ポジションインジケーター

ポジションインジケーターとは

ポジションインジケータとは、機械の部品であるワークの移動量を計測して計数で表示することで、ユーザーが容易に位置の測定をできる機械要素部品です。

回転軸に取り付けて使用することで、実際の送り量を確認できます。デジタルで表示するポジションインジケータもあります。デジタル表示にすることにより、細かい位置の調整が可能です。また、読み取りにおいても、作業者の感覚による従来の誤差や、調整のずれをなくしたりすることができ、作業の改善に貢献しています。

ポジションインジケーターの使用用途

ポジションインジケータは、機械の位置調整に適しています。包装や梱包を行う機械など、ワークを正しい幅や位置に調整するときに用いられています。

装置に直接接触するため、使用環境の影響を大きく受けます。そのため、取り付けハブの部分に用いられる材質によって、使用用途を以下の二種類に大きく分類することができます。

  • スチール
    一般的な環境で使用する場合に用いられ、様々な分野で幅広く多岐にわたって使用されます。例えば、工作機械や装置などで使われています。
  • ステンレス
    錆や腐食に強いため、水や薬品などへの耐性や衛生などが重視される特殊な環境で用いられます。例えば、食品や薬品を扱う機械や装置などで使用されています。

ポジションインジケーターの原理

ポジションインジケータは、送りねじや送り回転軸に取り付けることによって、軸の回転を利用し、ワーク部分の送り量を計算します。

ハブが一回転したときの表示と、送り回転軸のピッチを合わせることで、送り回転軸が実際の送り量を確認できます。送り量の把握により、精密な調整や、作業状況を的確に把握ができます。

参考文献
https://www.nbk1560.com/resources/machine_element/article/indicator-about/
http://konishi-mfg.com/goods/indi/gn2.php
https://www.imao.co.jp/introduce/digital-position-indicator.html
https://www.nbk1560.com/resources/machine_element/article/indicator-about/?SelectedLanguage=ja-JP
https://jp.misumi-ec.com/pdf/fa/09_p1_0689.pdf

ベアリングヒーター

ベアリングヒーターとは

ベアリングヒーターとは、ベアリングの内輪を焼きばめによって軸に取り付ける際に使用する機器です。

焼きばめとは、ベアリングの内輪と金属製回転軸との結合方法の一つです。加熱すると膨張する金属の性質を生かしています。ベアリングを過熱し、内輪の内径を大きくすることによって、ベアリングの内輪と軸と強固に固定することが可能です。

ベアリングの焼きばめは、オイルバスによって温めた油中でベアリングを温める方法などもありますが、オイルバスの準備などに手間がかかります。バーナーでの加熱は、部分的に高音になる可能性があり、ベアリングの材料の強度が低下するリスクが避けられません。

このような問題を解決するためにベアリングヒーターは、電磁誘導による加熱が一般的です。

ベアリングヒーターの使用用途

ベアリングヒーターは、ベアリングの内輪と回転軸をしまりばめによって固定したい場合に使われます。ベアリングの大きさが小さく、しまりばめの締め代が少なければ、内輪を押しながら圧入することも可能です。

しかし、ベアリングが大きく、必要な締め代も大きな場合には焼きばめを行い、ベアリングヒーターを使うと効率的に作業ができます。ベアリング部品は使用される機械に組み付けられる際に、内輪か外輪のいずれかを締まりばめで固定し、もう一方は隙間ばめによって取り外しができるようにしておかなければなりません。

内輪と外輪のどちらかを締まりばめにするのかは、それぞれが受ける荷重の方向や大きさの変動が大きい方を締まりばめにします。内輪と外輪いずれも固定したい場合には、外輪を隙間ばめにした上で、ベアリングリテーナなどによって外輪を固定したり、外輪に二面幅形状を加えたつばを設けて、ハウジング部品と組み合わせたりする方策が必要です。

ベアリングヒーターの原理

焼きばめはベアリング全体を加熱、膨張させて、内輪の内径が大きくなったところに軸をはめ入れます。その後ベアリングが冷えると膨張した穴は元のサイズに収縮し、軸と固着されます。この原理を使うことで、穴と軸は互いに強く固定されるため、緩みに対して非常に強くなります。

ベアリングヒーターの多くは、電磁誘導によってベアリングを加熱します。電磁誘導式の仕組みを一言で表すなら、「電子レンジ」です。コイルに電流を流すことで磁束が発生し、金属の電気抵抗により渦電流に伴う発熱が起こる仕組みを利用しています。

ベアリングを過熱するために火を使用せず、場所も取らないため、安全かつ省スペースで作業が可能です。ヒーターの型式にもよりますが、100V電源で使用可能なものもあります。電磁誘導式のヒーターを使用する場合、過熱後そのままだと磁束が残り、軸受自体に磁力が生じた状態 (磁石と同じ状態) になります。

磁力によってベアリングに砂鉄などの異物が混入する可能性があり、磁力を取り除かなければなりません。そこで電磁誘導式のベアリングヒーターには通常、脱磁機能が搭載されています。

ベアリングヒーターのその他情報

ベアリングヒーターの温度

ベアリングヒーターによって過熱できる温度はヒーターによって様々です。電磁誘導式のうち200℃まで加熱できるものがありますが、ベアリングは原則120℃以下で組み付けるとされています。

