キャピラリ

キャピラリとは

キャピラリ

キャピラリ(またはキャピラリー)とは、毛細管現象が発生するような狭い管の事です。なお、毛細管現象とは、液体の表面張力と毛細管の内壁面に対するぬれにより、毛細管内に流入した液体が管内を移動する現象を指します。

この現象は、液体と周囲の固体表面(例えばガラス)との間の分子間力に起因します。具体的には、毛細管の直径が十分に小さい場合は、液体の表面張力と液体と容器の壁の間の接着力の均衡が崩れ、液体を推進するように作用します。

これは、絵筆、細いチューブ、紙や石膏などの多孔質材料、砂などの湿潤現象の原理でもあり、非常に身近な自然現象です。他にも、例えば植物は根から水を吸い上げ、全身の細胞へと運びますが、このメカニズムの一部にも毛細管現象が関与しています。

毛細管現象を利用した生活用品、科学技術の例 

1.毛細管現象の身近な利用例

毛細管現象は、私たちの日常生活において非常に実用的に作用しています。その基本的なメカニズムを、キッチンタオルで水拭き取る操作から考えてみましょう。

水分子同士のように類似の物質が引き合う力を凝集力と呼びます。一方で、キッチンタオルの細い繊維と水分子のように、異なる性質の物質の間で引き合う力の事を接着力と呼びます。

ここで、接着力の方が凝集力よりも大きい場合、水分子はキッチンタオルの繊維表面をぬらし、その結果として、繊維の間の空間へと引き込まれます。そして、引き込まれた水分子は、凝集力の作用により、接触した水分子同士で引き合います。

その結果、先導する水分子が後続する水分子をキッチンタオルの繊維間の空間へと引き込みます。このように、凝集力と接着力に差があるため、水は一定の速度でキッチンタオルの中へと染み込みます。

2. 毛細管現象と薄層クロマトグラフィー

薄層クロマトグラフィーとは、ガラス板やアルミ板などにシリカゲル等の固定相を薄い膜状に塗布した化学実験用の器具であり、複雑な化合物を分離するために、化学の分野で用いられています。この分析手法においても、毛細管現象が上手く利用されています。

具体的には、この分析手法においては、試料をスポットした薄層の一端を溶媒に浸す操作を行いますが、これにより溶媒は薄層プレートの下端から上端へ向けて、固定相の隙間を移動します。

3. キャピラリー電気泳動への適応

キャピラリー電気泳動とは、溶融シリカキャピラリー管内に電解性の試料溶液を注入し、電気泳動を行うことで微量成分を分離する分析法のことです。

HPLCや電気泳動のようなクロマトグラフィーと比較して、キャピラリーという容量が非常に小さな分離部より構成されるため、微量の試料から成分を検出するのに適した分析手法であり、一般的にその試料使用量は100nl程度しか必要としません。

この方法では、まずキャピラリーの両端をそれぞれ陽極と陰極が接続された電解質緩衝液に浸します。キャピラリー内壁にはシラノール基(-SiOH)が存在しており、緩衝液と接触することでイオン化して、マイナスの電荷を帯びます。

このマイナスの電荷は緩衝液からプラスの電荷物質を引きつけ、内壁の表面に電気二重層を形成します。この状態で電圧をかけるこで、電気二重層の外側の移動相中のプラスの電荷が陰極に向かって移動します。これにより、電気浸透流とよばれる移動相の流れが発生します。

キャピラリー電気泳動では、プラスの電荷を帯びている物質が迅速に陰極へと移動するので、最初に検出されます。また、キャピラリー内では電気浸透流が発生しているため、電気的な性質だけでは陰極へと移動しない中性物質、陰性物質もまた、陰極側へと移動し、検出器にて検出されます。

使用するキャピラリーについては、一般的に内径20~100μmのものが使用されます。内径が大きいと検出感度が高くなるので、微量成分でも鋭敏に検出することができます。一方で、内径が小さいと分解能が向上します。

キャピラリにおける毛細管現象の原理

水に浸した毛細管(細く狭い管)はメニスカスを形成します。このメニスカスの曲率は、管が細いほど大きく(すなわち、曲率半径が小さく)なります。曲率の発生により、液体と気体の界面に圧力差が生じます。鋭角な接触角を持つ液体(例えば、ガラス上の水)は、凹状のメニスカスを形成するため、メニスカスの下の液体圧力は大気圧よりも小さくなります。

したがって、管内の水は、管外の水(すなわち、水平な空気-水界面の下での大気圧の水)のより大きな圧力によって、その初期位置から、同じレベルで管内を上昇するように駆動されます。

チューブ内の水とチューブ外の平面下の水との間の圧力差が、キャピラリーチューブ内の水柱によって発揮される静水圧によって打ち消されると、上向きの動きは停止します。

このため、管外の水よりも管内の水位が高く、管の周りを水分子が吸着して重量に相反してその水位で留まることができています。

キャピラリの作り方

キャピラリは、ガラス管などの細長いガラス製品の中心をガスバーナーで加熱して軟化させた後、炎から素早く取り出し、両手で勢いよく伸ばして作ります。

ガラス管を伸ばした直後はまだ熱いので、加熱部周辺をよく冷まします。ガラス管が室温に戻ったのを確認してから、アンプルカッターなどの切削工具を使用して、不要な部分を切り取ります。

最後に、使用しやすい長さに調整して、割れないように適切な容器に入れて保管します。 ガラス管以外にも、パスツールピペットを代用して作製することができます。ガラスでの切削や火傷をする恐れがありますので、保護具を着用した上で、注意して作業をする必要があります。

参考文献

https://www.fia-sims.com/p40-interface-science.html

https://www.hyogo-c.ed.jp/~rikagaku/jjmanual/manual/i3204.htm

https://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2017/201701nyuumon.pdf

https://www.chem-station.com/chemglossary/2020/12/ce.html

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/63/8/63_482/_pdf/-char/ja

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