ATXマザーボード

ATXマザーボードとは

ATXマザーボード

ATXマザーボードとは、ATX仕様のコンピュータ用のシステムを構成するための最も基本的なデバイス群を搭載した電子基板です。

MBと略され、システムボード、メインボード、ロジックボードなどと呼ばれています。コンピュータのあらゆる部品はケーブルやコネクタなどを介して何らかの形でマザーボードに接続され、各種部品間の通信・電力供給もマザーボードを介して行われます。

コンピュータの心臓部とも言えるマザーボードですが、コンピュータの基本動作を支える重要な役割を果たしています。しかし、すべての部品に対して接続される関係上、1つのマザーボードが持つスペックは多数の接続方式や通信規格が混在した複雑な仕様となっています。

接続方式や通信規格が適合していないと使用するパーツの性能を十分に発揮できないことや、最悪の場合パーツ自体が接続できず使用できない等の不具合が生じてしまうため、入念に下調べを行った上で選ぶ必要があります。

ATXマザーボードの使用用途

ATXマザーボードは、ATX電源CPU、メモリ、外部記憶装置などと組み合わせ、デスクトップパソコンやサーバなどの内部パーツに使用されています。

マザーボードのサイズに関して規格があり、マザーボードのサイズが大きいほど用意されている端子の数が多くなっており、より多くのパーツと接続できるため拡張性が高くなります。

サイズの規格として、自作のコンピュータ用では大きく分けて4種類があります。

  • ATX
  • Micro ATX
  • Mini ITX
  • Nano ITX

大きな違いとしては、それぞれマザーボードとしてのサイズが違うため、接続できる端子の数が小さいほど少なくなっていることです。

サイズが小さい分、小さいPCケースに搭載することができるため、主に省スペース化のためサイズの小さいコンピュータを作製したいときに使用されます。また、マザーボードとしての価格も一般的に小さい方が安くなる場合が多いため、価格を抑えたい時にも検討する余地があります。

ATXマザーボードはマザーボードとして一番大きなサイズ規格となるため、対応しているPCケースは主にミドルタワー以上のPCケースに装着可能です。

より小型のMicro ATXやMini ITXなどは、ミニタワー型等の小さいサイズのPCケースに対応しておりATXマザーボードに比べて省スペース化が可能です。また、マザーボードを取り付ける際の取り付け穴として、互換性があるマザーボードとしてが規格化されています。

接続機器や拡張ボードなど、搭載するパーツの数や通信規格によりマザーボードの必要なスペックが変わるため、条件に合った選定が必要です。

ATXマザーボードの原理

ATXマザーボードは、プリント基板上にパターンが転写されている集積回路の基板になっており、基板の素材は硬い非導電材料でできています。プリント基板上には他の部品を繋げるためのソケットや端子、各種スロットが搭載されています。

ATXマザーボードは搭載するコンポーネントにより以下の構成部品が搭載されています。使用環境や要求性能などを考慮した上で使用することが求められます。

1. チップセット

外部インターフェイスからのデータの流れを制御します。チップセットの性能により搭載できる機能が決まります。

2. CPUソケット

CPUをはめ込む部品です。はめ込む際はチップセットと対応CPUの規格に合っているか確認が必要です。CPUの規格は、主に「Intel」と「AMD」の2種類となっているため、使用するCPUのソケット形状を確認した上で選定する必要があります。マザーボードによっては基板上にオンボードで搭載されている場合があります。

3. メモリソケット

メモリをはめ込む部品です。メモリにも「DDR4」等の規格があり、主にデータの転送/処理速度に影響があります。メモリの規格によってソケットの形状が異なるため、対応した規格に合っているか確認が必要です。

4. BIOS

マザーボード上に接続されているハードウェアの基本情報や電源の供給状況などを確認や操作ができるプログラムです。

5. CMOS

BIOSの設定情報を記憶するICチップです。

6. バッテリー

BIOSの設定情報を保持し、時計を動作させます。ボタン電池が電力を供給している場合が多いため、ボタン電池の電力が切れると不具合に繋がるため定期的な交換が必要です。