なぜなら、ベアリングの焼戻し温度以上に加熱されると、ベアリングの材料の強度が低下してしまうからです。焼きばめではベアリングと軸との温度差が90℃以上あれば、締め代は十分小さくなっている可能性が高いです。ベアリングの過熱しすぎに注意しましょう。

参考文献
https://www.etoh-inc.com/
https://www.tlv.com/ja/products/070000/070100/p070104/
https://www.fukudaco.co.jp/support/glossary/shrink-fit.html
https://www.ntn.co.jp/japan/products/catalog/pdf/9103.pdf
https://www.ezo-brg.co.jp/product/document-detail13.html

ベアリングナット

ベアリングナットとは

ベアリングナット

ベアリングナット (英語: Bearing Nut) とは、ベアリングを締結するための部品です。

ロックナットも同義語として使用されます。ベアリングを締結する場合にはいくつかの方法があり、ベアリングナットによる締結はその一つです。主に、ベアリングナットでベアリングのインナーリング (内輪) を締め付け固定します。

仕様・寸法などは下記規格で規定されていて、規格以外の製品もあります。

  • JIS B1554: 2016 転がり軸受-ロックナット、座金及び止め金
  • ISO 2982-2: 2013 Rolling bearings -Accessories -Part 2: Dimension for locknuts and locking device

ベアリングナットの使用用途

ベアリングナットの使用用途は、ベアリングの締結です。主にシャフト軸端部にベアリングが使用されている場合になります。

特に、取り外しスリーブを使用してベアリングをシャフトに締結する場合は、締め付けようと取り外し用では異なるサイズのベアリングナットを使用します。シャフト回転方向が時計回りの回転機械のシャフト支持部品として使用する場合は、回転方向と同方向でナットのねじがゆるみやすくなるため、左ねじのベアリングナットを使用することが多いです。

ベアリングナットの原理

ベアリングナットを使用しベアリングを締結する場合は、下記のような方法があります。

1. 円筒穴ベアリングの締結

ベアリングナットの原理

図1. ベアリングナットの原理(1)

インナーリング内径が円筒穴のベアリングをシャフトに締結する場合の例として、ベアリングナットを使用します。シャフト端部に加工されたオスねじ部に、ベアリングナットをねじ込み、インナーリングをシャフト径違い部に押し付け固定する使い方をします。

ベアリングナットの緩み止めとして、ロックワッシャ (菊座金) を併用することもあります。ロックワッシャの内・外径側につばがあり、内径側をシャフト溝へ外径側をベアリングナット溝にかみ合わせて折り込み、回転方向に対して拘束し固定します。

2. テーパ穴ベアリングの締結

ベアリングナットの原理

図2. ベアリングナットの原理(2)

インナーリング内径がテーパ穴のベアリングをシャフトに締結する場合の例として、「アダプタスリーブ」もしくは「取り外しスリーブ」とベアリングナットを使用します。アダプタスリーブとベアリングナットを使用する場合は、アダプタスリーブをシャフトにはめ込み、アダプタスリーブのおすねじ部にベアリングナットをねじ込むことで、アダプタリングが押し込まれて、インナーリングとアダプタリングのはめ合いが強くなり、インナーリングがシャフトに締結されます。

また、取り外しスリーブとベアリングナットを使用する場合は、取り外しスリーブをシャフトにはめ込み、取り外しスリーブのおすねじ部にベアリングナットをねじ込むことで、取り外しスリーブが押し込まれてインナーリングと取り外しスリーブのはめ合いが強くなり、インナーリングがシャフトに締結されます。

なお、取り外しスリーブを使用する場合は、ベアリングを取り外す場合にもベアリングナットを使用します。シャフト軸端部のおすねじ部にベアリングナットをねじ込むことで、取り外しスリーブが引き出されて、インナーリングと取り外しスリーブのはめ合いが緩くなり、インナーリングとシャフトの締結が解除されます。

ベアリングナットの原理

図3. ベアリングナットの原理(3)

ベアリングナットの種類

ベアリングナットの種類

図4. ベアリングナットの種類

ベアリングナットの種類は、型式、ゆるみ止め種類、用途によって、上記の図のように分類することができます。

1. 型式

ロックナット

図5. ロックナット

  • ロックナット
    ねじ締めだけで固定するベアリングナットです。
  • 油圧ナット
    油圧によって組み込み、取り外し時の補助ができ、ベアリングナットに油給油口が設けられています。

2. ゆるみ止め

ハードロックナット・フリックションリングロックナット・精密ロックナット

図6. ハードロックナット・フリックションリングロックナット・精密ロックナット

  • ハードロックナット
    一般のロックナット用ハードロックナットと同様に、クサビ状の偏心した凹凸の2種類のナットで、凸ナットのねじ部全体がボルト側に押し付けられ、凹ナットのねじ部全体が逆側のボルトねじ部に押し付けられる作用が働き、「クサビ」効果によりゆるみを防止します。
  • フリクションリング式
    ベアリングナットをねじ込むと、ナット端部のフリクションリングがシャフトおねじに接触し、フリクションリングがたわみにより、シャフトねじ接触面を押し摩擦抵抗により、ゆるみを防止します。
  • 精密ナット
    回転軸に対して高精度な振れ精度で加工されたベアリングナットです、回転時のバランスが良くゆるみにくいのが特長です。セットスクリューをシャフトに締め付けるタイプもあります。

