磁界を瞬時に測定し、mG (ミリガウス)又はμT (マイクロテスラ)で数値化します。

具体的な使用事例としては、以下のようなものがあります。

  • 電気自動車の環境試験性能認可のためのEMS測定
  • 家電の環境試験性能認可のためのEMS測定

電磁波測定器の原理

ここでは電磁波測定器の原理について説明します。

電磁波測定器は、一般的に1軸式と3軸式の2種類が存在します。

電磁波には種類が何種類か存在しており、高周波や単周波などによって測定器に求められるスペックに違いがでます。

磁場を測定する原理は中に搭載されているコイルを通じて得たアナログ信号を計測基板で演算し、数値化しています。

数値の単位としては、mG (ミリガウス)又はμT (マイクロテスラ)で示します。

1軸式と3軸式の違いは、搭載されているコイル数の違いを示しており、それぞれのコイルの両端で電圧の違いを測定しています。

大規模な範囲の電磁場を測定する場合には、プローブと言われる電磁波の検出機を複数台設置した上でそれらの検出値を演算回路に取り込み、数値化します。

計測器メーカーとしては、ドイツのファウザー社やギガヘルツ・ソリューションズ社、ローデシュワルツ社、日本のアンリツ社などが業界では有名な企業となります。

参考文献
https://www.mksci.com/products/detail/694.html
https://ureruzo.com/index.htm

電流ロガー

電流ロガーとは

電流ロガーとは、電流値を測定しつつ記録する装置です。電流ロガーは製品として測定機器メーカーなどから販売されており、電流を測定表示しながらメモリに記憶していきます。

電流の単位はA(アンペア)やmA(ミリアンペア)が主に使用され、インターフェイス用のパネルに表示されます。製品によってはサンプリングレートの選定が可能で、100回/秒(100Hz)程度の高いサンプリングレートを持つ製品も存在します。様々な種類の電力ロガーが販売されており、求める測定精度によって適切な測定器を選定する必要性があります。

電流ロガーの使用用途

電流ロガーは主に電流測定のために使用される測定器です。ハンディタイプのロガーも販売されており、ほとんどの場合は持ち運んで使用されます。

  • パソコン修理における通電確認
  • 基板実装における半導体素子の取り付け前チェック
  • 生産設備の保守メンテナンス
  • 電気工事の試運転確認
  • 生産機械管理のための一時的な測定
  • リチウムイオン電池のセル単位でのモニタリング

電流ロガーの原理

一般に電流ロガーはクランプ部、伝送配線、インターフェイスパネル、記録媒体などの部位に分かれます。クランプ部の原理は変流器と同じです。主要部は手で開閉できる円弧状鉄心です。一次巻線として測定電路を挟み、二次巻線である電送配線に電流を流します。

電送配線は一般的な線で、ビニル等の被覆に覆われています。先端に専用の接続プラグが付いたものや、ロガーに直接引き込まれているものがあります。インターフェイスパネルを介して測定値の確認や設定を行います。

サンプリングレートや記録様式等もこのパネルで設定できる装置もあります。レートを上げると細かに記録できますが、長期記録を保存できなくなります。記録媒体には測定結果を随時書き込まれ、保存されます。

記録メディアにはUSBフラッシュメモリやSDカードが使用されます。出力形式はCSVやtxtファイルが使用されることが多いです。上記のクランプ部では、AC電源のみ測定可能です。

DC電源の測定にはホール効果を利用したホール素子などが用いられます。ホール効果とは、電流が流れる導体に磁場を垂直に発生させると、起電力が発生する原理です。ホール素子はこのホール効果を利用して、電流の周囲に発生する磁場を電圧へ変換する素子です。

また、精密な電流値を測定したい場合は、シャント抵抗を用いた電流ロガーを用いることもあります。シャント抵抗とは低抵抗の抵抗器で、測定回路に直列にシャント抵抗を挿入して使用します。シャント抵抗の両端の電圧を測定することで電流を計算します。

ホール素子や変流器は回路に通電したまま電流測定可能ですが、シャント抵抗は測定回路を一度開路する必要があります。汎用性が高いため、一般にはホール素子や変流器を検知部に使用する電流ロガーが使用されます。電流の単位はA(アンペア)です。測定時の単位としては、kA(キロアンペア)、A(アンペア)、mA(ミリアンペア)などが使用されます。

電流ロガーはアナログ信号を入力データとして用いるため、ノイズによって測定結果が正確ではなくなることがあります。検出精度を向上させるためには、ノイズが乗らないように配線経路のノイズ除去を行うなどの対応が重要となります。

