クリンプ金網

クリンプ金網とはクリンプ金網

クリンプ金網とは、波状の線材を縦横直角に編み上げた金網のことです。

クリンプ (crimp) は、繊維のちじれを意味します。ウールや綿などにもあり、素材に保温性や弾力性を高める役割を担っています。クリンプ金網の場合は、金網が大きな荷重を受けた際に線材が変形し、荷重エネルギーを吸収するのが役割です。

クリンプ金網に使われる線材の波状のクリンプ形状は、線材を歯車に通すことによって成形します。つまり歯車のピッチが、線材に転写されます。波状に加工された線材は、目崩れしにくくなるのが特徴です。また、使用される線材は、亜鉛メッキ線、ステンレス戦、線、ビニール被膜線、鉄線などがあります。

さらに、これらの金網を二次加工することによって、補強した溶接金網や焼結金網、圧延金網などもあります。なお、クリンプ金網の仕様は「JIS G 3553:2002 クリンプ金網」として規格化されています。

クリンプ金網の使用用途

クリンプ金網は、主に建築や土木分野において、落下防護柵として使用されます。河川における人工的な斜面の法面 (のりめ) の地滑りや、斜面崩壊防止のために設置しています。

私たちの身近でみられるクランプ金網の例は、焼肉の焼き網です。建築における床材や砕石のふるい、農業、園芸における脱穀や土のふるいなどにも使用されます。一般生活用品では、間仕切りやフェンス、ベンチ、食品用のカゴや揚げ物用の油切りなどが挙げられます。

クリンプ金網の原理

クランプ金網がエネルギーを吸収する原理は、線材の引張りと、線材同士の摩擦によるものです。つまり、金網の線材が延びつつ、鋼線の交点でエネルギーを吸収します。

クリンプ金網が線材の引張りによってエネルギーを吸収しますが、ひし形や亀甲形状の場合は、伸びることでエネルギーを吸収します。吸収エネルギー量で比較すると、ひし形金網とクリンプ金網が、ひし形金網よりも大きなエネルギー量を吸収可能です。

ある試験によると、吸収エネルギーには2倍程度の差が確認されました。一方で、最大荷重で比較すると、ひし形金網と亀甲金網が、クリンプ金網よりも大きな荷重を受けることができます。

クリンプ金網のその他情報

1. クリンプ金網以外の金網

クリンプ金網以外にも、エネルギーを吸収するための金網があります。

ひし形金網 (JIS G 3552)
ひし形金網は、2本の鋼線が互いにジグザグしながら、網目がひし形になるように編んだ金網です。一般的なフェンスや防球ネット、落下防止柵として広く利用されています。

亀甲金網 (JIS G 3554) 
亀甲金網は一般的に、鋼線を3回ねじり合わせた上で、六角形状の網目になるように編んだ金網です。鋼線同士がねじりねじり合わされていることによって、目が動かず外れることもありません。

主に建築用の保護材、家畜舎や防鳥用ネット、ゴルフ練習場の防球網などとして用いられています。

2. クリンプ金網と他の金網との違い

クリンプ金網とひし形・亀甲の大きな違いは前述した通り、エネルギーの吸収方法です。その他、網目の大きさも違いとして挙げられます。

クリンプ金網は線材のクリンプ  (波状)  部分で交点を保持するため、線径が小さい線材であっても、比較的大きな網目の金網の柵が可能です。ただし、網目の大きさが線径の20倍を超えると、網目自体の安定性が失われます。

しかし、クリンプ金網は線径の4倍以上の網目からしか作成できません。線径の4倍よりも細かい網目が必要な場合には、平織の金網を使用します。なお、クリンプ金網のサイズや性能を表す名称は下記の通りです。

  • メッシュ (N) : 網目の単位で1インチ (25.4mm間) の網目の数
  • 線径 (d) : 線の直径
  • 開き目 (w) : 線の間隔
  • ピッチ (p) : 線の中心間距離でピッチ=線径+開き目
  • 空間率 (開孔率)  : Ao線の全面積に対しての網目の空間割合

参考文献
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2015/70-01/70-01-0264.pdf
https://www.kanaamiya.net/index1119.html
http://www.iseya-k.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2019/09/wire-mesh-catalog-vol13-s.pdf
https://kikakurui.com/g3/G3553-2011-01.html

クラリファイヤ

クラリファイヤ

クラリファイヤ

クラリファイヤとは、異なる物質が混在している溶液を分離し、澄み切った液 (清澄液) を取り出すための装置です。

特に固体と液体が混ざっている溶液に対して固液分離を行うために利用され、沈降装置および遠心沈降機などがあります。遠心沈降機は、回転時の遠心力を使って分離するため、凝集剤などの添加物を加える必要がありません。添加剤が不要なため、コストが低く、また溶液の変質も抑えることができます。また、回転の速さを変えることで、色々な溶液への対応が可能であり、清澄液の品質も自由に変化させることが可能です。

クラリファイヤの使用用途

クラリファイヤは、洗浄水や工場排水、上下水などにおける浄化に用いられる他、食品工業や化学工業、製薬業界における固液分離などに用いられます。下記は、主な用途例です。