ベアリングナットのその他情報

1. ベアリングナットの取り付け方向

ベアリングナットの取り付け方向は、面取り側がベアリング側となります。ロックワッシャは、この面取り面に沿うように取り付けます。また、ベアリングナットの面取りしてない面には、AN10などベアリングナットの型番が刻印されていて、取り外し時に見易くなっています。

2. ベアリングナットの締め付け

ベアリングナット用の工具

図7. ベアリングナット用の工具

ベベアリングナットは、機器稼働中に振動によるゆるみは、異音発生やベアリングを含む部品の破損につながる可能性があります。したがって、ベアリングナットは適切な工具での締め付けが重要です。ベアリングナット締め付け用工具は、下記のような種類があります。

  • ベアリングナット用ソケット (ロックナット ソケット)
    ベアリングナットを締め付けるためのレンチ用のソケットです。ベアリングナットの外径にはまり込むような形状で、ベアリングナットの大きさに合わせたサイズを選定し、一般的なソケットレンチに取り付けて使用します。
  • フックスパナ
    ベアリングナットを締め付けるためのスパナタイプの工具です。ベアリングナットの凹み部にフックの凸部をひっかけ、テコの原理で回転させ締め付けます。ベアリングナットの外径に対して適正なサイズのフックスパナを使用します。ベアリングナットレンチが入らないような場所で有効に使用できます。
  • 平たがねとハンマー
    平たがねとハンマーは、ベアリングナットを締め付け、増し締めする際に使用します。ベアリングナットの凹部に、平たがねを当てハンマーで叩き込みます。ゆるみ防止方法の一つで、一般的に「かしめる」と言います。レンチなどでは力が入りきらないときなどに使用します。注意点としては、ベアリングナットの凹部に衝撃を与えるため、外れて他の部位を損傷させないようにします。また、叩き過ぎるとベアリングナットの凹部がつぶれるので注意が必要です。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/g0032.html#anchor03
https://www.nikki-tr.co.jp/html/lock_nuts2_AN.html#anchor03
https://neji-one.com/lineup/N0000B00.htm#anchor03
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/110300119550/#anchor03
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/110300113950/#anchor03
http://www.nissindirect.com/socket/fainrenchi.html#anchor03

プログラマブル電源

プログラマブル電源とはプログラマブル電源

プログラマブル電源とは、その出力を任意に可変できる電源のことです。

一般的な電源でも、出力電圧や電流の設定を手動操作で調整することができます。しかし、プログラマブル電源では、コントローラからのコマンドで自在に出力の電圧や電流、周波数を設定できる点が特徴です。

プログラマブル電源の使用用途

プログラマラブル電源は、半導体デバイス等の特性試験や電子機器の検査装置に利用されています。自動的にデータを取得する場合や、電源条件を徐々に変化させて測定対象の応答を調査する場合に便利です。

特に半導体の電圧電流特性を測定する用途では、高精度なプログラマブル電源と電圧電流測定器を同一の筐体に収め、コントローラによって制御される専用の測定装置があります。最近では、パワー半導体の評価ができる大容量のプログラマブル電源と計測ユニットを組み合わせた製品も登場しています。

その他、家電などの機器から、航空宇宙分野や、軍事産業、発電/再生エネルギー分野等、プログラマブル電源が活用される分野は広がりつつあります。

プログラマブル電源の原理

基本的にプログラマブル電源は安定化電源の一種であり、その中の基準電圧をD/Aコンバータで設定すると、それに応じた電圧もしくは電流が出力されます。コントローラに接続されている場合は、コントローラがD/Aコンバータのデータを書き換えることで、出力電圧/電流を変化させることが可能です。

プログラマブル電源の種類

電源回路の構成で分類すると、次のようなものがあります。

1. ドロッパ方式直流電源

リニア電源やシリーズ電源ともいわれる直流電源で、出力電圧のノイズが小さなことが特徴一つです。主に微小な信号を扱う場合など、ノイズを極力少なくしたい測定において利用されますが、電力の変換効率は全般的に低く、発熱が多いので放熱対策が必要です。出力電圧は基準電圧と比較され、常に一定の電圧となるようフィードバック制御されています。

2. スイッチング方式直流電源

ドロッパ方式と比較すると効率が良いため、現在では主流になっている電源装置です。多少ノイズが大きくなりますが、発熱が少なく大容量電源を作ることができるため、大きな電流を必要とする試験装置、例えばハイブリッド自動車の試験にも採用されています。ドロッパ方式と同様、出力電圧は基準電圧と比較され、常に一定の電圧となるようフィードバック制御されています。

3. 高圧電源

一般的なプログラマブル電源の出力電圧範囲は数十ボルトですが、高電圧出力に特化した電源があります。数千~数万ボルトの直流電圧が発生できる高電圧プログラマブル電源は、以下のような用途で使われています。

  • 光電子増倍管
  • 質量分析装置
  • 電子ビームの制御
  • 複写機等の感光ドラム帯電

ただし、単独で使われることは稀で、多くの場合装置の一部としてシステムに組み込まれています。

4. バイポーラ電源

直流だけではなく交流も出力可能な方式で、電力のソース機能だけでなくシンク機能も有しています。回路構成としては一種の電力増幅器であり、電源のみならず電子負荷としても使うことが可能です