7. ATX電源コネクタ

マザーボード本体に電力を供給するための差込口です。マザーボードによっては、供給できる電力の兼ね合いでピン数が増減するため、電源が対応しているか確認する必要があります。

8. スピーカー

マザーボードのエラーをビープ音で知らせます。

9. IDEコネクタ/SATAコネクタ/M.2スロット

ハードディスクやSSD、光学ドライブなどの外部記憶装置を接続するためのコネクターです。このコネクタの数によって、外部記憶装置の接続可能数が決まるため将来的な外部記憶装置の増設も見越して余裕を持ったマザーボードを選んでおいた方が良いです。

10. PCIスロット

拡張用のカードを差し込むことで様々な機能を増やすことができるスロットです。

11. PCI Expressスロット

拡張用のカードやビデオカードを接続するスロットです。PCIスロットよりも転送速度が高速である為、SSDの接続スロットとしても使用されます。ビデオカードの形状によっては周辺の部品と干渉してしまい全てのスロットが使えない可能性があるため、ビデオカードの寸法には注意が必要です。

ATXマザーボードのその他情報

1. ATXマザーボードの規格

ATXマザーボードは、ATX規格によりサイズが規定されています。ATXマザーボードは、どんな製品であっても305 × 244mmのサイズとなっています。

これより小さいサイズでPCを構築する場合には、Micro-ATXやMini-ATX規格のマザーボードを利用することになります。それぞれ、Micro-ATXの基板サイズは244×244mmとなっており、Mini-ATXの基板サイズは170×170mmとなっています。

基板のサイズが小さいほうがPCI Expressスロットやメモリスロットなどの数が少なく設定されているため、拡張性は低くなります。

ATXであれば、PCI Expressスロットが4~7つ程度、メモリスロットが4~8つ程度搭載されていることが一般的ですが、Mini-ATXの場合はPCI Expressスロットが0~1つ程度、メモリスロットは1~2つ程度しか搭載されていません。将来的な拡張性も見越してマザーボードを選定する必要があります。

2. ATXマザーボードのチップセット

ATXマザーボードには、各社が開発したチップセットが搭載されています。大きくは、インテルが開発したIntel CPUのチップセットとAMDのAMD CPUチップセットの2種類から選択することになります。

チップセットによりどちらの会社のCPUを装着できるかが決まるため、マザーボードを選ぶ際にはチップセットを必ず確認する必要があります。マザーボードのチップセットは後から交換することはできず、マザーボードに固有のものとなるため注意が必要です。

チップセットは、CPUで処理したデータをメモリやディスクドライブ、拡張スロット等へ連絡する役目を担っています。そのため、ブリッジと呼ばれることもあります。チップセットの世代によりマザーボードおよびPC全体の性能が大きく変わるため、マザーボードを購入する際にはどの世代のチップセットを搭載しているかを確認する必要があります。 

参考文献
https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/gaming/resources/how-to-choose-a-motherboard.html
https://support.lenovo.com/jp/ja/solutions/ht061228

測定ゲージ

測定ゲージとは

測定ゲージ

測定ゲージとは、基準の寸法、角度、形状などをもつ測定具の総称です。

主に製造工程において、加工した寸法などの良否を素早く判断するために使います。測定ゲージは、ノギスやマイクロメータといった寸法を計測するものではありません。あくまでも検査する対象の寸法が、規格の範囲内であるかを判別するための道具です。

計測器を用いて寸法を測定する作業は、検査作業者の熟練度によって、作業スピードや検査品質にバラツキが生じます。しかし、測定ゲージを用いれば、容易に製品の良否判別をすることができます。作業者の技量の差が出にくく、扱いも容易です。

また、測定ゲージは社内現場での検査はもちろん、異なる会社間での品質管理にも使用可能です。社内ゲージと同じものを協力会社へ渡し、ゲージで管理するように伝えるだけで、両社の間で同じ寸法管理をすることができます。

測定ゲージの使用用途

測定ゲージの使用場所は、工業製品の製造ラインです。製造工程の途中や最終検査において、加工した部位や製品の機能上大切な寸法が、規格内に入っているかどうかを素早く検査するために使われています。