電流ロガーのその他情報

電流ロガーの由来

ログ(log)とは日々の記録のことを意味する英語で、記録を保存する物をロガー(logger)と呼びます。例えば、ブログはWeb log の略でWeb上に日記を記すことを意味します。このように、電流ロガーは電流を記録する物を指します。

参考文献
https://www.hioki.co.jp/jp/products/listUse/?category=31

電力ロガー

電力ロガーとは

電力ロガーは、電力を測定しつつ記録する装置です。電力ロガーは製品として測定機器メーカーなどから販売されており、電力を測定表示しながらメモリに記憶していきます。

電力の単位はkW(キロワット)やW(ワット)が主に使用され、インターフェイス用のパネルに表示されます。製品によってはサンプリングレートを選ぶことが可能で、100回/秒(100Hz)程度の高いサンプリングレートを持つ製品も存在します。様々な種類の電力ロガーが販売されており、求める測定精度によって適切な測定器を選定する必要があります。

電力ロガーの使用用途

電力ロガーは主に電力測定のために使用される測定器です。大きさはハンドバッグに入る程度の製品が多く、ほとんどの場合持ち運んで使用されます。

具体的な使用事例としては、以下のようなものがあります。

  • 電気工事における試運転確認
  • 生産設備の保守メンテナンス
  • 産業機械管理のための一時的な電力測定
  • 一般家庭における電子機器の電力測定
  • リチウムイオン電池パックの電力測定
  • 電気自動車におけるバッテリーマネジメントシステム

電力ロガーの原理

電力ロガーは「直接電力を測定する装置」と「間接的に電力を測定する装置」の2種類に大別されます。それぞれ仕組みが異なります。両者に共通点は、ほとんどの場合はインターフェイス用のパネルが付いていることです。パネルによってリアルタイムに測定結果を確認できます。

表示単位はkW(キロワット)やW(ワット)が主に使用されます。微細電力の測定用途ではmW(ミリワット)が使用されることもあります。サンプリングレートや記録様式などもこのパネルで設定できる装置がほとんどです。サンプリングレートを上げると細かに記録できますが、長期記録を保存できなくなります。

記録メディアにはUSBフラッシュメモリやSDカードが使用されます。出力形式はCSVやtxtファイルが多く使われます。アナログ信号を入力データとして用いるため、ノイズによって測定結果が正確ではなくなることがあります。検出精度を向上させるためには、ノイズが乗らないように配線経路のノイズ除去を行うなどの対応が重要となります。

1. 直接電力を測定する装置

直接電力を測定する装置には、電流測定用のクランプメータと電圧測定用のワニ口クリップケーブルが付属しています。電流と電圧から電力を測定して記録します。クランプメータを2本、ワニ口ケーブルを3本使用することで3相電源も測定可能です。

単相電源の電力測定の場合はクランプメータを1本とワニ口ケーブルを2本使用します。直接電力を測定する装置は、電圧電流を電力と同時に記録できるものがほとんどです。製品によっては、無効電力や力率も同時記録できます。

直接電力を測定する場合、測定可能な電圧の上限が装置によって決まっています。装置購入前に必ず確認する必要があります。高圧電力を測定したい場合、直接測定できるロガーは市販されていません。計器用変成器を介して測定し、測定結果に変成比を掛けて計算します。

2. 間接的に電力を測定する装置

間接的に電力を測定する装置とは、電力トランスデューサなどで変換された電力信号を記録する製品です。一般に入力信号はDC0-5VやDC4-20mAなどのアナログ信号となります。測定最大値(スパン値)は、電力トランスデューサのスパン値になります。

電力ロガーのその他情報

電力ロガーの由来

ログ(log)とは日々の記録のことを意味する英語で、記録を保存する物をロガー(logger)と呼びます。例えば、ブログは「Web log」の略でWeb上に日記を記すことを意味します。このように、電力ロガーは電力を記録するものを指します。

参考文献
https://www.hioki.co.jp/jp/products/detail/?product_key=228
https://www.fa.omron.co.jp/products/family/3078/

粉体ポンプ

粉体ポンプとは

粉体ポンプは、粉体を空気と混合させて輸送することで、粉体に流体としてのふるまいを持たせて、輸送するポンプです。

基本的には、ダイヤフラムと呼ばれる膜をピストンなどで引っ張ることで、容器内の体積を変化させることによって輸送するダイヤフラムポンプが使用されます。使用する空気量を減らすことや、脈動が少なく、定流量の輸送によって、発塵を抑制する工夫が製品によってされています。ダイヤフラムポンプ以外にも、ブロア真空ポンプを使用して輸送する製品もあります。