電力増幅回路であるため、比較的高い周波数の交流電力も出力可能で、コントローラや信号発生器と組み合わせて複雑な試験波形を発生させることができます。これを利用して、各種電子機器における電源電圧変動特性の測定や圧電素子の駆動試験などにも用いられています。

5. 校正用の電圧/電流発生器

電圧や電流を測定するデジタルマルチメーター、生産ラインにおける各種設備などの校正/検査に利用される基準信号として使われる電圧電流発生器もプログラマブル電源の一部です。通常の電源とは異なり、出力電圧や電流値に高精度が求められますが、出力可能な電力の大きさは余り問われません。コントローラと組み合わせて、自動的に校正データを取得する等の利用方法があります。

参考文献
https://www.mco.co.jp/blog/20180423/
https://www.ni.com/ja-jp/shop/hardware/products/pxi-programmable-power-supply.html
https://www.toyo.co.jp/files/user/material/catalog-broucheres/pp-selectionbook.pdf
http://www.nippon-sokki.co.jp/itech/manual/IT7600-manual.pdf

電球フィラメント

電球フィラメントとは

フィラメント

電球フィラメントとは、白球電球などの照明機器の発光する部分のことです。

ガラス球の内部にあり、細長い線状の形をしている抵抗体です。フィラメントは、電流が流れて加熱されることで発光します。

発明当初のフィラメントは、素材に炭化した紙が使用されていたため、炭素電球と呼ばれていました。しかし、約1分光るとすぐにフィラメントが燃えてしまい、普段の生活で使用できるレベルではありませんでした。

そこで、現在ではほとんどタングステンという金属が使用されています。

電球フィラメントの使用用途

電球フィラメントは、照明用電球の光源として使用されています。

1. 白熱電球

主な使用用途として、白熱電球が有名です。フィラメントの素材には、コイル状にした細いタングステン線が使用されます。しかし、最近の一般照明用電球では、熱を奪われにくくするために二重コイル状になっているものが多く使用されています。

コイルと二重コイル

図1. コイルと二重コイル

白熱電球には、ハロゲン電球やミニクリプトン電球、蛍光電球などの様々な種類があります。ガラス球の内部には、フィラメントの蒸発を防ぐために不活化ガスが充填されています(例:アルゴン、窒素、クリプトンキセノン)。

また内部が真空のものも存在し、白熱電球はガスの種類によって光の発色や強さが異なります。近年では、白熱電球はエネルギー効率が悪いという理由から、ハロゲン電球やミニクリプトン電球以外の白熱電球は生産が中止となっているものもあります。

またこのようなエネルギー効率の観点から、最近ではLED(Light Emission Diode)と呼ばれる発光ダイオードが使用されることが多くなっています。

2. フィラメントLED電球

フィラメントLED電球とは、フィラメントをLEDで再現した電球のことです。フィラメントLED電球は、明るさが暗いという特徴があります。

理由は、細長い糸状のLEDを用いているからです。また、ヒートシンクと呼ばれる放熱部分を持たない機種が多く存在します。そのため、あまりパワーの大きいLEDを使用できないというデザイン上の制約もあります。主な用途として、補助的な照明や関節照明に使用されています。

一方、一般的なLED電球は大きなLEDチップを使用できるため、フィラメントLED電球より明るいものが多く作られています。

フィラメントLED電球の寿命は、白熱電球や蛍光灯電球より長いが、一般的なLED電球より短い長さです。具体的には15,000時間前後です。一般的なLED電球が30,000〜40,000時間であるため、約半分の寿命となります。

電球フィラメントの原理

白熱電球は、フィラメントに電流を流してジュール熱を発生させ、熱放射して発光する原理を用いています。ジュール熱とは、導体に電流を流した時に発生する熱エネルギーのことです。

したがって、長時間利用可能な電球にするためには、フィラメントは抵抗が強く、熱に強い素材である必要があります。そうでないと、フィラメント自体が熱に耐えられずに燃えてしまい、光源として使えなくなってしまうためです。

タングステンは融点が3,653K(3,379℃)と非常に高く、金属元素の中では最高値です。したがって、ジュール熱によって高温になっても溶けることがありません。そのため、フィラメントにはよくタングステンが用いられるのです。

電球内部は不活性ガスが封入されていることで、電球は長寿命を保つことができます。しかし、不活性ガスはガス自体の熱伝導や対流により、フィラメントの熱を奪う動き(熱損失)もします。封入ガスと熱損失の関係は図2のように、原子量の大きい元素ほど熱損失が小さくなる傾向があります。

封入ガスと熱損失

図2. 封入ガスと熱損失

電球フィラメントのその他情報

1. 竹のフィラメント

1879年、エジソンが実用的な白熱電球を発明しました。当時、フィラメント材料として使用されていたのは日本の竹でした。竹は繊維が太く、丈夫で長持ちするので、フィラメント材料に適していました。

電球開発当初、エジソンは木綿糸に煤とタールを塗って炭素化させたフィラメントを使用し、電球を40時間継続して点灯させることに成功しました。しかし、実用性を考慮すると、もっと長く点灯し続ける電球の開発が必要不可欠でした。

