ワイヤーハーネス

ワイヤーハーネスとは

ワイヤーハーネス

ワイヤーハーネスとは、機器間の接続を担っている部品で機器から発せられる様々な電気信号を伝達するために、電線や電線の両端に付属している端子やコネクタ等を束にしてまとめた集合部品の総称です。

電線は伝達する信号の数だけ必要になるため複数存在し、使用される用途や流れる電流の大きさによっても電線の太さや柔軟性が変わるため、その機能から人間で例えると「血管」に例えられる部品です。

最も代表的な用途としては、自動車用のワイヤーハーネスです。鉛バッテリー等の自動車へ電力供給するための部品が主に配置されているエンジン周辺部を中心に、運転席周りやリアテールランプといった自動車の隅々までワイヤーハーネスが張り巡らされています。

最近ではハイブリッド車や電気自動車が広く普及したことで、より軽量かつ高電圧にも耐えうるものが求められるようになり、特に耐電圧性の高い製品の開発が進行中です。

ワイヤーハーネスの使用用途

ワイヤーハーネスの使用用途としては、機器と機器を繋ぐことで互いの電気信号を相手に伝えることに用いられています。ワイヤーハーネスは自動車以外の分野でも数多く用いられています。使用用途の例は下記の通りです。

1. 自動車

ワイヤーハーネスが最も代表的に使用されているのが自動車です。主要動力であるエンジン周辺部に密集しており、エンジン周辺部を起点として自動車の室内に配置されているエアコン操作パネルや自動車の室外に配置されているブレーキやリアテールランプといった自動車の隅々まで接続しています。

自動車の組み立て性やメンテナンス性の関係から、1本の長い電線で接続されている訳ではなく、自動車を「前・真ん中・後ろ」といった、ある程度のセクションに分けて分割されたワイヤーハーネスが搭載されています。分割したワイヤーハーネス間の接続は、一般的にコネクタを介した接続です。

エンジン用途以外にスライドドア用ハーネスも存在します。スライドドア向けでは、小さいサイズや可動性に優れた設計になっています。

2. 医療機器

MRIやCTなど、医療機器の内部にも用いられています。振動や水濡れを考慮しつつ、限られた車内空間を通さなければいけない自動車用途に比べて、ワイヤーハーネス自体の形状はシンプルです。

その代わり接続した機器間の情報の信頼性が求められるため、ノイズ対策や電気抵抗値といった要求性能が高い傾向にあり、機器の大きさに合わせて様々なサイズのワイヤーハーネスが使用されています。

3. 生産設備

電化製品等を生産する設備にも用いられています。工場の生産ラインは距離が長くかつ長い期間使用されることが前提となっており、場合によっては生産ラインの移設等が行われることもあるため、長いワイヤーハーネスが使われることが多いです。

また、工場内で人や重機の往来によってワイヤーハーネスが踏まれてしまったり、油や汚れが付着することも多いためワイヤーハーネスの耐久性が求められる傾向にあります。

ワイヤーハーネスの種類

ワイヤーハーネスの種類としては、一般的な用途の低電圧用から、高電圧用といった種類があります。

1. 低電圧ワイヤーハーネス

従来のガソリン車等に使用されている、電圧12Vの鉛バッテリーから電力を各部品に供給するためのワイヤーハーネスです。

2. 高電圧ワイヤーハーネス

高電圧ワイヤーハーネスとは、近年需要の高まる電気自動車やハイブリッド車に搭載する為のワイヤーハーネスです。

電気自動車やハイブリッド車を駆動するためにモーターが使用されており、モーターの駆動には高出力の大電力を必要とします。また、減速時にモーターを発電機として使うことで回生エネルギーで充電を行い航続距離を伸ばすといった、電気自動車やハイブリッド車特有の制御も加わるため、より複雑なシステム制御に耐えられるよう耐熱性能等の要求値が高くなっています。

そのため、従来のワイヤーハーネスでは高電圧・大電流に耐えることが出来ない為、高電圧ワイヤーハーネスが開発されました。

3. アルミワイヤーハーネス

アルミワイヤーハーネスとは、電線の導体を従来のからアルミニウムに変更したワイヤーハーネスのことです。

従来の銅に比べて30~40%の軽量化が見込まれていますが、銅より導電率が低く融点も低いため耐熱性や端末につける圧着端子の加工性に課題があります。

自動車の安全性や快適性の向上、自動運転化に伴ってワイヤーハーネスの本数が増えることで車体重量の増加が懸念されており、軽量化されたアルミワイヤーハーネスの需要が高まっています。 

ワイヤーハーネスの原理

ワイヤーハーネスの原理として、ワイヤーハーネスを構成する様々な部材について紹介します。ワイヤーハーネスは、主にコルゲートチューブ、クリップ、コネクタ、端子、電線、テープで成り立っています。

1. コルゲートチューブ

蛇腹形状のチューブで、ワイヤーハーネスの保護部材として用いられます。主に電線を保護する部材なため、耐熱性や形状復元性が求められます。

取り付け時の加工性を考慮してスリットのあるタイプと無いタイプがあるため、必要に応じて選択する必要があります。材料はポリプロピレン樹脂がよく用いられています。

2. クリップ

ワイヤーハーネスを這わせる際、電線を固定するために用いられます。ハーネスの大きさや形状に合わせて、様々な種類が存在します。

3. コネクタ

電気配線の接続を行う部材です。一般的にオスとメスで1セットになっており、被覆を剥いた電線に専用の端子を圧着してコネクタへ差し込むことで、半田付けや電線同士の撚り合わせを行うことなく、簡単に接続が可能になります。

4. 端子

電線の端末に取り付ける部材です。端子もコネクタと同様オスとメスが1セットになっており、コネクタ接続時に端子が触れ合うことで電線同士を接続するために使われます。
電線と端子間は圧着により接合されるのが一般的です。

5. 電線

電力供給と電気信号を接続された機器に伝える役割を果たします。電線には価格と伝導率のバランスがとれた銅が主に用いられていますが、今後もシステムが複雑化することで1度にワイヤーハーネスで使用する電線の数が増えていくことが予想されています。そのため、電線自体を軽量化する需要が高まっておりアルミ電線の開発が進行中です。

6. テープ

電線の拘束や絶縁部分を保護するために使用されています。ワイヤーハーネスでは、絶縁性や難燃性が求められるため、主に材質が塩化ビニールで出来たビニールテープが用いられています。

ワイヤーハーネスのその他情報

1. ワイヤーハーネス工場について

ワイヤーハーネスの製造は、手の感覚で作業を行う工程が多い為、生産の全自動化が他の製造業に比べて進んでいません。その為、人件費の低い国で生産が行われることが多く、軽作業に向いた女性従業員の比率が高い傾向にあります。

2. ワイヤーハーネスの今後

ワイヤーハーネスの今後は従来のワイヤーハーネスから、電気自動車用の高電圧ワイヤーハーネスと軽量化されたアルミワイヤーハーネスが主流になると言われています。

参考文献
https://www.sumitomo.gr.jp/kids/shikumi/sws01.html
https://www.yazaki-group.com/wireharness/
https://www.sws.co.jp/product/wireharness.html
http://www.shinkou-inds.co.jp/where-to-use
https://www.nisseieco.co.jp/products/corrugate
http://www.shinagawashoko.co.jp/jp/cat3.html
http://www.sws-w.co.jp/product/harnessproduct.html
https://sei.co.jp/company/sei-world/2016/03/product.html
https://04510.jp/times/articles/-/13789?page=1
https://www.yazaki-group.com/wireharness/

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