粉体ポンプの使用用途

粉体ポンプは、食品加工工場や化学工場、浄水施設など幅広い業界で使用されます。粉体ポンプの選定の際には、輸送量や輸送したい粉体に機器が対応しているかどうか、流量や脈動の少なさ、粉体の発塵の抑制度合い、サイズや消費電力を考慮する必要があります。また、粉体の性質上、メンテナンスが多く必要であるので、メンテナンス性も重要です。

粉体ポンプの使用例を以下に示します。

  • 食品工場における、小麦粉などの粉体原料の輸送
  • 浄水処理施設における、粉体の浄水材の輸送
  • 化学工場における、粉体原料の輸送

粉体ポンプの原理

粉体ポンプの動作原理を、ダイヤフラムポンプを使用した場合を例に出して説明します。粉体ポンプは、吸い込み口、ダイヤフラムポンプ、吹き出し口で構成されています。ダイヤフラムポンプは、容器、1から2つのダイヤフラムと呼ばれる膜、容器外にダイヤフラムを変位させるためのピストン、バルブで構成されています。

動作時は、容器を収縮しているダイヤフラムポンプの吐き出し口側のバルブを閉めた状態でダイヤフラムポンプを復元すると、内部の圧力が低下し、吸い込み口側から粉体を吸入します。その後、吸い込み口側のバルブを閉め、ダイヤフラムポンプを、容器を収縮する方向に移動させると、内部の圧力が増加し、吹き出し口側のバルブを開放すると、吹き出し口から粉体が吹き出され、輸送されます。ピストンの両端にダイヤフラムを接続することで、一度の往復で効率的に粉体の輸送を行えるため、通常は、2つのダイヤフラムが付いていることが一般的です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/59/12/59_12_1040/_pdf
http://www.mohno-pump.co.jp/products/powderpump.html
http://host118022018037.metio.jp/mechatro_parts/vol3/pdf/P09-120.html

偏心検査機

偏心検査機とは

偏心検査機

偏心検査機 (英語:Eccentric inspection machine) とは、軸対象形状で主に回転する部品について、回転軸からの形状のずれを検査するための検査具を言います。

多くはダイヤルゲージを取り付けて2つ以上の測定物の比較測定を行うための測定台のことです。測定する部品は通常シャフトや歯車プーリーなどであり、これらの振れを測定する際に使用します。

測定自体はダイヤルゲージを用いて接触方式で計測することが通常であり、偏心検査機はあくまで測定を行うための計測台を指します。偏心検査機には過去には多数のメーカーが存在していました。現状は大菱計器製作所と理研計測器製作所の2社で、ほぼ国内のシェアを2等分しています。

偏心検査機の使用用途

具体的な使用事例としては、以下のようなものがあります。

  • プーリーなどの歯車加工工程における抜き取り検査のための測定物固定
  • モータシャフトの比較測定のための測定物固定
  • 積層コアの直角度測定のための固定

測定方法としては、以下の2つの手法が存在します。

  • センサや変位計などを用いた「非接触式」
  • ダイヤルゲージを用いた「接触式」

偏心検査機の原理

偏心検査機は、測定対象物を実際に回転させ、回転中心から離れたある地点から、対象部品の外形との距離の変化を読み取ります。このために偏心検査機には回転軸を支えるためのセンターと呼ばれるコーン形状の端子が、互いに向き合って置かれています。さまざまな部品を計測できるよう、二つのセンターの距離は移動できるようになっています。

偏心検査機を選ぶ際に重要になるのがセンター距離、センターの高さです。センター距離は測定する部品の軸方向の全長、センター高さは測定する部品の最大径 (半径) より上回っていなければなりません。

また偏心検査機の測定精度に大きく関わるのが、センター間平行度です。二つのセンターの平行度が悪ければ、計測値の誤差となってしまいます。一般的な製品において、センター間平行度は10μm程度になっています。

実際の形状の触れを読み取るのはダイアルゲージです。ダイアルゲージを固定する台は、部品の軸方向に移動と固定ができるようになっています。

測定自体には手法が2種類存在しており、センサや変位計などを用いた「非接触式」とダイヤルゲージを用いた「接触式」に分類されます。

偏心測定機の種類

偏心測定機は大きく5つ種類があります。

標準型

両側にスピンドルを備えた一般的な偏心測定機です。

P形

主に卓上や定盤の上に置いて小型の部品を測定しやすいように、高さを低めにしたタイプです。

RV形

回転軸を支えるセンター部分がスピンドルではなく、V溝になったタイプです。V溝部は摩耗しにくい材質が選ばれています。

SG形

ダイアルゲージスタンドが軸方向だけでなく、左右もガイドによって移動できるタイプです。センター軸に対して平行と直角に移動できるので、偏心だけではなくシャフトの曲がりやシャフトについているフランジの振れも検査することができます。

