低温インキュベータとは
低温インキュベータとは、一定の低温温度にて槽内を管理することができる機器です。低温恒温機や、低温試験機、低温培養器などとも呼ばれています。製品によって管理できる温度に多少の幅がありますが、おおよそ-15℃〜60℃の間で設定することができます。
プログラム機能を搭載した低温インキュベータでは、時間と温度について複数のパターンを組み込んで管理することも可能です。幅広い分野において温度管理を必要とする作業や工程で使用され、培養や保管の他に、品質管理や実験・試験などの目的で利用されています。
低温インキュベータの使用用途
低温インキュベータは、電子部品、食品、精密機器や生物を扱う機関など、多くの分野で使用されています。
低温の一定の環境を必要とする場合に用いられており、植物の発芽実験や環境試験などの低温や恒温下での試験や実験、電子機器など精密な管理が必要な部品の保管、菌や微生物など生理学的分野での培養や保管などが具体的な使用用途です。
食品分野では、HACCPの食品衛生管理手法やISO 22000認証に関連した、厳格な保存試験に用いられています。医薬品や化粧品の長期連続安定性試験にも利用されます。
低温インキュベータの原理
低温インキュベータが槽の内部の温度を一定に保つ方法は、主に2種類あります。「送風循環方式」と呼ばれる槽内の空気を循環させる方法と、「エアジャケット方式」と呼ばれるジャケットによって層の外側から作り出した風の流れによって温度をコントロールする方法です。
- 送風循環方式
送風循環方式では、庫内内部に取り付けられたファンを回転させて庫内の空気をかき混ぜて風を送ることで、庫内温度を均一に保ちます。 - エアジャケット方式
エアジャケット方式は、庫内に風の流れを作らずに、外側から温度の管理を行います。また、定期的に冷媒の方向を変えることで、長時間運転によって霜が付いてしまうことを防ぎ、中断せず連続して使用することができます。
冷却装置は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)系の冷媒を用いたものの他、ペルチェ素子を用いたものなどがあります。長期使用では冷却器に霜が付きやすくなりますが、インバーター制御の活用により霜付きを改善し、定期的なデフロスト(ホットガスによる霜取り)の必要性を軽減した製品もあります。
低温インキュベータの種類
低温インキュベータの用途は非常に多様ですが、製品によって細かい仕様が異なってくるので、用途に合ったものを選ぶことが重要です。選定する際に確認するべきポイントの一例は下記の通りです。
1. 温度範囲
温度範囲だけでも、-10~+50℃、0~60℃、-20~+85℃など、いくつかの種類があります。例えば、食品の保存試験を行う場合などは、常温(10 ~35℃)・冷蔵(0~10℃)、冷凍(−15℃以下)という想定で製品選定を行う必要があります。また、温度分布精度も、±0.3℃であったり、±2℃であったりと、製品によって様々なので留意が必要です。
2. 大きさ
大きさは、卓上型モデルからフロアタイプまで様々なものがあります。振動が気になる場合は低振動の製品を、運転プログラムを詳細に設定したい場合はプログラム機能の充実した製品を選ぶと良いでしょう。
3. 安全性を高める機能
安全性を重視する場合は、自動過昇防止機能、過昇防止器、過電流漏電ブレーカなどを備えた製品を選ぶと良いでしょう。
長期連続試験を行う場合には、長時間の稼働を想定して製造されている製品を選ぶと安心です。中には、トラブルを想定して独立冷凍回路を2つ備えている製品もあります。高精度の試験が必要な場合は、据付時の校正精度にも留意する必要があります。
参考文献
https://www.yamato-net.co.jp/word/20
https://www.espec.co.jp/products/env-test/crh/