クロメート処理

クロメート処理とは

クロメート処理

クロメート処理とは、六価クロムや三価クロムを主成分とする処理液で、金属を不働態化させクロメート皮膜を形成させる処理方法です。通常は亜鉛メッキを施した金属上にクロメート処理を行います。

クロメート処理の特徴

クロメート皮膜は、自己修復性が高く、他の酸化皮膜と比べて耐食性に優れているのが特徴です。他にも防錆性や意匠性、導電性などを向上させることができます。従来はコストの観点から六価クロムが一般的に使用されていましたが、EUでは六価クロムの使用が制限されているため、代替として三価クロムが使用されています。

クロメート処理皮膜の自己修復性については簡単に説明すると以下の通りです。図1に示すように、被めっき物の上に形成されたクロメート被膜に傷などにより欠損部が生じると、図2に示すようにクロメート液が染み出し、図3のようにクロメート皮膜を修復します。

クロメート皮膜の状態

図1. クロメート皮膜の状態

金属メッキはクロメート処理と同等の効果を得られますが、金属メッキに使用される貴金属は高価でありコスト面でクロメート処理によりも高価です。こうした背景から、コストを抑えられるクロメート処理の需要が拡大しています。

クロメート処理の使用用途

クロメート処理は耐食性が要求される材料や部品に使用されています。例えば、自動車関連部品や家電製品、電子機器、建築資材などにクロメート加工が行われ、利便性の向上に寄与しています。また、耐食性よりも意匠性が重視される場合にも使用され、ネジや事務用品などが主な製品です。

クロメート処理の原理

まずクロメート処理液で亜鉛メッキを溶解させます。亜鉛が溶解することにより、クロム酸イオンが還元され、三価クロムが生成します。その後、亜鉛メッキ上に水酸化物の皮膜が付着し、処理は完了です。クロメート処理はこのように簡便な操作で皮膜処理ができると同時に、処理方法によって特性を変化させることができます。

クロメート処理の種類

次に、クロメート処理の種類について説明します。クロメート処理の種類は図4に示すように大きく分けて4つです。それぞれのイメージを模式図として示します。

クロメート処理の種類

図2. クロメート処理の種類

1. 光沢クロメート

ネジや事務用品などのように耐食性の向上よりも意匠性が求められる場合に使用される方法です。フッ化物を含む処理液を使用することで、研磨性に優れた青銀白色の外観を得られます。図4a)に示すように、Cr3+主体の皮膜が形成されています。

2. 有色クロメート

操作が簡便で耐腐食性に優れたクロメート処理で、自動車や家電製品の内部部品に使用されます。皮膜の厚さは浸漬時間やpH、温度などで調整可能です。図4b)に示すように、クロメート皮膜の上層側にCr6+亜鉛メッキ層側にCr3+が存在します。

3. 黒色クロメート

耐腐食性と意匠性のバランスに優れたクロメート皮膜で、装飾品にも使用される処理方法です。処理液にハロゲン化銀を添加しており、図4c)に示すように、皮膜形成時に銀微粒子が皮膜中に分散され、黒色の外観となります。

4. 緑色クロメート

他の皮膜と比較して耐腐食性の高さはトップレベルを誇り、厚いクロメート皮膜を形成します。六価クロム含有量が多くなる傾向があるため、使用には注意が必要です。図4d)に示すように、クロメート皮膜の上層側にCr6+亜鉛メッキ層側にCr3+が存在します。

クロメート処理のその他情報

1. アルミクロメート処理の方法

アルミニウムは大気中において、表面に数nmの酸化皮膜を形成します。アルミニウム自体はイオン化傾向が大きく、腐食しやすい金属ですが、酸化皮膜の効果により適度な耐食性を示す金属です。しかし、酸化皮膜の膜厚は薄く、実用的なレベルでの耐食性が得られないため、表面処理により、耐食性を向上させる必要があります。

そこで、アルミクロメート処理が用いられており、具体的な方法として、リン酸クロメート処理とクロム酸クロメート処理という2つの方法があります。

リン酸クロメート処理
リン酸クロメート処理では、六価クロムを使用して、アルミニウムの表面にクロム層を形成しますが、六価クロムの多くは還元され、三価クロムに変化しており、安全性の高い処理方法です。

また、処理溶液の中にはフッ化物イオンやリン酸イオンが添加されています。リン酸イオンの効果は、六価クロムの還元反応を促進し、皮膜と表面層との密着性を高めることです。フッ化物イオンは、反応の初期段階で表面の酸化皮膜を溶解し、層の形成を助ける効果があります。

クロム酸クロメート処理
クロム酸クロメート処理は、酸性溶液の六価クロムを含有する水溶液を使用する方法です。この方法により形成される皮膜は、処理時間や温度などの条件によってクロムの付着量が大きく変化します。そのため、皮膜の外観を無色から茶褐色まで多様に変化させることが可能です。

処理溶液の中には、クロム酸、重クロム酸塩、フェリシアン化物などが添加されており、フェリシアン化物は、短時間で厚い皮膜を形成する効果があります。

2. クロメート処理の腐食

クロメート処理ではマイクロクラックと呼ばれるひび割れが生じることが知られています。処理直後の皮膜には水分が残っていますが、乾燥条件によっては水分が急速に失われることにより、細かなクラックが発生するためです。一般的に、クラック量は乾燥温度が高くなると増加する傾向にあります。

マイクロクラックは表面から内部まで広がっていくため、外部からの水分や汚れが内部の素材まで浸透し、これが腐食の原因となります。そのため、マイクロクラックは耐食性における大きな問題です。

このとき、上述の緑色クロメートにおいては、亜鉛メッキ層側にリン酸根を多く含むため、緻密で厚い構造を形成しています。このため、マイクロクラックが生じても亜鉛メッキ層まで到達しづらく、緑色クロメート皮膜は腐食耐久性が良好です。

参考文献
https://www.chemicoat.co.jp/column/detail_3.html
http://tri-osaka.jp/c/content/files/archives/Chromate.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/61/3/61_3_223/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1970/24/10/24_10_489/_pdf

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