バイオセンサー

バイオセンサーとは

バイオセンサーとは、生物学的反応を利用して対象物質を特異的に検出することのできるセンサーです。

バイオセンサーに使用される材料は、酵素からなる生体触媒群、抗体や核酸を含む生体親和性群、微生物を含む微生物群の3つのグループに分類されます。 これらの生体物質の分子識別能を利用することで対象物質を特異的に検出することが可能です。

バイオセンサーの開発には、化学、生物学、工学などの学際的な研究が必要とされます。医学薬学をはじめとして、食品分析や環境調査など幅広い分野での応用が期待されています。

バイオセンサーの原理

図1-バイオセンサーの構造

図1. バイオセンサーの構造

バイオセンサーは主に、バイオレセプター、固定化層、トランスデューサーから構成されています。

1. バイオレセプター

バイオレセプターは、対象物質を検出するために用いられる生体物質のことです。対象分子を選択的に認識する生体物質をもちいることで、対象物質のみを特異的に検出することを可能にします。バイオレセプターとして、酵素、抗体、細胞、アプタマー、核酸などの生体物質が用いられます。

2. 固定化層

固定化層はバイオレセプターとして用いられる生体物質を、機能を損なわずにトランスデューサー上に固定化する層のことです。

一般的には生体物質を強固な方法によって固定化すると機能や活性が失われることが多いですが、機能や活性を保つために固定を弱くすると生体物質が剥離し検出能が低下するという課題があります。この課題の克服のために様々な研究開発が行われており、多孔性膜や高分子を利用したマトリックスを用いる方法や、物理吸着法や架橋法等の固定化法などが利用されています。

3. トランスデューサー

トランスデューサーは、バイオレセプターの反応を測定可能な信号に変換する部分です。測定可能な信号として利用されているのは、主に光学的信号と電気化学的信号の2種類です。得られた信号を処理することで、対象物質の量や濃度をけ計算することができます。

バイオセンサーの使用用途

図2-バイオセンサーの特徴

図2. バイオセンサーの特徴

バイオセンサーは生体物質を利用して作製されるため比較的感度が良くなっています。一般的に測定デバイスが安価で小型であり、操作が簡便といった特徴があるため医療分野以外にも食品や環境分野など様々な分野で用いられています。

化学実験や分光法を行う従来の技術は正確ですが試料の調整といった煩雑な操作が必要であり、目的物質以外の信号も検出してしまうなどの欠点があります。

また、測定は安定した室内で行う必要があるためフィールド調査などで採取した試料は一度持ち帰る必要があり、結果が出るまでに時間がかかることも欠点の一つです。

簡便な操作で短時間のうちに結果が得られる安価な測定装置であるバイオセンサーは幅広い分野で利用が期待されています。

特に医学の分野では、バイオセンサの応用が急速に進んでいます。例えば、血糖値を正確に管理する必要がある糖尿病の診断に、グルコースバイオセンサが臨床応用されています。

バイオセンサーのその他情報

バイオセンサーの医療への応用可能性

図3-バイオセンサーの応用例

図3. バイオセンサーの応用例

バイオセンサーの応用として最も期待されているのが医療分野への応用です。自身の健康状態をモニタリングし治療や健康管理に利用することが可能になります。

  1. 血糖値の測定
    糖尿病になると簡易血糖計測計を用いて血糖値を測定しますが、ウェアラブルデバイスを使うと採血せずに測定できます。コンタクトレンズ型やウォッチ型など様々な形式が研究されており、実用化に期待が高まっています。
  2. 病気の診断
    従来様々な検査が必要だった病気を尿検査などの簡便な検査だけで診断できるセンサーが多数開発されています。例えば、疾患関連のたんぱく質やウイルス等を免疫反応を利用して測定する抗原抗体検査などがあります。より高感度かつ定量性の高い測定方法や、複数の病気の診断を同一のバイオセンサーを用いて行う方法の研究が進められています。
  3. 薬学分野
    薬学分野でもバイオセンサーの応用が研究されています。人の体内の目的の場所で必要な量の薬剤を放出するドラッグデリバリーシステム (DDS) が次世代の薬として期待されています。厳密にはトランスデューサーを用いないためバイオセンサーには含まれませんが、信号を発生させる代わりに内部に含んだ薬剤を放出します。

    バイオレセプターを用いるDDSは、人の免疫反応などを利用して目的の場所のみで薬剤を放出することができるため、手術が必要な病気や手術では完治が難しいがんなどの病気を飲み薬や注射で治療することが可能になります。

今後このように生化学的な情報を取得し利用することで本格的な医療やヘルスケアに役立つことが期待されます。

グラフェン

グラフェンとは

グラフェン

グラフェン (英語: graphene) とは、炭素原子のみからなるシート状の物質です。

炭素原子が互いに結合することで六角形のハニカム構造を作り、それが二次元状に広がった構造を形成しています。高さ方向には秩序を持っていませんので、炭素原子1個分の厚みしかありません。そのため、非常に薄く透明な性質を持っています。

グラフェンの使用用途

グラフェンは、透明性や熱電伝導性、電気伝導性に優れるため、幅広い分野で使用されています。

1. エレクトロニクス

グラフェンは非常に薄く、透明な性質を持っているので、ディスプレイ用途に応用されています。また、グラフェンは、常温での電子の移動速度があらゆる物質の中で最も速いです。そのため、透明なタッチパネルや導電性フィルム、太陽電池などへの応用も期待されています。さらに、耐薬品性や耐熱性も有しているので、シリコンなどの代替品として注目されています。

2. 繊維

グラフェン自体を繊維状に加工することは難しいですが、グラフェンを含有する繊維については開発が進んでいます。グラフェンを配合した繊維は、グラフェンと同様の機能を有しているので、新規材料として様々な業界で期待されています。特に服飾業界では、服に求められる機能をグラフェンが充分満たしており、注目を集めています。

グラフェンの原理

グラフェンは、炭素原子の2pz軌道を占有する電子が平面内を自由に運動するため、導電性を示します。炭素原子はそれぞれ4個の価電子を持っています。その内の3つの価電子はsp2混成軌道 (シート方向の軌道) に分布しており、残りの1つは2pz軌道 (シートに垂直な方向の軌道) に分布しています。

