サーモモジュール

サーモモジュールとは

サーモモジュール (英: Peltier device) とは、電流を流して冷却・加熱させる熱電素子のユニットです。

ペルチェモジュールや熱電クーラーとも呼ばれます。サーモモジュールは、各種の冷却・加熱装置に使用される半導体素子のモジュールです。流れる電流の方向をクイック変換することによって、対象物の温度制御管理を高精度に、かつ素早く加熱・排熱させることができます。

この現象は電流が流れるとペルチェ効果が起きることによるもので、工業用としてのみでなく、身近な日常生活用品にも取り入れられています。ペルチェ効果は、フランスの物理学者ジャン・シャルル・ペルチェが1834年に発見した現象です。発見当時は2つの異なる金属を使用しましたが、現在では効率の良い半導体が使われます。

サーモモジュールの使用用途

サーモモジュールの素子は一般に、クリーンな素子として幅広い分野で活用されています。例えば、計測・分析分野では、分光光度計やガス分析装置の除湿に、光学分野ではプロジェクターや監視カメラの冷却などに用いられています。

また、小型・軽量・フロン不要といった特徴を有しており、民生分野ではコンピュータのCPUの冷却やエアコン、空気清浄機、ドライヤー、クーラーボックス、ワインクーラー、医療機器などが用途です。生産コストの低減や高い信頼性を期待できることから、身近な家電民生品にも採用されています。

サーモモジュールの原理

1. ペルチェ効果

サーモモジュールは、2種類の金属の接合部分に直流電流を流すことによって、片方の金属からもう一方の金属へと熱が移動する現象を利用しています。これをペルチェ効果と呼び、サーモモジュールに直接電流を流すと素子の両面に温度差が生じます。

このとき低温側で吸熱、高温側で発熱作用が起きることにより、熱が低温側から高温側へ移動することが可能です。さらに、電流の極性を変化させることによってポンピングする熱方向を変え、また与える電流の大きさを変化させることによって熱量の大きさも変えることが可能になります。

このペルティエ効果を利用して、冷却・加熱・温度制御を容易に行うことができます。

2. 熱電半導体素子

近年、最も採用されている熱電半導体素子は、NとPの特性を明確に持つブロック、もしくは適切にドープされたビスマステルライドの合金を溶接したものです。材料に方向性があることが特徴です。そして、N材料のもつ余分な電子とP材料の不足電子に差が生じることで、熱エネルギーを移動させるのが原理です。

サーモ・モジュールはPとNの半導体素子を、PN交互に直列に接続したパターンをセラミクス基板で挟み、ユニット化したものです。

サーモモジュールのその他情報

1. サーモモジュールのメリット

冷却装置は、一般に冷媒を使用して、コンプレッサなどの機器が必要です。一方、サーモモジュールは冷媒・コンプレッサが不要で、小型・軽量・無振動などのメリットがあります。また、環境に優しい冷却・加熱装置と言えます。高精度の温度制御ができるのも利点です。ただし、効率の面では改善の余地があります。

電子装置の冷却に多く使用されるヒートシンクは、放熱のみです。一方、サーモモジュールは環境温度以下まで冷却が可能であり、効率的な冷却が可能です。

2. サーモモジュールの用途拡大

光通信網に使われる半導体レーザーは、通信情報伝達を安定して行うために、レーザーの波長を一定に保つ必要があります。波長を安定させるのに重要なのは、温度です。この用途にサーモモジュールが多く使われるようになっています。

また、家電製品でイオン発生器が付いた商品が発売されています。浄水式では、カビや雑菌の発生源となる成分が放出されされますが、サーモモジュール式は、空気中の水分を冷やして結露させることで、有害成分のない、きれいなイオンを省電力で発生できます。

さらに、病原体の有無を検査するPCR法は、DNAの反応を増幅して検査します。この場合、精密な温度制御による正確な温度サイクルが必要のため、サーモモジュールが使用されます。PCR検査装置の小型化・卓上化が可能になり、最近では、複数個の検体容器を搭載してパラレルに高効率な検査が可能です。

参考文献
https://www.yhtc.jp/
https://www.z-max.jp/peltier/about/
http://ferrotec-global.com/tech_2_2.php?lang=ja

遠心濃縮機

遠心濃縮機とは

遠心濃縮機とは、減圧下で溶液状の試料に遠心力を加え、溶媒を蒸発させ、試料を濃縮する装置です。

一般的に、遠心チャンバーと冷却チャンバー、減圧装置により構成されています。

遠心濃縮機の使用用途

遠心濃縮機は、濃縮の際にかつ減圧により試料内の溶媒の沸点を下げ、かつ試料に遠心力を掛けて溶媒の突沸や泡立ち等を防ぐのが特徴です。そのため、加熱や突沸などによるサンプルのロスを抑えられ、ごく少量のサンプルを使用する微量分析のサンプルの濃縮に適しています。

DNAやRNA、ペプチドなどを濃縮したり、その他の濃縮や乾燥を必要とするアプリケーションを作成したりする際に使用されています。また、溶媒混合液および水混合物の濃縮や、残留分析、毒性調査や科学捜査、コンビナトリアル化学、食品分析や環境分析などにも多くの分野で利用されています。

遠心濃縮機の原理

微量分析などに使用される遠心濃縮機は、「物質の三態」を利用してサンプルを濃縮するのが特徴です。具体的には、減圧下で試料内の溶媒を大気下よりも低い温度で蒸発させ気化して回収し、試料内の溶媒の量を減らして試料を濃縮しています。そのため、遠心濃縮機に最低限必要な構成は、遠心チャンバーと冷却チャンバーおよび真空ポンプなどの減圧装置です。

遠心濃縮機では、遠心チャンバー内に液状の試料を配した状態で、減圧装置により遠心チャンバー内を減圧します。減圧下では物質の沸点は下がっていくため、遠心チャンバー内の試料に含まれる溶媒の沸点が下がります。よって大気下よりも低い温度で溶媒の蒸発が可能です。

