ベアリングヒーター

ベアリングヒーターとは

ベアリングヒーターとは、ベアリングの内輪を焼きばめによって軸に取り付ける際に使用する機器です。

焼きばめとは、ベアリングの内輪と金属製回転軸との結合方法の一つです。加熱すると膨張する金属の性質を生かしています。ベアリングを過熱し、内輪の内径を大きくすることによって、ベアリングの内輪と軸と強固に固定することが可能です。

ベアリングの焼きばめは、オイルバスによって温めた油中でベアリングを温める方法などもありますが、オイルバスの準備などに手間がかかります。バーナーでの加熱は、部分的に高音になる可能性があり、ベアリングの材料の強度が低下するリスクが避けられません。

このような問題を解決するためにベアリングヒーターは、電磁誘導による加熱が一般的です。

ベアリングヒーターの使用用途

ベアリングヒーターは、ベアリングの内輪と回転軸をしまりばめによって固定したい場合に使われます。ベアリングの大きさが小さく、しまりばめの締め代が少なければ、内輪を押しながら圧入することも可能です。

しかし、ベアリングが大きく、必要な締め代も大きな場合には焼きばめを行い、ベアリングヒーターを使うと効率的に作業ができます。ベアリング部品は使用される機械に組み付けられる際に、内輪か外輪のいずれかを締まりばめで固定し、もう一方は隙間ばめによって取り外しができるようにしておかなければなりません。

内輪と外輪のどちらかを締まりばめにするのかは、それぞれが受ける荷重の方向や大きさの変動が大きい方を締まりばめにします。内輪と外輪いずれも固定したい場合には、外輪を隙間ばめにした上で、ベアリングリテーナなどによって外輪を固定したり、外輪に二面幅形状を加えたつばを設けて、ハウジング部品と組み合わせたりする方策が必要です。

ベアリングヒーターの原理

焼きばめはベアリング全体を加熱、膨張させて、内輪の内径が大きくなったところに軸をはめ入れます。その後ベアリングが冷えると膨張した穴は元のサイズに収縮し、軸と固着されます。この原理を使うことで、穴と軸は互いに強く固定されるため、緩みに対して非常に強くなります。

ベアリングヒーターの多くは、電磁誘導によってベアリングを加熱します。電磁誘導式の仕組みを一言で表すなら、「電子レンジ」です。コイルに電流を流すことで磁束が発生し、金属の電気抵抗により渦電流に伴う発熱が起こる仕組みを利用しています。

ベアリングを過熱するために火を使用せず、場所も取らないため、安全かつ省スペースで作業が可能です。ヒーターの型式にもよりますが、100V電源で使用可能なものもあります。電磁誘導式のヒーターを使用する場合、過熱後そのままだと磁束が残り、軸受自体に磁力が生じた状態 (磁石と同じ状態) になります。

磁力によってベアリングに砂鉄などの異物が混入する可能性があり、磁力を取り除かなければなりません。そこで電磁誘導式のベアリングヒーターには通常、脱磁機能が搭載されています。

ベアリングヒーターのその他情報

ベアリングヒーターの温度

ベアリングヒーターによって過熱できる温度はヒーターによって様々です。電磁誘導式のうち200℃まで加熱できるものがありますが、ベアリングは原則120℃以下で組み付けるとされています。

なぜなら、ベアリングの焼戻し温度以上に加熱されると、ベアリングの材料の強度が低下してしまうからです。焼きばめではベアリングと軸との温度差が90℃以上あれば、締め代は十分小さくなっている可能性が高いです。ベアリングの過熱しすぎに注意しましょう。

参考文献
https://www.etoh-inc.com/
https://www.tlv.com/ja/products/070000/070100/p070104/
https://www.fukudaco.co.jp/support/glossary/shrink-fit.html
https://www.ntn.co.jp/japan/products/catalog/pdf/9103.pdf
https://www.ezo-brg.co.jp/product/document-detail13.html

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