1. 浄水施設

下水処理施設や工場の排水処理施設などの浄水施設において、利用される沈殿池はクラリファイヤの一種です。沈殿池に注ぎ込む汚れた水には泥やバクテリアが含まれており、きれいな水にするには異物を取り除く必要があります。クラリファイヤにより異物を沈殿させ、上澄みの水を取り出すことが可能です。取り出した水は消毒されて浄水として利用されます。

2. 食品工業

食品工業におけるクラリファイヤの用途の中で、最も代表的なものの1つが牛乳の製造です。牛乳製造において用いられるクラリファイヤは遠心分離を利用したものです。牛乳に含まれている不純物 (バクテリア、体細胞、赤血球、わらや種、砂や泥、牛の毛など) の除去に使われます。

その他では、他にもホエイ (乳清) から油分を取り除いて清澄液を取り出したり、植物由来の飲料において清澄液を取り出したりするためにも使われています。

クラリファイヤの原理

前述の通り、クラリファイヤには重力を用いた自然沈降による装置 (沈殿池など) や、遠心分離の仕組みを用いた装置があります。

重力のみを用いた自然沈降の場合、分離までには多くの時間がかかります。一方、遠心分離型のクラリファイヤを使った沈降では、自然沈降の数千倍の重力加速度がかかるため、短時間で分離が可能です。

1. 遠心分離型のクラリファイヤ

遠心分離型では、回転する容器内で遠心力がかかることを利用して、比重・質量の異なる物質を分離しています。クラリファイヤを構成する主な部品には下記のようなものがあります。

  • 回転ドラム:遠心分離を行う混合物を充填する部品です。回転速度に応じて遠心力が発生します。
  • スクリューコンベア:固体堆積物をドラム外へ搬出します。
  • 調整リング:分離効率を向上させるために、澄明液と濃縮液の界面位置を調整する部品です。
  • スピンドル:モータからの動力を伝達し、ドラムを回転させるための軸です。

遠心分離型のクラリファイヤは、小さい粒子径の物質も分離が可能であるという特徴があります。また、スクリューコンベアで固体が搬出される装置は、自動で固体が搬出されるため、連続的に処理を行うことが可能です。

2. 遠心力の原理

遠心力とは回転させた時に発生する慣性力です。慣性力の働きにより、回っている方向に対して外側の力が発生します。発生する外側への力により、重い物体 (固体) が引っ張られて沈降しやすくなります。

遠心力は回転速度と回転の中心から物体までの距離 (回転半径) が影響しており、回転速度と回転半径が大きいほど遠心力が大きくなる力です。

クラリファイヤの種類

前述の通り、クラリファイヤには大きく分けて重力を用いた自然沈降を用いる種類と、遠心力を用いる遠心分離型の種類とがあります。遠心分離型のクラリファイヤには、いくつかの形状があり、代表的なのは分離板型と円筒型です。その中でも種類が細かく分かれています。

用途別では、飲料や牛乳の清澄液分離に特化したものの他、水処理用の製品などがあります。対象となる溶液や清澄液の取り出し具合で適切な種類や形状が異なります。目的に合わせたものを選定することが必要です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/scej/2006f/0/2006f_0_255/_pdf/-char/ja
https://www.jfe-eng.co.jp/products/aqua/sup02.html
https://www.city.kawasaki.jp/800/page/0000083497.html
https://www.tetrapak.com/ja-jp/solutions/processing/main-technology-area/separation/tetra-pak-clarifiers
https://www.tomo-e.co.jp/machinery/centrifuge/separation.html
https://iss.jaxa.jp/iss_faq/pys/pys_003.html
http://www.saito-separator.co.jp/separator_classification.html

カーブコンベア

カーブコンベアとは

カーブコンベア

カーブコンベア (英: Curve conveyor) とは、物品の搬送方向の転換が必要となる箇所で物品を移動させる装置のことです。

物品を頻繁に移動させる分野で主に用いられています。効率よく物品の方向転換や分岐を行うことで、物品の運搬作業の省力化に寄与します。

カーブコンベアには、カーブ専用に設計されているローラーやベルトを用いたものがあり、JIS B 0140に規定されています。

カーブコンベアの使用用途

カーブコンベアは、搬送方向が異なる2つの直線搬送ラインを連結する必要がある交点部分に設置され、部品を方向転換する機能を果たします。物品を限られた敷地内で水平移動させる場合には、物品の方向転換が必要です。

具体的には、流れ作業によって自動車や電子機器、食品を製造する製造ラインでさまざまな部品や食材などを搬送するために使用されます。また、倉庫や搬送センターなどの物品の搬送ラインで物品の搬送や仕分けを行うためにも有用です。私たちが普段生活をする中でカーブコンベアを最もよく見かける場所として、回転寿司の店内や空港の荷物受取場などが挙げられます。

カーブコンベアを用いる場合は、遠心力によって物品がカーブの外側に向かって移動していきます。物品の落下を防止するために、円弧状に加工したガイドレールも一緒に設置されるのが一般的です。

カーブコンベアの原理

カーブコンベアは大きく3つに分けられ、それぞれ原理が異なります。

1. カーブローラーコンベア

カーブローラーコンベアは、直線状のローラーコンベアを円弧状に作り替えた構造をしています。ローラーコンベアでは、円弧状に配列される複数のローラーが使用されます。

ローラーは、ストレートローラーまたはテーパーローラーです。ストレートローラーの外径は一定になっています。テーパローラーは、カーブの内側で外径が小さく、かつカーブの外側で外径が大きくなっているのが特徴です。