蒸発した溶媒は冷却チャンバーに移動し、ここで冷却および回収されます。このとき、試料を加熱しており、溶媒の蒸発を促すほか、減圧時に起こる溶媒の凍結を防いでいます。また、遠心チャンバー内の試料表面の圧力は減圧された遠心チャンバー内と同じ圧力となっています。このとき、遠心濃縮機では試料に遠心力を加えているため、試料内部では深部に行くほど圧力が高くなる圧力勾配が生じています。

そのため、遠心チャンバー内の圧力をうまく制御すれば、試料表面のみが減圧下の沸点を持ち、試料内部は沸騰させることなく表面だけの沸騰を起こし、内部が沸騰する突沸の防止が可能です。

遠心濃縮機のその他情報

1. 遠心濃縮機による汚泥濃縮

遠心濃縮機は主に微量分析などの分野で使用されますが、近年では下水の汚泥処理にも使用されています。下水汚泥のうち、最初沈殿池の汚泥は沈降しやすく、重力沈降による汚泥の濃縮が容易です。

しかし、最終沈殿池の汚泥 (特に、余剰汚泥) は沈降しづらいため、重力沈降によって汚泥を濃縮させることは容易ではありません。そこで、機械による汚泥濃縮法 (機械濃縮法) の1種として遠心濃縮機が用いられています。なお、機械濃縮法には、常圧浮上濃縮装置やベルト式ろ過濃縮機などの方式もあります。

2. 汚泥濃縮用の遠心濃縮機の構造と動作

汚泥濃縮用の遠心濃縮機は、余剰汚泥を遠心力によって濃縮します。このとき、減圧はおこないません。汚泥濃縮用の遠心濃縮機は、汚泥供給管を中心として外胴、スクリューを持つ内胴がそれぞれ一定の回転差を保ちながら回転する構造です。

この回転差は、例えば3〜8回転ほどの回転差とされており、スクリューを持つ内胴の方が少しだけ遅く回るように設定されています。最初に汚泥を遠心濃縮機の汚泥供給管から外胴に供給されます。汚泥を遠心濃縮機に供給する前に、凝集剤などが添加されるのが一般的です。

外胴は高速回転しており、汚泥は遠心力を受けて、水と固形物の比重差による沈降分離が起き、外胴に濃縮汚泥が堆積します。このとき、内胴と外胴の回転差があり、内胴の方が少しだけ遅く回転しているため、堆積した濃縮汚泥は、内胴に取り付けられたスクリューによりかきとられ押し出されて排出されます。

このような遠心濃縮機を利用すれば、例えば濃度1%以下の汚泥を4〜6%の濃縮汚泥に濃縮可能です。

参考文献
https://www.thermofisher.com/
http://www.lsrc.u-toyama.ac.jp/sic/div/01seika/lab1/concn.html
http://www.kakoki.co.jp/products/e-014/index.html
https://www.enshinbunriki.com/principle/
http://www.siset.or.jp/contents/?CN=200&RF=K&ID=228

半導体検査装置

半導体検査装置とは

半導体検査装置

半導体検査装置とは、半導体製造工程の中で行われる検査に用いられる装置の総称です。

半導体製造では、ウェーハ製造段階、回路パターン形成段階、パッケージング段階で検査が行われます。様々な機器に用いられている半導体チップは機能の根源を担っているものも多く、正常に動作することは勿論、機器動作の安全性の面においても高い信頼性を保証する必要があります。

今や最も集積度が高い半導体チップでは、一つのチップ上に数百億個のトランジスタが搭載されており、これを数十年に渡って正常に動作させるためには、設計から製造まで十分な検査が必要です。

半導体検査装置の使用用途

半導体検査装置は、半導体製造工程のいくつかの段階で製造不良を検出するために用いられます。

1. ウェーハ製造段階

ウェーハ製造段階では、単結晶のシリコンの塊から回路製造の基板となる円盤状のシリコンウェーハがスライスされ、表面研磨や熱処理が行われて回路形成前のウェーハが製造されます。この段階での検査項目としては、スライスされたウェーハの歪みやヒビ割れ、エッジの欠けや表面の欠陥、異物の付着を検出する外観検査が行われ、良品と判定されたウェーハが次工程に送られます。

2. 回路パターン形成段階

回路パターン形成段階では、ウェーハ上にトランジスタや配線となる薄膜層の形成、フォトマスクを用いたパターン転写、不要な部分を除去するエッチングといった工程を繰り返しながら必要となる回路パターンが形成されます。この段階での検査項目としては、ウェーハ検査時のような外観検査の他に、電気的特性や回路としての正常動作を確認する検査があり、ここをクリヤしたウェーハが次工程に送られます。

3. パッケージング段階

パッケージング段階では、ウェーハ状態から一つ一つの半導体チップとして切断 (ダイシング) され、このチップの電極端子がパッケージ側の接続端子にボンディングされてパッケージに封入されます。この段階は製品として完成された段階にあたり、検査項目としては、電気的特性やパッケージとの接続 (ワイヤボンディング) 不良を検出する検査があり、ここをクリヤすると出荷可能な製品となります。

半導体検査装置の原理

半導体検査には大別すると外観検査と電気特性検査があります。

1. 外観検査

外観検査では高解像度カメラを用いて、ウェーハのひずみや割れ、エッジの欠けなどを検出したり、ウェーハ上の異物付着などを検出します。表面検査装置ではウェーハを回転させながらレーザー光をウェーハ表面に照射し、その反射光の散乱の有無を検出することで表面欠陥や異物付着を確認します。

