クラリファイヤ
クラリファイヤとは、異なる物質が混在している溶液を分離し、澄み切った液 (清澄液) を取り出すための装置です。
特に固体と液体が混ざっている溶液に対して固液分離を行うために利用され、沈降装置および遠心沈降機などがあります。遠心沈降機は、回転時の遠心力を使って分離するため、凝集剤などの添加物を加える必要がありません。添加剤が不要なため、コストが低く、また溶液の変質も抑えることができます。また、回転の速さを変えることで、色々な溶液への対応が可能であり、清澄液の品質も自由に変化させることが可能です。
クラリファイヤの使用用途
クラリファイヤは、洗浄水や工場排水、上下水などにおける浄化に用いられる他、食品工業や化学工業、製薬業界における固液分離などに用いられます。下記は、主な用途例です。
1. 浄水施設
下水処理施設や工場の排水処理施設などの浄水施設において、利用される沈殿池はクラリファイヤの一種です。沈殿池に注ぎ込む汚れた水には泥やバクテリアが含まれており、きれいな水にするには異物を取り除く必要があります。クラリファイヤにより異物を沈殿させ、上澄みの水を取り出すことが可能です。取り出した水は消毒されて浄水として利用されます。
2. 食品工業
食品工業におけるクラリファイヤの用途の中で、最も代表的なものの1つが牛乳の製造です。牛乳製造において用いられるクラリファイヤは遠心分離を利用したものです。牛乳に含まれている不純物 (バクテリア、体細胞、赤血球、わらや種、砂や泥、牛の毛など) の除去に使われます。
その他では、他にもホエイ (乳清) から油分を取り除いて清澄液を取り出したり、植物由来の飲料において清澄液を取り出したりするためにも使われています。
クラリファイヤの原理
前述の通り、クラリファイヤには重力を用いた自然沈降による装置 (沈殿池など) や、遠心分離の仕組みを用いた装置があります。
重力のみを用いた自然沈降の場合、分離までには多くの時間がかかります。一方、遠心分離型のクラリファイヤを使った沈降では、自然沈降の数千倍の重力加速度がかかるため、短時間で分離が可能です。
1. 遠心分離型のクラリファイヤ
遠心分離型では、回転する容器内で遠心力がかかることを利用して、比重・質量の異なる物質を分離しています。クラリファイヤを構成する主な部品には下記のようなものがあります。
- 回転ドラム:遠心分離を行う混合物を充填する部品です。回転速度に応じて遠心力が発生します。
- スクリューコンベア:固体堆積物をドラム外へ搬出します。
- 調整リング:分離効率を向上させるために、澄明液と濃縮液の界面位置を調整する部品です。
- スピンドル:モータからの動力を伝達し、ドラムを回転させるための軸です。
遠心分離型のクラリファイヤは、小さい粒子径の物質も分離が可能であるという特徴があります。また、スクリューコンベアで固体が搬出される装置は、自動で固体が搬出されるため、連続的に処理を行うことが可能です。
2. 遠心力の原理
遠心力とは回転させた時に発生する慣性力です。慣性力の働きにより、回っている方向に対して外側の力が発生します。発生する外側への力により、重い物体 (固体) が引っ張られて沈降しやすくなります。
遠心力は回転速度と回転の中心から物体までの距離 (回転半径) が影響しており、回転速度と回転半径が大きいほど遠心力が大きくなる力です。
クラリファイヤの種類
前述の通り、クラリファイヤには大きく分けて重力を用いた自然沈降を用いる種類と、遠心力を用いる遠心分離型の種類とがあります。遠心分離型のクラリファイヤには、いくつかの形状があり、代表的なのは分離板型と円筒型です。その中でも種類が細かく分かれています。
用途別では、飲料や牛乳の清澄液分離に特化したものの他、水処理用の製品などがあります。対象となる溶液や清澄液の取り出し具合で適切な種類や形状が異なります。目的に合わせたものを選定することが必要です。
参考文献
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