カーブローラーコンベアには、ローラーを回転させるモーターが設置されているものとモーターが設置されていないものがあります。モーターが設置されていないローラーコンベアの場合、運搬物の移動に伴ってローラーが従動的に回転します。

カーブローラーコンベアでは構造上、ローラーの間隔以上の運搬物しか搬送できません。一方で、安価かつ大型のものが作成できることから、カーブローラーコンベアは重量物や段ボールを用いた運搬物に適用されます。

2. カーブベルトコンベア

カーブベルトコンベアは、円錐状に形成される連続的なベルトをテーパーの付いたプーリーに掛け渡した構造をしています。ベルトは、カーブの曲率に合わせて円錐状に加工されたカーブベルトです。カーブベルトコンベアには動力源として、モーターが付いています。

重量物を搬送する場合には、主に下流側のプーリーをモーターで回転させることによってベルトを動かす「ヘッド駆動方式」が採用されます。2プーリー駆動方式として、上流側のプーリーも回転させることによって、カーブベルトコンベアを逆回転仕様にしたり、運搬物の搬送力を高めたりすることが可能です。

軽量物や逆回転が必要な運搬物を搬送する場合には、上流側のプーリーと下流側のプーリーの間にベルト駆動用のプーリーを設けて、モーターとインバータを設置する中間駆動方式が採用されることがあります。

3. トップチェーンコンベア

トップチェーンコンベアは、トッププレートを有する連続的なトップチェーンをスプロケットに掛け渡した構造をしています。トップチェーンを動かすための駆動源として、モーターが付いています。

トップチェーンコンベアの場合、カーブ部分でトッププレートの重なり状態が変動します。回転寿司の店内や空港の荷物受取場で見かけるカーブコンベアはトップチェーンコンベアです。

カーブコンベアの選び方

カーブコンベアを選ぶ際は、運搬物の種類やメンテナンス性を考慮することが大切です。

1. 運搬物の種類

ローラーコンベアは下面が平らな運搬物の搬送には適していますが、下面に凹凸がある運搬物や袋状の運搬物の搬送には向いていません。一方、ベルトコンベアやトップチェーンコンベアでは下面が平らな運搬物はもちろん、下面に凹凸がある運搬物や袋状の運搬物の搬送も可能です。

また、ローラーコンベアやトップチェーンコンベアは、粒状の運搬物の搬送に向いていません。この場合、ベルトコンベアの使用が適しています。

2. メンテナンス性

ベルトコンベアではベルトのテンション調整を定期的に行い、トップチェーンコンベアではチェーンへの給油を定期的に行う必要があります。そのため、ベルトコンベアやトップチェーンコンベアのメンテナンス性は良くないです。一方、ローラーコンベアはそのような調整が不要でメンテナンスが容易と言えます。

参考文献
https://forbo.blob.core.windows.net/forbodocuments/10183/FSJ-19.pdf

カプセル充填機

カプセル充填機とは

カプセル充填機

カプセル充填機とは、対象になる物質をカプセルの中に詰めて密封する装置です。

カプセルに詰めるものとして、液体、粘体、粉末、顆粒、ペレットなどがあります。詰める充填物の形状や色など、性質を問わず利用できます。製造の工程上、カプセル作成は錠剤作成よりも内容物を傷つけにくいため、デリケートな材料にも適用しやすいです。

薬など医療品分野での使用が多いが、最近では健康補助食品に使われるなど、食品関連でも用いられています。

カプセル充填機の使用用途

カプセル充填機は医療品や食品で用いられることが多く、利用する場面や内容物によって使われる装置に違いがあります。

1. 卓上型

卓上サイズのカプセル充填機です。専用のプレートにカプセルをセットし、バキュームを利用してカプセルを分離します。更に別のプレートに充填する物質を入れ、分離したカプセルが入っているプレートで挟みこむことで、充填が完了します。

手軽に使えるため、家庭や研究室など、少ない数で済む場合に使われます。

2. 全自動型

カプセル分離から充填まで、全て装置が実施するタイプです。大量かつ高速充填が可能になります。特性を利用して工業スケールで用いられることが多いです。医療品や食料などの充填に多く使われます。

カプセル充填機の原理

1. カプセル充填のプロセス

  1. カプセルを開く
    カプセルは2種類のボディが組み合わさることで、封がされています。物質を充填するためにカプセルの分離を行います。バキュームで吸引されることで分離可能です。
  2. 充填
    分離したボディの片方に、物質を充填します。
  3. カバー(シーリング)
    充填したボディに対して、空のボディでカバーをします。
  4. 排出
    カバーが実施され完成したカプセルを排出し、製品となります。

2. 充填方式

タンピング式
充填する物質に強い圧力をかけて、カプセル内に押し込む方法です。圧力をかける時には、タンピングピンと呼ばれる、細長い棒が使われます。高速生産に向いておりよく使われますが、圧力をかけるため、物質に負担がかかりやすい方法でもあります。

オーガー式
ホッパーを使って充填する方法です。ホッパー内のスクリューにより物質が押し出され、ボディ内に充填されます。充填後は空のボディとプレートで挟みこまれて封がされます。