更に、高感度カメラを用いてダイシングの際の寸法不良や、ワイヤーボンディング時の接続不良などの検出も行います。

回路パターン形成後には、電子顕微鏡を用いて微細パターンの画像解析を行い、異物検出や回路パターンのずれなどを確認します。高感度カメラで異物を発見した後、パターン転写を行い、転写後にレーザー発信機とレーザー受信機によって異物の位置を特定します。そこに電子顕微鏡を位置付けることで、異物の詳細部分を画像として記録し、他の形状などの詳細情報と比較して解析および評価を行います。

2. 電気特性検査

回路パターン形成段階ではウェーハ状態のまま電気特性の検査が行われます。この検査では、チップに対してテストパターンと呼ばれる電気信号を入力し出力信号パターンを期待値と比較して判定するLSIテスタと、一つ一つのチップの電極端子に正確に信号接続するためのチップレベルの位置決め制御を行うウェーハプローバと、チップ内の数百~数万の電極端子に正確に当たるように位置決めされた同数の針 (プローブ) を持つプローブカードで検査が実施されます。

パッケージング段階での検査は出荷前の最終検査となり、ファイナル検査 (F検) とも呼ばれます。ここではF検用ボードと呼ばれるテスト用のボードを作成し、回路動作を検査します。

近年の大規模回路ではBIST (英: Built In Self Test) と呼ばれる手法も用いられます。BISTでは、回路を検査するテストパターンを発生する回路と、テスト結果を期待値と照合する回路を設計段階から半導体チップ内に作り込むことで検査時間を短縮可能です。

以上に述べたような高感度カメラとLSIテスタ、電子顕微鏡の他、半導体検査に多く利用されているものとしては、検査用に作られた画像解析ソフトウェア、赤外線カメラ等が挙げられます。

参考文献
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000182.pdf

シート検査装置

シート検査装置とは

シート検査装置 (英: sheet inspection device) とは、シートやフィルムの製造時に発生する欠陥を検査する装置です。

日常生活において、食材や家電製品、生活用品などあらゆる場面でフィルムやシートが使用されています。その一方で、これらは非常に薄い作りとなっているものがほとんどです。ただし、十分に強度があり、簡単には破れません。

シート検査装置を製造工程のラインに追加することによって、製造中の欠陥を検査して、シートの規格を守ることができるようにします。

シート検査装置の使用用途

シート検査装置は、主にシートの製造工程における様々な欠陥・不良が生じていないか確認・検査する用途で用いられます。シートの製造工程で、種々の工程に検査装置を設置します。

製膜工程では基材の樹脂のコンタミやフィッシュアイの検査、ラミネート工程では混入物やしわの検査、コーター工程では薬液の塗布の検査、スリッター工程や検反工程では、最終の出荷検査をそれぞれ行います。製造過程で種々の欠陥を見つけることにより、製品の品質維持や後工程の不良防止、歩止まり率低下の防止、生産性の向上などに効果的です。

さらに近年では、光学シート、多層シート、高機能シート、コート紙、フローリング材、ガラス板、金属箔シート、不織布などの外観における、目での確認が難しい欠陥検査にも用いられるようになっています。

シート検査装置の原理

明確な定義はありませんが、シートとフィルムの違いはそれらの厚さで区別することが多いです。ここではすべて「シート」について説明します。

1. シートの製造

シートは、ポリエチレンなどの樹脂を押出機を使用して製造します。その際、シートはTダイからスリット状に薄く引き伸ばされ、冷却ロールによって冷却され、巻き取り機で巻き取られ、製品として完成します。

これをTダイ法と言いますが、このほか、空気を利用して、冷却後、空気によって袋状に膨らませ、2枚の重なったシートにするインフレーション法という方法も1つの手です。

2. シートの欠陥検査

これらのシート製造過程において、厚さのばらつきや色むら、フィッシュアイ、ごみや油分などの異物付着、しわ・すじ、傷、ピンホール、汚れ、充填不良など様々な欠陥が発生します。これらの欠陥を検出するのがシート検査装置です。

カメラによる検査では、検査するエリア全体をカメラで映し出すエリアカメラ、及び検査対象のラインを一度に検査するラインカメラが使われます。シートが流れているラインで連続検査する場合は、ラインカメラが最適です。

高分解能のラインカメラをシート幅方向に複数台設置し、シートの地合の変動に対応して各カメラの感度閾値の設定を行います。また、1台のスキャンカメラを使用して、高速スキャンにより検査する方法もあります。

また、レーザー光と反射型レーザー変位計を用いて厚さを検査する装置等、検査するものによって検査装置を選択することが大切です。

シート検査装置のその他情報

1. シート検査装置の目的

シート検査装置を設置する目的は、検査の機械化による欠陥の確実な検出、人的ミスを減らして製品の品質向上、生産性の向上などです。

2. シート検査装置による検査事例

シート欠陥の高速検査
3台のラインカメラ、透過型及び反射型のLEDライン照明などで構成します。2台のカメラでシートの表面と裏面の検査を行い、1台のカメラで透過型と反射型のLEDライン照明を使用して検査して欠陥を高速で検出する方式です。

塗工むら欠陥の検出
シートに塗工する場合、わずかな厚みのばらつきにより、むら欠陥が発生します。多波長カメラを使うシート検査装置を使用すれば、色成分の違いが出るので、塗工むらが明瞭に検出できます。

しわ欠陥の検出
透明シートを製造する際、シートがよれてしわ欠陥が発生する場合があります。しわ欠陥は平面部と欠陥との差が小さいため、モノクロの画像では欠陥の検出が困難です。多波長カメラを使って、RGB画像を取得すれば、鮮明にしわ欠陥が検出できます。

異物と気泡の判別
シートの張り合わせをする場合、わずかな気泡と異物とを判別する必要があります。モノクロ検査では、光沢がある異物と気泡とは同じ明欠陥となるため、判別ができません。