VB形

測定品を水平ではなく垂直に設置して測定するタイプです。

偏心測定機のその他情報

歯車の測定

偏心測定機で歯車の振れを測ることができます。ダイアルゲージの測定子に、モジュール (歯車の歯の大きさ) に合わせた球形状を持つアタッチメントを取り付け、谷部分に当てながら測定します。

偏心測定機を使う上での注意点 

偏心測定機はほぼダイヤルゲージを用いた「接触式」が大多数を占めますが、読み取りに慣れが必要です。まず長針が回る方向によって、測定部位の距離が回転中心から長くなっているのか、短くなっているのかを理解しなければなりません。次に数値の読み取りにも注意が必要です。ダイアルゲージの多くは0.01mmか0.001mmのものであり、針が360°回転すると、それぞれ0.1mm、0.01mm移動したことになります。針が何周も回る場合には、短針の目盛から移動量を読み取る必要があります。測定者違いによる誤差を以下に小さくするかという改善が現場運用では必要です。

参考文献
https://www.obishi.co.jp/catalog/bench-centers/704/
https://www.fsk-level.com/

ポットミル

ポットミルとは

ポットミルとは、研究や実験で用いられる粉砕・混合装置の1種です。

セラミック製の円筒形のポットが回転することで、内部のボールがサンプルを粉砕し、細かく均一な粉体が得られる点が特徴です。ポットとボールには、硬度が高く耐摩耗性に優れた素材が使用されています。

そのため、粉砕中に装置が破損するリスクは極めて低いです。また、耐薬品性が高いので、サンプルの成分によって装置が腐食される心配もありません。これにより、装置の破片や溶出物によるサンプルのコンタミネーションを防ぐことが可能です。

ポットミルの使用用途

ポットミルは、特に細かく均一に混ぜたいサンプルの粉砕に適しており、耐摩耗性・耐薬品性の高いセラミック製のポットやボールが主流となっています。ポットやボールからのコンタミネーションが起きにくく、サンプルを清潔な状態で粉砕できるのが大きな利点です。

産業利用にも適しており、例えば陶芸の釉薬の混合に活用されています。釉薬を均一に混ぜることで、焼き物の仕上がりがより美しく、品質が向上させることが可能です。また、ポットミルはデータ保護の観点からも重要で、USBやフロッピーディスクなどのデータ記憶媒体を完全に破壊することで、データ流出を防ぐ用途で使用されています。

例からも分かるように、ポットミルは多岐にわたる分野で幅広い用途を持ちます。高い粉砕効率と安全性から、今後も様々な産業や研究での活用が期待される重要な装置です。

ポットミルの原理

ポットミルは、ポットが回転することで、内部に入れられたボールが衝突・摩擦を繰り返します。これによって、サンプルを粉砕し、混合される仕組みです。

回転速度や回転時間、ボールの大きさや数などの条件を調整することで、粉砕の粒度や混合の均一性をコントロールできます。また、セラミック製のポットやボールは耐摩耗性・耐薬品性が高いため、サンプルへのコンタミネーションが少なく、粉砕や混合を安全かつ効果的に行うことが可能です。

ポットミルの利点は、効率的な粉砕・混合が可能であることに加え、さまざまなサンプルに対応できる汎用性も挙げられます。

ポットミルの構造

ポットミルはポット、ボール、本体から成ります。

1. ポット

セラミック製の円筒形です。粉砕したいサンプルとボールを入れます。

2. ボール

材質はアルミナジルコニアナイロンなどです。サンプルと共にポットへ入れます。

3. 本体

2本の回転シャフトが水平に配置されており、この上にポットを乗せて回転させます。

ポットミルのその他情報

1. ポットミルの使い方

  1. ポットにサンプルとボールを入れ、フタを密閉してネジで固定します。
  2. 本体の回転シャフト上に、ポットを横向きにして置きます。
  3. シャフトを回転させるとポットが回ります。内部ではボールとサンプルが攪拌され、衝突のエネルギーでサンプルが砕かれます。回転速度を調整できる場合は、安全のため低速から始めて、徐々に回転速度を上げていくと良いです。
  4. シャフトを止めてからポットを開けます。「ふるい」を使って、粉砕されたサンプルを回収します。