2pz軌道を占有する価電子は自由電子となって、グラフェン内を自由に運動することが可能です。そのため、グラフェンは優れた導電性を持っています。

グラフェンのその他情報

1. グラフェンの作り方

グラフェンは、2010年のノーベル物理学賞を受賞した研究テーマで取り上げられた物質で、炭素原子が積層したグラファイト (黒鉛) にテープを貼り付けた後、それをはがしてテープ表面にくっついたグラフェンを採取するという簡単な手法で作ることができます。

* Andre GeimとKonstantin Novoselovが2010年にグラフェンについての実績が評価されノーベル賞を受賞しましたhttps://www.nobelprize.org/prizes/physics/2010/press-release/

前者の物理的な作り方と違って、化学的に作る方法にCVD (chemical vapor deposition) 法があります。メタン・水素・アルゴンのガスを入れ、加熱した基板上でガスの化学反応によりグラフェンを作ることが可能です。

2. グラフェンの価格

グラフェンの価格は、グラフェンの層数、大きさ、重量、基板の種類などで多少変化します。グラフェンは単層膜や多層膜、粉末の状態で販売されています。膜の場合、基本的には他の金属を基板として、その上にグラフェンが積層した状態です。

基板としては、銅箔などの金属製基板、二酸化ケイ素、石英などの無機材料製基板、PET (ポリエチレンテレフタレート) やPVC (ポリビニルセルロース) などの高分子材料製基板などがあります。

使用用途に合わせて基板を選択します。石英などの基板上のグラフェンは、いったん銅基板上で作製したグラフェンを転写して作製しているため、転写材などの不純物がある場合があります。アセトン等の有機溶媒による洗浄や加熱により不純物を取り除くことができます。

膜の場合は、小さいサイズでは数万円前後で購入可能なものが多いです。例えば、1cm×1cmの大きさで約30,000円 (2021年2月時点の価格) で市販されています。サイズが大きくなるにつれて価格も上昇し、大きさによっては数十万円するものもあります。

粉末状のグラファイトも販売されていますが、こちらも数百mgあたり数万円で入手可能です。同じグラフェンでも欠陥の度合いはメーカーによって異なります。欠陥の度合いの簡易的な評価は、ラマン分光スペクトルから評価することができます。

参考文献
https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/42/sc42-2.pdf
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/193748/1/chem.40017430637.pdf
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9503/9503_biomedia_2.pdf
https://ameblo.jp/uni-con/entry-10853466996.html
https://www.makuake.com/project/aiigoodmask/
https://atr-atr.co.jp/products/nanotech/graphene/
https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2010/press-release/

シリンジポンプ

シリンジポンプとは

シリンジポンプ

シリンジポンプとは、溶液や薬液を充填した注射器 (シリンジ) から、正確な量および速度で持続的に送液または吸引を行うための機械です。

医療用の製品と、研究・開発用などの製品があります。シリンジポンプは、予め設定した量・時間で正確に送液・吸引を行うため、シリンジのサイズに応じて、シリンジのプランジャを一定速度で動かします。シリンジポンプ

図1. シリンジポンプ

シリンジポンプの使用用途

シリンジポンプの使用用途には、大きく分けて医療用と研究用の2種類があります。シリンジポンプの目的は、流量を制御しながら正確な量の溶液・薬液を一定速度で送液・吸引することです。

1. 医療用シリンジポンプ

医療用シリンジポンプは、1回の投与量が50mL以下で、厳密かつ正確な投与量の薬剤を投与する場合に用いられます。弾力のあるチューブを利用する輸液ポンプと比べ、剛性のある注射器を使用するため正確な輸注が可能です。

2. 研究・開発用シリンジポンプ

研究・開発用シリンジポンプは、無脈流・定量での高精度な送液を必要とするアプリケーションで利用されている装置です。フローマイクロ反応や試薬の滴下、薬理・動物実験、分析機器へのインジェクションなど、用途は様々です。流体量が非常に少量である場合もあり、臨床での使用には適さない、追加の特性を持ち合わせている場合があります。

その他の用途には、生産現場の部品製造・組立ラインにおける、接着剤や銀、はんだペースト、グリス、薬液、液晶などの各種液体の吐出などが挙げられます。

シリンジポンプの原理

シリンジポンプの原理

図2. シリンジポンプの原理

シリンジポンプは、シリンジの外筒を固定し、内筒をモーターの力で押し出すことで一定送液を行います。モーターには、速度調節が容易で、一定速度で動作できるステッピングモーターを採用することが一般的です。

シリンジを人力で使用する場合は流量や速度の調節を行うことが極めて困難ですが、シリンジポンプでは一定速度でモーターがシリンジを押し出すため、精度の高い流量調節や、無脈動での送液を可能とします。

シリンジポンプの選び方

前述の通り、用途に合わせてまずは医療用/研究開発用の別を選ぶ必要があります。その上で自分の目的に合わせて、必要な機能の備わっているものを使用すると良いです。

1. 医療用

医療用のシリンジポンプには、それぞれ5・10・20・30・50・100mLシリンジに対応しているものがあります。使用する薬液量・目的の流入量に合わせた製品選定が必要です。

製品によっては、安全対策としてシリンジが正しく装着されるまでの間、ブザー音で注意を促すものもあります。これは、サイフォニング現象と呼ばれる、患者さんより高いところに設置されているシリンジポンプにおいて、シリンジの押し子が固定されていない場合に落差で薬液が大量注入される現象を防ぐためのものです。

その他には、ポンプの動作状態を遠隔監視できるよう、無線LANが搭載されているものや、パルス注入 (間歇注入) 設定が可能なもの、シリンジポンプ自体の注入速度量値と連動したガンマ量計算値表示が可能なものもあります。また、2台のシリンジを同時に装着して別々の薬剤を投与したり、連続注入を行ったりできるようになっている製品もあります。

サイフォニング現象の危険性

図3. サイフォニング現象の危険性

2. 研究・開発用

マイクロリットル単位の微量液量のものから、100mL単位の液量対応のものまで、様々な大きさのものがあります。まずは自分の用途にあったスケールのものを選定することが必要です。送液専用のシンプルなものから、送液/吸引及び、プログラム送液が可能なものまで、基本機能も製品によって異なっています。

操作部は、流量設定をダイヤルでセットするだけのシンプルなものから、マイコン搭載の高機能タイプまで様々なものがあります。また、リモコンケーブルを追加すると、リモコンでの操作も可能です。例えば、ドライブ部のみをコールドルーム内等に設置し、流量を外からコントロールするなどの場合に用いられます。

その他に特筆すべき機能として、CMC溶液のような高粘度の液体でも送液が可能なものもあります。主要メーカーのシリンジデータが予め入力されていて、選択するだけで良いように設定されているものもあります。

