卓上切断機

卓上切断機とは

卓上切断機とは、金属や鉱物などの硬度の高い材質を切断する電動工具です。

精密な切断が可能なうえ、小型で軽量なため、卓上でも使用できるほど取り回しが簡単です。振動が少なく運転音も小さいので、作業環境に左右されないという利点があります。

卓上切断機の砥石材質は、アルミナやダイヤモンドなどさまざまで、特徴はそれぞれ異なります。刃の動きも上下方向や前後方向、揺動切断、可変速切断など、多くの方法があり、用途に応じて適切なものを選ぶことが重要です。金属加工業者や工場の製造ラインなどで広く使用されていますが、DIYやホビー用途にも人気があります。自宅で簡単に切断加工を行うことも可能です。

卓上切断機は、硬度の高い材質を切断する際に必要な高い切削力が特徴です。そのため、切断面が美しく整然としており、加工品質に優れたものが作れます。また、卓上で使用するため、比較的コンパクトなサイズにまとめられ、収納や持ち運びにも便利です。

卓上切断機の使用用途

卓上切断機の主な使用用途は、小型で硬度の高い材質の切断です。具体的には、宝石類や金属片、電子基板やセラミックスなどが挙げられます。また、研究開発の分野でも、試験用や顕微鏡用に金属や材料を切断したり、材料の断面観察や試験片を作成したりするなどの使用用途があります。

工業用途では、自動車部品の加工、航空機部品の加工、建築資材の加工など使用分野は幅広いです。DIYやホビー用途にも人気があり、自宅で金属やプラスチックなどの材料を切断して加工できるため、ジュエリー作りやミニチュアの製作などにも使用されています。

卓上切断機の原理

卓上切断機は、切断刃で対象物を切断します。切断刃の下部が冷却液に浸かり、切断時に発生する高温を冷却液が吸収することで、刃と加工対象物の接触面に常に冷却液が入り込みます。そのため、加工対象物に焼けや変形などが起こらずに美しい切断面を加工することが可能です。

卓上切断機の切断方法には、上下や前後の運動による切断刃、揺動切断、可変速切断などがあります。上下や前後の運動による切断方法では、刃を対象物に接触させ、刃を運動させることで対象物を切断します。揺動切断では、刃を揺動させることで常に切断部分と刃が接触する面に冷却液が入り込みます。可変速切断では、回転速度を変えることで、加工対象物の硬度に合わせた加工が可能です。

卓上切断機のその他情報

卓上切断機と併用する機械

卓上切断機は、小さな部品や材料の切断に適した精密加工機ですが、単体で完結するわけではありません。実際の加工現場では、マイクロスコープや研磨機、研削機、洗浄機、乾燥機などと併用します。

卓上切断機は、1つの工程として使われることが多いため、他の加工機との併用が必要になります。それぞれの機械を組み合わせ、より高精度な加工を実現するための工程を設計することが重要です。

1. マイクロスコープ
卓上切断機と一緒に使われることが多いのが、マイクロスコープです。加工対象物の微細な部分を見られるため、正確な位置で切断作業を行えます。また、切断後には切断面の状態を確認でき、精度の高い加工を実現します。

2. 研磨機や研削機
卓上切断機によって切断された部品や材料を次の工程で使うためには、その形状が正確であることが重要です。そこで、切断後の研磨や仕上げ作業には、研磨機や研削機が使われます。これらの機械によって切断面を平滑化し、精度の高い部品を作り上げることが可能です。

3. 洗浄機・乾燥機
卓上切断機を使って切断された材料を次の工程で用いる場合には、加工面の汚れを取り除く必要があります。そこで、洗浄機や乾燥機を併用することで、加工面をクリーンに保ち、部品の品質を向上させることができます。

参考文献
https://www.stc-jp.co.jp/
https://www.stc-jp.co.jp/products/kishu_search/setsudan/toishi_setsudan/
https://www.sekiyarika.com/tube/setudanki.html

卓上プレス機

卓上プレス機とは

卓上プレス機

卓上プレス機 (英: bench press) とは、机の上で使用する小型のプレス機です。

卓上で使用するため、テーブルプレスとも呼ばれています。プレス機の金型に金属などの加工したい素材を挟んで、そこに強い圧力を加えることで、金型の形に変形させて加工します。

また、金型に金属粉末や薬品粉末を入れて高圧をかける粉末成形やかしめ加工に使われます。簡易的な構造のためメンテナンスなども容易に行うことが可能で、耐用年数も長い加工機器です。

圧力を加える方法には、油圧式や空気圧式、スクリュー式、クランク式などがあります。

卓上プレス機の使用用途

卓上プレス機は、生産現場の製造ラインの組立て工程や研究開発などの現場で用いられます。必要な加工に合わせて、加圧や駆動の方式、金型の大きさや形状を変えることで、仕様にあった質の高い加工が実現可能です。

電子機器や小型部品、半導体、自動車産業、医療・製薬業界など幅広い分野で使用されています。コンパクトで軽量である特徴を生かして、設置場所に制約がある場合に使用されます。

プレスによって金属を加工する「かしめ」などの他に、粉末成形などの目的で使用される場合もあります。繰り返しの反復作業や同じ部品の量産などに適しています。

卓上プレス機の原理

卓上プレス機は、加圧の方法にハンドルを手動で回すことで加圧してプレスする方法と、モーター駆動によって高速にプレスして加工する方法があります。

手動式の場合は、ハンドルを回してしめていくと受圧盤に圧力がかかる仕組みです。荷重を表示することができるため、加圧力を確認しながら作業する場合に適しています。

油圧式プレスは、油圧でプランジャーをスライドさせることで圧力をかけます。油圧調整のバルブを操作することにより、容易で自由な圧力設定が可能です。また、圧力の過不足を防止して、最適な加工をすることもできます。