そのため、紙や糸などの身近にある様々な材料をフィラメントにして、点灯時間を調べる実験を繰り返しました。その過程で、日本からのお土産の扇子を見つけ、その骨組として使用されている竹をフィラメントにして電球をつくりました。

その電球で点灯実験を行うと、今までの材料よりも点灯時間が長くなり、実用性のあるレベルまで到達することがわかりました。その後、エジソンはフィラメントに最適な竹を探すために、世界中の様々な種類の竹を使って点灯実験を進めていきました。

そして、日本の京都産の八幡竹を使うと、平均1,000時間以上点灯し続けることがわかり、実用化するに至りました。

2. フィラメント糸とスパン糸

モノフィラメントとマルチフィラメント

図3. モノフィラメントとマルチフィラメント

フィラメントという言葉は電球の光源部分を指すときに使用しますが、絹のように連続した長い繊維のことをフィラメント糸といいます。フィラメン

ト(英語: filament)は、元々繊維状のものを意味する英単語です。一方で、綿糸のように短い繊維同士を平行にしてそろえて、撚りを加えて一本の糸に紡績したものをスパン糸といいます。

フィラメント糸には、モノフィラメントとマルチフィラメントの2種類があります。前者は、釣り糸のように長い一本の糸のことをいいます。後者は、数十本の糸を撚り合わせて1本の糸にしたものをいいます。天然繊維では絹糸が該当します。蚕が吐き出した繭を解いたものが生糸、それをきれいにしたものが絹糸です。

スパン糸には、特に種類はありません。綿、麻などのほとんどの天然繊維が該当します。

参考文献
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_ha/filament.html
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_ta/tungsten.html
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_ta/tungsten_filament_lamp.html
https://eguchi-hd.co.jp/enelabo-filament-edison/
https://www.cradle.co.jp/glossary/ja_S/detail0132.html
https://news.only-1-led.com/filament_led_info

ガス切断機

ガス切断機とは

ガス切断機

ガス切断機とは、アセチレンガスなどの可燃性ガスと高濃度の酸素を使用して鋼板を切断する機器のことです。

ガス切断は熱を加えて鋼板を酸化させ、それにより鋼板が割れるようにする加工方法で、一般的に鋼材加工において広く用いられています。可燃性ガスを使用する機械で切断中には閃光が発生するため、ゴーグルやマスクなどの安全装備が必要です。日本ではガス溶接やガス切断を行うには、労働安全衛生法に定めるガス溶接技能講習で学科講習と実技講習を受け、資格を取得する必要があります。

ガス切断機には一般的な手動式のものや、CNC (コンピュータ数値制御) による自動切断機があります。自動切断機はコンピュータで事前にプログラムされたカットラインに沿って切断を行うため、高精度で効率的な切断が可能です。また、手動式のガス切断機は軽量で持ち運びが簡単であるため、作業現場での使用に適しています。

ガス切断機の使用用途

ガス切断機は一般的に鋼材のみを切断でき、厚板やパイプなどの大型鋼材の切断に使用されます。しかし、手で保持して使用するため精度はそれほど高くありません。一方、大型のガス切断機では火口が数十本あり、一度に複数枚の鋼板を高精度で切断が可能です。

また、NCガス切断機として切断位置をプログラム化し、複雑な形状を自動で切断できる機種も存在しています。このため、船舶や建築、自動車産業など、鋼材の加工が必要な産業分野において広く使用されています。ただし、ガス切断機を使用する場合は可燃性ガスを使用するために安全面には十分注意が必要であり、適切な装備や技術の習得が求められます。

ガス切断機の原理

ガス切断機はアセチレンガスと酸素ガスを混合し、予熱炎で鋼材を加熱し、高圧の酸素ガスで鋼材を燃焼させて切断します。アセチレンボンベと酸素ボンベから供給される2種類のガスが切断機先端の火口から放出されます。予熱炎用のガスに専用ライターで着火し、鋼材に近づけると予熱炎で鋼材の温度が上昇します。

予熱炎の中心には高濃度の酸素が噴出しており、高音になった鋼材は酸素が供給されることにより燃焼し液体となり、高圧の酸素によりそれらが周りに吹き飛ぶことで鋼材の切断が可能です。このように、予熱炎で鋼材を加熱し高圧の酸素ガスで鋼材を燃焼させて切断することにより、鋼板が切断されていきます。

ガス切断機の利点は、厚い鋼板が切断できることや、必要機材が少なく可搬性に優れることが挙げられます。また、ガス切断には電気などのエネルギー源が不要です。ガス切断機とガスボンベがあれば良いため、現場での作業に適しています。ただし、ガス切断機は精度が出にくい場合があり、高精度な切断が必要な場合には、レーザ切断などの別の方法の検討が必要です。

ガス切断機の種類

ガス切断機は主に、手動式と自動式の2種類が存在します。切断方法や切断材料によって選定が必要です。

1. 手動式のガス切断機

手動式のガス切断機は、人が手で保持して使用するタイプで、比較的小型で移動が容易な機種が多くあります。手動式のガス切断機は、予熱炎で鋼材を加熱し、高圧酸素で燃焼させることによって切断するため、比較的精度が出にくいというデメリットがありますが、手動式であることから、場所を選ばずに切断作業が可能で、使い勝手が良いというメリットもあります。