また、後述するピンゲージスキマゲージなど、複数のサイズがセットになった測定ゲージであれば、非常に狭い隙間や比較的小さな穴の内径の大きさについて、おおよその値を確認することも可能です。

測定ゲージの原理

測定ゲージは基準となる寸法に仕上げられています。基準となる寸法で仕上げられた測定ゲージを検査する部位にあてたり通したりすることによって、検査対象部位の寸法が測定ゲージに対して、大きいのか小さいのかを判別することが可能です。

例えば、直径がφ5mmの大きさが必要な加工穴に、φ5mmで仕上げられた測定ゲージが通過できれば、その加工穴の直径はφ5mm以上の大きさがあると判断することができます。さらにφ5.1mmの測定ゲージが通過しなければ、その加工穴の内径はφ5.1mm以下であると判断できます。

製造現場で加工した部位と寸法が明らかになっている測定ゲージを比較することによって、ノギスなどの測定器を使用せず、仕上がり寸法が規格範囲内であるかどうかを素早く判断することが可能です。

測定ゲージの種類

測定ゲージには様々な種類があります。主に以下のような測定ゲージがあります。

  • ブロックゲージ:測定機器類の精度点検などに使用する「長さ」の基準器。
  • スキマゲージ:2面の間にあるすき間の寸法を測定するゲージ。
  • 溶接ゲージ:溶接に関連する多種の測定ができるゲージ。
  • アングルゲージ:角度検査に使用するゲージ。
  • ピッチゲージ:ねじのピッチを確認するゲージ。
  • フィラーゲージ:狭いすき間の寸法を測るためのゲージ。
  • テーパーゲージ:すき間や穴径測定をするゲージ。
  • センターゲージ:旋盤ねじ切り加工する際に、バイト刃形の角度検査するゲージ。
  • ラジアスゲージ:製品のR部 (曲線部) の寸法検査に使用するゲージ。
  • C面測定ゲージ:C面取り加工後のC面の大きさを測定するゲージ。
  • ピンゲージ:穴径を測定するためのゲージ。

測定ゲージのその他情報

測定ゲージ取扱上の注意点

測定ゲージに限らず物質は、温度によって寸法が変化します。測定ゲージを扱う際には、測定ゲージが極端に熱せられていないか、冷却されていないか確認しましょう。測定ゲージだけでなく、検査対象についても同様です。

また、繰り返し使う検査では、長期間の使用によって擦れる部分に摩耗が生じる可能性があります。測定ゲージも測定器同様に定期的に校正し、寸法の正確さの確認が必要です。

参考文献
https://www.sokutei-gijyutu.com/product/pin-gauge/
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0065.html

恒温恒湿器

恒温恒湿器とは

恒温恒湿器 (英: Thermo-hygrostat) とは、温度と湿度を一定に保つための装置やシステムです。

現代産業の各分野において生産品の耐久性、信頼性実験に必要な装置です。必要条件以上の過度な気候状態を作って一定時間試験することで、正常な条件での耐久性を予測する目的で主に使用されます。

恒温恒湿器の使用用途

恒温恒湿器はさまざまな使用用途で利用されます。以下に一般的な使用用途の一例です。

1. 実験室や研究施設

科学研究や実験において、特定の温度と湿度条件を制御する必要があります。恒温恒湿器は、生物学や化学などの実験室で使用され、正確な環境条件を提供します。

2. 製造業

特定の製品や材料の製造プロセスにおいて、一定の温度と湿度が必要な場合があります。食品加工や医薬品製造、電子部品の製造などで恒温恒湿器が使用されます。

また、製造ラインのみではなく、開発段階や品質保証にも役立つ装置です。具体的には、原材料の品質劣化試験や食品の品質試験に使用されており、自動車産業では部品の劣化試験に使用されることもあります。

3. 倉庫や保管施設

特定の商品や物品を保管する際に、温度や湿度の制御が必要な場合があります。恒温恒湿器は製品の品質を維持し、腐敗や劣化を防ぐために使用されます。食品やワインの保管、博物館の展示品の保護などがその一例です。

4. 医療施設

病院や医療機関では、一定の温度と湿度の環境が必要な場合があります。手術室や室内感染管理など、清潔で安全な環境を確保するために恒温恒湿器が使用されます。また、植物や微生物培に使用される場合もあります。