また、電動式プレスは、クランクを使う機械式や空気圧を使う方式、スクリューを使う方式があります。

卓上プレス機の種類

1. 手動式

手動式のクランク式のプレス機は、クランクを使用して機械式にプレスする方式です。錠剤用や圧縮用に使われます。錠剤用は、さまざまな粒状の結晶や流動性の良い粉末材料を錠剤にプレスすることが可能です。

クランク式プレス機は、製薬やヘルスケア製品、食品、農業、化学産業、電子電池、冶金セラミックス、その他の産業における小バッチ生産および研究実験用途に適しています。

手動油圧式のプレス機は、油圧で圧縮する方式です。例えば、X線蛍光分析または赤外線分光分析に使用する供試体の作成などに使用されます。

2. 電動式

ロータリープレス機
ロータリープレス機は、ローラーを回転させて、圧縮プランジャーの上下運動により錠剤を作る機械です。連続して製造ができます。

油圧プレス機
油圧プレス機は、油圧を使用してプレスする機械です。加圧力は、油圧調整バルブの簡単な操作で自由に設定できます。圧入・かしめ・製薬などに使われます。自動化が可能です。

空気圧式プレス機
空気圧式プレス機は、空気圧によりプレスする方式で、比較的簡便な装置です。かしめ、圧入、打ち抜き、曲げ、絞り加工などが可能です。

クランク式プレス機
クランク式プレス機は、サーボモータでクランクを駆動する機械式の圧縮機械です。精密小物部品の量産プレス加工に向いています。

スクリュープレス機
スクリュープレス機は、スクリューの回転で精密な位置調整ができるプレス機です。特に、少量の試作や加工実験に使われます。

卓上プレス機のその他情報

労働安全法について

卓上プレス機は、労働安全法および労働安全衛生規則により、事業者に課せられているのは、主として次の義務です。

・機械等の設置・移転・変更届けの実施
安全性のチェック、指導を受けます。
資格のある作業主任者の選任
職務が定められています。
・安全教育の実施
初めて取り扱う作業者への安全教育、及び金型交換や調整作業にあたる作業者の安全教育を行います。
・作業前の点検
作業開始前に点検します。
・特定自主検査
有資格者による法定検査を年1回以上実施します。

また、必要に応じて、労働基準監督署認定の光線式安全器又は非接触セーフティドアセンサなどを装着します。作業空間の安全用アクリルドアも点検します。

参考文献
http://www.tone-jidoki.co.jp/seihinsyoukai/puresuki/kogatapuresuki2.html
https://www.npasystem.co.jp/product/screw_press.html

加速度計

加速度計とは

加速度計とは単位時間当たりの速度の変化率である加速度を計測する装置です。

加速度計によって自動車の加速度や機械の振動を測定することができます。また、振動や傾きなどの情報を収集・保存することも可能です。

加速度計は大きく4つの種類に分かれており、圧電式、サーボ式、ひずみゲージ式、半導体式などがあります。

加速度計の使用用途

加速度計は自動車業界や加工業界、電子機器業界など幅広い分野に活用されます。自動車業界ではエンジンテストに使用されます。これ以外にも自動車の研究開発や異常検知を目的に設置される場合も多いです。

振動計として使用する場合は、回転機器に対する異常振動の監視を目的に設置されます。回転機器の急な故障はコスト肥大化に直結するため、振動監視により機器の故障を未然に防ぎます。大型産業機器では、輸送中の製品に対する品質管理にも加速度計が用いられます。

加速度計は古くから振動計として、振動測定や振動試験に使用されてきました。近年ではスマートフォンに内蔵され、万歩計やヘルスケアアプリでも使用されます。

加速度計の原理

加速度計が振動や加速度を計測することができる原理は、加速度計の種類によって異なります。

1. 圧電式加速度計

センサー内部の圧電素子が加速度に伴う圧力で伸縮し、電荷を放出することで加速度を検知します。

2. サーボ式加速度計

コイル、磁石、振子で構成されます。加速度による振子の動きによりコイルが発電し、発電量を測定して加速度へ変換します。

3. ひずみゲージ式加速度計

加速度によって内部重錘に慣性力が働くことでひずみが生じ、このひずみ量をゲージで検知することで加速度を計測します。

4. 半導体式加速度計

半導体内部に可動電極で構成されたコンデンサを組み込みます。加速度により、可動電極がたわんでコンデンサの静電容量が変化することで加速度を測定します。

加速度計の固定方法

加速度計を用いた計測では、固定方法が精度に大きく影響します。加速度センサの固定方法は大きく分けて5通りあります。

1. ねじ固定

最も理想的な固定方法で、剛性を高めるために計測対象にグリースを薄く塗ってから規定トルクで締め付けます。

2. セメント剤固定

測定対象にセメント剤を塗布して固定します。

3. 絶縁ワッシャ固定

計測対象とセンサを絶縁したい場合に用います。

4. マグネット固定

計測対象が磁性体の場合、簡便な固定方法として用います。

5. ハンドプローブ固定

ねじ固定できない場合や、素早く検査を行いたい場合などに用います。ケーブルについては、加速度センサの接続部に無理な力が加わらないよう固定します。

加速度計のその他情報

加速度計による振動計測

振動は変位・速度・加速度の3つパラメータから測定します。測定用センサの一つとして加速度計が使用されます。振動センサの中でも圧電型加速度センサは広い周波数範囲をカバーできる点が特徴です。