2. 自動式のガス切断機

自動式のガス切断機は、NCガス切断機やプラズマ切断機など、様々なタイプがあります。自動式のガス切断機は、プログラムで切断位置を指定し、機械が自動的に鋼材を切断するため、高精度で複雑な形状の鋼材を効率的に切断が可能です。自動式のガス切断機は、機械化されていることから、比較的高精度な切断が可能であり、大量生産に向いているというメリットがあります。

塩素測定器

塩素測定器とは

塩素測定器とは、主に残留塩素の測定に用いられている測定機器です。

残留塩素計、残留塩素測定器ともよばれます。カラーチャートで簡単に塩素濃度を測る製品なども、これらの製品に含めることがあります。

水道水の残留塩素の測定やプールの塩素濃度の測定など、塩素測定器が使用される場面は幅広いです。

塩素測定器の使用用途

各用途によって、計測する塩素濃度のレンジや精度が異なります。計測する塩素濃度が十分な精度で計測できる塩素測定器を使用することが重要です。

なお、塩素測定器の主な用途は以下の通りです。

  • 水道水の残留塩素濃度が水道法を遵守しているかの測定する場合
  • 野菜、果物、卵などの洗浄水の濃度管理
  • 遊泳用プールの塩素濃度が衛生基準に従っているかを測定する場合
  • 産業用装置やクーリングタワー等、様々な所で殺菌・消毒用に使われている塩素濃度を測定したり、工場用水の管理を行ったりする場合
  • 福祉施設、厨房、給食施設での衛生管理
  • 公衆浴場でのレジオネラ菌対策として塩素濃度を測定する場合
  • 浄化槽の残留塩素濃度が条件を見対しているかを測定する場合
  • 原子力発電所、火力発電所において、海洋に戻す冷却水の残留塩素濃度を測定する場合

塩素測定器の原理

塩素測定器の測定原理には、主に、ジエチルパラフェニレンジアミン法 (DPD法) 、吸光光度式、ポーラログラフ (電流) 式などがあります。

1. ジエチルパラフェニレンジアミン法 (DPD法)

比色式の塩素測定器のイメージ

図1. 比色式の塩素測定器のイメージ

ジエチルパラフェニレンジアミン法 (DPD法) とは、DPDの化学反応を利用して比色定量で塩素を測定する方法です。この方法は、法令で規定されている公定法でもあります。

DPD法の反応機構

図2. DPD法の反応機構

DPD (ジエチルパラフェニレンジアミン) は塩素によって酸化されると、無色のキノンジイミンを経由した後に更に未反応のDPDと反応し、N,N-ジエチル-セミキノン中間体を生じて桃赤色に呈色する性質があります。この原理によって比色管内で呈色した色濃度を、残留塩素標準比色列と比色することにより、残留塩素の濃度を決定する事が可能です。

なお、DPDは遊離残留塩素とは直ちに発色するものの、結合残留塩素との反応は遅い性質があります。遊離残留塩素と結合残留塩素を合わせた総残留塩素の濃度を決定するには、ヨウ化カリウムを添加して結合型を遊離型に変えることが必要です。

2. 吸光光度式

吸光光度式の塩素測定器のイメージ

図3. 吸光光度式の塩素測定器のイメージ

吸光光度式では、DPD法において比色定量の代わりに吸光光度法を用いて機械的に読み取る方法です。通常、デジタル表示などで数値化して表示します。

3. ポーラログラフ (電流) 式

試料中にに2つの電極を静置して電圧をかけると、電極間に電流が流れます。このとき、残留塩素の濃度によって流れる電流量が変化します。ポーラログラフ式とは、この電流量を測定することにより、サンプル内の塩素濃度を測定する方法です。

海水中の残留塩素を測定する発電所向けの測定器では、ポーラログラフ式が採用されており、大型となっています。また、0~100ppbという極低濃度域の検出が可能です。 

塩素測定器の種類

塩素測定器は、前述の測定原理では比色 (DPD) 式測定器、吸光光度式測定器、ポーラログラフ(電流)式測定器などの種類があります。DPD式の測定器でも、機器によっては超高濃度や全塩素測定はヨウ化カリウム試薬を用い、低濃度や遊離塩素測定にはDPD試薬を使用するなど、製品によって細かい測定原理が異なります。

一般的には比色式のものに小型で手軽なものが多いです。吸光光度式測定器の中にも持ち運び可能な小型なものがあります。無試薬で水道水やプールの残留塩素を測定可能な機器、次亜水濃度の測定も可能な機器や、高濃度を測定する機器など、製品にはそれぞれ特徴があり、用途に合わせたものを選択することが必要です。

測定範囲や分解能 (測定性能) によって、高性能/高価格なものから簡易性能/低価格なものまで各社から多くの製品がラインナップされています。

ホーロー浴槽

ホーロー浴槽とはホーロー浴槽

ホーロー浴槽とは、ホーローと呼ばれる素材を用いて製造される浴槽です。

浴槽以外にも食器や鍋などにも用いられ、美しく耐久性が高いのが特徴です。
ホーロー製品自体は金属板または金属の鋳物などの表面にガラス質の成分 (主に二酸化ケイ素) を高温で焼き付けることで作られます。金属を使用していることから他の素材の浴槽に比べて高い耐久性を有しています。表面がガラス質であることから、とても美しい浴槽となります。