恒温恒湿器の原理

恒温恒湿器は、加冷温や除加湿を行う機器と系内循環機器、制御機器で構成されています。温度・湿度調節器で必要な設定を入力すると、温湿度センサーが温度・湿度の変化を察知します。

冷凍機やヒーターなどが必要に応じて加湿と除湿をすることによって、微細かつ正確に温度と湿度を制御します。また、内部の温湿度分布が均一に維持できない場合、シロッコファンなどの系内循環機器で空気を循環させて安定した環境を作ることが可能です。

制御機器には、多言語表示によるグローバル対応の製品などが存在します。LANポートに接続して機器内部状態監視や試験終了指令などを実行できる機能がある製品などさまざまです。異常時は警報内容をメール送信することも可能であり、恒温恒湿器と離れた場所にいながら遠隔監視できる機能も採用されています。

恒温恒湿器の種類

恒温恒湿器の温度調整範囲は-20℃~180℃ 、湿度調整範囲は5~98%rh、庫内容量は120~1,000Lなどさまざまなバリエーションが存在します。温度範囲や湿度範囲、庫内容量に応じて選定することが可能です。

また、恒温方法などの違いによっていくつかの種類が存在します。以下は恒温恒湿器の種類一例です。

1. スチーム恒温恒湿器

スチーム恒温恒湿器は、加湿器として最も一般的に使用されるタイプです。水を加熱して蒸気を生成し、空気中に放出することで湿度を上げます。ファンや送風機を使って空気中に拡散させます。

一般的には、加熱要素 (ヒーター) と水タンクが内蔵されています。ヒーターは水を加熱し、水が蒸気に変わるときに発生する熱を利用して蒸気を生成します。水を直接加熱するため、効率的に蒸気を生成します。そのため、比較的短時間で湿度を上げることが可能です。

一部のモデルには安全機能が備わっており、水が不足した場合や過熱した場合に自動的に停止する仕組みがあります。これにより、使用時の安全性が向上します。

2. 乾燥恒温恒湿器

湿度を下げるために、冷凍サイクルまたは脱湿材を使用します。冷却サイクルは空気を冷やし、その結果として水分を凝結させます。凝結した水分は取り除かれ、乾燥した空気が放出されます。

脱湿材は湿気を吸収し、湿度を下げるのが役割です。乾燥した脱湿材は定期的に取り外されるか、再生されて湿気を取り除かれます。

一般的な恒温恒湿器とは異なり、乾燥恒温恒湿器は湿度を上げるための加湿機能を持たない場合があります。

参考文献
https://www.espec.co.jp/products/env-test/csh/

光沢計

光沢計とは

光沢計

光沢計とは、物体の表面の光沢を測定する装置です。

別名グロスメーターといい、多くのメーカーでハンディタイプのものが販売されています。鏡面光沢度と呼ばれる正反射方向に反射される光の強さを測定する方法が代表的です。

製品の見た目の印象は、同じ色のものでも光沢が違うと印象や色味が変わって見えることがあるので、品質管理が難しいのです。しかし、光沢計を使うことで物体の表面をのつや、輝きをのような人間の感じる知覚を物理的に定量化することができます。

光沢計の使用用途

光沢計は塗膜、めっき皮膜、プラスチック、ほうろう、タイル、紙などの多くの素材の表面測定に使われますが、表面が平滑でないものやメタリック塗膜の表面には適していません。屈折率n=1.567のガラスの反射光を基準として試料の反射光との比で示し、Gs(θ)で示されます。

θは光の入射角を示し、20°・45°・60°・75°・85°がJISで規定されており、試料の表面によって反射角が異なります。記録方法についてJISで規定されている単位は%もしくは数値のみ、入射角を記録し、装置名を記載するように規定されているので、「Gs (60°) =42% ○○製○○形光沢度計」という形になります。

光沢計の原理

光沢計は平滑な試料面を0°とし、入射光をθ (= 20°・45°・60°・75°・85°) で偏光性のない光源から入射し、正規反射した反射光をθ’を測定します。光源から出た光はレンズの位置で焦点を結ぶように調整されたスリットを通り、レンズで焦点を結び試料に照射され、試料面で反射した光は反射光受光部のレンズとスリットを通り受光器に入ります。