シリンジポンプのその他情報

1. シリンジポンプに関連したインシデント

シリンジポンプに関連したインシデントとしては、以下のような事例が挙げられます。

ポンプの流量設定の入力誤り
シリンジポンプは、正確な量、速度で薬剤を持続的に投与する際に使用されますが、流量を誤って入力してしまうと、場合によっては患者の命に係わる重大なインシデントとなります。他に設定入力の誤りの例としては、薬剤Aと薬剤Bの流量を取り違えて入力してしまったり、思い込みで誤った流量の単位を入力してしまったりする例が報告されています。

ポンプの気泡検出器の不具合
通常、シリンジポンプは気泡を検知して自動でポンプが停止するようになっていますが、機器の不具合により、ポンプが止まらず、患者側に空気が送られてしまう事例が報告されています。保守点検がなされていても、このような事例は起こりうるため、ポンプの使用時には予定量を入力することが重要とされています。

また、これらの事例の背景や要因としては、医療関係者の知識や経験が不足していたことが多くの事例で報告されています。手順書の周知徹底や使用方法の再教育も、これらの事例を未然に防ぐためには重要です。

2. シリンジポンプの流量設定における医療事故防止対策

シリンジポンプにおいて、流量設定は非常に重要であり、誤った操作方法は重大な事故に繋がります。事故を未然に防ぎ、より安全にシリンジポンプが使用できるよう、厚生労働省より「輸液ポンプに関する医療事故防止対策について」という通知が発出されています。

シリンジポンプへの設定の入力誤りによる事故が多数報告されていることから、この通知では、シリンジポンプの機器自体に以下のような機能を搭載するよう求めています。

  • 流量及び予定量は、その両方を入力しないと作動しないようにする。
  • 設定した予定量よりも流量が大きい場合には、一時停止させ、再度確認しないと作動しないようにする。
  • 電源を再投入した場合には、流量及び予定量の表示は0とする。

さらに、シリンジポンプへの設定の入力誤りを容易に発見できるように、以下のように画面表示を改善するように求めています。

  • 流量及び予定量はそれぞれ別画面で表示する。
  • 整数と少数の表示は大きい差を変えて表示する。
  • 小数点の表示は、浮動小数点表示ではなく、固定小数点表示とする。

参考文献
http://www.med-safe.jp/pdf/report_61.pdf
https://www.pmda.go.jp/files/000144111.pdf

グラスファイバ

グラスファイバとは

グラスファイバ

グラスファイバとは、溶かしたガラスを引き伸ばして繊維状にしたもので、工業生産された無機繊維の一種です。

ガラス繊維とも呼ばれます。ガラス製の繊維で、軽量化や耐久性向上を目的に、樹脂やセメントなどと複合させて使用されます。また、グラスファイバには無アルカリガラスがよく使用されています。

グラスファイバの使用用途

グラスファイバの用途は年々拡大しており、今後も需要の拡大が期待されています。主な用途は以下です。

  • 自動車部品やエレクトロニクス製品
  • 住宅設備の補強材
  • コンクリートの補強材
  • 合成枕木などの補強材

自動車部品に使われる樹脂はグラスファイバを複合させることで強度を向上させ、自動車軽量化に貢献しています。また、精密性向上を目的にエレクトロニクス製品へ使用されたり、高耐久性付与を目的に建築資材に使用されたりします。

グラスファイバの原理

グラスファイバの製造は1,300℃以上の高温でガラスを溶解させることから始まります。溶解したガラスを微細な孔に通し、μmオーダーのガラス引き出し、巻き取ることで糸状に加工しています。直径は4~25μmの範囲で製造可能です。用途ごとに最適なグラスファイバを選定する必要があります。

グラスファイバの種類

グラスファイバはEグラスファイバとARグラスファイバの2種類に大分されます。

1. Eグラスファイバ

樹脂の高強度化に用いられる無アルカリ製のグラスファイバです。絶縁性に優れています。絶縁性や耐熱性の向上を目的に樹脂へ複合化させます。

2. ARグラスファイバ

高濃度のジルコニアが含有したグラスファイバです。耐アルカリ性と耐酸性に優れています。耐アルカリ性を有したARグラスファイバはセメントへの複合化が可能です。

グラスファイバのその他情報

1. グラスファイバの危険性

グラスファイバを取り扱う上で、健康上の危険性はほとんどありません。アスベストなどの無機製繊維と似ているので混同されがちですが、異なる物質です。

アスベストは太さが0.1µm程度の結晶性繊維です。とても細いので、吸い込むと容易に肺の奥まで到達します。肺の奥まで到達すると体外へ排出されず蓄積するため、じん肺症などの病気を引き起こす原因になります。

グラスファイバは太さが4~25µmの非結晶性繊維です。吸い込んでも鼻や気管支で除去されるため、ほとんどが肺の奥まで到達しません。万が一体内に侵入しても、体の免疫システムによって短期間で体外に排出されます。

グラスファイバを加工する際に発生する粉塵は、日本産業衛生学会による粉塵の危険性分類において、第三種粉塵に分類されます。上記の通り、アスベストとは異なる物質ですので、吸い込んでもじん肺症などの原因にはなりません。それでも、健康上は粉塵をなるべく吸引しない方が良いので、換気や防塵マスクの着用などが推奨されます。

2. グラスファイバとカーボンファイバの違い

グラスファイバとカーボンファイバはどちらもファイバ状の物質ですが、異なる物質です。グラスファイバはガラス繊維です。高温窯で溶融したガラスを、ノズルから高速で引き出すことで製造されます。ガラスの性質である耐熱性、不燃性、耐薬品性などの性質があります。

一方で、カーボンファイバは、炭素繊維を組み込んだ繊維強化プラスチックです。石油やアクリル系繊維を炭素化することで製造されます。高い強度を有しているにも関わらず、非常に軽いのが特長です。

参考文献
https://www.nittobo.co.jp/business/glassfiber/about/index.htm
https://www.neg.co.jp/rd/topics/product-fiber/
https://kasyu-kogyo.com/2019/08/31/glas/
https://www.newglass.jp/mag/TITL/maghtml/80-pdf/+80-p022.pdf
https://www.afgc.co.jp/about-fg/safety.html
https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/datasheet/263578_3421__SDS.pdf
https://www.0ho.co.jp/material/p7/