機械振動の定義は、「機械系の運動または変位を表す量の大きさが、ある平均値または基準値よりも大きい状態と小さい状態を交互に繰り返す時間的変化」とJISで規定されています。

振動を解析する場合、周波数解析が広く用いられます。測定された波形が、どのような周波数がそれぞれどれくらいの強度で含まれているかを調べる方法です。

参考文献
https://www.jp.omega.com/prodinfo/accelerometers.html
https://tml.jp/knowledge/transducers/acceleration-example.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/acceleration/applications.jsp
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/acceleration/applications.jsp
https://www.asahi-kasei.co.jp/aec/pmseries/shindoshindan/3rd.html

加振機

加振機とは

加振機とは、製品に振動を与えて、振動に対する強度や信頼性を確認するために用いる試験装置のことです。

加振機は起振機や振動発生機とも呼ばれています。主に機械工学や土木工学、建築学などの分野で、構造物の揺れに関する実験を行う際に使う場合が多いです。

土木・建築の分野では、地震による揺れで構造物の安全性の評価を十分行う必要があります。そのため、構造物の大きさによって使用する加振機を適切に設定することが重要です。

加振機の使用用途

加振機は、さまざまな工業製品の開発や品質保証、土木や建築分野で使われています。

例えば、自動車が走行する際、車体には常にさまざまな振動が発生し続けており、それぞれの部品は振動を受けても壊ずに機能を維持しなければなりません。特に内装部品では、振動によって異音が発生してしまうと、クレームにつながる恐れもあります。

そこでさまざまな振動を与えたり、振動以外に温度変化なども加えたりする試験を行います。土木や建築業界であれば、建物全体の耐久性評価に用いることも多いです。

大型の加振機の上に住宅を建てて、地震を想定した振動を加えて躯体、屋根材、ドアやサッシといった各製品の耐久性評価も行われます。

加振機の原理

加振機の原理は、動電式振動試験機を理解する必要があります。動電子機試験装置は、オーディオ機器であるスピーカーと同じ原理によって、振動を発生させるものです。

音は空気の振動によって発生し、スピーカーも振動を発生する加振機と捉えることができます。動電子機試験装置で振動を発生するための力は、「フレミングの左手の法則」によって生み出されます。フレミングの左手の法則とは、磁界の中を横切る導線に電流が流れると力が発生し、その際の磁界と電流と発生する力の方向の関係を表したものです。

電流を変化させることによって、力の大きさも制御することができます。また、加振機においては、目的の振動を発生するために電流を制御しつつ、実際に発生した振動を検知しています。

目的とした振動が発生しているのかどうか、もし違った振動が発生しているのであれば修正するためのフィードバック回路が設けられているのが特徴です。

加振機の種類

加振機の種類として、機械式や油圧式、動電型、圧電型などが挙げられます。大型で大容量のものから、小型のものまで種類はさまざまです。

1. 機械式の加振機

機械式は、フレームやシャシー部品などの大型の強度、耐久試験に使われます。極低周波数で大きな加振力を出すことが可能です。

2. 油圧式の加振機

油圧式は、車体やシャシー、多くの部品の振動、強度、耐久試験、ロードシミュレーターの多軸加振機にも使用されます。小型なのに大きな加振力が得られ、極低周波数から1kHz程度まで加振が可能です。任意の波形を容易に発生できることも特徴の1つです。

3. 同電型の加振機

動電型は、油圧式より加振力は劣りますが、数キロHzまで可能なため、中・小型物の加振に用いられます。

4. 圧電型の加振機

圧電型は、数十キロHzまで可能ですが、加振力は比較的他のものと比べると小さくなります。一般的に高い振動数が必要な場合は、動電型をはじめとする電気式のものが使用されます。

加振機のその他情報

振動試験の種類

加振機による振動試験には、さまざまな種類があります。振動には振幅、周波数、波の形によって異なり、振動の種類によって試験の名前が付けられています。

1. 掃引試験 (スウィープ試験)
周波数を変化させる試験で、ある周波数から連続的に周波数を変化させていきます。例えば、車が加速する際はエンジンの回転数が連続的に変化していくので、車体に発生する振動も連続的に変化させた評価が必要です。

2. スポット試験
スポット試験では、ある特定の周波数の振動数成分正弦波 (サイン波) を連続して与えます。製品が使われる環境において、発生する振動が明らかな場合などに行われます。

3. ランダム波振動試験
特定の周波数や振幅ではなく、さまざまな振動をランダムに与える試験です。試験の最中に、共振現象というある特定の振動によって、製品が大きく揺れてしまう現象を見つけ出すこともできます。

4. 衝撃波振動試験
製品が何かにぶつかったときなど、短時間に大きな振幅の振動が発生する状態を再現します。

参考文献
https://www.imv.co.jp/pr/simulation_system/

制御ボックス

制御ボックスとは

制御ボックス

制御ボックスとは、電気設備や機械設備を制御するための回路や装置を入れる箱のことです。

制御盤やキャビネットとも呼ばれることもありますが、計器やブレーカのみが入ったもの等の制御機器が格納されていないキャビネットについては制御ボックスとは呼ばれない場合が多いです。制御システムを構築する電気・電子機器を制御ボックス内に収めることで、外部環境からこれらの素子を保護するとともに、人が誤って接触して感電する危険性を減らすことができます。