光源ユニットと受光器ユニットは試料面に対し対象であり、入射角θから入射した光はθ’で受光されます。光沢計の校正は、屈折率n=1.567のガラスに対し各角度の反射光を100とする方法です。その後試料に測定器をあて測定すると校正したガラスとの比が出ます。

表面が平滑でつやがあるときは反射光は強くなりますが、表面が粗いときは入射光が物体表面で乱反射 (拡散反射) を起こし反射光が弱くなります。入射光が60°のとき70超えで高光沢、10-70で中光沢、10未満を低光沢あるいはつや消しとなります。

光沢計の種類

1. 60度光沢計

最も一般的な光沢計であり、60度の角度で光を反射させて光沢を測定します。一般的に、塗料、プラスチック、皮革、紙などの表面の光沢を測定するのに使用されます。

2. 20度光沢計

主に鏡面仕上げなどの非常に高い光沢を持つ表面の測定に使用されます。20度の角度で光を反射させて光沢を測定します。

3. 85度光沢計

主にマットな表面や塗装の仕上げなど、光沢が低い表面の測定に使用されます。85度の角度で光を反射させて光沢を測定します。

4. 三角測色光沢計

光沢と同時に色の測定も行える光沢計です。表面の色と光沢の関係を評価することができます。

光沢計の選び方

光沢計を選ぶ際は、下記のポイントを確認する必要があります。

1. 測定範囲

光沢計は、測定できる光沢の範囲が異なる場合があります。使用する材料や製品の光沢の範囲に合わせて、適切な測定範囲を選ぶことが重要です。

2. 解像度

解像度は、光沢の微細な変化を検出する能力を示します。高い解像度の光沢計を選ぶと、より正確な結果が得られます。特に、微細な表面の変化や薄いコーティングの光沢測定には高い解像度が必要です。

3. 操作性

光沢計の使いやすさも重要なポイントです。操作パネルやボタンが直感的で分かりやすく、操作が簡単なモデルを選ぶと便利です。また、データの読み取りや保存方法も考慮し、後工程も考えた選定が必要です。

4. 機能性

光沢計にはさまざまな機能があります。必要な機能を選ぶことで、より便利に測定作業を行えます。例えば、統計データの取得やグラフ表示機能、複数の測定角度への対応など、特定の要件に合わせた機能を選ぶことができます。

5. メンテナンス性

光沢計は正確な測定結果を維持するために定期的なメンテナンスが必要です。メンテナンスの手間を考慮し、長期的な運用を見越して適切な機種を選ぶことが重要です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/66/10/66_10_1067/_pdf

位相差顕微鏡

位相差顕微鏡とは

位相差顕微鏡

位相差顕微鏡とは、光学顕微鏡の1種で、光の位相差をコントラストに変換して観察する装置です。

通常の光学顕微鏡では、試料中の各部位がもつ光の反射スペクトルや吸収スペクトルの違いが明暗や色の違い (コントラスト) として観察されます。しかし、生体細胞や微生物、細菌などの無色透明に近い物質を観察する場合は、これらのコントラストがほとんど生じないため、形状などの情報を得ることができません。

無色透明の物質であっても、周囲と屈折率が異なれば、境界部で光の回折が生じます。位相差顕微鏡は、回折した光と物質中を直進した光の位相差を利用して明暗のコントラストをつけ、無色透明物質の観察を可能にしています。

位相差顕微鏡の使用用途

位相差顕微鏡は、生物学や医学分野において培養細胞の観察や臨床検査などに広く用いられています。歯科医院における歯周病細菌検査は、一般市民にとって身近な用途です。患者に自身の口腔細菌の様子を知ってもらうことで、口腔ケアに対するモチベーション向上に役立っています。

位相差顕微鏡を用いれば、試料を染色する手間がかからず、生きたままの細胞の観察が可能です。通常の光学顕微鏡で無色透明の細胞などを観察する場合、試料を染色して観察する手法が取られますが、この方法には染色の手間がかかることと、生体細胞が死滅してしまうという欠点があります。