クロメート処理

クロメート処理とは

クロメート処理

クロメート処理とは、六価クロムや三価クロムを主成分とする処理液で、金属を不働態化させクロメート皮膜を形成させる処理方法です。通常は亜鉛メッキを施した金属上にクロメート処理を行います。

クロメート処理の特徴

クロメート皮膜は、自己修復性が高く、他の酸化皮膜と比べて耐食性に優れているのが特徴です。他にも防錆性や意匠性、導電性などを向上させることができます。従来はコストの観点から六価クロムが一般的に使用されていましたが、EUでは六価クロムの使用が制限されているため、代替として三価クロムが使用されています。

クロメート処理皮膜の自己修復性については簡単に説明すると以下の通りです。図1に示すように、被めっき物の上に形成されたクロメート被膜に傷などにより欠損部が生じると、図2に示すようにクロメート液が染み出し、図3のようにクロメート皮膜を修復します。

クロメート皮膜の状態

図1. クロメート皮膜の状態

金属メッキはクロメート処理と同等の効果を得られますが、金属メッキに使用される貴金属は高価でありコスト面でクロメート処理によりも高価です。こうした背景から、コストを抑えられるクロメート処理の需要が拡大しています。

クロメート処理の使用用途

クロメート処理は耐食性が要求される材料や部品に使用されています。例えば、自動車関連部品や家電製品、電子機器、建築資材などにクロメート加工が行われ、利便性の向上に寄与しています。また、耐食性よりも意匠性が重視される場合にも使用され、ネジや事務用品などが主な製品です。

クロメート処理の原理

まずクロメート処理液で亜鉛メッキを溶解させます。亜鉛が溶解することにより、クロム酸イオンが還元され、三価クロムが生成します。その後、亜鉛メッキ上に水酸化物の皮膜が付着し、処理は完了です。クロメート処理はこのように簡便な操作で皮膜処理ができると同時に、処理方法によって特性を変化させることができます。

クロメート処理の種類

次に、クロメート処理の種類について説明します。クロメート処理の種類は図4に示すように大きく分けて4つです。それぞれのイメージを模式図として示します。

クロメート処理の種類

図2. クロメート処理の種類

1. 光沢クロメート

ネジや事務用品などのように耐食性の向上よりも意匠性が求められる場合に使用される方法です。フッ化物を含む処理液を使用することで、研磨性に優れた青銀白色の外観を得られます。図4a)に示すように、Cr3+主体の皮膜が形成されています。

2. 有色クロメート

操作が簡便で耐腐食性に優れたクロメート処理で、自動車や家電製品の内部部品に使用されます。皮膜の厚さは浸漬時間やpH、温度などで調整可能です。図4b)に示すように、クロメート皮膜の上層側にCr6+亜鉛メッキ層側にCr3+が存在します。

3. 黒色クロメート

耐腐食性と意匠性のバランスに優れたクロメート皮膜で、装飾品にも使用される処理方法です。処理液にハロゲン化銀を添加しており、図4c)に示すように、皮膜形成時に銀微粒子が皮膜中に分散され、黒色の外観となります。

4. 緑色クロメート

他の皮膜と比較して耐腐食性の高さはトップレベルを誇り、厚いクロメート皮膜を形成します。六価クロム含有量が多くなる傾向があるため、使用には注意が必要です。図4d)に示すように、クロメート皮膜の上層側にCr6+亜鉛メッキ層側にCr3+が存在します。

クロメート処理のその他情報

1. アルミクロメート処理の方法

アルミニウムは大気中において、表面に数nmの酸化皮膜を形成します。アルミニウム自体はイオン化傾向が大きく、腐食しやすい金属ですが、酸化皮膜の効果により適度な耐食性を示す金属です。しかし、酸化皮膜の膜厚は薄く、実用的なレベルでの耐食性が得られないため、表面処理により、耐食性を向上させる必要があります。

そこで、アルミクロメート処理が用いられており、具体的な方法として、リン酸クロメート処理とクロム酸クロメート処理という2つの方法があります。

リン酸クロメート処理
リン酸クロメート処理では、六価クロムを使用して、アルミニウムの表面にクロム層を形成しますが、六価クロムの多くは還元され、三価クロムに変化しており、安全性の高い処理方法です。

また、処理溶液の中にはフッ化物イオンやリン酸イオンが添加されています。リン酸イオンの効果は、六価クロムの還元反応を促進し、皮膜と表面層との密着性を高めることです。フッ化物イオンは、反応の初期段階で表面の酸化皮膜を溶解し、層の形成を助ける効果があります。

クロム酸クロメート処理
クロム酸クロメート処理は、酸性溶液の六価クロムを含有する水溶液を使用する方法です。この方法により形成される皮膜は、処理時間や温度などの条件によってクロムの付着量が大きく変化します。そのため、皮膜の外観を無色から茶褐色まで多様に変化させることが可能です。

処理溶液の中には、クロム酸、重クロム酸塩、フェリシアン化物などが添加されており、フェリシアン化物は、短時間で厚い皮膜を形成する効果があります。

2. クロメート処理の腐食

クロメート処理ではマイクロクラックと呼ばれるひび割れが生じることが知られています。処理直後の皮膜には水分が残っていますが、乾燥条件によっては水分が急速に失われることにより、細かなクラックが発生するためです。一般的に、クラック量は乾燥温度が高くなると増加する傾向にあります。

マイクロクラックは表面から内部まで広がっていくため、外部からの水分や汚れが内部の素材まで浸透し、これが腐食の原因となります。そのため、マイクロクラックは耐食性における大きな問題です。

このとき、上述の緑色クロメートにおいては、亜鉛メッキ層側にリン酸根を多く含むため、緻密で厚い構造を形成しています。このため、マイクロクラックが生じても亜鉛メッキ層まで到達しづらく、緑色クロメート皮膜は腐食耐久性が良好です。

参考文献
https://www.chemicoat.co.jp/column/detail_3.html
http://tri-osaka.jp/c/content/files/archives/Chromate.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/61/3/61_3_223/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1970/24/10/24_10_489/_pdf

キレート剤

キレート剤とは

キレート剤

キレート剤とは、様々な悪影響の原因となる金属イオンと錯体を形成し、活性を低下させるための薬剤です。

使用されるキレート剤には様々な種類が存在しますが、基本的にはアミノカルボン酸構造をベースに有しています。EDTAやDTPAなどが代表的ですが、結合する金属イオンの種類や水溶性が異なるため、用途により選択されています。