制御ボックスは、格納するシステムにより形状や大きさが異なりますが、各メーカーである程度統一された規格寸法で販売されています。 

制御ボックスの使用用途

制御ボックスは、センサなどの電子機器やモータなどの機械の動作を制御する装置が格納されます。そのため、工場などの各種装置の制御やエレベーターの制御、電車の運転制御装置など、用途は幅広いです。

基本的に各種コントローラーなどに代表される電子機器は、衝撃やほこりなどの外的影響を受けやすいです。機械装置の内部に収めることのできない電子機器類は、装置外部の制御ボックス内に格納することになります。

制御ボックスの原理

制御ボックスは、格納した機器を外部環境からの保護する機能と人が接触し感電するリスクを低減する機能の他に、様々な機能が要求される場合があります。

制御ボックスが担う機能とその実現手法は、以下の通りです。

1. 熱対策

屋根のない屋外や熱源装置の周辺に設置する場合は、熱がこもって内部の電子機器が故障する可能性があります。そのため、冷却ファンやクーラーが付帯した制御ボックスを採用することで、内部の温度上昇を抑えることが可能です。

ドア面や両側面にスリット加工を施した制御ボックスもあります。放熱用スリットが、制御ボックス内の温度上昇を防ぎます。スリット加工の他、ルーバー加工で通気性を確保し、外に熱を逃がすタイプもあります。

2. 粉塵・防水対策

粉塵や水しぶきに晒されやすい食品工場などでは、防塵・防水型の制御ボックスが使用されます。ドア部分のパッキンに継ぎ目が無い発泡ポリウレタン等を使用することで、高いシール性が実現可能です。

3. 電磁波・腐食対策

電磁波を内部に貫通させない構造の制御ボックスや、耐食性に優れたステンレス製の制御ボックスなども現場の環境に応じて導入されています。

制御ボックスの種類

制御ボックスは、材質や形状で分類することが可能です。下記では、形状で分類した制御ボックスの種類を紹介します。

1. 小型制御ボックス

小型の制御装置でも作業者の操作によるコントロールを行いたいときは、ボタンやタッチパネルなどの入力機器を備えた制御ボックスを装置外部に設ける場合があります。

2. 自立型制御ボックス

自立形の制御ボックスは、大型の制御盤や大容量の機器収納に適した製品です。蓄電池や重量機器を搭載できる高耐震性を備えたタイプの製品もあります。

制御ボックスのその他情報

DINレール

ほとんどの制御ボックスには、格納する機器が適切な間隔で見やすく配置されるようにDINレールと呼ばれる統一規格のレールが段状に配置されています。DINレールとは、制御盤の内部で使用する制御コンポーネントを制御盤の中で取り付ける際に使用することが多い金属製のレールです。

ネジで取り付ける手法より取付方法が簡単で、施工やメンテナンス費用を抑えられます。規格に沿っているため、統一された寸法で各社販売しています。

工場内で多用されるPLC (プログラマブルロジックコントローラ) や電磁リレーもDINレールに対応しています。レール上に各機器を装着することで、設計通りのレイアウトのシステムを容易に構築することが可能です。

参考文献
https://www.nito.co.jp/products/enclosures/
http://naigai-e.co.jp/naigai_product/product/01_cabinets.html
https://www3.panasonic.biz/

光酸発生剤

光酸発生剤とは

光酸発生剤とは、紫外線などの光が当たることで酸を発生させる化合物です。

発生した酸により、他の化合物の反応が進行し、材料が生成されます。この発生した酸は、光カチオン重合の開始を促進する光カチオン重合開始剤や、フォトリソグラフィーで使われるレジストの光酸発生剤として活用されています。

光酸発生剤でよく使用されるのは、Sulfonium (スルホニウム) 塩です。硬化材料としては、主にエポキシ系の樹脂が利用されています。光酸発生剤に含まれる成分は、通常の室内光線では酸を発生させないため、特別な光源を使用して光照射を行うことで、反応のタイミングを自由に制御可能です。

光酸発生剤の使用用途

光酸発生剤は、光硬化性樹脂の硬化やフォトリソグラフィーなど、さまざまな分野で利用されています。今後も、光硬化性樹脂の用途拡大や、フォトリソグラフィーの技術革新などにより、光酸発生剤の需要は拡大していくと考えられます。

1. 光硬化性樹脂の硬化

光酸発生剤は、光硬化性樹脂の硬化プロセスに活用されます。光硬化性樹脂は光線の照射によって重合反応が進行し、樹脂が硬化する素材です。コーティング剤、飲料缶の塗料、3Dプリンティング用の三次元造形材料など、さまざまな分野で使用されています。

光酸発生剤は光線を当てることで酸を発生させ、この酸が重合反応を開始します。光硬化型接着剤で代表的な樹脂はエポキシ樹脂です。

エポキシ樹脂は耐久性、腐食防止効果、電子絶縁性など優れた特性を持つため、電子部品から土木建築に至る幅広い分野で部品の接着に使用されています。

2. フォトリソグラフィー

フォトリソグラフィー用のレジスト材料としても、光酸発生剤は活用されています。フォトリソグラフィーは、半導体や液晶ディスプレイの製造で重要な技術です。このプロセスでは、光を通さないマスクを使用し、基板にパターンを転写します。

光酸発生剤は、マスクを透過する光を照射して酸を生成します。この酸が基板の表面を溶かし、パターンを形成するという流れです。通常、カチオンを活用するものが多いですが、最近では化学増幅型と呼ばれる新しいタイプも登場しています。