圧力をかけると壊れてしまうような、タンピング式では利用しにくい物質にも使うことができます。特に食品向けで使われることが多いです。

カプセル充填機の種類

充填機には、重量式充填機・ピストン式充填機・ロータリー式充填機・チューブポンプ式充填機・スクリュー式充填機・マス式充填機などがあります。大きく分けると重量で計る計量式と、容積で計る容積式とになります。

1. 計量方式による分類

計量方法により、重量式・容量式・質量流量式に分けられます。

重量式充填機
秤を使って充填物の重量を測る方式です。秤の上にカプセルを搭載し充填量を測ります。規定重量になる直前に充填を停止します。特徴は、カプセルの重量の影響がなく、正味の重量を正確に測定できることです。

容量式充填機
容量式は秤や流量計がありません。充填後に重量チェッカーで計量します。カプセルやキャップの重量を含めた総重量でチェックします。

質量流量式充填機
充填物が液体や粉末の場合に使用し、流量センサーにより質量充填量を測定します。充填物の正味流量が計測可能です。ただし、質量を重量に換算する数値を入力する必要があります。

2. 充填物による分類

充填物の状態により、液体・粘体・粉末に分けられます。

液体充填機
サラサラな液体の充填に使う充填機です。液体充填機には、重量式充填機、容量式充填機、チューブポンプ式充填機などがあります。容量式にはピストンポンプ式、ロータリー式などが使われます。

チューブポンプ式はぺリスター充填機とも呼ばれ、シリコンチューブをローラーで規定の回転数分だけ押しつぶして充填する方式です。洗剤などの充填液に接するのはチューブのみであり、洗浄性が優れています。

粘体充填機
シャンプーなどの粘体を充填する装置です。重量式や容量式の充填機が使われます。容量式充填機はピストン式・ロータリー式などです。

ピストン式はシリンダ内に設定料の充填物を吸引後、弁を開けてカプセルに充填する方式です。この方式は充填量の精度が高く、構造もシンプルであり、多く使われています。

粉末充填機
小麦粉などの粉末状の充填物の場合に使う充填機です。粉末充填機には、スクリュー式・マス式などがあります。スクリュー式はスクリューの回転量により充填量の調節が容易である特徴があります。

参考文献
https://sankyohd.com/healthsup/hardcapsule/
http://www.qualicaps.co.jp/machine/capsule.html#
http://ja.trustarpack.com/info/tamping-pin-type-capsule-filling-machine-worki-37332969.html
https://www.healthy-pass.co.jp/information/factory_tour/hardcapsule_2/

オイルシート

オイルシートとはオイルシート

オイルシートとは、家庭や工場で発生した余分な油を吸収するためのシートです。シートの中には細かい隙間が沢山あり、その隙間に油が入り込むことで吸収できます。

名前の通り油を吸収するのが主な目的ですが、製品によっては水分も同時に吸収できるものもあります。

材質は天然繊維で作られているものもあれば、化学繊維で作られているものもあります。

オイルシートという名前だけではなく、油吸収材、オイルキャッチャーなどという名前でも販売されています。

オイルシートの使用用途

オイルシートは工業分野や食品分野で利用されています。

  • 工業
    使われることが多いのが、自動車関係です。
    自動車は動力源となるガソリンとは別に、部品を潤滑に動かすためのオイルが貯蔵されています。エンジンオイルは劣化するため、定期的な交換が必要になります。
    廃オイルは量があるため、床などに漏れると後処理が大変になります。そのためオイルシートを用いて吸収し、外に漏れないように処理します。
  • 食品
    スーパー等の惣菜、特に揚げ物に対して使われています。
    揚げ物は揚げてから放置していると、自身から出る油が染みてしまい、サクサク感が弱まります。揚げ物の下にシートを敷くことで油を吸収し、サクサク感をキープします。

オイルシートの原理

オイルシートには細かい隙間があり、その隙間に油が入り込みます。

オイルシートの材料には大きく分けて、コットンとポリプロピレン(PP)樹脂があります。

  • コットン
    コットンは天然繊維であり、セルロースと呼ばれる物質を主成分としています。セルロースの表面には親水基が付いており、水の吸収に対して大きな効果を発揮します。そのため油分だけではなく、水分も一定量吸収する必要がある用途に対して使われています。
    セルロース単体では油分の吸収が弱いため、加工処理が施される場合もあります。
  • PP樹脂
    PP樹脂は化学繊維であり、非常に油に対して馴染みがいいです。特性から油をメインで吸収する場合に用いられます。
    PP樹脂は炭化水素と呼ばれる、炭素と水素で形成されている化合物です。炭素の数が多くなるほど油と馴染みが良くなります。PP樹脂は炭素の数が大量にあるため、油との相性がいいです。
    炭化水素は基本的に親油性ですが、表面に親水基が付いている場合、油への馴染みが落ちることがあります。PP樹脂は全く親水基がないため、油の吸収に大きな効果を発揮します。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/vona2/s_cate/油%20吸収%20シート/
https://www.askul.co.jp/p/K085390/
http://y-syoko.com/oilseeat.htm
https://www.autobacs.com/static_html/shp/knowledge/oil.html
http://www.kinseiseishi.co.jp/doc/kinsei_Commodity_11.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/transjtmsj1972/38/1/38_1_P18/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber1944/48/10/48_10_P537/_pdf/-char/en
https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/lab-plasticware-supplies/plastic-material-selection/polypropylene-pp-labware.html