なお、アミノカルボン酸構造:とは、分子内にアミノ基 (-NH2) とカルボキシル基 (-COOH) の両方をもつ構造を指します。

キレート剤の使用用途

1. 工業用途

キレート剤は高い水溶性の付与や安定化作用があるため、溶液のバランス調製やイオン濃度調節に利用されます。他にも特定の金属のみと結合反応するキレート剤を使用することで、有価金属の回収や有害金属の分別廃棄にも応用できます。

2. 医療用途

鉄過剰症とは、何らかの原因で体内に鉄が過剰に蓄積し、疲労感や体の節々の痛みなど様々な症状が引き起こされる病気です。鉄は適量であれば良い働きをしますが、過剰に存在すると悪影響を及ぼします。

これを改善する薬として、鉄キレート剤があります。主な成分はデフェロキサミン、デフェラシロクスなどの有機分子です。鉄とキレート錯体をつくり、体外に排出する作用があります。このように、体内で過剰に存在する金属成分や放射性物質を排出し、適正なコントロールが可能です。

3. 家庭用用途

主に食器用洗剤や洗濯洗剤に添加されており、その洗浄性能を司る界面活性剤を金属イオンから守る役割を果たしています。

キレート剤の性質

最も代表的なキレート剤であるEDTAの場合、金属イオンとキレート剤が反応して生成した化合物はキレート錯体と呼ばれ、液中にて沈殿せずに可溶状態を維持します。EDTAは水溶液中で金属イオンと1:1の割合で配位結合することが知られています。

カニのハサミをイメージさせる立体構造で錯体を形成し、中に金属が挟み込まれる形で金属封鎖作用が発揮されます。金属封鎖作用とは、水中に含まれるカルシウムイオンや鉄イオンなどと他のイオンが結合するのを阻止する働きのことです。

例えば、洗濯用洗剤にはキレート剤が含まれていますが、これはマイナスの電荷を持つ界面活性剤と水道水中のカルシウムイオンや鉄イオンとの結合を阻止する狙いがあります。界面活性剤は洗浄成分なので、水中の金属イオンと結合すると洗浄能力が著しく低下します。そのため、金属イオンが界面活性剤と反応結合しないように、金属封鎖作用を持つキレート剤を加えています。

用途に応じてEDTAやDTPA、HEDTAなど豊富な種類のキレート剤が選択できます。種類によって配位結合する金属イオンの種類や性能などが異なるため、選定の際は注意と確認が必要です。

キレート剤の種類

食品に使用されるキレート剤は目的や用途に合わせて、種類が数多くあります。代表的なキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸クエン酸フィチン酸グルコン酸の4つです。

1. エチレンジアミン四酢酸 (EDTA)

エチレンジアミン四酢酸(EDTA)

酸化防止剤として、EDTA二ナトリウムとEDTAカルシウム二ナトリウムの2種が指定されています。酸化を促進する金属イオンを捕まえる働きをします。一部制約が設けられており、缶詰や瓶詰食品にしか使用できません。使用基準によっては、EDTA二ナトリウムを最終食品の完成前にEDTAカルシウム二ナトリウムにして不活性化する必要があります。

2. クエン酸

クエン酸

食品の風味向上用の酸味料として使用されています。レモンやオレンジなどの柑橘類の主成分として有名です。体内に入ったミネラルとキレート錯体を生成し、吸収しやすくする働きがあります。

3. グルコン酸

グルコン酸

食品の発酵状態を調整する働きがあり、味噌や塩の代替品として使用されてます。 それ以外にも、臭気のマスキング剤、pH調整剤、変色防止剤など幅広く活用可能です。 グルコン酸ナトリウム、グルコノデルタラクトンなどの成分で添加されています。

4.フィチン酸

フィチン酸

変色防止剤や酸化防止剤などに活用され、米ぬかやナッツ類に多く含まれている物質です。カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラルとキレート錯体を生成して保持します。含有量が多いとキレート作用が強くなりすぎるため、必須ミネラルの吸収を阻害する懸念があります。

キレート剤のその他情報

キレート剤の添加量計算方法

キレート剤がどのくらいの量の金属イオンと錯体を形成できるかを表す指標にキレート価 (chelation value,CV) があります。これは、キレート剤1gが何mgの炭酸カルシウムと配位結合できるかによって定義され、単位はmgCaCO3/gです。

EDTA・4Hの場合、CVは342mgCaCO3/gとなり、この値は次の計算で求めることができます。EDTAとカルシウムイオンは1:1で結合するので、1molのEDTA・4Hをカルシウムイオンで飽和させるには炭酸カルシウムも1mol必要となります。

従って、炭酸カルシウムの分子量は100、EDTA・4Hの分子量は292とした場合、炭酸カルシウム342mgとの結合のためにEDTA・4Hが1g必要です。このようにキレート剤がどのくらいの金属を封鎖できるかがわかれば、実際にキレート剤を使用する際の添加量目安を算出することができます。

参考文献
http://www.chelest.co.jp/products/chelete-faq/
https://www.kajitaku.com/column/dry-cleaning/3346
https://www.m-chemical.co.jp/products/departments/mcc/an/product/1200319_6917.html
https://www.jfrl.or.jp/storage/file/news_no78.pdf
https://www.tama5ya.jp/product/1180
https://www.ffcr.or.jp/tsuuchi/1983/08/6BB374E0F2184E87492567D200267A90.html
https://www.kyoritsu-foods.co.jp/event/kuensan/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/99/6/99_1267/_pdf

キャピラリ

キャピラリとは

キャピラリ

キャピラリ(またはキャピラリー)とは、毛細管現象が発生するような狭い管の事です。なお、毛細管現象とは、液体の表面張力と毛細管の内壁面に対するぬれにより、毛細管内に流入した液体が管内を移動する現象を指します。

この現象は、液体と周囲の固体表面(例えばガラス)との間の分子間力に起因します。具体的には、毛細管の直径が十分に小さい場合は、液体の表面張力と液体と容器の壁の間の接着力の均衡が崩れ、液体を推進するように作用します。

これは、絵筆、細いチューブ、紙や石膏などの多孔質材料、砂などの湿潤現象の原理でもあり、非常に身近な自然現象です。他にも、例えば植物は根から水を吸い上げ、全身の細胞へと運びますが、このメカニズムの一部にも毛細管現象が関与しています。

