ダストシール

ダストシールとは

図1. ダストシールの使用

ダストシールとは、外部からの有害な粒子の侵入を防ぎ、パッキンや軸受を保護するために使用されるシール材です。

ダストシールという名前の通り、「ダスト=ゴミ、ホコリ、粉じん」を「シール=封じる、密閉する、内部の侵入を防ぐ」もので、別名で「パッキン」と呼ばれることもあります。産業機械から自動車部品まで様々な分野で使用され、主に摺動する部位に取り付けられます。具体的には、回転運動するシャフトや直線運動するシリンダなどです。

各種機械の可動部には、スムーズな動作、寿命や信頼性の確保が重要です。このため、ダストシールには、動作温度・想定される有害物質・機械的な強度などに応じた、様々な材質や形状があります。また、ダストシールは装置の一番外側で内部を守るためにも使われており、その場合は定期的な交換が必要です。

ダストシールの使用用途

ダストシールは、産業機械や自動車、航空・宇宙産業に至るまで、幅広い分野で使用される重要な部品です。稼働する部品の隙間からの異物の侵入を防ぎ、システムの寿命、性能、信頼性を確保しています。これにより、保守のためのコスト低減や機械システム全体の効率向上を図ることが可能です。

産業機械の分野の代表的な例では、ポンプやギアボックス、電動アクチュエータに代表されるモータなどが挙げられます。特に回転軸を含む部品で、ほこりや汚れなどの汚染物質にさらされると、摩耗が加速し、効率の低下が引き起こされます。また、CNCマシンなどの加工機では、加工精度の低下につながります。

1. 自動車分野

自動車の分野では、車軸のベアリング、サスペンション、駆動系などに使用されています。どの部位もほこりや汚れ、湿気などの影響を受けやすい環境です。これらを保護することで機能が確保され、車両の安全性を確保できます。

2.  航空・宇宙分野

航空・宇宙の分野では、シール性が非常に重要です。
液圧および空気圧で動作するアクチュエータには、シームレスな機能を確保するために、汚染物質がない環境が要求されます。

ダストシールは外部からの有害物質の侵入を防ぐために使用されますが、さまざまな機械システムの寿命、性能、信頼性を確保する重要な役割を果たしています。

ダストシールの原理

図2. リップシールによる保護

ダストシールの基本的な原理は、粒子、ほこり、汚れ、湿気、汚染物質などの外部物質から、機械部品を効果的にシール (保護) するという考えに基づいています。また、このシールは可動部に取り付けられるため、摩擦にも考慮した設計をしなければなりません。シール性と低摩擦性の両方を、バランスよく確立した機能の確保が求められます。

このバランスを確保するために、ダストシールの断面形状が「リップ」形状になっているものと、まるで迷路のような内部構造をもつ「ラビリンス」形状があります。

ダストシールの種類

図3. リップシールとラビリンスシールの構造の例

ダストシールは、「リップ形状」と「ラビリンス形状」に大別されます。

1. リップ形状

一般的なオイルシールは、リップ形状を持つものです。柔軟なリップが回転軸または部品に接触し、外部からの侵入をリップがはじき返すことで、シール性を確保します。

リップ部は摺動を受けるため、これによる摩擦と熱の発生を減少させる潤滑が必要となる場合があります。材料はさまざまで、耐久性、柔軟性、環境要因への耐性を考慮した選定が必要です。

2. ラビリンス形状

ラビリンスシールは、高速回転やより過酷な環境下にさらされる機械に使用されます。ラビリンスシールは内部に迷路のような障壁が存在し、有害物質がシール内部を通過するのを防止しています。

リップシールと比較すると、ラビリンスシールは、初期コストは高いものの、シール性と耐久性に優れていることが特徴です。ダストシールの多くは、圧入によるはめ込み式のため、装着方向を間違えないように注意が必要です。

ダストシールのその他情報

1. ダストシールの材質

ダストシールの材質として、主にゴム系材料が使用されます。代表的なものは、ニトリルゴムウレタンゴムフッ素ゴムなどで成形されています。

ニトリルゴムを使用したダストシール
ニトリルゴムは安価で汎用性が高いことが特徴です。一方で、耐候性や温度条件には制限があります。特に、直射日光に弱く日光の当たるところで使用すると劣化しやすいところが欠点です。

ウレタンゴムを使用したダストシール
ウレタンゴムは、合成ゴムの中では一番耐摩耗性に優れることが特徴です。機械強度が大きく弾性力が高くエネルギー吸収力が高いため、激しい動きを伴う工業用品に使用される傾向があります。

フッ素系ゴムを使用したダストシール
フッ素ゴムは薬品に強く熱に強い特徴があるため、油圧シリンダや屋外用途で使われます。

2. ダストシールの製造

ダストシールは、金型でプレス成形して製造します。ゴム原料と硬化剤、あるいは配合剤を練り合わせ、コンパウンドと呼ばれるゴム材料を作成します。ゴム材料を金型に流し込み、熱と圧力をかけ、硫黄による架橋反応、加硫と成形を同時に行います。

成形されたダストシールを金型から取り出しバリを取りを行い、さらに加熱して二次加硫を行うという流れです。

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