エルボ

エルボとは

エルボ

エルボとは、配管流路を90度もしくは45度に曲げるための配管継手の一種です。それぞれ90度エルボ、45度エルボと呼びます。似た配管継手としてベンドがあり、エルボとは製造方法が異なる点が特徴です。

エルボは周辺環境や口径によって接続方式が変わります。配管開放を想定される際はフランジ接続、洗浄を頻繁に行う場合はヘルール接続、漏れを防ぎたい場合は溶接接続など、複数種類あります。

エルボの使用用途

エルボは配管の向きを変えるときに使用します。例えば、日常生活では上下水道配管などで見られ、産業用としても、工場用水配管などに多用されます。

エルボによって圧力損失が発生するため、数を極力減らすために、ファニングの式によって考慮した設計が必要です。

エルボにはロングエルボとショートエルボの2種類が存在します。ショートエルボは曲率半径が小さいため省スペースです。ロングエルボは曲率半径が大きい反面、安価に入手可能です。一般的には、ロングエルボが用いられます。 

エルボの原理

エルボの作動原理は、曲がる箇所で流体を減速させることで流体の流れを曲げることです。エルボは配管内部の流体の流れを適切に制御し、配管システムを正常に機能させるために必要な役割を果たします。

エルボは材質によって、クロムニッケルなどの金属が使われます。材質によっては、耐食性や耐摩耗性が高く、繰り返しの使用にも耐えられることが特徴です。

また、エルボの接続方式には、ねじ込み式や溶接式があります。ねじ込み式は、配管にねじ込むことで接続する方法で、取り外しが容易ですが、強度が低く、漏れの原因になることがあります。一方、溶接式は、配管同士を溶接することで接続する方法で、強度が高く、漏れの心配が少ないですが、取り外しが難しいという欠点があります。

エルボのその他情報

1. エルボの材質

エルボには材質によって様々な種類の継手があります。一般的に用いられるのは可鍛鋳鉄製です。材料の色から黒継手と呼ばれます。また同じ材質で溶融亜鉛メッキ加工を施した継手を白継手と呼びます。

腐食を防止したい場合はステンレス製の継手を用います。クロムやニッケルの含有量などでSCS13(SUS304相当)やSCS14(SUS316相当)など多種多様です。

2. エルボとチーズ

配管の角度を変えるエルボのほかに、配管を分岐させるチーズがあります。チーズはティーズ、ティーとも呼ばれます。チーズは配管と接続することで、流入してきた液体を分岐させることも可能です。

チーズにもねじ込み式や溶接式などの接続方法があります。チーズに閉止フランジなどを取り付け、エルボとして使用することもできます。

3.エルボと配管の種類

エルボと配管の接続方法として、ねじ込み式と溶接式の2種類があります。

1. ねじ込み式

エルボと配管にそれぞれネジを切る方式です。エルボと配管をねじ込むだけなのでボルトナットが不要です。また、現地溶接も不要なため火気禁止場所でも施工できます。ただし、口径が大きくなるとシールが難しくなる上に施工が困難です。そのため、大口径ではフランジ接続か溶接接続にします。

ねじ込み式エルボは、一般的にはシールテープを巻いて施工されます。シールテープの巻きつけ方向が、締まり方向になるよう施工します。

2. 溶接式

エルボと配管を溶接で接続する方式です。正確な溶接によって漏洩することがなくなります。ただし、溶接工の手腕によって完成度が左右されます。溶接不良などが原因で、腐食が進行する危険性もあります。

エルボとベンドの違い

エルボとベンドは製造方法が異なります。ベンド自体は成形加工したパイプを2次加工して製作します。つまり、パイプを曲げて製作しています。

それに対してエルボは、ハンブルグ曲げ(熱間拡管マンドレル製法)という製法を使用します。鋼管を拡張しながら曲げることで、エルボの内側と外側の肉厚差が出にくい製法です。

参考文献
http://benkankikoh.com/blog/2017/04/27/elbows-molding-theory
https://www.haikanbuhin.com/blog/post-1560/
https://www.avitop.co.jp/faq/faq002/
https://jis.jts-tokyo.com/screwed-type-malleable-cast-iron-pipe-fittings-90deg-elbow-fittings-standards/
https://www.riken.co.jp/products/piping/pdf/catalog/catalog02.pdf

エアプレス

エアプレスとは

エアプレスとは、空圧を動力源とする板金加工機です。

機械式プレス機に分類され、「空圧プレス機」とも呼ばれます。エアプレスは、空圧により金型を上下させる事で金属を加工します。加工スピードが速いことがエアプレスの特徴です。大量生産や高い生産性が求められる工程に適しています。

エアプレスの使用用途

エアプレスは、曲げ、パンチ、切断、リベット接合等で主に使用されます。その他、次のような絞りや深絞り、鍛造、コイニングといった加工に使われています。

1. 絞り

1枚の金属板から継ぎ目のない円筒、角筒、円錐などの容器を作る加工です。

2. 鍛造

鍛造加工の工程でプレス機も一部使用し、他には材料供給装置や潤滑装置など使用するなど、様々な工程があります。

3. コイニング

曲げ角度の精度が求められる時の加工法です。

4. 深絞り加工

絞り加工でも、深型はしわやひずみが生まれやすく難しい加工とされています。具体的には、自動車業界やトレーサビリティのための部品のナンバリングや、大量生産が必要な電気や電子機器、自動車部品のプレス加工に適しています。

