アッテネータとは
アッテネータ (英: Attenuator) とは、入力信号を所望の適切なレベルに減衰させる部品のことです。
Attenuatorの頭文字を取って、ATTと表記されることもあります。主に電子回路で使われる減衰器をアッテネータと呼びますが、広い意味では物理量を低減させる装置全般を指します。例えば、光ファイバ通信網における光パワーレベルを適正範囲に調整する装置である光固定減衰器もアッテネータの一種です。
ただし、本稿では電子部品/機器としてのアッテネータに限定して記します。アッテネータには減衰量が固定型のものと可変型のものがありますが、可変型減衰器は信号ラインのインピーダンス整合を維持したまま、入力信号を任意のレベルに下げることが可能です。なお、アッテネータによる減衰量は、通常デシベル (dB) で表示します。
アッテネータの使用用途
アッテネータは、主に工業計測の分野における計測システムや各種通信機器やレーダー装置など産業用機器で使用されています。民生用では、一部のオーディオアンプの音量調整機構に用いられている例があります。
また、アッテネータは、高周波電力の測定に用いる電力計の入力端子側に組み込むことも主な用途の1つです。受信機から入力される信号がかなり大きなレベルである場合に、適切なレベルに減衰した上で高感度な電力計に入力させることが目的です。
アッテネータの原理
電子回路の信号レベル調整には一般的に可変抵抗器が使われますが、抵抗値を変化すると増幅器の負荷抵抗値も変わることになります。増幅器の出力インピーダンスが十分小さい場合には、負荷抵抗値の変化を無視できますが、インピーダンス整合を前提とした伝送路では抵抗値が変化するとインピーダンスの整合が崩れるため、信号伝送の障害となります。
一方、アッテネータでは増幅器の出力端子から見たときに、アッテネータと負荷の合成抵抗値と負荷のみの場合の抵抗値が等しいことが特徴です。即ち、アッテネータではインピーダンス整合が維持されるので、高周波回路においても信号波形の歪などが発生しません。
アッテネータの基本的な回路構成として、3本の抵抗器をT型に接続したものと、π型に接続したものがあります。T型並びにπ型のアッテネータでは、特性インピーダンスと電圧減衰率を定めると、具体的な抵抗値が比較的簡単に算出できます。また、各抵抗器に流れる電流値も算出できるので抵抗器による消費電力も求めることが可能です。
アッテネーターでは信号を減衰させる際に電力を消費するため、必ず発熱します。従って、定格電力以下で使うよう十分な留意が必要です。特に、大電力を扱うアッテネータでは発熱量が大きくなるので、放熱器を取り付けたパワー・アッテネータの採用も検討することをおすすめします。
アッテネータの種類
1. F型アッテネータ
アンテナの信号の伝送系などで使う一般的なアッテネータです。F型とはテレビなど放送機器や通信機で用いられる75Ω系のF型接栓 (コネクタ) を指します。
コネクタにはこの他に、計測器などに採用されているN型やBNC型、アマチュア無線などで使われるM型もあります。減衰量は一般的に、3dB、6dB、10dB、20dBのものを使う場合は多いです。
2. ネジ止め端子用F型アッテネータ
ネジ止め端子は、片側がネジ止め端子で他方はF型コネクタのオスネジとなっているものです。かつては良く利用されていたネジ止め端子用F型アッテネータですが、最近ではあまり使われません。
理由として、ネジ止め端子はシールドが不完全で、外部からの不要信号が入り込みやすいことが挙げられます。
3. 定インピーダンス型アッテネータ
定インピーダンスのアッテネーターの内部回路は、前項に記した通り、3個の抵抗器で構成されているT型アッテネータもしくはπ型アッテネータです。伝送線路のインピーダンスに合わせて50Ω系か75Ω系、もしくは600Ω系になっています。
定インピーダンス型のアッテネータを使うと、正確な減衰量を得ると共にインピーダンス整合の維持が可能です。信号の反射を防いで、安定な信号伝送を実現することができます。
4. 定インピーダンス型ステップアッテネータ
定インピーダンス型ステップアッテネータは、信号レベルの減衰量をスイッチなどで容易に調整することができます。スペクトラムアナライザーやシグナルジェネレータなどは、定インピーダンス型のステップアッテネータが採用されています。
5. インピーダンス変動型アッテネーター
前述した通り、アッテネータとは定インピーダンスの減衰器のことです。インピーダンス変動型の減衰器をアッテネータと呼ぶこともあります。主に抵抗分割式の単純な構成の減衰回路で、一般的に入力側は高インピーダンス、出力側は低インピーダンスとなっています。
音声信号など周波数の低い電気信号では反射信号はほとんど無視できるので、この様なアッテネータでも問題はありません。しかし、テレビ放送などの高周波信号の場合、インピーダンス変動型のアッテネーターは不整合を起こすため使用不可です。
参考文献
https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/backnumber/2013/08/p060.pdf
https://www.emc-ohtama.jp/emc/doc/006_emc_reference.pdf