そのほか、位相差顕微鏡は有害物質である石綿 (アスベスト) の分析にも有効です。「JIS A 1481」に石綿の分析に用いる複数の方法が公定法として定められています。その中の1つが、位相差顕微鏡下で特定の屈折率を持つ浸液中の結晶に偏光を照射し、発生する色により石綿かどうかを判定するという手法  (分散染色法) です。

位相差顕微鏡の原理

位相差顕微鏡の光学系

図1. 位相差顕微鏡の光学系

位相差顕微鏡では、対物レンズと像面との間の直接光が通る位置にのみ位相板 (Phase plate) を入れて、直接光の位相を 1/4λ 進めたり 1/4λ 遅らせたりします。同時に、リング状のNDフィルターと呼ばれるフィルターを入れて直接光の強さを弱めますが、回折光はその位相も明るさも変化させません。

これらの操作によって、直接光と回折光の位相差が 1/2λ もしくは0となり、干渉し合うことで明暗のコントラストが生まれます。

光波の干渉

図2. 振幅をそろえた直接光と回折光の干渉

すなわち、回折光の発生する屈折率の急変部位は、位相差が 1/2λ のときは直接光と回折光が弱め合うよう干渉するため、暗く見えます。これがダークコントラストです。一方で、位相差が0のときは直接光と回折光が強め合うよう干渉するため、屈折率急変部位が明るく見えます。これがブライトコントラストです。

明視野と暗視野

図3. ブライトコントラストとダークコントラスト

位相差顕微鏡のその他情報

1. 光学顕微鏡の問題点

通常の光学顕微鏡では、観察対象である物質を透過する光の強さ (振幅) と色 (波長) のどちらか、あるいは両方の違いによって、物質を識別することができます。そのため、例えば無色透明の物質Aと接する無色透明の物質Bを通常の光学顕微鏡で観察しても、両者の違いや境界を認識することは容易ではありません。

透過する光の強さと色に違いがなく、AとBの間にコントラストがつかないためです。しかし、物質AとBの屈折率が異なれば、両者の境界で光は試料内部を直進する直接光と、経路が変えられた回折光とに分かれます。回折光は屈折率が急に変化する部分で発生するので、試料中の各物質の境界形状や内部構造に関する情報を含んでいます。

ここで重要なことは、試料内を直進する直接光に対して、回折光は波長 (λ) の4分の1 (1/4λ) の遅れが生じることです。このような、波長の数分の1のずれを位相差といいます。回折光が発生したとしても、直接光と比較して微弱なので、位相差は微小です。

そのため、直接光と回折光を足し合わせた結像光は直接光とほぼ同じような波の形になり、通常の光学顕微鏡では明暗のコントラストは生じません。

2. 位相差顕微鏡と微分干渉顕微鏡の違い

光の干渉を利用してコントラストを得る顕微鏡としては、位相差顕微鏡のほかに微分干渉顕微鏡があります。微分干渉顕微鏡では試料に入射する光を僅かに経路のずれた2つの偏光に分離し、観察対象を通過後の2つの光を干渉させてコントラストを得ます。

不可能な無色透明な物質の観察ができるという点は、位相差顕微鏡と同じです。しかし、位相差顕微鏡では試料の屈折率が急変する部分にコントラストが付くのに対して、微分干渉顕微鏡では試料の厚さや屈折率に勾配がある部分にコントラストが付きます。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/60/10/60_10_1030/_pdf/-char/ja
https://www.microscope.healthcare.nikon.com/ja_JP/resources/basic-knowledge/observation/phase-contrast
https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio1968/27/3/27_3_602/_pdf/-char/ja
https://www.olympus-lifescience.com/ja/support/learn/01/024/
http://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2007/200704kaisetsu.PDF
https://asahigrp.co.jp/atr/?page_id=807

リフロー装置

リフロー装置とは

リフロー装置とは、プリント基板と電子部品を接着させるために用いられる装置です。

プリント基板と電子部品の接着にははんだ付けが採用されており、基板に自動ではんだをペーストし部品を実装するための装置としてリフロー装置が用いられます。

リフローとは、表面実装部品を基板に実装する際に、基板上の必要な箇所にはんだをペーストし、はんだが載った箇所に電子部品を接着させる工程を言います。試作品を作る時などに用いられる小型のものから、量産品を作る時などに用いられる大型のリフロー装置があります。 