エアプレスの原理

代表的なエアプレスは、クランク式プレスです。クランク式の中でも、圧縮した空気を動力とするエアクラッチ式を主流としています。その他、ナックル機構やリンク機構等があります。

1. エアクラッチ式

モータでフライホイールを回転させ、押しボタンなどでクラッチを入れると、クランクに力が伝わります。その力がコネクティングロッドに伝わりスライドを上下運動させます。

特性として静的精度と圧力・トルク・仕事能力が重要です。静的精度とは、スライドとボルスタ (プレス加圧の受け基盤) との真直度、平行度、直角度がプレスの精度のことを指します。

2. クランク機構

クランク状の回転軸による運動からスライドを上下させます。曲げや絞り、鍛造にと幅広く一般的に使用されています。

3. ナックルジョイント機構

下死点 (ストローク最下点) 付近での速度が遅く冷間鍛造プレスに向いてます。

4. リンク機構

クランク機構より、加工時の速度が低下し、スライドの上昇速度は速くなります。そのため加工時の衝撃と騒音、振動が減少し深絞り加工においても成形性を高めています。

5. サーボプレス

機械式プレス機の一種に、サーボプレスがありまず。フライホイールを介さず、サーボモーターで駆動させます。

サーボモーターの場合は回転方向の切り替えが可能で、プレス機のスライド幅を回転と反回転を繰り返すことで、ストローク幅を変える事が出来ます。

エアプレスのその他情報

動力プレスを使用する際の義務

労働安全衛生法では、どのような構造規格のエアプレスも、曲げ、抜き、カシメなどの用途で使用される場合には「動力プレス」と呼びます。動力プレスを使用する事業者には、次のような義務が課せられます。

1. 作業主任者を選任
安全施工令第6条7項には、「プレス機械を5台以上有する事業場」でプレス作業を行う場合、「作業主任者」を選任すべきであると定められています。

「作業主任者」は、プレス機械作業主任者技能講習修了者から選任されます。労働災害を防止するため労働者を指揮し、法令を遵守させることが作業主任者の役目です。

2. 定期自主検査
労働安全衛生規則134条3で、事業者は動力プレスについては、1年ごとに1回、定期に自主検査を行うよう規定されています。同則135条2によれば、自主検査を行ったときは、検査年月日、検査方法、検査箇所、検査結果などの内容を記録し、3年間保存しなければなりません。

参考文献
http://www.nikkin.or.jp/
https://j-fma.or.jp/images/2017/07/fp_guidebbook.pdf
https://www.aida.co.jp/technology/pdf/thesis201410.pdf

エアブローノズル

エアブローノズルとは

エアブローノズル

エアブローノズル (英: Air blow nozzle) とは、圧縮空気やガスを使用して高速で空気を吹き出すためのノズルです。

空気を集中的に吹き出すことで、物体表面から汚れや塵を除去したり、乾燥させたりすることができます。エアブローノズルによって効率良くエアーを消費し、コンプレッサなどの省エネ効果を期待できる場合もあります。

エアブローノズルの使用用途

エアブローノズルは工業用途として広く使用される装置です。自動車産業から食品業界まで広い分野で使用されます。

1. メンテナンス

メンテナンスや清掃に使用される場合は、機械や製品表面の塵埃や汚れを除去します。人の体に付いた埃を払うために使用されることもあります。

2. 物質の冷却

空気によって対象物を冷却する場合があります。樹脂加工成型ラインや鋳物加工品搬送ラインなど、急速冷却が必要なラインに設置されます。空気圧によって異物をはじき出す際などにも利用されます。

3. 自動車産業

自動車産業などでは塗装した表面を早く乾燥させるためにエアブローノズルを使用します。食品加工業界では果物や野菜の乾燥を行うためにエアブローノズルを使用します。紙幣や衣類の乾燥に使用されることもあります。

エアブローノズルの原理

エアブローノズルは一般的に、圧縮空気やガスが注入された狭い管から広い開口部に向かって流れるように設計されます。この狭い管部分はノズルスロートと呼ばれ、圧縮空気が速度を上げて加速します。ノズルスロートから広がる先端部分はノズルディフューザと呼ばれ、ここで空気の速度を減速し、圧力を下げます。

この速度変化によって、エアブローノズルから吹き出される空気は高速で流れることになります。この空気の流れを利用して上記用途に使用するのがエアブローノズルです。

また、エアブローノズルの中には空気の吹き出し方向を調整できる製品もあります。可動部分を調整することで、エアブローノズルから吹き出される空気の流れを調整することができます。

エアブローノズルの選び方

エアブローノズルを選ぶ際には、以下のような点に注意することが重要です。

1. 形状

エアブローノズルの形状は使用目的に合わせて選択する必要があります。細い管状の製品は狭い隙間に入り込んで操作することが可能です。一方、広い扇形の製品は大面積をカバーすることができます。

2. 吹き出し口サイズ

吹き出し口のサイズは使用する空気圧や吹き出し量によって選択する必要があります。一般的には吹き出し口の内径が使用する空気圧の値に比例するように選択します。エアブローノズルの製造元は、吹き出し口の内径と空気圧の関係図を提供している場合があります。