しかし、多波長カメラでの検査では、濃淡情報の差が検出可能なので、判別ができます。

流量スイッチ

流量スイッチとは

流量スイッチとは、液体や気体といった流体の瞬時流量を検出する装置のことです。

運動子の回転数から流量を割り出す羽根車式、粘性液体の計測に適した容積・質量式、微量の流体も検知する電磁式など、さまざまな計測方式があります。

なお、渦流量計は液体や気体、上記など広範囲の流体計測に用いることができる圧力損失が比較的小さい流量計です。多種多様な流体を高精度で検出できるため、今後の更なる普及が見込まれます。

流量スイッチの使用用途

流量スイッチは、産業機械の製造工程や民生品の管理用途、医療機関などで用いられています。流量スイッチは、液体や気体の瞬時の流量を計測するセンサです。計測精度は製品や検出の機構に大きく依存します。

特に高精度の製品には、産業機械の製造工程中の必要に応じた流体の微細な液位変化をモニタするための使用用途があります。また、車載向けのトランスミッション中に用いる油などの潤滑流体や車両中の流体特性の測定、民生品エアコンの管理なども用途の1つです。

流量スイッチの原理

流量スイッチには、様々な方式の検出機構があります。代表的な方式は、サーミスタ式、カルマン渦式、MEMS方式の3つです。

1. サーミスタ式流量スイッチ

サーミスタ式流量スイッチは、流路中に加熱したサーミスタを設置し、そこに流体を流すとサーミスタから熱を吸収する方式です。サーミスタの熱の低減からの抵抗値上昇率が流速とある関係を有する性質により、流速を測定します。

2. カルマン渦式流量スイッチ

カルマン渦式流量スイッチは、流体の振動現象を利用する方式です。流れの中に棒状の物体を置くと渦発生体となって、下流側に交互に渦が発生します。

この渦はある条件下においては非常に安定であり、その周波数は流速に比例するので、周波数評価から流量を算出することができます。

3. MEMS方式

MEMS方式流量スイッチは、主に気体向けの流量測定方法を有する方式です。MEMSの抵抗値の流れに対する場所依存性が、流体の流速に比例するため、その抵抗値から演算処理することで流れの方向や流速を測定できます。

流量スイッチのその他情報

1. フロースイッチとポンプ

流量スイッチに近い機能を有するフロースイッチは、液体の流れを検知して動作するスイッチです。ポンプが動くと液体が流れ、ポンプが止まると流れも停止するため、液体の状態をON/OFFで検知したい時にフロースイッチが使われます。

ほとんどの場合、液体の流れの状態を見てシステムの制御を行うので、液体の流れを作るポンプと流れを検知するフロースイッチを組み合わせて使用します。フロースイッチとポンプはセットで使われることを想定して設計されているため、相性も良好です。

2. フロースイッチと流量計の違い

フロースイッチは液体の流れを検知して動作するスイッチなので、動作はONかOFFのどちらかです。電圧で言えばL (ロー) かH (ハイ) 、マイコンの処理情報で言えば0か1、表示で言えば動作と停止の2種類の状態のみであり、デジタル的な動作用途に用いられます。

これに対して流量計は、液体の流速や流量そのものを計測する機器のためアナログ的な動きをしています。表示される測定結果は、1分間に何リットルの流量なのかを示す様な連続的な状態で、計測結果が数値として表示されます。

また、フロースイッチの検出方法は検出器の内部に入った水などの液体の水位が上昇するとフロートと呼ばれる液体に浮かぶ部位が水位と共に上昇して、閾値まで達するとスイッチが切れる非常に簡素な仕組みです。これに対して流量計の検出方法はフロートスイッチと同様なタイプ以外に、差圧式などの多種多様の方法があります。求められる測定精度や条件に応じて、最適な選定をすることが大切です。

参考文献
https://www.smcworld.com/products/pickup/ja-jp/switch_sensor/flow_sensor.html
https://www.oval.co.jp/techinfo/keisoku/vortex.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/20/9/20_9_526/_pdf/-char/ja
https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/flowmeter/type/
https://kikai-syuuri.com/technica/post_2874/

放射線検出器

放射線検出器とは放射線検出器

放射線検出器とは、放射線と物質の相互作用によって起こる物理的・化学的な反応を利用して、間接的に放射線を検出・測定する装置です。

人間は放射線を五感で直接感じることができません。そのため、放射線によって生じる電離や励起を利用し、検出・計測を行います。例えば、イオンや自由電子を発生させたり、蛍光のような電磁波を発生させたりすることによって電流信号に変換します。この電流信号をもとに、放射線量をメーターに表示したり、音にして聞こえるようにしたりします。

そのほかにも、電子放射を応用したもの、発熱を利用するもの、中性子物質の放射化を実用化したものやチェレンコフ光の検出に基づく検出器など、 応用品は数多いです。

放射線検出器の使用用途

放射線検出器は、放射能の除染現場やヤード・工場などで多く使用されています。放射線にはアルファ線・ガンマ線・ベータ線・エックス線といった種類があり、発する線量が高いものから低いものまであるため、状況によって検出器自体を慎重に選ぶ必要があります。

空間線量率を測定することで、その空間にどれだけ放射線が飛び交っているかの状況把握が可能です。また、物体表面から発する放射線を検知することで、物体が汚染されているのかという状況把握や汚染源の特定ができます。その応用で、人がどの程度放射線に被爆しているのかといった被ばく量測定にも用いられます。

放射線検出器の原理

放射線を検出する方法として、大きく放射線が気体分子を電離させる作用を利用するものと、主に固体や液体である物質の電子を励起する作用を利用するものの2種類が挙げられます。

前者は気体検出器と呼ばれ、後者はシンチレーション検出器と呼ばれます。

1. 気体検出器

気体検出器では検出器に不活性ガスや空気などの気体を充填しておき、このなかを放射線が通過すると分子が電離して陽イオンと電子を生成するようにします。この気体分子の電離を利用して放射線の量を測定します。期待検出器には、電離箱、GM計数管、比例計数管などの種類があります。