この場合、生成された酸が直接化合物に作用するのではなく、化合物の反応を促進する触媒として作用します。

光酸発生剤の原理

光酸発生剤は、光を吸収する分子構造と酸の生成源となる分子構造から構成されています。一般的な光酸発生剤は、SulfoniumイオンやIodoniumイオンなどのカチオン部分を含むオニウム化合物です。オニウム化合物は、照射された光を受けてカチオン部分が吸収および分解し、アニオン部分から酸が発生します。

カチオン部分が光を吸収すると、カチオンとアニオンが分離します。このプロセスでは、カチオンは電子を失い、アニオンは電子を受け取ります。電子を失ったカチオンは、溶媒や酸発生剤自体から水素を引き抜いた後、アニオン側に水素が移動して酸が生成されるという流れです。

生成された酸は、モノマーや他の官能基に作用、重合反応が開始され、目標の化合物が生成されるプロセスが進行します。

光酸発生剤の種類

1. オニウム化合物型

オニウム化合物型の光酸発生剤は、カチオン部分がSulfoniumイオンやIodoniumイオンで構成されるオニウム塩です。Sulfoniumイオン型の光酸発生剤は、UV光をより効果的に吸収する特性を持つため、UV硬化性樹脂の硬化に使用されます。

Iodoniumイオン型の光酸発生剤は可視光を効果的に吸収するので、可視光硬化性樹脂の硬化に有用です。

2. 非イオン性型

非イオン性型の光酸発生剤は、カチオン部分がSulfoniumイオンやIodoniumイオンでなく、イミドスルホネートやオキシムスルホネートなどの非イオン性化合物から成り立っています。非イオン性型の光酸発生剤は、オニウム化合物型の光酸発生剤と比較して、UV硬化性樹脂の硬化速度が速い特性を示します。

参考文献
https://www.sanyo-chemical.co.jp/magazine/archives/1294
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/c/13097
https://alpha-kogyo.com/feature/epoxy_resin/
https://www.furmanite.co.jp/composite_repair_701.html
https://www.sumitomo-chem.co.jp/rd/report/files/docs/20000100_4ir.pdf

光触媒コーティング剤

光触媒コーティング剤とは

光触媒コーティング剤とは、建築物の外壁や内装に塗布されるコーティング剤で、これらの汚れを防止する防汚効果をもつコーティング剤です。

光触媒の特性を生かして防汚効果を発揮します。

光触媒コーティング剤の使用用途

光触媒コーテイング剤は、紫外線を含む太陽や蛍光灯などがあたる建築物の外壁や、室内の壁紙およびカーテンなどをコーティングする際に使用されます。光触媒コーティング剤は、高い親水性とプラスに帯電することが特徴です。水分に含まれる汚染物質や、ウイルス、匂い物質などの有機物を分解して、防汚効果や洗浄補助効果を発揮します。

そのため、防汚効果によって綺麗な状態を維持することが可能です。ビルの壁面に使用する場合は、壁面に雨水が付着すると雨水はコーティング膜に沿って広がり、雨水中の汚染物質と壁面に付着している汚れなどの有機物は、光触媒との酸化還元反応で分解され、雨水と共に流されます。

また、光触媒コーティング剤は、繊維を痛めることがなく、カーテンやソファなどの布製品にも使用できるため、素材の劣化を抑え製品の美観の保持が可能です。さらには、ウイルスや臭い成分・汚れ成分などの有機物を分解するため、これら室内に使用される製品において、求められる消臭や抗菌効果もあります。

光触媒コーティング剤の原理

光触媒コーティング剤に使用される二酸化チタン (酸化チタンと呼ばれることが多い) などの光触媒は、紫外線を吸収することで高い親水性を発揮し、かつプラスに帯電するのが大きな特徴です。

この光触媒コーティング剤よって作られる被膜に水分が付着すると、高い親水性のために膜に沿って広がります。このとき、水分に含まれる有機物とプラスに帯電した光触媒の酸化還元反応により、有機物が分解されます。

光触媒に光が当たり、空気と水があるという条件が揃えば、何度も反復して効果が得られる点や、電力などのエネルギーを使用することなく効果が得られる点、廃棄物なども排出しないという点を考慮すると、光触媒コーティング剤は非常にサステイナブルなコーティング剤です。

光触媒コーティング剤のその他情報

1. 光触媒コーティング剤のメリットとデメリット

メリット
内装などに使用した場合の抗菌効果、抗ウイルス効果、消臭効果が挙げられます。また、一度使用すると効果が長期的に持続するため、ほとんど手入れの必要が無い点もメリットです。

さらには、健康上の問題がほぼありません。光触媒コーティング剤の主成分は酸化チタンで、経口摂取しても人体への影響がほとんどなく、市販されている製品に関しても、経口摂取による急性毒性試験、皮膚への刺激性試験、変異原性試験などの各項目で安全基準を満たしている点もメリットとして挙げられます。

デメリット
光触媒コーティング剤に関するデメリットとしては、費用が高くなる傾向にあることが挙げられます。これは、光触媒コーティング剤自体が他のコーティング剤と比較して高く、施工時の初期費用が高くなるためです。

また、壁などに使用した場合、塗装表面での抗菌効果、抗ウイルス効果、消臭効果は期待できますが、空中に浮遊している物質に対しての効果はほとんど期待できません。さらに、菌やウイルスにも様々な種類があるため、すべての菌、ウイルスに対する抗菌効果や抗ウイルス効果は保証されないこともデメリットとして挙げれられます。