リフロー装置の使用用途

リフロー装置はプリント基板に自動ではんだをペーストし、表面実装用の電子部品を実装するための装置です。プリント基板に部品をはんだ付けする際、実際に人の手ではんだこてを用いて電子部品を接着させる方法がありますが、部品点数が多い場合や接着させる電子部品との接着面が極めて小さい場合は非常に難しい作業となります。近年は回路の高集積化により実装部品の小型化、実装部品の密集化が進み、人の手ではんだ付けすることで接着不足やショートが起こることも懸念されています。そのため、精密な表面実装が可能なリフロー装置を利用することで、確実な基板組み立てが可能になります。

リフロー装置の原理

まず、リフローの工程について説明します。プリント基板にはんだをペーストし、その上に表面実装部品を載せます。その状態で基板、はんだ、電子部品を加熱することで、自動的に基板と部品が接着されるという工程です。リフロー装置では、これらの工程を自動で行うことができます。

使用方法としては、まず部品実装の前にリフロー装置にあらかじめ必要なデータを入力しておきます。必要なデータとは、プリント基板のどの箇所にはんだを塗布するか、どの電子部品をどこに搭載するか、はんだを溶かすための温度は何℃必要かなどという情報です。また、はんだを溶かして接着する際、電子部品の耐久温度よりはんだ付けに必要な温度が高くなっていないか確認したり、何℃の加熱温度で加熱時間は何秒かを設定する必要があります。この設定を温度プロファイルと言います。製品によっては、温度プロファイルを自動でできるものもあります。

非常に便利な装置であるため、製造メーカーでの開発における試作品の作製などに重宝されております。 

参考文献
https://www.adogawa.co.jp/cat_mounting/5336.html

分光測定器

分光測定器とは

分光測定器

分光測定器とは、光を各色に分光し、それぞれの色の強度を測定する機器のことです。

光を波長ごとに分光させる素子としては、回折素子のグレーティングや屈折素子のプリズムなどが使われています。分光の制御がしやすいという点から、一般的な分光測定器には回折素子がよく使用されます。

遠赤外線のような長波長の光から、X線のような短波長の光まで広い範囲で分光測定器は使われます。しかし、測定する波長によって異なる技術が使われることもあり、1つの分光器では全ての波長を分光することが難しいです。

分光測定器の使用用途

分光器は様々な光の測定に利用されています。

1. 照明の品質管理

例えば、ランプやLEDライトの強度や波長を確認するために用いられます。このような光を用いた製品の製造過程では、必ず分光測定器を用いた品質管理がされています。

2. 素材の反射率・透過率測定

薄膜やガラス、プラスチックなどの素材の反射率や透過率を調べる際に使用されます。さらに、植物や薬品の光の吸収率測定も用途の1つです。物質の光学特性はそのものの特徴を理解する上でとても重要なので、多くの大学や研究機関で利用されています。

分光測定器の原理

光は波長の長さによって色が異なり、太陽光のように様々な波長の光が混ぜ合わさったものを白色光と言います。分光とは、このような白色光をそれぞれの波長の光に分解することです。分光方法としては、回折格子と屈折格子を用いた2種類の方法があります。

1. 回折格子を用いた場合

光の回折と干渉を利用して分光する方法です。まず、規則正しいスリットの入った金属やガラス板に光を入射させます。光の回折と干渉が起き、波長ごとに光が分解されます。

2. 屈折格子を用いた場合

物質の屈折率の違いを利用して分光する方法です。これにはよくプリズムが使われ、プリズムに白色光を入射すると、波長ごとに屈折率が違うので光が分解されます。

一般的な分光測定器は、単一の波長を測定するモノクロメータが設置されており、分光した光を測定します。ほとんどの場合回折格子が使われていて、波長ごとに反射角が異なるという現象を利用して特定の波長の強度を検出しています。