ボールは摩耗しにくいため、洗浄して再利用可能です。ただし使い古したものは、表面に欠けやひび割れがないかを毎回確認してください。

2. ポットミルとボールミルの違い

ポットミルと意味の似た言葉に、「ボールミル」というものがあります。ボールミルとは、金属やセラミックのボールを使って物を粉砕する機器の総称であり、「ポットミル」よりも広い概念です。厳密な分類基準があるわけではありませんが、ボールミルのうち小型の機種が「ポットミル」と呼ばれる傾向があります。

ボールミルの中には、粉砕室の容量が数百〜数千Lにも達する大型機種も存在します。大型の工業用ボールミルは粉砕能力が高く、粉砕・混合する以外に、圧力によって物性を変化させる目的でも使用される点が特徴です。なお、工業用ボールミルの主な用途は以下の通りです。

  • アスファルトやセラミックの原料を作るため、鉱物を均一に粉砕する。
  • 製剤工場において、医薬品原薬を粉砕して賦形剤と均一に混合する。
  • 粘土や顔料を、均一な粘性になるよう十分に練る。
  • 結晶のアモルファス化
  • 電子部品の製造に使われる半導体の均一化

3. ポットミルのボール粒径

ボールの粒径は、粉砕の細かさや粉砕後の物性に影響します。卓上ポットミルに使われるボールは、大きい物で直径2cm前後、小さいものでは1mm未満のものまで幅があります。一般的傾向として、ボールの直径が大きいほど粗い破砕になり、直径が小さいほど細かい粉砕が可能です。

粒径が大きいボールは落下のエネルギーが大きいものの、ボールどうしの隙間が大きいため、摩擦による粉砕効率は低下します。一方、粒径の小さいボールは落下のエネルギーは小さいものの、ポットが回転する際の遠心力で粉砕のエネルギーが増強されるのが特徴です。さらに、ボールどうしが密着しているため、摩擦力による粉砕が進みます。

微細なボールで粉砕した場合、摩擦熱による物性変化に留意が必要です。例えば、結晶性の物質を処理した場合、高い圧力で粉砕されることでアモルファス化し、熱伝導性や反応性が変わる場合があります。

物性を変えることなく粉砕したい場合は、ボールの粒径を変えて粉砕試験を行い、目的にかなうボール粒径を選択することが必要です。

参考文献
https://www.mitsuwa.co.jp/products/detail/nanomech/
https://www.aimex-apema.co.jp/case/2018/05/09/103

ダストシール

ダストシールとは

図1. ダストシールの使用

ダストシールとは、外部からの有害な粒子の侵入を防ぎ、パッキンや軸受を保護するために使用されるシール材です。

ダストシールという名前の通り、「ダスト=ゴミ、ホコリ、粉じん」を「シール=封じる、密閉する、内部の侵入を防ぐ」もので、別名で「パッキン」と呼ばれることもあります。産業機械から自動車部品まで様々な分野で使用され、主に摺動する部位に取り付けられます。具体的には、回転運動するシャフトや直線運動するシリンダなどです。

各種機械の可動部には、スムーズな動作、寿命や信頼性の確保が重要です。このため、ダストシールには、動作温度・想定される有害物質・機械的な強度などに応じた、様々な材質や形状があります。また、ダストシールは装置の一番外側で内部を守るためにも使われており、その場合は定期的な交換が必要です。

ダストシールの使用用途

ダストシールは、産業機械や自動車、航空・宇宙産業に至るまで、幅広い分野で使用される重要な部品です。稼働する部品の隙間からの異物の侵入を防ぎ、システムの寿命、性能、信頼性を確保しています。これにより、保守のためのコスト低減や機械システム全体の効率向上を図ることが可能です。

産業機械の分野の代表的な例では、ポンプやギアボックス、電動アクチュエータに代表されるモータなどが挙げられます。特に回転軸を含む部品で、ほこりや汚れなどの汚染物質にさらされると、摩耗が加速し、効率の低下が引き起こされます。また、CNCマシンなどの加工機では、加工精度の低下につながります。

1. 自動車分野

自動車の分野では、車軸のベアリング、サスペンション、駆動系などに使用されています。どの部位もほこりや汚れ、湿気などの影響を受けやすい環境です。これらを保護することで機能が確保され、車両の安全性を確保できます。

2.  航空・宇宙分野

航空・宇宙の分野では、シール性が非常に重要です。
液圧および空気圧で動作するアクチュエータには、シームレスな機能を確保するために、汚染物質がない環境が要求されます。