2. 光触媒コーティング剤の価格

市販されている光触媒コーティング剤には様々な量や種類があります。価格はそれぞれ異なり、大体の製品は数千円~数万円で購入可能です。スプレータイプの製品は容量が少なく、比較的安価になっており、内壁用の塗料タイプの製品は大容量のため、価格も高くなります。

光触媒コーティング剤を内装全体に塗布する場合には、専門の業者への依頼が必要です。この場合、1㎡あたりの塗装単価は数千円ですが、塗装する場所などの条件により多少変動します。光触媒コーティング剤は、他の塗料よりも高価なため、初期費用が高くなる傾向があり、耐用年数や効果などを考慮して、総合的に判断する必要があります。

参考文献
https://www.shinetsu-astech.co.jp/photocatalyst/images/PhotocataliticCoatings.pdf
https://coating.th-angel.com/2013/12/blog-post_2.html
https://www.piaj.gr.jp
https://pronuri.com/articles/2298
https://taberugo.net/959

低温インキュベータ

低温インキュベータとは低温インキュベータ

低温インキュベータとは、一定の低温温度にて槽内を管理することができる機器です。低温恒温機や、低温試験機、低温培養器などとも呼ばれています。製品によって管理できる温度に多少の幅がありますが、おおよそ-15℃〜60℃の間で設定することができます。

プログラム機能を搭載した低温インキュベータでは、時間と温度について複数のパターンを組み込んで管理することも可能です。幅広い分野において温度管理を必要とする作業や工程で使用され、培養や保管の他に、品質管理や実験・試験などの目的で利用されています。

低温インキュベータの概要イメージ

低温インキュベータの使用用途

低温インキュベータは、電子部品、食品、精密機器や生物を扱う機関など、多くの分野で使用されています。

低温の一定の環境を必要とする場合に用いられており、植物の発芽実験や環境試験などの低温や恒温下での試験や実験、電子機器など精密な管理が必要な部品の保管、菌や微生物など生理学的分野での培養や保管などが具体的な使用用途です。

食品分野では、HACCPの食品衛生管理手法やISO 22000認証に関連した、厳格な保存試験に用いられています。医薬品や化粧品の長期連続安定性試験にも利用されます。

低温インキュベータの原理

低温インキュベータが槽の内部の温度を一定に保つ方法は、主に2種類あります。「送風循環方式」と呼ばれる槽内の空気を循環させる方法と、「エアジャケット方式」と呼ばれるジャケットによって層の外側から作り出した風の流れによって温度をコントロールする方法です。

  • 送風循環方式
    送風循環方式では、庫内内部に取り付けられたファンを回転させて庫内の空気をかき混ぜて風を送ることで、庫内温度を均一に保ちます。
  • エアジャケット方式
    エアジャケット方式は、庫内に風の流れを作らずに、外側から温度の管理を行います。また、定期的に冷媒の方向を変えることで、長時間運転によって霜が付いてしまうことを防ぎ、中断せず連続して使用することができます。

冷却装置は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)系の冷媒を用いたものの他、ペルチェ素子を用いたものなどがあります。長期使用では冷却器に霜が付きやすくなりますが、インバーター制御の活用により霜付きを改善し、定期的なデフロスト(ホットガスによる霜取り)の必要性を軽減した製品もあります。

低温インキュベータの原理

低温インキュベータの種類

低温インキュベータの用途は非常に多様ですが、製品によって細かい仕様が異なってくるので、用途に合ったものを選ぶことが重要です。選定する際に確認するべきポイントの一例は下記の通りです。

1. 温度範囲

温度範囲だけでも、-10~+50℃、0~60℃、-20~+85℃など、いくつかの種類があります。例えば、食品の保存試験を行う場合などは、常温(10 ~35℃)・冷蔵(0~10℃)、冷凍(−15℃以下)という想定で製品選定を行う必要があります。また、温度分布精度も、±0.3℃であったり、±2℃であったりと、製品によって様々なので留意が必要です。

2. 大きさ

大きさは、卓上型モデルからフロアタイプまで様々なものがあります。振動が気になる場合は低振動の製品を、運転プログラムを詳細に設定したい場合はプログラム機能の充実した製品を選ぶと良いでしょう。

3. 安全性を高める機能

安全性を重視する場合は、自動過昇防止機能、過昇防止器、過電流漏電ブレーカなどを備えた製品を選ぶと良いでしょう。

長期連続試験を行う場合には、長時間の稼働を想定して製造されている製品を選ぶと安心です。中には、トラブルを想定して独立冷凍回路を2つ備えている製品もあります。高精度の試験が必要な場合は、据付時の校正精度にも留意する必要があります。

参考文献
https://www.yamato-net.co.jp/word/20
https://www.espec.co.jp/products/env-test/crh/

 

丸ベルト

丸ベルトとは

丸ベルトとは、断面が円形のベルトで、平ベルトVベルトと同じように摩擦力を利用して回転動力を伝達するためにプーリーと共に使用されるベルトです。

このタイプのベルトは主にポリウレタン製で、加工機械やコンベアなどでモーターの駆動力を伝達するために広く使用されています。丸ベルトの特徴は、摩擦力を伝達する面に制限がなく、どの方向からでもプーリーと接触しても問題がない点にあります。