電子メーカーや自動車産業などの分野では、吹き出し口サイズが非常に小さくなる場合もあります。

3. 空気圧

使用する空気圧に応じた選定が必要です。エアブローノズルは、使用頻度や使用環境によってはすぐに劣化してしまうことがあります。

適切な空気圧に合わせて設計されたエアブローノズルを使用することで、エアブローノズル自体の寿命を延ばすことができます。耐久性の高い素材や設計のエアブローノズルを選ぶことも重要です。

4. 配管接続口

エアブローノズルのエアー元配管との接続口も選定する必要があります。配管の口径に合わせて接続口を選定します。また、エアー元圧力に応じた継手・接続方法を選定する必要もあります。

接続の簡便性も考慮する必要があります。ワンタッチ継手などの簡単に接続可能な接続口を選択することで、作業時間を短縮することができます。

5. オプション

エアブローノズルは高速で空気を吹き出すため、誤った使い方をするとけがをすることがあります。適切な安全装置を備えたエアブローノズルを選択することで、安全性を確保することができます。

また、エアー量の調節や噴射・停止を制できるエアブローノズルも存在します。必要なオプションが付いた製品を選定する必要があります。

参考文献
https://www.kirinoikeuchi.co.jp/download/file/catalog/700c.pdf
https://www.spray.co.jp/Literature_PDFs/Japanese/J922J_WindJet_Air_Products.pdf
https://engineer-education.com/machine-design-24_fluid-dynamics3-bernoulli-theorem/
http://www.kogi.co.jp/img/bumon/kikai/transe/mokuji/TX.pdf

アネモマスター風速計

アネモマスター風速計とは

アネモマスター風速計 (英: Anemomaster Anemometer) とは、熱放散の原理を利用した熱式の風速計です。

熱式風速計とも呼ばれます。熱放散とは、加熱された物体を空気中で静置すると、熱が奪われて温度が低下する現象のことです。さらに、空気を動かして気流を発生させて、加熱された物体に吹き付けると、静置した状態の時以上に温度が低下します。

低下した温度と気流速の関係を利用し、風速を計測する仕組みです。風速計には複数の方式がありますが、産業規格としてJIS T8202が定められています。そのため、異なる原理の風速計であっても、比較的安定した結果を得ることができます。

アネモマスター風速計の使用用途

アネモマスター風速計は、定地点での観測に適した風速計です。例えば地下街、工場や事務所などの建築物内の気流速を定期的に測定し、風速値から換気能力等を調査する際に使用されます。

または環境影響調査の一環として、都市のビルとビルの間、森林の上層部と下層部などの風速を明らかにするなども、アネモマスター風速計の用途です。一般家屋では気流の流れを調査して、部屋の快適性の評価や実験室におけるクリーンルームやドラフトの環境管理の場などにも用いられます。

アネモマスター風速計は小型軽量であり、可動部が少ないことから故障も少ないので、幅広く使われている風速計です。

アネモマスター風速計の原理

アネモマスター風速計は、熱拡散を利用しています。加熱された物体が周囲の空気の移動によって、温度が下がる現象であり、放散熱量と風速との関係から風速が導かれます。

   QH = (a+b√U) x (T-Ta) 

  • QH: 放散熱量
  • U: 風速値
  • Ta: 周囲流体の温度
  • T: 熱線 (風速素子) の表面温度
  • a・b: 流体および熱線の形状により決まる定数 

現在のアネモマスター風速計のほとんどは、定温度型風速計です。上式の放散熱量 (QH) と同じだけの熱量を、風速素子と呼ばれる風を受ける素子に与えることから放散熱量を計測し、風速値を求めます。

また、風速素子に与える熱源は電気であり、風速素子が周囲と同じ温度になる時の電圧 (V) と電流量 (I) から、放散熱量QHを求めます。

   V2 = (a + b√U) × (T – Ta) × (RH + r) 2/RH
    I2 = (a + b√U) × (T – Ta) /RH

これらの2式はKingの式と呼ばれ、定温度型熱式風速計の原理となる式です。

アネモマスター風速計の構造

Kingの式から風速を知るためには、風を受けながら周囲と同じ温度を保つ風速素子と風速素子に熱を与えるための電気回路が必要です。風速素子には、温度によって電気抵抗が大きく変化する性質を利用します。

具体的に風速素子に利用されるものは、半導体、サーミスタ、白金線などです。風速素子の一例として、セラミックパイプに細い白金線を巻いて、特殊なコーティングで覆ったものがあります。

コーティングが施されるのは、白金線に空気中を漂うほこりなどの浮遊粉じんが付着すると、白金線の電気抵抗が変化してしまうからです。さらにコーティングによって、風速素子を洗浄することも可能で、長く使用することができます。

また、風速測定用のセンサーは気温の影響を常に受けていることから、風速の変化にのみ従う放熱量を得るには、変化する気温の影響を除去しなければなりません。そのため、気温の変化分を補填する温度センサーを無風部分に組み込むことで、風速のみを算出できるようになります。

アネモマスター風速計の特徴

アネモマスター風速計は、持ち運びが容易であること、コストパフォーマンスにも優れているのが特徴です。風速計にはベーン式風速計、超音波式風速計、ピトー管式風速計がありますが、アネモマスター風速計は風速の計測手法のスタンダードとして、多く利用されています。