ダストシールは外部からの有害物質の侵入を防ぐために使用されますが、さまざまな機械システムの寿命、性能、信頼性を確保する重要な役割を果たしています。

ダストシールの原理

図2. リップシールによる保護

ダストシールの基本的な原理は、粒子、ほこり、汚れ、湿気、汚染物質などの外部物質から、機械部品を効果的にシール (保護) するという考えに基づいています。また、このシールは可動部に取り付けられるため、摩擦にも考慮した設計をしなければなりません。シール性と低摩擦性の両方を、バランスよく確立した機能の確保が求められます。

このバランスを確保するために、ダストシールの断面形状が「リップ」形状になっているものと、まるで迷路のような内部構造をもつ「ラビリンス」形状があります。

ダストシールの種類

図3. リップシールとラビリンスシールの構造の例

ダストシールは、「リップ形状」と「ラビリンス形状」に大別されます。

1. リップ形状

一般的なオイルシールは、リップ形状を持つものです。柔軟なリップが回転軸または部品に接触し、外部からの侵入をリップがはじき返すことで、シール性を確保します。

リップ部は摺動を受けるため、これによる摩擦と熱の発生を減少させる潤滑が必要となる場合があります。材料はさまざまで、耐久性、柔軟性、環境要因への耐性を考慮した選定が必要です。

2. ラビリンス形状

ラビリンスシールは、高速回転やより過酷な環境下にさらされる機械に使用されます。ラビリンスシールは内部に迷路のような障壁が存在し、有害物質がシール内部を通過するのを防止しています。

リップシールと比較すると、ラビリンスシールは、初期コストは高いものの、シール性と耐久性に優れていることが特徴です。ダストシールの多くは、圧入によるはめ込み式のため、装着方向を間違えないように注意が必要です。

ダストシールのその他情報

1. ダストシールの材質

ダストシールの材質として、主にゴム系材料が使用されます。代表的なものは、ニトリルゴムウレタンゴムフッ素ゴムなどで成形されています。

ニトリルゴムを使用したダストシール
ニトリルゴムは安価で汎用性が高いことが特徴です。一方で、耐候性や温度条件には制限があります。特に、直射日光に弱く日光の当たるところで使用すると劣化しやすいところが欠点です。

ウレタンゴムを使用したダストシール
ウレタンゴムは、合成ゴムの中では一番耐摩耗性に優れることが特徴です。機械強度が大きく弾性力が高くエネルギー吸収力が高いため、激しい動きを伴う工業用品に使用される傾向があります。

フッ素系ゴムを使用したダストシール
フッ素ゴムは薬品に強く熱に強い特徴があるため、油圧シリンダや屋外用途で使われます。

2. ダストシールの製造

ダストシールは、金型でプレス成形して製造します。ゴム原料と硬化剤、あるいは配合剤を練り合わせ、コンパウンドと呼ばれるゴム材料を作成します。ゴム材料を金型に流し込み、熱と圧力をかけ、硫黄による架橋反応、加硫と成形を同時に行います。

成形されたダストシールを金型から取り出しバリを取りを行い、さらに加熱して二次加硫を行うという流れです。

セラミックテープ

セラミックテープとは

セラミックテープとは、セラミック繊維に少量の有機繊維を混入し、ガラス繊維で補強した紡績ヤーンを原料とするテープです。

セラミックとは、金属、木材、プラスチック以外の素材で、人工的に作られたものすべてを指します。岩石や粘土などの鉱物を混ぜ合わせて、成形し、焼き上げることで作られます。

セラミックテープは、ガラス繊維以上の耐熱性があり、高温となる場所の断熱材として、ボイラー・パイプなどを保温材で覆う作業(ラギング)などに使用されます。 

セラミックテープの使用用途

セラミックテープは耐熱性が高いので、遮断カーテンや配管の断熱材、燃焼作業など高温となる個所に利用されます。

具体的には、ボイラーやパイプなどのラギング、配管や排気ダクトの断熱材、加熱炉の炉前カーテン、熱処理徐冷用のカバー、溶接時の火花防止、スパッタ防止、耐熱パッキングなどです。

また、煉瓦膨張代充填、炉扉シール、水ホース耐熱被覆や、内燃機マフラーの高温部の養生、輻射熱の遮断、やけど防止などにも利用されます。 

セラミックテープの特徴

セラミックテープは、セラミック繊維と少量の有機繊維からなり、ガラス繊維で補強された紡績ヤーンを原料とするテープで、耐熱性、柔軟性に優れています。石綿(アスベスト)の代用品として使用できます。

断熱、保温、保冷材に適しており、特に高温となる場所の断熱材として利用されています。

シリカクロスやアルミナテープ類に対して、比較的安価です。

非晶質セラミックファイバー(リフラクトリーセラミックファイバー;RCF)を使用したものは、RCF規制の対象です。RCFは、表示対象物、特定化学物質の管理第2類物質で、RCF使用の通知義務、作業環境測定、特別管理物質としての措置、作業主任者の選任、特殊健康診断などの対応を必要とします。