ホーロー浴槽の使用用途

ホーロー浴槽は高価なこともあり高級住宅向けと考えられていますが、ホーロー製の浴槽よりも安価な人工大理石製の浴槽も使われるようになってきました。人工大理石は大理石の代用として浴槽以外にも、キッチンや洗面台などにも使われています。入浴後は、浴槽をシャワーで軽く洗い流すだけで清潔な状態を保つことができます。保温性に優れ、カビが生えにくいという理由から近年人気が高まっています。

ホーロー浴槽の原理

ホーロー浴槽をはじめ、ホーロー製品は以下の工程で作られます。

1. 金属整形加工工程

鋼板を板金加工プレス加工などで規定の形に仕上げ、溶接して製品形状に成形します。プレスなどの加工ではなく型から鋳造する場合もあります。

2. 前処理工程

ここでは鋼板に付着した油などの汚れを除去します。また、ニッケル溶液に鋼板をつけて、鋼板表面を釉薬 (二酸化ケイ素) が付きやすい状態に変化させます。ニッケル溶液につける前に硫酸に鋼板を付けることで、鋼板の表面を粗くして、より釉薬が付きやすい状態に鋼板を加工することもあります。

3. 施釉

前処理を行った鋼板に釉薬を吹き付けて塗布します。釉薬はガラスの粉末に珪石、長石、金属酸化物、ホウ砂、ソーダ灰等を混ぜたもので、製品の色や特性により多くの種類が用意されます。

4. 焼成工程

釉薬を塗布後に十分乾燥させ、焼成を行います。焼成は800~850度で5~10分程度行い、完成となります。製品によっては、施釉、焼成工程を複数回繰り返すこともあります。

ホーロー浴槽のその他情報

1. ホーロー浴槽の寿命

ホーロー浴槽の寿命はおよそ20~30年です。この頃になると劣化が目立ってきますが、ホーロー浴槽にお湯を張っている時間が長い場合は浴槽表面の釉薬が剥離しやすく、早ければ15年ほどで劣化してしまいます。

2. ホーロー浴槽の補修

ホーロー浴槽のよくある劣化の症状は、浴槽表面のガラス質のクラック (ひび割れ) や剥離です。穴が空いたり浴槽内部の金属部がむき出しになるケースがあります。内部に染み込んだ水が原因で金属部が錆びてしまうこともあります。
ガラス質の劣化は研磨のみではホーロー本来の光沢や質感が損なわれてしまうため修復が不可能となり、塗装をし直して補修します。補修のための塗装には、7~20万円ほどの費用がかかります。

ホーローに穴が空いてしまっている場合は内部の金属が錆びていることが多く、その場合は浴槽自体の交換が推奨されます。浴槽に石鹸かすなどの汚れが付着するのを防ぐために、劣化の症状があまりひどくないケースに限ってクリアコーティング処理を施す方法もあります。費用は2~3.5万円ほどです。

補修の費用を抑えるためにDIYを検討する場合は、作業の難易度が高いため慎重に判断する必要があります。浴槽内部の金属が錆びてしまった場合は完全に除去しなければ再発してしまうだけでなく、ホーローの塗装に適した塗料は特殊であるため補修部分に密着させるのが難しく、剥離しやすいです。ホーローの塗装はプロの業者でも施工不良を起こしやすいと言われているため、初めから塗装が得意なプロに依頼する方が得策と言えるでしょう。

参考文献
https://rehome-navi.com/articles/621

プラズマクリーナ

プラズマクリーナとは

プラズマクリーナは、クリーニングが必要な対象物表面にプラズマを吹き付けます。この時、対象物表面に存在する除去を行いたい物質とプラズマが化学反応を起こし、別の物質へ変化去せることでクリーニングを行います。

プラズマクリーナーは多くの産業で活用されていますが、特に半導体関連ではウエハーのレジスト除去やレジスト残渣除去などに使われ、なくてはならない装置となっています。また、ICの組み立てでは、ワイヤーボンディングのクリーニングや強度向上のために使用されています。

プラズマクリーナの使用用途

既に述べたように、半導体関連ではウエハーなどの有機物(レジスト)の除去などが主な使用法ですが、以下のように多くの産業で使用されています。

  • IC組み立て
    基盤電極部のボンディング強度向上など
  • マテリアル関連
    高分子材料コーティング前処理など
  • メカトロニクス関連
    自動車車載パーツのクリーニング処理など
  • FPD関連
    液晶パネルの貼り合わせ強度向上など
  • 工学関連
    レンズの接着や、コーティングの前処理

プラズマクリーナの原理

プラズマクリーナーは、プラズマを対象物に吹き付けることでクリーニングを行います。そのプラズマは何かというと、物質にエネルギーを与え続けて、最終的に分子が陽イオンと電子に分離した状態を指し、この状態になった物質をクリーニング対象物に吹き付けクリーニングを行います。