毛細管現象を利用した生活用品、科学技術の例 

1.毛細管現象の身近な利用例

毛細管現象は、私たちの日常生活において非常に実用的に作用しています。その基本的なメカニズムを、キッチンタオルで水拭き取る操作から考えてみましょう。

水分子同士のように類似の物質が引き合う力を凝集力と呼びます。一方で、キッチンタオルの細い繊維と水分子のように、異なる性質の物質の間で引き合う力の事を接着力と呼びます。

ここで、接着力の方が凝集力よりも大きい場合、水分子はキッチンタオルの繊維表面をぬらし、その結果として、繊維の間の空間へと引き込まれます。そして、引き込まれた水分子は、凝集力の作用により、接触した水分子同士で引き合います。

その結果、先導する水分子が後続する水分子をキッチンタオルの繊維間の空間へと引き込みます。このように、凝集力と接着力に差があるため、水は一定の速度でキッチンタオルの中へと染み込みます。

2. 毛細管現象と薄層クロマトグラフィー

薄層クロマトグラフィーとは、ガラス板やアルミ板などにシリカゲル等の固定相を薄い膜状に塗布した化学実験用の器具であり、複雑な化合物を分離するために、化学の分野で用いられています。この分析手法においても、毛細管現象が上手く利用されています。

具体的には、この分析手法においては、試料をスポットした薄層の一端を溶媒に浸す操作を行いますが、これにより溶媒は薄層プレートの下端から上端へ向けて、固定相の隙間を移動します。

3. キャピラリー電気泳動への適応

キャピラリー電気泳動とは、溶融シリカキャピラリー管内に電解性の試料溶液を注入し、電気泳動を行うことで微量成分を分離する分析法のことです。

HPLCや電気泳動のようなクロマトグラフィーと比較して、キャピラリーという容量が非常に小さな分離部より構成されるため、微量の試料から成分を検出するのに適した分析手法であり、一般的にその試料使用量は100nl程度しか必要としません。

この方法では、まずキャピラリーの両端をそれぞれ陽極と陰極が接続された電解質緩衝液に浸します。キャピラリー内壁にはシラノール基(-SiOH)が存在しており、緩衝液と接触することでイオン化して、マイナスの電荷を帯びます。

このマイナスの電荷は緩衝液からプラスの電荷物質を引きつけ、内壁の表面に電気二重層を形成します。この状態で電圧をかけるこで、電気二重層の外側の移動相中のプラスの電荷が陰極に向かって移動します。これにより、電気浸透流とよばれる移動相の流れが発生します。

キャピラリー電気泳動では、プラスの電荷を帯びている物質が迅速に陰極へと移動するので、最初に検出されます。また、キャピラリー内では電気浸透流が発生しているため、電気的な性質だけでは陰極へと移動しない中性物質、陰性物質もまた、陰極側へと移動し、検出器にて検出されます。

使用するキャピラリーについては、一般的に内径20~100μmのものが使用されます。内径が大きいと検出感度が高くなるので、微量成分でも鋭敏に検出することができます。一方で、内径が小さいと分解能が向上します。

キャピラリにおける毛細管現象の原理

水に浸した毛細管(細く狭い管)はメニスカスを形成します。このメニスカスの曲率は、管が細いほど大きく(すなわち、曲率半径が小さく)なります。曲率の発生により、液体と気体の界面に圧力差が生じます。鋭角な接触角を持つ液体(例えば、ガラス上の水)は、凹状のメニスカスを形成するため、メニスカスの下の液体圧力は大気圧よりも小さくなります。

したがって、管内の水は、管外の水(すなわち、水平な空気-水界面の下での大気圧の水)のより大きな圧力によって、その初期位置から、同じレベルで管内を上昇するように駆動されます。

チューブ内の水とチューブ外の平面下の水との間の圧力差が、キャピラリーチューブ内の水柱によって発揮される静水圧によって打ち消されると、上向きの動きは停止します。

このため、管外の水よりも管内の水位が高く、管の周りを水分子が吸着して重量に相反してその水位で留まることができています。

キャピラリの作り方

キャピラリは、ガラス管などの細長いガラス製品の中心をガスバーナーで加熱して軟化させた後、炎から素早く取り出し、両手で勢いよく伸ばして作ります。

ガラス管を伸ばした直後はまだ熱いので、加熱部周辺をよく冷まします。ガラス管が室温に戻ったのを確認してから、アンプルカッターなどの切削工具を使用して、不要な部分を切り取ります。

最後に、使用しやすい長さに調整して、割れないように適切な容器に入れて保管します。 ガラス管以外にも、パスツールピペットを代用して作製することができます。ガラスでの切削や火傷をする恐れがありますので、保護具を着用した上で、注意して作業をする必要があります。

参考文献

https://www.fia-sims.com/p40-interface-science.html

https://www.hyogo-c.ed.jp/~rikagaku/jjmanual/manual/i3204.htm

https://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2017/201701nyuumon.pdf

https://www.chem-station.com/chemglossary/2020/12/ce.html

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/63/8/63_482/_pdf/-char/ja

ガラス塗料

ガラス塗料とは

ガラス塗料とは、石英ガラスを溶媒に溶解させた塗料です。

常温でも液体であるため、常温下での塗装および硬化が可能なことが特徴です。また、さまざまな素材に塗装できます。

ガラス塗料の使用用途

ガラス塗料は、常温下での塗装が可能な上、耐久性や耐候性に優れることから住宅の外壁や屋根の塗装によく使用されています。また、ガラス塗料は、木材やコンクリート、モルタルおよび金属など多くの素材の塗装可能であるため、家の内壁や水回りのコーティングにも使用されています。

ガラス塗料の原理

ガラス塗料は、石英ガラスを溶媒に溶解させた塗料です。この塗料中のガラスを形成する成分の加水分解と脱水縮合が促進されることで硬化が起こります。

すなわち、ガラスと同じ主鎖に結合するオルガノポリシロキサン基が加水分解し、ヒドロキシ基に変化します。さらに、変化したヒドロキシ基が残存オルガノポリシロキサン基と脱アルコール反応することで硬化する仕組みです。

ガラス塗料の種類

ガラス塗料は、一般的には完全無機質ガラス塗料を指します。ただし、有機質配合ガラス塗料も含む場合もあります。

1. 完全無機質ガラス塗料

完全無機質ガラス塗料とは、原料の石英ガラス含有量が99.7%と非常に高い塗料です。完全無機質ガラス塗料は有機物を一切含まないことからガラスと同等の性質を持ち、経年劣化や可燃性の心配がなく、半永久的な耐久性と不燃性を有します。また、ガラスの特性を有するため、撥水性や耐透水性、耐薬品性および耐防汚性にも優れています。