現在は、RCFを使用していない、RCF規制対象外の製品もあります。

RCFの代わりに、生体溶解性繊維(BSF)を主原料とし、グラスファイバ、SUS線、インコネル線などを基線として使用し、有機繊維(レーヨンなど)を補強材として添加した製品などです。 

参考文献
https://04510.jp/times/articles/-/320?page=1
https://www.monotaro.com/k/store/%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%97/
https://ejje.weblio.jp/content/lagging
https://www.isolite.co.jp/faq/regulation/
http://www.takumisangyou.jp/heat_cloth/cloth.html
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/223005612786/
http://www.takumisangyou.jp/heat_cloth/cloth.html

スピードコントロールモーター

スピードコントロールモーターとは

スピードコントロールモーターとは、スピードコントローラが内蔵されており、回転速度を制御可能なモーターです。

モーターの駆動部に速度計測用のセンサが取り付けられており、そのセンサから送られてくる速度をもとにフィードバック制御をすることで回転速度を制御しています。交流を電源として使用する製品が一般的です。

スピードコントローラには、速度設定器が接続されており、任意の回転数などをパソコンや入力ボタンから入力します。

スピードコントロールモーターの使用用途

スピードコントロールモーターは、精密なモーターの動作が要求される生産工場や装置の内部で使われます。

具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 半導体製造工程や電子部品製造工程における位置決め装置の駆動部の動力
  • 糸やワイヤーの巻取り作業の動力源
  • コンベアなどの停止する際の負担軽減用のモーター

スピードコントロールモーターを選定するは、スピードの可変範囲、スピード制御の精度、寿命、消費電力、サイズ、熱や塵、振動への耐久性を考慮する必要があります。

スピードコントロールモーターの原理

動作時は外部の速度設定器から送られてくる信号と、センサから送られてくるモーターの回転数の信号をもとに、どの程度の回転が必要かを回転速度の制御回路にて計算します。その回転速度の制御回路で計算した内容をもとに、どの程度の電圧をモーターに入力すればいいかを電気信号の制御回路で計算し、外部の電源から電力を必要分だけモーターに送信します。

その処理を繰り返し行うことによって、速度を制御する仕組みです。回転速度の出力の精度は、電気制御盤でモーターに送信する電圧の幅とセンサから送られてくる信号の処理速度によって決定します。 

スピードコントロールモーターの構造

大きく動作部と制御部に分けられています。動作部にはモーターと回転速度を検知するセンサがあり、制御部には回転速度の制御を行う回路と電気信号の制御を行う回路で構成されています。

動作部に取り付ける速度検出するセンサは、レートジェネレータと呼ばれる装置です。これはモーターの回転速度に比例した交流電圧を出力することが可能で、交流電圧を制御部にフィードバックする役割を持ちます。

モーターは一般的なACモーターと、同じステーターとローターを持つ構造です。誘導電流を元にして回転力が発生します。

スピードコントロールモーターのその他情報

1. 回転速度 – トルク特性

回転速度を横軸に、トルクを縦軸に取った際に使用限界曲線と起動トルクを示す直線を描くことができます。使用限界曲線と起動トルクより下側の領域は連続運転領域と呼ばれ、この領域内での回転速度とトルクの組み合わせであれば、定格内の連続運転が可能です。

一方で、使用限界曲線と起動トルクより上側の領域は使用制限領域と呼ばれ、この領域内でのスピードコントロールモーターの運転はモーターケースの温度が90℃を超える恐れがあります。モーターケース温度が高温にならないように、周囲環境の調整が必要です。

2. 他モーターとの違い

スピードコントロールモーターは速度制御を行う機構に対して、インバータ駆動モーターに注目すると速度に加えてトルク制御も可能です。モーターの容量もスピードコントロールモーターは小容量であるのに対して、インバータは大容量まであります。

ブラシレスモーターは、モータードライバに対して回転速度を入力することで比較的簡単に速度を制御することが可能です。機能面ではインバータ駆動のモーターは多くの機能を備えていますが、スピードコントロールモーターはコスト面や使用性で優れています。

ブラシレスモーターと比較すると、どちらも小型のモーター制御に使用されますが、スピードコントロールモーターは低コストで運用可能です。目的に応じた機器を選定する必要があります。