電離箱
電離箱では、陽イオンと電子をそれぞれ電極に引き寄せ、電気信号に変換して測定します。放射線のエネルギーで電離した陽イオンと電子の数がそのまま電気信号になるため、放射線のエネルギーにほぼ比例した信号強度が得られます。すなわち、放射線のエネルギーを把握することが可能です。ただし、電離を直接観測するため感度が低いことがデメリットとして挙げられます。

GM計数管
GM計数管では、電離箱と同様に気体を充てんしますが、電極間に高電圧を印加することで、電離で生じた電子が高速で移動し、さらに他の気体分子を電離させるようにします。これにより、強い信号が得られるようにします。

結果として、1回の電離によって電極間に1回のパルスが走ります。強い信号が得られますが、信号がパルスとなるため、放射線のエネルギーについての情報が得られないことがデメリットです。

比例計数管
気体を充てんした検出器において、電極間に印加する電圧を適度に調整すると、放射線による電離に続いて他の気体分子の電離が起こり強い信号が得られ、かつ最初に電離した分子数に比例した信号を得ることもできます。この条件下で測定を行うタイプが比例計数管です。

2. シンチレーション検出器

放射線が原子核の周回軌道にある電子にエネルギーを与え、その電子が外側の軌道に移る「励起」と呼ばれる作用を利用したのがシンチレーション検出器です。装置の例としてはシンチレーション式サーベイメータがあります。

放射線により励起を経て発光する性質がある物質をシンチレータと呼びます。固体結晶のシンチレータとして用いられる物質がヨウ化ナトリウム (NaI) 結晶です。放射線がシンチレータで吸収されると、電子励起により原子が不安定な状態になり、その後もとの安定状態に戻ります。この際に、原子がエネルギーを光として放出します。

この微弱な光 (光子) を光電子増倍管によって増幅し、電流に変換することで測定します。放出される光子数は放射線のエネルギーに比例するため、シンチレーション検出器では放射線のエネルギーを知ることが可能です。

NaI結晶は吸湿性があるため、空気に触れさせないように密封されます。一方、放射線が入射する場所として入射窓が設けられています。入射窓には、100μm程度の非常に薄いベリリウムやアルミニウム等の原子番号の若い金属が使われています。

放射線検出器の選び方

放射線検出器を選ぶ際は、下記の項目を確認することが大切です。

1. 放射線の種類

放射線には、アルファ線、ベータ線、中性子線、ガンマ線、エックス線などと種類があります。放射線検出器は構造や原理によって検出できる放射線の種類と期待される感度が定まるため、これらを理解しながら検出器を選ぶことが重要です。

2. 表示される値

表示される値 (単なるカウント数か、1cm線量当量であるかなど) が使用目的に適するかを考慮して選定します。

3. 放射線の透過性

放射線を検出するには放射線が電離を起こす部位 (ガスや固体シンチレータ) に到達する必要があるため、放射線の透過性を理解することで、自信をもって運用することができます。例えば、NaIシンチレーション式サーベイメータは、ガンマ線とエックス線測定用です。吸湿性があるシンチレータを囲んで密封する必要があるため、金属の薄膜窓を透過できない放射線 (アルファ線やベータ線) を検出することができないためです。

GM計数管は、ベータ線測定ができるものとできないものがあります。ベータ線測定ができるのは、窓が大きく、窓にごく薄い雲母を用いるタイプです。ベータ線はこの雲母窓は透過することができます。ベータ線とガンマ線の両方を測定できるGM計数管には金属キャップがついていますが、ベータ線測定では金属キャップを外す必要があります。ベータ線は金属キャップを透過しないためです。

放射線検出器のその他情報

1. 放射線計測の目的

放射線計測には大きく分けて、2種類の目的があります。

  1. 放射線の取り扱いにあたり、その制御をするために、放射線の種類やエネルギー、あるいは粒子数等の放射線場固有の放射線量を測定する。
  2. 放射線によって生じる物理的、化学的、生物学的効果を理解するまたは有効利用をするために放射線場における放射線量と、放射線と物質との相互作用に起因する係数を掛け算で表す吸収線量を測定する。

なお、放射線の安全管理は後者の延長線上にあります。放射線が人体に与える影響を評価するには、後者の吸収線量をもとに、放射線の種類ごとの生物学的影響と、放射線を受ける身体部位の感受性の評価を加え、実効線量を算出します。

2. シンチレーションによる高エネルギーエックス線検出器

固体シンチレータ結晶を用いたシンチレーション検出器は、高いエネルギーのエックス線や、それよりも更に高いエネルギーのガンマ線を測定することに用いられます。エックス線検出器としての特長は、シンチレータが効率よくエックス線を受け止め検出するため、エックス線のエネルギーに比例した検出が可能であることです。

これは高エネルギーエックス線を受け止めきれない気体検出器とは異なる特徴です。また、検出器に入ってから、電気信号に変換されて出力されるまでの時間がとても短いため、入射したエックス線光子が多数ある場合の測定に向いています。研究分野においては、シンチレーション式の長所を活かしてエックス線の二次元像を取得する、位置検出型の高エネルギーエックス線検出器も開発されています。

参考文献
https://www.daitoku-scale.co.jp/magazine/9901281
http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-36.pdf
http://www.rada.or.jp/database/home4/normal/ht-docs/member/synopsis/049002.html
http://www.u.phys.nagoya-u.ac.jp/uxge/r_e/r_e6_3.html

クロックジェネレータ

クロックジェネレータとは

クロックジェネレータとは、一つの発信源のクロック信号から複数の周波数のクロックを生成する回路です。一般的に生成される周波数範囲は数KHz~数GHzです。

クロックジェネレータの使用用途

クロックジェネレータは主に下記のような用途で使用されます。

1. CPU

クロックジェネレータはコンピュータの中心を成すCPUにおいて最も多く使用されます。CPUの中にはレジスタなどの記憶素子が多数配置されており、それぞれに対してクロックジェネレータで生成されたクロック信号が接続されています。