この塗料を建築物の外壁塗装や屋根の塗装に使用すれば、建築物の耐候性や耐熱性、耐透水性および耐防汚性、防カビ性も確保可能です。また、透明性が非常に高い薄膜を形成し、高級感を演出できます。

さらに、この塗料では希釈に有機溶剤ではなくアルコールを使用するため、人体や環境に影響を及ぼしにくいというメリットもあります。ただし、通常の塗料に比べて高価なうえ施工にも時間がかかるため、工事費が高価になるという点がデメリットです。

2. 有機質配合ガラス塗料

有機質配合ガラス塗料は、原料に無機質と石油化学物質を使用している塗料です。ガラス塗料ではあるものの有機物を混合しているため、有機物が酸化し塗膜は劣化していきます。

全無機質ガラス塗料の持つ特性は備えておらず、ガラス塗料の安価版と位置付けられています。

ガラス塗料のその他情報

1. ガラス塗料の短所

ガラス塗料は外壁の塗装に好適ですが、シーリングが使用されている外壁には向いていません。シーリングの耐用年数は7年から10年程度と言われています。そのため、シーリングを使用した外壁ではシーリングの耐用年数に合わせてメンテナンスが必要です。

一方、ガラス塗料の耐久年数は約20年と言われています。すなわち、シーリングを施した外壁の上にガラス塗料を塗布した場合、ガラス塗料の耐久性が高いうちにシーリングのメンテナンスが必要になります。結果、価格も工事費用も高価なガラス塗料を十分活用する前に塗り替えなければならないのがデメリットです。

さらには、ガラス塗料の特性上、重ね塗りが難しいこともデメリットとして挙げられます。そのため、将来の塗り替え回数などを検討した上でガラス塗料を使用することが重要です。

2. ガラス塗料の仕上がり

ガラス塗料は木工にも使用可能です。ガラス塗料は石英ガラスを溶媒に溶解させた液状のものであることから、木の繊維に浸透して硬化します。そのため、木肌の味わいや質感を残したまま塗装できるメリットがあります。

木製であれば屋内外問わず、同じような質感で塗装できることもメリットの1つです。浸透させることで、内部から生じる腐食やカビから木材を保護できます。また、表面にも析出することから水やキズおよびダニなどからの保護も可能です。

3. 建築における白華現象

木製の建築物が多い日本では、建築物に使用される木の内部に燃焼を防止するための防炎剤を含浸して使用するのが一般的です。しかしながら、この防炎剤には吸湿性の高い薬剤が多く、梅雨のような高湿度環境にさらされることにより表面に析出して白く固まる「白華 (はっか) 」と呼ばれる現象が起こります。

しかし、ガラス塗料を使用すれば湿度が高くても析出して白華現象を起こすことがなく、この点からも期待されています。

参考文献
https://gaiheki-tatsujin.com/9477
http://c-craft-88.jp/glasscoating.php
https://gaihekitosou-hotline.com/glass-tosou/
https://gaihekitosou-hotline.com/glass-tosou/

ガラスバイアル

ガラスバイアルとは

ガラスバイアル

ガラスバイアルとは、注射剤や試料・薬品を封入する容器の1つです。

ゴム栓がされたガラス瓶であり、注射針を栓に刺して中身を吸い出します。日本薬局方では、栓体付きガラス製医薬品容器として分類されます。

同じ医薬品容器であるアンプル瓶と異なり、開封が簡単 (ガラスを切って開封する必要がないので怪我のリスクが少ない) です。また、複数回に分けて使用できるため利便性が高いです。

ガラスバイアルの使用用途

1. 医薬品

医薬品、特に凍結乾燥製剤や液剤の容器として用いられます。凍結乾燥製剤は、医薬品の水溶液を凍結乾燥して製品 (製剤) にするものです。

医薬品のガラスバイアルは、ガラス管瓶 (バイアル) 、ゴム栓、金属 (通常はアルミニウム) キャップの組み合わせで構成されています。使用するときは注射針を付した注射器を用いて、注射針をゴム栓に貫通させます。

凍結乾燥製剤の場合には、指定された溶解液が必要です。規定量の溶解液を注射器で注入し、完全に溶解した後に必要量の薬液を吸い上げます。液剤の場合には、そのまま注射器で薬液を吸い上げます。

2. 分析試料の封入

医薬品以外では、高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィー用の試料の封入などにも利用されています。この用途では有機溶媒に耐えるパッキンと蓋が使われます。

例えば、テフロンで表面加工されたシリコンゴムまたはブチルゴムのセプタム (パッキン) とポリプロピレンのねじ口蓋 (スクリューキャップ) です。 揮発性の高い試料でも、分析まで揮発させることなく保持することができます。

分析時には、高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーのインジェクターが備える注射針をセプタムに刺して試料を吸い上げます。針を抜いた後はセプタムの穴がふさがる (再シール) ため、ある程度は再分析が可能です。

ガラスバイアルの原理

1. 医薬品用

医薬品用のガラスバイアルは、ゴム栓をした上でアルミシールを被せて、二重に蓋をします。アルミシールを被せた際にゴム栓を圧着させるため、密閉性が高く、長期保存に有利です。

アルミシールの上部には丸い穴が開いており、ここから注射針で中の薬品・試料を取り出すことができます。ガラスバイアルの大きな特徴の1つとして、内部の薬品・試料の品質を長期に渡り安定して保てる点があります。安定性が高い理由は以下の通りです。

中身の酸化を防ぐことができる
バイアル瓶本体 (ガラス) のガス透過性がなく、ゴム栓により密閉することができるため、空気の侵入を防ぎます。これにより、中身の酸化を防ぐことが可能です。

薬品との反応性が低い素材を利用している
ガラスバイアルに用いられるガラス素材は、ほうけい酸塩ガラスまたはソーダ石灰ガラスです。前者のほうけい酸塩ガラスは、熱膨張率が低く、硬い性質を持っています。

円筒状の長い素材を切って加工しており、小型容量のバイアルや凍結乾燥用を目的としたガラスバイアルに用いられます。後者のソーダ石灰ガラスは、二酸化ケイ素、酸化ナトリウム、酸化カルシウムを主成分としたガラスです。

溶解させたガラスを、型に流し込み、空気を吹き込んで形成するため、安価に大量生産することが可能です。いずれも薬品との反応性が低い素材であり、内部の医薬品の品質を安定して保てます。

