光酸発生剤

光酸発生剤とは

光酸発生剤とは、紫外線などの光が当たることで酸を発生させる化合物です。

発生した酸により、他の化合物の反応が進行し、材料が生成されます。この発生した酸は、光カチオン重合の開始を促進する光カチオン重合開始剤や、フォトリソグラフィーで使われるレジストの光酸発生剤として活用されています。

光酸発生剤でよく使用されるのは、Sulfonium (スルホニウム) 塩です。硬化材料としては、主にエポキシ系の樹脂が利用されています。光酸発生剤に含まれる成分は、通常の室内光線では酸を発生させないため、特別な光源を使用して光照射を行うことで、反応のタイミングを自由に制御可能です。

光酸発生剤の使用用途

光酸発生剤は、光硬化性樹脂の硬化やフォトリソグラフィーなど、さまざまな分野で利用されています。今後も、光硬化性樹脂の用途拡大や、フォトリソグラフィーの技術革新などにより、光酸発生剤の需要は拡大していくと考えられます。

1. 光硬化性樹脂の硬化

光酸発生剤は、光硬化性樹脂の硬化プロセスに活用されます。光硬化性樹脂は光線の照射によって重合反応が進行し、樹脂が硬化する素材です。コーティング剤、飲料缶の塗料、3Dプリンティング用の三次元造形材料など、さまざまな分野で使用されています。

光酸発生剤は光線を当てることで酸を発生させ、この酸が重合反応を開始します。光硬化型接着剤で代表的な樹脂はエポキシ樹脂です。

エポキシ樹脂は耐久性、腐食防止効果、電子絶縁性など優れた特性を持つため、電子部品から土木建築に至る幅広い分野で部品の接着に使用されています。

2. フォトリソグラフィー

フォトリソグラフィー用のレジスト材料としても、光酸発生剤は活用されています。フォトリソグラフィーは、半導体や液晶ディスプレイの製造で重要な技術です。このプロセスでは、光を通さないマスクを使用し、基板にパターンを転写します。

光酸発生剤は、マスクを透過する光を照射して酸を生成します。この酸が基板の表面を溶かし、パターンを形成するという流れです。通常、カチオンを活用するものが多いですが、最近では化学増幅型と呼ばれる新しいタイプも登場しています。

この場合、生成された酸が直接化合物に作用するのではなく、化合物の反応を促進する触媒として作用します。

光酸発生剤の原理

光酸発生剤は、光を吸収する分子構造と酸の生成源となる分子構造から構成されています。一般的な光酸発生剤は、SulfoniumイオンやIodoniumイオンなどのカチオン部分を含むオニウム化合物です。オニウム化合物は、照射された光を受けてカチオン部分が吸収および分解し、アニオン部分から酸が発生します。

カチオン部分が光を吸収すると、カチオンとアニオンが分離します。このプロセスでは、カチオンは電子を失い、アニオンは電子を受け取ります。電子を失ったカチオンは、溶媒や酸発生剤自体から水素を引き抜いた後、アニオン側に水素が移動して酸が生成されるという流れです。

生成された酸は、モノマーや他の官能基に作用、重合反応が開始され、目標の化合物が生成されるプロセスが進行します。

光酸発生剤の種類

1. オニウム化合物型

オニウム化合物型の光酸発生剤は、カチオン部分がSulfoniumイオンやIodoniumイオンで構成されるオニウム塩です。Sulfoniumイオン型の光酸発生剤は、UV光をより効果的に吸収する特性を持つため、UV硬化性樹脂の硬化に使用されます。

Iodoniumイオン型の光酸発生剤は可視光を効果的に吸収するので、可視光硬化性樹脂の硬化に有用です。

2. 非イオン性型

非イオン性型の光酸発生剤は、カチオン部分がSulfoniumイオンやIodoniumイオンでなく、イミドスルホネートやオキシムスルホネートなどの非イオン性化合物から成り立っています。非イオン性型の光酸発生剤は、オニウム化合物型の光酸発生剤と比較して、UV硬化性樹脂の硬化速度が速い特性を示します。

参考文献
https://www.sanyo-chemical.co.jp/magazine/archives/1294
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/c/13097
https://alpha-kogyo.com/feature/epoxy_resin/
https://www.furmanite.co.jp/composite_repair_701.html
https://www.sumitomo-chem.co.jp/rd/report/files/docs/20000100_4ir.pdf

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