クロック信号の刻みに応じて、各記憶素子からの出力が様々な論理演算回路や算術演算回路を通り、次段の記憶素子に入力されます。このような回路構造は同期回路と飛ばれ、この同期回路の動作のトリガーになり同期を司っているのがクロックジェネレータです。

2. デジタル機器

クロックジェネレータはCPU内に留まらず、TV、スマートフォン、DVD等のデジタル機器は勿論、マイコン制御されている一般的な家電製品や産業用機器でも使用されています。

クロックは各電子機器にタイミングを伝える役目をしており、各機器はそのタイミングでそれぞれの動作を行うことで全体として動作しています。幅広い周波数帯の信号を正確に発振することができるクロックジェネレータは、様々な電子機器の動作に欠かせない装置です。

近年は高品位な映像や音楽に対する要求が高まり、そのようなニーズに応えるための高品質で高価なクロックジェネレータも製品化されています。特に、異なるサンプリング周波数の機器間でデータをやり取りするような場合は、データの欠落によるノイズ混入を防ぐために、クロックジェネレータを用いて機器間で同期してやる必要があります。

クロックジェネレータの原理

クロックジェネレータは基本的に共振回路と増幅回路から成り立ちます。

共振回路としては水晶発振器がよく用いられています。水晶発振器はクォーツ時計でも用いられており、水晶が電圧印加により固有振動数の発振出力をする圧電効果を利用しています。固有振動数は水晶の形状や、どの結晶断面でカットされているか等の物理特性により異なりますが、高純度で結晶化した人工水晶により、必要な固有振動数の発振器が得られます。

この発振波形は正弦波のため、クロックジェネレータではデジタル回路に使用できるように矩形波に整形します。ジェネレータ内では分周回路と逓倍回路により元の周波数のM/N倍 (M、Nは自然数) の周波数のクロック信号を生成し、これを増幅回路で増幅して出力しています。

クロックジェネレータの選び方

クロックジェネレータは生成される周波数範囲だけでなく、電源電圧、矩形波の立ち上がり時間/立下り時間といった違いがあり、使用用途に応じて選択する必要があります。

このようなポイントの一つにクロックジッターがあります。クロックジッターとは一つ一つの矩形波の時間軸方向に対する揺らぎで、クロックがいかに整然とした周波数を発信し続けているかを示す指標であるため、低ジッターであることが求められます。

ジッターについては、立ち上がりエッジ間で見たジッター、立下りエッジ間で見たジッター等があり、用途に応じて精査することでより高品質なシステムを追求することができます。

クロックジェネレータのその他情報

新しい技術としてMEMS発振器を用いたクロックジェネレータがあります。MEMS (英: Micro Electro Mechanical Systems) は微小な機械部品、センサ、電子回路等を一つの基盤上に集積化したデバイスで、半導体の微細加工技術の応用により作られます。

MEMS発振器は固有周波数がある水晶とは違い、製造工程の最終段階で周波数をプログラムすることが可能なため、コスト減、リードタイム短縮といったメリットがあります。又、内部に温度センサを組み込むことで、水晶よりも温度特性変化を抑えることができる等、水晶発振器に対して品質と信頼性の面で優れていると言われています。

ダイキャストマシン

ダイキャストマシンとは

ダイキャストマシン

ダイキャストマシンとは、金属や合金を高速で溶かして金型に流し込み、鋳造を行う装置のことです。

ダイキャストマシンでは高い精度で同じ形状の製品を大量生産できるため、作業員の負担を減らせます。また、低融点金属が溶融しやすく、金型に流し込みやすいので、アルミニウム亜鉛などの低融点金属を使用する場合に有効です。

しかし、高融点金属に対してダイキャストマシンを使用するのは難しく、鋳造の際は他の方法で行う必要があります。また、ダイキャストマシンによる鋳造は、製品の表面が非常に滑らかであるため、研磨工程を省略できる点がメリットです。

研磨工程を省略することにより、製品の製造時間とコストの削減につながります。

ダイキャストマシンの使用用途

ダイキャストマシンは、さまざまな産業で使用されています。具体的には、自動車部品や電子機器、建築資材などの製造です。最近では、環境にやさしい素材を使用して製品の廃棄物を減らし、持続可能性を高められるダイキャストマシンも開発されています。

1. 自動車部品

自動車部品では、エンジンブロックやシリンダーヘッドなどの部品から、エンブレムやドアハンドルなどの細かな装飾品まで、多種多様なパーツの製造に使用されています。特に、軽量かつ高剛性のアルミニウム合金を使用することで、車両の燃費向上や安全性を高めることが可能です。

2. 電子機器

電子機器では、スマートフォンやタブレット端末、デジタルカメラなどで使用される金属部品の製造に使用されています。例えば、カメラのレンズホルダーやシャッターボタン、スマートフォンのアルミニウム製のフレームなどです。

3. 建築資材

建築資材では、ドアノブや取っ手、シャッターヒンジ、建物の外観を飾るカーテンウォールやファサードパネルなど、小型から大型かつ複雑な形状を持つパーツの製造に使用されています。

ダイキャストマシンの原理

ダイキャストマシンで製品を作る原理は、形状に合わせた金型を作成し、液体金属を流し込むことで成り立ちます。ダイキャストマシンでは、油圧を利用したピストンを使用するため、一定以上の圧力が必要です。

ダイキャストマシンに接続された金型に、溶湯と呼ばれるアルミ合金などの液体金属を流し込みます。溶湯が流し込まれた金型には内部圧力がかかるため、金型が密着していないと溶湯が金型の隙間から漏れ出す可能性があるため注意が必要です。