プラズマ化させる物質はクリーニングで除去したい物質により異なり、このため多くの種類が存在しますが、酸素やアルゴン、フロンなどがよく使用されます。

例えば、クリーニング対象物表面に付着した有機物を除去したい場合は、酸素をプラズマ化させて吹き付けます。プラズマは活性度が非常に高いため、物質表面の有機物は水と二酸化炭素に変化してクリーニング対象物からクリーニングされることになります。

また、表面の亜酸化銅を除去したい場合には、プラズマ化したアルゴンを吹き付けることにより、亜酸化銅をアルゴンと過酸化銅に反応させることで、クリーニングを行うことが可能です。

ブレーカ

ブレーカとは

ブレーカとは、異常電流が流れた際に電源を遮断して電気回路を保護する安全装置です。

回路が地絡した場合や規定以上の電流が流れた場合に自動的に電源を遮断します。ケーブルに許容以上の電流を流すと、ケーブル自体が徐々に発熱していきます。長時間流し続けるとケーブル被覆や周辺の可燃物が熱によって発火し、火災などが発生する危険があります。また、回路が地絡した場合も建屋鉄骨などを介して可燃物に電気が流れ、火災の危険性が高いです。

このような電気火災や人の感電傷害を防ぐために、地絡時と過電流時にはブレーカを使用して電源供給を遮断します。なお、ブレーカ (Breaker) は日本語訳すると遮断器です。ただし、一般的には低電圧用の装置をブレーカ、高電圧以上の保護装置を遮断器と呼ぶ場合が多いです。高電圧用には、真空遮断器や油遮断器などが使用されます。

ブレーカの使用用途

ブレーカは電気の使用上欠かせない装置であり、一般用途から産業用途まで広く使用されます。電気を取り扱う機器の電源側に、ほとんどの場合はブレーカを取り付けます。以下は、ブレーカの使用箇所一例です。

  • 住宅の分電盤内部
  • 排水用水中ポンプや水道水汲上ポンプの電源回路
  • 業務用エアコンの電源回路
  • キュービクル内部の主幹配線保護回路

住宅用の分電盤は一般的なブレーカの用途で、住宅火災や住民の感電を防止する目的で設置されます。水を取り扱うポンプにおいても、ブレーカが使用されます。水中ポンプなどはモータを水中に投げ込むため、漏電の危険性が高く、漏電遮断器を使用するのが一般的です。

また、商業施設などに使用される業務用エアコンの電源回路にも使用されます。エアコンは内部にドレンが溜まるため地絡しやすく、通行人も触れる可能性があることから、漏電遮断器の使用が推奨されます。

ブレーカの原理

ブレーカーは配線端子、引き外し装置、ケーシングなどで構成されます。

1. 配線端子

配線端子は、配線をブレーカに接続するための金具です。国内ではボルトやネジで締め付けるタイプが多く、丸端子などで端末処理を施した配線を接続します。海外では、フェルール端子などを差し込むプッシュイン式が使用されることも多いです。

2. 引き出し装置

引き外し装置は、過電流時に回路を遮断する機構で、熱動式や電磁式の製品があります。熱動式は過電流による過熱をバイメタルで検出する方法で、電磁式は電流による電磁力によって過電流を検出するものです。双方を組み合わせた製品も存在します。

3. ケーシング

ケーシングは、導電部分と外部を絶縁するための部品です。ケーシングによって人が触れても感電しないように絶縁されており、一般的に硬質樹脂などで製作されます。

ブレーカの種類

ブレーカには多くの種類がありますが、取付方法と短絡遮断容量によって分類できます。

1. 取付方法による分類

ブレーカの取付方法は、表面型と裏面型があります。

表面型
金属パネル表面に取り付けて配線する方法で、制御盤や分電盤への取り付けは主にこの方法が採用されています。

裏面型
金属パネルの裏面に取り付けて配線する方法で、キュービクルなどではこちらが使用される場合があります。

2. 短絡遮断容量による分類

経済型と汎用型などの種類があり、上位系統の短絡容量に合わせて選定します。

経済型
安価な一方、短絡遮断容量が小さいです。

汎用型
経済型と比較して高価ですが、短絡容量が大きい利点があります。

3. 機能による分類

機能は配線用遮断器と漏電遮断器の2種類に大分されます。

配線用遮断器
回路に一定以上に電流が流れた際、電気を遮断して回路を保護する機器です。過電流には故障などによる短絡と、電気の使い過ぎによる過負荷の2種類があります。

過電流状態が継続すると電線ケーブルが発熱し、火災・発火の危険があります。配線用遮断器は火災などが発生する前に電源を遮断します。

漏電遮断器
漏電を検出した時に回路を遮断し、事故・災害を防止するための電気機器です。ELB (Earth Leakage circuit Breaker) とも呼ばれます。電線ケーブルや電気使用機器の絶縁性能が低下すると、漏電してしまうことがあります。

また、漏電状態で電気機器の外箱などに接触すると感電の危険性、建屋鉄骨などを介して漏電すると火災の危険性も高いです。漏電遮断器によって、これらの危険を防止することができます。

参考文献
https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/learn/semi/school/haiden/tex_tei_ouyou_pdf/sy_9031j.pdf
https://www.nito.co.jp/products/circuit-breakers-terminal-blocks/
https://www.chuden.co.jp/energy/ene_about/electric/chishiki/mame_bundenban/