この柔軟性は、3次元的なレイアウト (各軸がねじれの位置にある場合など) においてもベルト駆動が可能となるため、複雑な動力伝達の配置にも最適です。

丸ベルトの使用用途

丸ベルトは、Vベルトやタイミングベルトなど他のベルトと比較して、断面形状が単純であり、ベルト自体が弾性を持つためテンションの調整機構が不要です。この特性から、コストを抑えた動力伝達システムを構築することが可能です。

そのため、コスト削減が求められる装置や、軸間距離の組み付け精度が低い場面、または回転数の正確な同期が必要でない場合などに丸ベルトが使用されます。さらに、ベルトを直線状に配置する必要がないため、3次元的な配置や同軸上にある軸間での動力伝達にも適しています。このように丸ベルトはその柔軟性から、多様な状況での応用が可能です。

丸ベルトの特徴

丸ベルトは平ベルトやVベルトと同様に、摩擦力のみで回転動力を伝達します。このため、プーリーとの接触面で静止摩擦力を上回る負荷が加わると滑りが発生します。この滑りは一定以上のトルクが作用した際に安全のため動力を遮断するトルクリミッタと同様の役割が可能です。

これにより、例えば人の手が挟まった場合でも過度な力が加わることなく、安全設計を実現することが可能です。ただし、ベルトの滑りは軸間の回転速度のずれを引き起こすため、回転速度や位置の精密な制御が必要な機械には適していません。このような場合は、回転数の同期が保証されたタイミングベルトなどの伝達機構が使用されることが一般的です。

丸ベルトの特有のメリットとしては、ジョイントの容易さが挙げられます。Vベルトなどは製造時にベルト長が固定されており、設計変更時には異なる長さのベルトが必要となりますが、丸ベルトでは断面を突き合わせて熱で溶着するクイックメルトジョイントが可能です。このジョイントは比較的強度が高く、設計変更やメンテナンスを非常に容易にします。

丸ベルトの種類

丸ベルトはその用途や機能に応じて、さまざまな種類が存在します。主に材質による違いと製造プロセスによる特性が各ベルトの使用目的を定める要因となります。丸ベルトには次のような種類があります。

1. ポリウレタン製

一般的な丸ベルトはポリウレタン製が多く、その耐久性と弾力性により広範囲の産業で利用されています。ポリウレタン製のベルトは耐摩耗性が高く、油脂類にも強いため、食品加工から機械工業まで多岐にわたる分野で活躍します。また、温度変化にも比較的強いため、環境条件が厳しい場所での使用に最適です。

2. シリコン製

シリコン製の丸ベルトは、特に高温や低温環境、または食品産業での使用が求められる場合に選ばれます。シリコンは耐熱性が高く、非常に柔軟であるため、繊細な物品の取り扱いや精密な操作が必要な場所での使用に優れています。

3. ゴム製

ゴム製の丸ベルトは、衝撃吸収性と弾力性に富んでいるため、重工業や建設機械での駆動ベルトとして利用されることが多いです。ゴムは自然な素材であるため、環境にやさしい選択肢ともなりますが、耐油性や耐薬品性には限界があり、それらを多用する環境下では推奨されません。

これらの丸ベルトは、必要に応じてカスタマイズすることが可能で、特定の長さや直径、強度を持つ製品を製造することができます。この柔軟性が丸ベルトの大きな利点となっており、用途に応じて最適な材質とサイズのベルトを選択することで、さまざまな機械の効率的な動作を支援します。

参考文献
http://www.sbte.jp/archives/qanda/

ワイヤーハーネス

ワイヤーハーネスとは

ワイヤーハーネス

ワイヤーハーネスとは、機器間の接続を担っている部品で機器から発せられる様々な電気信号を伝達するために、電線や電線の両端に付属している端子やコネクタ等を束にしてまとめた集合部品の総称です。

電線は伝達する信号の数だけ必要になるため複数存在し、使用される用途や流れる電流の大きさによっても電線の太さや柔軟性が変わるため、その機能から人間で例えると「血管」に例えられる部品です。

最も代表的な用途としては、自動車用のワイヤーハーネスです。鉛バッテリー等の自動車へ電力供給するための部品が主に配置されているエンジン周辺部を中心に、運転席周りやリアテールランプといった自動車の隅々までワイヤーハーネスが張り巡らされています。

最近ではハイブリッド車や電気自動車が広く普及したことで、より軽量かつ高電圧にも耐えうるものが求められるようになり、特に耐電圧性の高い製品の開発が進行中です。

ワイヤーハーネスの使用用途

ワイヤーハーネスの使用用途としては、機器と機器を繋ぐことで互いの電気信号を相手に伝えることに用いられています。ワイヤーハーネスは自動車以外の分野でも数多く用いられています。使用用途の例は下記の通りです。

1. 自動車

ワイヤーハーネスが最も代表的に使用されているのが自動車です。主要動力であるエンジン周辺部に密集しており、エンジン周辺部を起点として自動車の室内に配置されているエアコン操作パネルや自動車の室外に配置されているブレーキやリアテールランプといった自動車の隅々まで接続しています。

自動車の組み立て性やメンテナンス性の関係から、1本の長い電線で接続されている訳ではなく、自動車を「前・真ん中・後ろ」といった、ある程度のセクションに分けて分割されたワイヤーハーネスが搭載されています。分割したワイヤーハーネス間の接続は、一般的にコネクタを介した接続です。

エンジン用途以外にスライドドア用ハーネスも存在します。スライドドア向けでは、小さいサイズや可動性に優れた設計になっています。

2. 医療機器

MRIやCTなど、医療機器の内部にも用いられています。振動や水濡れを考慮しつつ、限られた車内空間を通さなければいけない自動車用途に比べて、ワイヤーハーネス自体の形状はシンプルです。