参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/webseminar/sp_kiso_1_1/
http://www.mekatoro.net/mechatro_parts/vol3/pdf/P05-218.pdf
https://www.orimvexta.co.jp/product/detail/?id=001003
http://www.mekatoro.net/digianaecatalog/orien-sougou/book/orien-sougou-P0383.pdf

シリコンガスケット

シリコンガスケットとは

シリコンガスケット

シリコンガスケットとは、シリコーン (熱硬化性または熱可塑性のポリマー) で作られたガスケットのことです。

ガスケットは、配管や器具の可動性のない部位で部材と部材の間に設置し気密性や水密性、油密性などの密閉性を保つためのシール材を指します。設置個所に合わせて成形されたシート状ガスケットと、液状を塗布・固化させて密閉性と耐圧性を得る液状ガスケットがあります。

素材によって、耐熱性や耐薬品性などが異なります。シリコンガスケットは高温や化学薬品に耐性があり、耐久性が高い点が特徴です。成形された製品も販売されていますが、液状ガスケットを指してシリコンガスケットと呼称する場合が多くあります。

シリコンガスケットの使用用途

シリコンガスケットは高い耐久性や耐熱性、耐薬品性などを有するため、産業に広く使用されます。以下はシリコンガスケットの使用用途一例です。

  • 自動車エンジンのシリンダーヘッドやバルブカバーなどのパッキング材
  • 航空機のエンジンやタービン、燃料ポンプ、バルブなどのガスケット材
  • 医療機器や食品加工機器など、清潔性が重視される産業機器のシール材
  • 電子部品や半導体の製造工程での高温・高圧環境下でのシール材
  • 建築材料、雨水排水設備、配管、化学工業装置などの耐候性・耐薬品性を必要とするシール材

シリコンガスケットはこれらの産業分野において、特性を生かした高性能なシール材として広く使用されています。また、柔軟性に優れているため、さまざまな形状やサイズにカットして使用することが可能です。

加えて、色の種類も多く、さまざまな用途に合わせた色のガスケットが開発されています。

シリコンガスケットの原理

シリコンガスケットのシール効果は、その柔軟性と弾性によって生み出されます。さまざまな形状にカットしてシールする部分に密着させることで、ガスや液体などの流体を漏れなくシールできます。

素材であるシリコーンは、二酸化ケイ素を還元したものにメチルアルコールなどの有機酸を結合させた化合物です。有機と無機の両方の性質を持ち非常に安定しています。化学的に安定で、酸化・分解されづらいことや生理活性の低いことが特徴です。

生理活性が低い点から、蛇口や炊飯器などの体内に取り込まれる可能性のある用途でのガスケットにも使用されます。また、耐熱性も高いため、エンジンオイルの流路のガスケットなどにも有用です。

成形ガスケットは厚みがあり、使用経過とともにへたりやずれ変形などが生じます。液状ガスケットは比比較容易に複雑な形状でもシーリングでき、へたりがない点が利点です。一方、硬化に時間がかかるなどの難点もあります。

シリコンガスケットの種類

シリコンガスケットにはさまざまな種類が存在します。以下はシリコンガスケットの種類一例です。

1. シートタイプ

シリコンガスケット材料をシート状にカットして使用するタイプです。ゴム素材の性質を生かした柔軟性や弾性によって、さまざまな形状にカットして使用することが可能です。

ただし、カット精度によってシール効果が左右されるため、正確なカットが必要です。また、厚みや硬度によってもシール効果が変わるため、使用する環境に応じて適切な厚みや硬度を選ぶ必要があります。

2. メタルクラッドタイプ

シリコンガスケットの表面に金属を張り合わせたタイプです。金属とシリコンガスケットの両方の特性を併せ持ち、高い耐久性と高いシール性を発揮します。

3. リジッドコアタイプ

シリコンガスケットの中心にリジッドコア (金属または樹脂製の芯材) を挟んで作られたタイプです。シリコンガスケットの強度を高め、圧縮力に対しても高い耐久性を発揮します。

4. マルチレイヤータイプ

複数のシリコンガスケット層を積層させたタイプです。耐久性とシール性に優れています。

5. 液状タイプ

シリコンゴムを液状状態にしたタイプです。専用のノズルを使って塗布することで、ガスケットとしてのシール効果を発揮します。さまざまな形状に対応可能で、密着するためシール効果が優れています。

ただし、塗布面が平坦でないと密着しないため、塗布面の処理が必要です。また、完全硬化するまでの時間が必要なため、作業はすぐ終わりません。

参考文献
http://www.mohno-dispenser.jp/compass/compass13.html
https://www.henkel-adhesives.com/jp/ja/products/industrial-sealants/liquid-gasket-solutions.html