例えば、鋳造中ダイキャストマシンは、高圧力で金型を押さえつけるなどの対策を行います。金型に流し込まれた液体金属が冷却されると、金型の形状に合わせて硬化した製品が完成します。

ダイキャストマシンの種類

ダイキャストマシンは、2つの種類に分類されます。

1. ホットチャンバー方式

ホットチャンバー方式は、溶湯を注入する射出部と溶湯保管炉が一体となっており、射出部が常時熱せられていることから名前がつきました。射出部が常時熱せられているため、安全や部品耐久性の観点より溶解温度の低い材料の鋳造に使用されます。溶湯の注入を効率的に行えるのが大きなメリットです。

2. コールドチャンバー方式

コールドチャンバー方式は、溶湯を注入する射出部と溶湯の保管路が分離されており、射出部が常時熱せられていないことから名前がつきました。溶湯保管炉が独立しているため、溶解温度の高い材料の鋳造に使用されます。1つの製品をつくるごとに溶湯の注入を行う必要があり、製造にかかる時間は長い傾向にあります。

ダイキャストマシンのその他情報

ダイキャストマシンの金型

ダイキャストマシンの金型は主に形状の決定と温度変化の役割を持っています。

1. 形状の決定
製品は金型に沿って製造させるため、製品の大まな形や細かな形状、小さな溝や穴まで全て金型によって決まります。金型の形状出しの精度は、製品の品質にそのまま直結するため重要なポイントです。

製品形状や一度に何個製品を製造するかによって、溶湯を流し込むゲートの位置や金型内での溶湯の流れを決めていきます。金型が邪魔をして製品の取り出しが行えない場合は、金型を斜めに移動させる機構の追加や油圧シリンダの押し出しによって製品を取り出します。

2. 温度変化
ダイキャスト製品は、溶湯を冷やして固めることによって製造されます。製品の品質を左右する金型は、ダイキャストマシンにとって大変重要な部品です。加えて、金型の作成は数ヶ月という時間を要し、金型作成にかかるコストは製造業において大きな割合を占めます。

量産中に金型の不具合や損傷が発生した場合は、生産を止める必要があります。生産能力の著しい低下とともに、金型のメンテナンスにかかる費用も別途発生するので注意が必要です。

参考文献
http://diecasting.or.jp/diecast/pdf/book/die_casting1.pdf
https://engineer-education.com/production-engineering-38_die-casting-basic/#i-7

パワーリレー

パワーリレーとはパワーリレー

パワーリレーとは、おおむね3Aより大きい電流を流すことが可能なリレー部品です。

リレーは有接点リレーと無接点リレーに大分できますが、パワーリレーは有接点リレーに当たります。一般的な制御リレーよりも大きな電流が流れることが想定されるため、大きな電流に耐えうるべく堅牢な構造です。

また、その特性から、異常な大電流が回路に流れた際の安全回路用のリレーとして組み込まれることもあります。

パワーリレーの使用用途

パワーリレーは産業において幅広く使用される部品の1つです。以下はパワーリレーの使用用途一例です。

  • 太陽光パネルとその給電装置の回路
  • 大きな動力を持つロボットの駆動用
  • エレベータおよび建設現場の重機などの駆動用
  • 電気自動車などの充電設備内
  • ハイブリッドカーのメイン回路

パワーリレーの原理

パワーリレーは端子、接点、電磁コイルなどで構成されます。

1. 端子

端子は配線と接続する部分です。パワーリレーの場合ははんだ着けによって配線を固定する場合も多いです。また、パワーリレーを端子台ユニットに取り付け、丸端子などで端末処理された配線を接続する場合もあります。

2. 接点

接点は電気の通り道となる駆動部品です。大電流用途となるほど接点が大きく、または数が多くなります。

電気抵抗を低減する目的で、接点には銀合金や金が使用されます。銀合金は電気抵抗も低いため、広く使用されます。金は銀合金よりも酸化しにくい特徴を有しますが、融点が低く高価なため微少負荷向けです。

パワーリレー内の接点には、可動接点と固定接点があります。固定接点はケーシングなどに堅牢に固定されます。可動接点は可動鉄片と共に駆動し、固定接点と接触することで電気を通電させます。

3. 電磁コイル

電磁コイルは、電磁力で可動鉄片を駆動させる部品です。可動鉄片には可動接点が付属しており、電磁コイルによる電磁力で固定接点と接触します。電磁コイルが非通電時にはばねによって接点同士が引き離され、または接触しています。

パワーリレーの種類

パワーリレーは、DC駆動リレーとAC駆動リレーに大分されます。

1. DC駆動パワーリレー

DC駆動は、コイルが直流電源で駆動するパワーリレーです。DC電源は誘導電圧に強く、低電圧でも動作が安定する特徴があります。リレーコイルには、ダイオードを接続して逆流防止とすることが多いです。

規格として、DC5V,12V,24Vなどがあり、使用用途によって使い分けします。伝送距離が長い場合や、制御盤でのリレー回路を組む場合は、電圧が高い24V電源が使用されます。本質安全防爆を考慮した回路にはDC12V,5V等が使われます。

2. AC駆動パワーリレー

AC駆動は、コイルが交流電源で駆動するパワーリレーです。商用電源は交流電源のため、直接使用することができます。DC仕様で必要なパワーサプライが不要であるというメリットがあります。

コイル電圧はAC100VやAC200Vが使用されます。AC400V制御回路は、離隔距離を保つことが難しいため使用されるのは稀です。

パワーリレーのその他情報

パワーリレーの故障

パワーリレーは電磁力で機械的に動作するため、寿命が存在します。動作回数の寿命は数十万回程度です。寿命を超えるか、過大なショックが加わると、以下のような故障が発生します。

1. コイル断線
パワーリレー内の電磁コイルが断線する故障です。コイルの断線によって全ての接点が動作しなくなります。接点の駆動音がしないため、比較的発見しやすい故障です。