その代わり接続した機器間の情報の信頼性が求められるため、ノイズ対策や電気抵抗値といった要求性能が高い傾向にあり、機器の大きさに合わせて様々なサイズのワイヤーハーネスが使用されています。

3. 生産設備

電化製品等を生産する設備にも用いられています。工場の生産ラインは距離が長くかつ長い期間使用されることが前提となっており、場合によっては生産ラインの移設等が行われることもあるため、長いワイヤーハーネスが使われることが多いです。

また、工場内で人や重機の往来によってワイヤーハーネスが踏まれてしまったり、油や汚れが付着することも多いためワイヤーハーネスの耐久性が求められる傾向にあります。

ワイヤーハーネスの種類

ワイヤーハーネスの種類としては、一般的な用途の低電圧用から、高電圧用といった種類があります。

1. 低電圧ワイヤーハーネス

従来のガソリン車等に使用されている、電圧12Vの鉛バッテリーから電力を各部品に供給するためのワイヤーハーネスです。

2. 高電圧ワイヤーハーネス

高電圧ワイヤーハーネスとは、近年需要の高まる電気自動車やハイブリッド車に搭載する為のワイヤーハーネスです。

電気自動車やハイブリッド車を駆動するためにモーターが使用されており、モーターの駆動には高出力の大電力を必要とします。また、減速時にモーターを発電機として使うことで回生エネルギーで充電を行い航続距離を伸ばすといった、電気自動車やハイブリッド車特有の制御も加わるため、より複雑なシステム制御に耐えられるよう耐熱性能等の要求値が高くなっています。

そのため、従来のワイヤーハーネスでは高電圧・大電流に耐えることが出来ない為、高電圧ワイヤーハーネスが開発されました。

3. アルミワイヤーハーネス

アルミワイヤーハーネスとは、電線の導体を従来のからアルミニウムに変更したワイヤーハーネスのことです。

従来の銅に比べて30~40%の軽量化が見込まれていますが、銅より導電率が低く融点も低いため耐熱性や端末につける圧着端子の加工性に課題があります。

自動車の安全性や快適性の向上、自動運転化に伴ってワイヤーハーネスの本数が増えることで車体重量の増加が懸念されており、軽量化されたアルミワイヤーハーネスの需要が高まっています。 

ワイヤーハーネスの原理

ワイヤーハーネスの原理として、ワイヤーハーネスを構成する様々な部材について紹介します。ワイヤーハーネスは、主にコルゲートチューブ、クリップ、コネクタ、端子、電線、テープで成り立っています。

1. コルゲートチューブ

蛇腹形状のチューブで、ワイヤーハーネスの保護部材として用いられます。主に電線を保護する部材なため、耐熱性や形状復元性が求められます。

取り付け時の加工性を考慮してスリットのあるタイプと無いタイプがあるため、必要に応じて選択する必要があります。材料はポリプロピレン樹脂がよく用いられています。

2. クリップ

ワイヤーハーネスを這わせる際、電線を固定するために用いられます。ハーネスの大きさや形状に合わせて、様々な種類が存在します。

3. コネクタ

電気配線の接続を行う部材です。一般的にオスとメスで1セットになっており、被覆を剥いた電線に専用の端子を圧着してコネクタへ差し込むことで、半田付けや電線同士の撚り合わせを行うことなく、簡単に接続が可能になります。

4. 端子

電線の端末に取り付ける部材です。端子もコネクタと同様オスとメスが1セットになっており、コネクタ接続時に端子が触れ合うことで電線同士を接続するために使われます。
電線と端子間は圧着により接合されるのが一般的です。

5. 電線

電力供給と電気信号を接続された機器に伝える役割を果たします。電線には価格と伝導率のバランスがとれた銅が主に用いられていますが、今後もシステムが複雑化することで1度にワイヤーハーネスで使用する電線の数が増えていくことが予想されています。そのため、電線自体を軽量化する需要が高まっておりアルミ電線の開発が進行中です。

6. テープ

電線の拘束や絶縁部分を保護するために使用されています。ワイヤーハーネスでは、絶縁性や難燃性が求められるため、主に材質が塩化ビニールで出来たビニールテープが用いられています。

ワイヤーハーネスのその他情報

1. ワイヤーハーネス工場について

ワイヤーハーネスの製造は、手の感覚で作業を行う工程が多い為、生産の全自動化が他の製造業に比べて進んでいません。その為、人件費の低い国で生産が行われることが多く、軽作業に向いた女性従業員の比率が高い傾向にあります。

2. ワイヤーハーネスの今後

ワイヤーハーネスの今後は従来のワイヤーハーネスから、電気自動車用の高電圧ワイヤーハーネスと軽量化されたアルミワイヤーハーネスが主流になると言われています。

参考文献
https://www.sumitomo.gr.jp/kids/shikumi/sws01.html
https://www.yazaki-group.com/wireharness/
https://www.sws.co.jp/product/wireharness.html
http://www.shinkou-inds.co.jp/where-to-use
https://www.nisseieco.co.jp/products/corrugate
http://www.shinagawashoko.co.jp/jp/cat3.html
http://www.sws-w.co.jp/product/harnessproduct.html
https://sei.co.jp/company/sei-world/2016/03/product.html
https://04510.jp/times/articles/-/13789?page=1
https://www.yazaki-group.com/wireharness/