2. 分析試料用

分析試料用のガラスバイアルは、医薬品同様にゴム栓が付いたアルミシールを被せるタイプのもの (クリンプトップバイアル) と セプタムをねじ口蓋で固定するもの (スクリュートップバイアル) があります。クリンプトップバイアルにアルミシールを被せる際には、ハンドクリッパーと呼ばれる特殊な器具を用います。スクリュートップバイアルは手締めであり、手で再開封することも可能です。

医薬品のように長期保存するものではありませんが、揮発性の試料を保持できる原理は、やはりセプタムが密着することによる気密性にあります。分析まで試料の品質を維持できるのは、ガラスの安定した性質によるものです。テフロンシールされたセプタムは、有機溶媒に対しても耐性があります。

ガラスバイアルのその他情報

1. 医薬品用バイアルの表面処理

医薬品用バイアルは、ガラスの表面処理をされることがあります。脱アルカリ処理は、表面層のアルカリ成分を除去し、アルカリ成分の溶出を抑える処理です。

コーティング処理にはシリカ加工、シリコーン加工、フッ素樹脂加工などがあります。それぞれ、高純度シリカ、シリコーン樹脂、フッ素樹脂の薄膜をガラス表面に形成するものです。これらの処理により、ガラス成分の溶出を抑えることができます。

2. 分析用バイアルにおけるセプタムの再シール性能

弾力に富む素材ほど再シール性能が高く、一般にはブチルゴムの方がシリコンゴムより再シール性能が高いです。一方、耐溶媒性はシリコンゴムの方が高いため、用途に応じて適切な素材を選択します。

参考文献
https://www.nichiden-rika.com/blog/?p=446
https://www.pmda.go.jp/files/000213851.pdf
http://www.iwataglass.com/products/vial/
https://www.nipro.co.jp/business/glass/medical1.html

ガラスシャーレ

ガラスシャーレとは

ガラスシャーレ

ガラスシャーレとは、シャーレと呼ばれる実験器具の中でもガラスで作られているものです。

ガラス以外の素材には、プラスチック、アルマイトポリスチレンなどがあります。シャーレは、ペトリ皿 (Petri dish) とも呼ばれます。発明したドイツのユリウス・リヒャルト・ペトリ (Julius Richard Petri) の名前から、ペトリ皿と名付けられました。シャーレという名前もドイツ語由来です。

ガラスシャーレの使用用途

シャーレは、検査物を入れたり、微生物や組織の培養したりする際に使用されます。特に、ガラスシャーレは、耐熱性に優れ、細菌・微生物の培養後、オートクレーブ等により滅菌処理で再利用可能です。

シャーレは、わずかに口径が違う円筒状の浅い皿が、2枚で1セットとなっています。蓋側は大きくて浅く、底側は小さくて深く設計されています。しかし、密閉性は高くないので、嫌気性細菌・微生物の培養には向いていません。

ガラスシャーレは、さまざまなサイズで展開されています。直径10cm程度、高さが1,2cmほどのものが主流ですが、高さがある腰高シャーレと呼ばれるものも販売されています。

ガラスシャーレの原理

ガラスシャーレに培地を用意し、植菌した後に適当な環境下で培養することで、シャーレのコロニーの数から植菌時の菌の数や、菌の増殖度合いを観測することが可能です。ガラスシャーレは、透明性が高く中に入れた物が見やすいため、培養した組織や微生物を、そのまま顕微鏡で観察することができます。また、耐熱性に優れていることから、滅菌処理も可能です。

底面に、カバーガラスが貼り付けられており、顕微鏡下で高倍率観察や、蛍光観察が可能なガラスシャーレもあります。ガラス製は落とすと割れてしまうため、持ち運ぶ際には注意が必要です。

また、通常のガラスよりも熱に強い素材でできている、耐熱シャーレもあります。しかし、耐熱シャーレは熱に強いだけで、衝撃に対する強度は他のシャーレと変わりません。シャーレの底面が3つに分割されており、中の物を分けて入れられる3割シャーレというガラスシャーレも販売されています。

ガラスシャーレのその他情報

1. ガラスシャーレの耐熱温度

ガラスシャーレの耐熱温度は各メーカーや製品によって異なっており、100℃のものもあれば、500℃以上のものもあります。そのため、加熱処理や滅菌を行う前に、耐熱温度の確認が必要です。

ガラス製のシャーレが他の素材のものに比べて耐熱性に優れているといっても、バーナーなどを使用して直火で加熱することは厳禁です。急速な加熱によってガラスシャーレが破損する恐れがあるためです。実験などでガラスシャーレに熱を加えて処理をする際は、蒸発皿などを使用します。

2. ガラスシャーレの滅菌方法

ガラスシャーレの滅菌方法は、一般的に乾熱滅菌です。乾熱滅菌とは、乾燥した空気の中で加熱することによって、微生物を滅菌する方法です。ガラスや金属器具など、高温の処理を施しても問題のないものや、蒸気に触れてはいけないものの滅菌します。

乾熱滅菌には、「ガスや電気によって直接加熱する方式」と「加熱した空気を循環させて乾燥高温状態を維持する方式」がありますが、ガラスシャーレの滅菌には後者の方式を用います。後者の「乾燥高温状態を維持する方式」では、電気オーブンなどの乾熱滅菌器を使って滅菌します。

加熱条件は、135~145℃であれば3~5時間、160~170℃であれば2~4時間、170~180℃であれば1時間、180~200℃であれば30分間が目安です。ガラスシャーレをよく乾燥させ、水滴がついていないことを確認してからアルミホイルで包み、乾熱滅菌器の中に入れます。複数のガラスシャーレを乾熱滅菌する際には、乾熱滅菌器の庫内に余裕を持たせて、シャーレを均一に入れます。これは、中に入れたガラスシャーレ全てに熱が均一にかかるようにするためです。

乾熱滅菌器のヒーターに近い金属部分は、設定された温度よりも熱くなることがあるため、十分に注意が必要です。滅菌器のスイッチを入れ、庫内が設定温度に到達してから、加熱時間を測ります。乾熱滅菌が完了したら加熱を止め、庫内が冷えるまで待ってからガラスシャーレを取り出します。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/839/
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0637.html
https://sci-pursuit.com/chem/labware/petri_dish.html
http://www.phoenixsci.co.jp/support/mattek_faq.html#a13
https://sci-pursuit.com/chem/labware/petri_dish.html
https://m-hub.jp/biology/2798/183
https://www.as-1.co.jp/academy/21/21-3.html