遠心濃縮機

遠心濃縮機とは

遠心濃縮機とは、減圧下で溶液状の試料に遠心力を加え、溶媒を蒸発させ、試料を濃縮する装置です。

一般的に、遠心チャンバーと冷却チャンバー、減圧装置により構成されています。

遠心濃縮機の使用用途

遠心濃縮機は、濃縮の際にかつ減圧により試料内の溶媒の沸点を下げ、かつ試料に遠心力を掛けて溶媒の突沸や泡立ち等を防ぐのが特徴です。そのため、加熱や突沸などによるサンプルのロスを抑えられ、ごく少量のサンプルを使用する微量分析のサンプルの濃縮に適しています。

DNAやRNA、ペプチドなどを濃縮したり、その他の濃縮や乾燥を必要とするアプリケーションを作成したりする際に使用されています。また、溶媒混合液および水混合物の濃縮や、残留分析、毒性調査や科学捜査、コンビナトリアル化学、食品分析や環境分析などにも多くの分野で利用されています。

遠心濃縮機の原理

微量分析などに使用される遠心濃縮機は、「物質の三態」を利用してサンプルを濃縮するのが特徴です。具体的には、減圧下で試料内の溶媒を大気下よりも低い温度で蒸発させ気化して回収し、試料内の溶媒の量を減らして試料を濃縮しています。そのため、遠心濃縮機に最低限必要な構成は、遠心チャンバーと冷却チャンバーおよび真空ポンプなどの減圧装置です。

遠心濃縮機では、遠心チャンバー内に液状の試料を配した状態で、減圧装置により遠心チャンバー内を減圧します。減圧下では物質の沸点は下がっていくため、遠心チャンバー内の試料に含まれる溶媒の沸点が下がります。よって大気下よりも低い温度で溶媒の蒸発が可能です。

蒸発した溶媒は冷却チャンバーに移動し、ここで冷却および回収されます。このとき、試料を加熱しており、溶媒の蒸発を促すほか、減圧時に起こる溶媒の凍結を防いでいます。また、遠心チャンバー内の試料表面の圧力は減圧された遠心チャンバー内と同じ圧力となっています。このとき、遠心濃縮機では試料に遠心力を加えているため、試料内部では深部に行くほど圧力が高くなる圧力勾配が生じています。

そのため、遠心チャンバー内の圧力をうまく制御すれば、試料表面のみが減圧下の沸点を持ち、試料内部は沸騰させることなく表面だけの沸騰を起こし、内部が沸騰する突沸の防止が可能です。

遠心濃縮機のその他情報

1. 遠心濃縮機による汚泥濃縮

遠心濃縮機は主に微量分析などの分野で使用されますが、近年では下水の汚泥処理にも使用されています。下水汚泥のうち、最初沈殿池の汚泥は沈降しやすく、重力沈降による汚泥の濃縮が容易です。

しかし、最終沈殿池の汚泥 (特に、余剰汚泥) は沈降しづらいため、重力沈降によって汚泥を濃縮させることは容易ではありません。そこで、機械による汚泥濃縮法 (機械濃縮法) の1種として遠心濃縮機が用いられています。なお、機械濃縮法には、常圧浮上濃縮装置やベルト式ろ過濃縮機などの方式もあります。

2. 汚泥濃縮用の遠心濃縮機の構造と動作

汚泥濃縮用の遠心濃縮機は、余剰汚泥を遠心力によって濃縮します。このとき、減圧はおこないません。汚泥濃縮用の遠心濃縮機は、汚泥供給管を中心として外胴、スクリューを持つ内胴がそれぞれ一定の回転差を保ちながら回転する構造です。

この回転差は、例えば3〜8回転ほどの回転差とされており、スクリューを持つ内胴の方が少しだけ遅く回るように設定されています。最初に汚泥を遠心濃縮機の汚泥供給管から外胴に供給されます。汚泥を遠心濃縮機に供給する前に、凝集剤などが添加されるのが一般的です。

外胴は高速回転しており、汚泥は遠心力を受けて、水と固形物の比重差による沈降分離が起き、外胴に濃縮汚泥が堆積します。このとき、内胴と外胴の回転差があり、内胴の方が少しだけ遅く回転しているため、堆積した濃縮汚泥は、内胴に取り付けられたスクリューによりかきとられ押し出されて排出されます。

このような遠心濃縮機を利用すれば、例えば濃度1%以下の汚泥を4〜6%の濃縮汚泥に濃縮可能です。

参考文献
https://www.thermofisher.com/
http://www.lsrc.u-toyama.ac.jp/sic/div/01seika/lab1/concn.html
http://www.kakoki.co.jp/products/e-014/index.html
https://www.enshinbunriki.com/principle/
http://www.siset.or.jp/contents/?CN=200&RF=K&ID=228

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