2. 溶着
パワーリレーに過大な電流が流れた際に、接点が溶着して開放しなくなる故障です。大型機器の制御として使用している場合は、装置が停止しなくなるため非常に危険です。ONとOFFを切り替えながら、接点の導通を確認して診断します。

3. 接点の動作不良
リレー接点が擦り切れるまたは汚れるなどして電気的に導通しなくなる故障です。接点が短絡せずに開放したままとなります。溶着と同様に導通や電圧を確認して診断します。

4. コイルの短絡
電磁コイルのニスが剥がれるなどして、短絡してしまった場合に発生する故障です。電磁コイルへ通電した際に、制御用電源自体がトリップして判明します。

制御回路はパワーリレーを並列に複数つなげている場合が多いため、発見に時間を要す場合があります。

バーコードプリンター

バーコードプリンターとは

バーコードプリンター

バーコードプリンターとは、各種情報をバーと数字で表現したバーコードを特定の用紙にプリントする機械です。

バーコードには13個の数字が記載されます。 数字は、最初の2桁が国コード、次の7桁がメーカーコード、さらに次の3桁がアイテムコードです。 なお、最後の1桁は読み取り確認用のコードです。誤り防止を目的として、用いられています。

バーコードプリンターの使用用途

バーコードプリンターは、様々な製品の製品情報などを示すバーコードを印字するのに使用されています。バーコードには、工業製品のロットや商品情報および価格などの情報が収められています。

バーコードは様々な場面で使用されているため、バーコードプリンターの使用用途も非常に幅広いと言えます。

バーコードプリンターの原理

バーコードプリンター原理は、その印字方式により異なります。バーコードプリンターの印字方式には様々な種類が存在し、以下の5種類に大別されます。

1. インパクト方式

インパクト方式はさらに「ドラムインパクト方式」と「ワイヤードットインパクト方式」に分類できます。

ドラムインパクト方式
ドラムインパクト方式は、従来よく使用されていた方式です。印字ドラムの外周にバーコードのパターンを形成するバーコードキャラクターと呼ばれる刻印を事前に行い、これを台紙に圧着してパターンを転写します。ただし、この方法はメンテナンスが煩雑であるなどの課題から最近ではあまり使用されていません。

ワイヤードットインパクト方式
ワイヤードットインパクト方式は、通常のOAプリンターで使用されているインパクトプリンタと同じ原理で印字を行います。プリンターのインクリボンのバーコードのパターンに応じた部分に圧力を加え、台紙にパターンを転写しています。この方式は、ランニングコストが安いことから今でも使用されています。

2. 感熱方式

感熱方式では、印刷ヘッド内に「サーマルヘッド」と呼ばれるバーコードのパターンを表す発熱素子 (ヒートエレメント) を組み込んでおき、これを加熱することで印字しています。

印刷ヘッドに接するように台紙となる感熱紙を配置し、バーコード印字時のみ発熱素子に電流を流すと、感熱紙にバーコードのパターンが印字される仕組みです。

印字される側の感熱紙が直接変色する方式のため、一般の印字方式で必要な消耗品のインクリボンなどが不要で低コストでの運用が可能です。現在、食品分野のバーコードのほとんどがこの方式で印字されています。

3. 熱転写方式

熱転写方式は、感熱方式に近い方法です。感熱方式が感熱紙を利用しているのに対し、熱転写方式は、サーマルヘッドと台紙の間にインクリボンを挟み込んで印字します。

すなわち、サーマルヘッドに電流を流すと、インクリボンのサーマルヘッドのパターンに応じた部分だけが溶融して、台紙に付着し印字されます。この方式では、紙だけでなく、ポリエステルや塩化ビニール、アルミ箔などへの印字が可能です。

4. 静電気方式

静電気方式は、OA機器の複写機 (PPC) と同じ原理でバーコードの印字をおこないます。感光ドラムにバーコードのパターンに応じた静電気の印字イメージを形成し、この印字イメージにトナーを付着させます。こ

のトナーを台紙に転写して、熱または光で定着させることで印字終了です。OA機器の複写機と同じ原理なので、高品質で高密度の印字が可能なことが特徴です。

5. インクジェット方式

インクジェット方式では、インクジェットプリンターの原理でバーコードを印字します。すなわち、印刷ヘッドのインクノズルから高速で照射されるインクを偏向板の隙間を通して目的の印字場所へコントロールすることで、バーコードを表現しています。

インクジェット方式は、インクを直接紙などの台紙に印字することからランニングコストが安価です。また、紙以外のプラスチック、金属、ガラス等にも直接印字できることも特長です。

バーコードプリンターのその他情報

1. ハンディタイプのバーコードプリンター

バーコードプリンターにも持ち運びが容易なハンディタイプがあり、感熱式のものやインクジェット式のものなどがあります。

PCやスマートフォン、タブレットなどから情報を読み込み、その場でバーコードを印字することが可能です。倉庫内などでその場でバーコードを発行できるため、作業効率の向上やヒューマンエラーの防止に貢献しています。

2. 使い分けの注意点

バーコードを貼っておく期間によって、感熱式と熱転写式を使い分けることが必要です。感熱方式のバーコードリーダーでは感熱紙を使用しています。このため、バーコードの貼付期間が長いと感熱紙自体が色焼けし、バーコードの判読が難しくなります。

よって、長期間貼付する場合は熱転写式バーコードプリンターがおすすめです。熱転写式バーコードプリンターは、台紙にインクリボンのインクを熱転写して印字するため、貼付期間が長くても色焼けしません。バーコードの貼付期間が長くない場合は、インクリボンが不要で低コストの感熱式バーコードプリンターがおすすめです。

参考文献
http://www.ainix.co.jp/howto_autoid/equipments/11.html
https://www.toshibatec.co.jp/products/ba410t.html
https://label.reji.jp/choice/