ポットミル

ポットミルとは

ポットミルとは、研究や実験で用いられる粉砕・混合装置の1種です。

セラミック製の円筒形のポットが回転することで、内部のボールがサンプルを粉砕し、細かく均一な粉体が得られる点が特徴です。ポットとボールには、硬度が高く耐摩耗性に優れた素材が使用されています。

そのため、粉砕中に装置が破損するリスクは極めて低いです。また、耐薬品性が高いので、サンプルの成分によって装置が腐食される心配もありません。これにより、装置の破片や溶出物によるサンプルのコンタミネーションを防ぐことが可能です。

ポットミルの使用用途

ポットミルは、特に細かく均一に混ぜたいサンプルの粉砕に適しており、耐摩耗性・耐薬品性の高いセラミック製のポットやボールが主流となっています。ポットやボールからのコンタミネーションが起きにくく、サンプルを清潔な状態で粉砕できるのが大きな利点です。

産業利用にも適しており、例えば陶芸の釉薬の混合に活用されています。釉薬を均一に混ぜることで、焼き物の仕上がりがより美しく、品質が向上させることが可能です。また、ポットミルはデータ保護の観点からも重要で、USBやフロッピーディスクなどのデータ記憶媒体を完全に破壊することで、データ流出を防ぐ用途で使用されています。

例からも分かるように、ポットミルは多岐にわたる分野で幅広い用途を持ちます。高い粉砕効率と安全性から、今後も様々な産業や研究での活用が期待される重要な装置です。

ポットミルの原理

ポットミルは、ポットが回転することで、内部に入れられたボールが衝突・摩擦を繰り返します。これによって、サンプルを粉砕し、混合される仕組みです。

回転速度や回転時間、ボールの大きさや数などの条件を調整することで、粉砕の粒度や混合の均一性をコントロールできます。また、セラミック製のポットやボールは耐摩耗性・耐薬品性が高いため、サンプルへのコンタミネーションが少なく、粉砕や混合を安全かつ効果的に行うことが可能です。

ポットミルの利点は、効率的な粉砕・混合が可能であることに加え、さまざまなサンプルに対応できる汎用性も挙げられます。

ポットミルの構造

ポットミルはポット、ボール、本体から成ります。

1. ポット

セラミック製の円筒形です。粉砕したいサンプルとボールを入れます。

2. ボール

材質はアルミナジルコニアナイロンなどです。サンプルと共にポットへ入れます。

3. 本体

2本の回転シャフトが水平に配置されており、この上にポットを乗せて回転させます。

ポットミルのその他情報

1. ポットミルの使い方

  1. ポットにサンプルとボールを入れ、フタを密閉してネジで固定します。
  2. 本体の回転シャフト上に、ポットを横向きにして置きます。
  3. シャフトを回転させるとポットが回ります。内部ではボールとサンプルが攪拌され、衝突のエネルギーでサンプルが砕かれます。回転速度を調整できる場合は、安全のため低速から始めて、徐々に回転速度を上げていくと良いです。
  4. シャフトを止めてからポットを開けます。「ふるい」を使って、粉砕されたサンプルを回収します。

ボールは摩耗しにくいため、洗浄して再利用可能です。ただし使い古したものは、表面に欠けやひび割れがないかを毎回確認してください。

2. ポットミルとボールミルの違い

ポットミルと意味の似た言葉に、「ボールミル」というものがあります。ボールミルとは、金属やセラミックのボールを使って物を粉砕する機器の総称であり、「ポットミル」よりも広い概念です。厳密な分類基準があるわけではありませんが、ボールミルのうち小型の機種が「ポットミル」と呼ばれる傾向があります。

ボールミルの中には、粉砕室の容量が数百〜数千Lにも達する大型機種も存在します。大型の工業用ボールミルは粉砕能力が高く、粉砕・混合する以外に、圧力によって物性を変化させる目的でも使用される点が特徴です。なお、工業用ボールミルの主な用途は以下の通りです。

  • アスファルトやセラミックの原料を作るため、鉱物を均一に粉砕する。
  • 製剤工場において、医薬品原薬を粉砕して賦形剤と均一に混合する。
  • 粘土や顔料を、均一な粘性になるよう十分に練る。
  • 結晶のアモルファス化
  • 電子部品の製造に使われる半導体の均一化

3. ポットミルのボール粒径

ボールの粒径は、粉砕の細かさや粉砕後の物性に影響します。卓上ポットミルに使われるボールは、大きい物で直径2cm前後、小さいものでは1mm未満のものまで幅があります。一般的傾向として、ボールの直径が大きいほど粗い破砕になり、直径が小さいほど細かい粉砕が可能です。

粒径が大きいボールは落下のエネルギーが大きいものの、ボールどうしの隙間が大きいため、摩擦による粉砕効率は低下します。一方、粒径の小さいボールは落下のエネルギーは小さいものの、ポットが回転する際の遠心力で粉砕のエネルギーが増強されるのが特徴です。さらに、ボールどうしが密着しているため、摩擦力による粉砕が進みます。

微細なボールで粉砕した場合、摩擦熱による物性変化に留意が必要です。例えば、結晶性の物質を処理した場合、高い圧力で粉砕されることでアモルファス化し、熱伝導性や反応性が変わる場合があります。

物性を変えることなく粉砕したい場合は、ボールの粒径を変えて粉砕試験を行い、目的にかなうボール粒径を選択することが必要です。

参考文献
https://www.mitsuwa.co.jp/products/detail/nanomech/
https://www.aimex-apema.co.jp/case/2018/05/09/103

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