アネモマスター風速計

アネモマスター風速計とは

アネモマスター風速計 (英: Anemomaster Anemometer) とは、熱放散の原理を利用した熱式の風速計です。

熱式風速計とも呼ばれます。熱放散とは、加熱された物体を空気中で静置すると、熱が奪われて温度が低下する現象のことです。さらに、空気を動かして気流を発生させて、加熱された物体に吹き付けると、静置した状態の時以上に温度が低下します。

低下した温度と気流速の関係を利用し、風速を計測する仕組みです。風速計には複数の方式がありますが、産業規格としてJIS T8202が定められています。そのため、異なる原理の風速計であっても、比較的安定した結果を得ることができます。

アネモマスター風速計の使用用途

アネモマスター風速計は、定地点での観測に適した風速計です。例えば地下街、工場や事務所などの建築物内の気流速を定期的に測定し、風速値から換気能力等を調査する際に使用されます。

または環境影響調査の一環として、都市のビルとビルの間、森林の上層部と下層部などの風速を明らかにするなども、アネモマスター風速計の用途です。一般家屋では気流の流れを調査して、部屋の快適性の評価や実験室におけるクリーンルームやドラフトの環境管理の場などにも用いられます。

アネモマスター風速計は小型軽量であり、可動部が少ないことから故障も少ないので、幅広く使われている風速計です。

アネモマスター風速計の原理

アネモマスター風速計は、熱拡散を利用しています。加熱された物体が周囲の空気の移動によって、温度が下がる現象であり、放散熱量と風速との関係から風速が導かれます。

   QH = (a+b√U) x (T-Ta) 

  • QH: 放散熱量
  • U: 風速値
  • Ta: 周囲流体の温度
  • T: 熱線 (風速素子) の表面温度
  • a・b: 流体および熱線の形状により決まる定数 

現在のアネモマスター風速計のほとんどは、定温度型風速計です。上式の放散熱量 (QH) と同じだけの熱量を、風速素子と呼ばれる風を受ける素子に与えることから放散熱量を計測し、風速値を求めます。

また、風速素子に与える熱源は電気であり、風速素子が周囲と同じ温度になる時の電圧 (V) と電流量 (I) から、放散熱量QHを求めます。

   V2 = (a + b√U) × (T – Ta) × (RH + r) 2/RH
    I2 = (a + b√U) × (T – Ta) /RH

これらの2式はKingの式と呼ばれ、定温度型熱式風速計の原理となる式です。

アネモマスター風速計の構造

Kingの式から風速を知るためには、風を受けながら周囲と同じ温度を保つ風速素子と風速素子に熱を与えるための電気回路が必要です。風速素子には、温度によって電気抵抗が大きく変化する性質を利用します。

具体的に風速素子に利用されるものは、半導体、サーミスタ、白金線などです。風速素子の一例として、セラミックパイプに細い白金線を巻いて、特殊なコーティングで覆ったものがあります。

コーティングが施されるのは、白金線に空気中を漂うほこりなどの浮遊粉じんが付着すると、白金線の電気抵抗が変化してしまうからです。さらにコーティングによって、風速素子を洗浄することも可能で、長く使用することができます。

また、風速測定用のセンサーは気温の影響を常に受けていることから、風速の変化にのみ従う放熱量を得るには、変化する気温の影響を除去しなければなりません。そのため、気温の変化分を補填する温度センサーを無風部分に組み込むことで、風速のみを算出できるようになります。

アネモマスター風速計の特徴

アネモマスター風速計は、持ち運びが容易であること、コストパフォーマンスにも優れているのが特徴です。風速計にはベーン式風速計、超音波式風速計、ピトー管式風速計がありますが、アネモマスター風速計は風速の計測手法のスタンダードとして、多く利用されています。

参考文献
http://www.kanomax.co.jp/technical/detail_0013.html
http://www.hiyoshidenki.co.jp/hpmatrial/genri.pdf

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