参考文献
http://www.kanomax.co.jp/technical/detail_0013.html
http://www.hiyoshidenki.co.jp/hpmatrial/genri.pdf

アッテネータ

アッテネータとは

アッテネータ

アッテネータ (英: Attenuator) とは、入力信号を所望の適切なレベルに減衰させる部品のことです。

Attenuatorの頭文字を取って、ATTと表記されることもあります。主に電子回路で使われる減衰器をアッテネータと呼びますが、広い意味では物理量を低減させる装置全般を指します。例えば、光ファイバ通信網における光パワーレベルを適正範囲に調整する装置である光固定減衰器もアッテネータの一種です。

ただし、本稿では電子部品/機器としてのアッテネータに限定して記します。アッテネータには減衰量が固定型のものと可変型のものがありますが、可変型減衰器は信号ラインのインピーダンス整合を維持したまま、入力信号を任意のレベルに下げることが可能です。なお、アッテネータによる減衰量は、通常デシベル (dB) で表示します。

アッテネータの使用用途

アッテネータは、主に工業計測の分野における計測システムや各種通信機器やレーダー装置など産業用機器で使用されています。民生用では、一部のオーディオアンプの音量調整機構に用いられている例があります。

また、アッテネータは、高周波電力の測定に用いる電力計の入力端子側に組み込むことも主な用途の1つです。受信機から入力される信号がかなり大きなレベルである場合に、適切なレベルに減衰した上で高感度な電力計に入力させることが目的です。

アッテネータの原理

電子回路の信号レベル調整には一般的に可変抵抗器が使われますが、抵抗値を変化すると増幅器の負荷抵抗値も変わることになります。増幅器の出力インピーダンスが十分小さい場合には、負荷抵抗値の変化を無視できますが、インピーダンス整合を前提とした伝送路では抵抗値が変化するとインピーダンスの整合が崩れるため、信号伝送の障害となります。

一方、アッテネータでは増幅器の出力端子から見たときに、アッテネータと負荷の合成抵抗値と負荷のみの場合の抵抗値が等しいことが特徴です。即ち、アッテネータではインピーダンス整合が維持されるので、高周波回路においても信号波形の歪などが発生しません。

アッテネータの基本的な回路構成として、3本の抵抗器をT型に接続したものと、π型に接続したものがあります。T型並びにπ型のアッテネータでは、特性インピーダンスと電圧減衰率を定めると、具体的な抵抗値が比較的簡単に算出できます。また、各抵抗器に流れる電流値も算出できるので抵抗器による消費電力も求めることが可能です。

アッテネーターでは信号を減衰させる際に電力を消費するため、必ず発熱します。従って、定格電力以下で使うよう十分な留意が必要です。特に、大電力を扱うアッテネータでは発熱量が大きくなるので、放熱器を取り付けたパワー・アッテネータの採用も検討することをおすすめします。

アッテネータの種類

1. F型アッテネータ

アンテナの信号の伝送系などで使う一般的なアッテネータです。F型とはテレビなど放送機器や通信機で用いられる75Ω系のF型接栓 (コネクタ) を指します。

コネクタにはこの他に、計測器などに採用されているN型やBNC型、アマチュア無線などで使われるM型もあります。減衰量は一般的に、3dB、6dB、10dB、20dBのものを使う場合は多いです。

2. ネジ止め端子用F型アッテネータ

ネジ止め端子は、片側がネジ止め端子で他方はF型コネクタのオスネジとなっているものです。かつては良く利用されていたネジ止め端子用F型アッテネータですが、最近ではあまり使われません。

理由として、ネジ止め端子はシールドが不完全で、外部からの不要信号が入り込みやすいことが挙げられます。

3. 定インピーダンス型アッテネータ

定インピーダンスのアッテネーターの内部回路は、前項に記した通り、3個の抵抗器で構成されているT型アッテネータもしくはπ型アッテネータです。伝送線路のインピーダンスに合わせて50Ω系か75Ω系、もしくは600Ω系になっています。

定インピーダンス型のアッテネータを使うと、正確な減衰量を得ると共にインピーダンス整合の維持が可能です。信号の反射を防いで、安定な信号伝送を実現することができます。

4. 定インピーダンス型ステップアッテネータ

定インピーダンス型ステップアッテネータは、信号レベルの減衰量をスイッチなどで容易に調整することができます。スペクトラムアナライザーやシグナルジェネレータなどは、定インピーダンス型のステップアッテネータが採用されています。

5. インピーダンス変動型アッテネーター

前述した通り、アッテネータとは定インピーダンスの減衰器のことです。インピーダンス変動型の減衰器をアッテネータと呼ぶこともあります。主に抵抗分割式の単純な構成の減衰回路で、一般的に入力側は高インピーダンス、出力側は低インピーダンスとなっています。

音声信号など周波数の低い電気信号では反射信号はほとんど無視できるので、この様なアッテネータでも問題はありません。しかし、テレビ放送などの高周波信号の場合、インピーダンス変動型のアッテネーターは不整合を起こすため使用不可です。

参考文献
https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/backnumber/2013/08/p060.pdf
https://www.emc-ohtama.jp/emc/doc/006_emc_reference.pdf