分解された光は、シリコンフォトダイオードやCCD・CMOSイメージセンサ等の光電子変換デバイスに入光します。光電変換で電気信号に変換した信号を順次読み出すことで、画像を読み出すことが可能です。

分光測定器のその他情報

分光測定器の注意点

分光測定器で測定する上で注意すべきパラメータには次に示すものがあります。

1. 波長範囲
波長範囲とは、分光測定器が光を取り込んで認識できる波長の範囲のことです。波長範囲が広い程様々な波長の光を検出できるため、用途の幅が広がります。測定可能な波長範囲はセンサーの種類で決まり、用途に合わせた分光測定器の選定が必要です。

センサーの種類としては、紫外可視領域はシリコンが使用され、近赤外領域はInGaAsセンサーが使用されます。

2. 分解能
波長分解能とは半値全幅 (英: Full Width Half Maximum) のことを指し、波長範囲における分光可能な波長の細かさのことです。波長分解能は、グレーティングの溝本数が多いほど上がります。しかし、波長範囲は狭くなり、工学系は暗くなるデメリットがあります。

スリット幅を狭くすることで、波長分解能を上げることが可能です。しかし、こちらも光学系が暗くなります。このように、波長分解能はグレーティング、スリット幅と関連しており、どの仕様を重視するかの検討が必要です。

3. 露光時間
露光時間とは、分光測定器が測定対象の光を取り込む時間です。露光時間を長くすることで、強度の低い光でもSN比を上げることが可能です。一方で、露光時間を伸ばすことでFPS (1秒あたりに測定する回数) が減少してしまうデメリットがあります。

参考文献
https://oceanphotonics.com/application/tec_oo_01.html
https://www.horiba.com/fileadmin/uploads/Affiliates/hor/HIP/Spectrum/index.html
https://www.jaima.or.jp/jp/analytical/basic/spectroscopy/uvvis/#

光学接着剤

光学接着剤とは光学接着剤

光学接着剤とは、光学部品を結合させて組み立てる際に使われる接着剤のことです。

光学レンズや光ファイバーなどの製造の際に使われます。UV硬化タイプの接着剤が主流で、これは紫外線を当てることで即座に固まるのが特徴です。

光通信が広がる中、光学を利用した機器は多く存在しています。そのため、光部品を接合することができる光学接着剤の需要は高まっています。

光学接着剤の使用用途

1. レンズ組み立て

光学レンズの組み立てにおいて、高精度な位置決めと接合が必要です。光学接着剤は、レンズ同士やレンズとフレームとの接合に使用され、光学的な性能を損なうことなく安定した結合を提供します。

2. 光ファイバーの接続

光ファイバーは高速通信やセンシングにおいて重要な役割を果たすため、接続部の品質が極めて重要です。光学接着剤は、光ファイバー同士の接続やファイバーとデバイスとの接続に使用され、低損失の信号伝送を保つ役割を果たします。

3. ディスプレイの製造

液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの製造において、薄いガラスやフィルムの接合が求められます。光学接着剤は、これらの薄膜素材の接合に使用され、高精細な画質と耐久性を実現します。

4. センサーの組み立て

光学センサーやカメラモジュールの組み立てにおいて、レンズとセンサーの正確な位置合わせが必要です。光学接着剤は、センサーとレンズ、カバーガラスとの接合に使用され、高い感度と信頼性を確保します。

5. 光学機器の修理

光学機器が損傷した場合に、精密な修理が必要となります。光学接着剤は、レンズや光学素子の再接合に使用され、損傷箇所の修復と光学特性の回復を可能にします。

光学接着剤の原理

光硬化は瞬時に行われるため、非常に高い精度で接合が可能です。また、液体の接着剤が固体化するため、接着部位の形状や微細な部分にも適用できます。

光学接着剤は光硬化による固化が均一であり、接着部位に歪みやバブルが発生しにくいのが特徴です。光学特性が損なわれることなく接合ができます。

1. 光硬化機構

光学接着剤は、特定の波長の紫外線 (UV) 光によって硬化する性質を持ちます。これは、光硬化剤と呼ばれる特殊な化学物質が接着剤中に含まれており、UV光のエネルギーを受けて化学反応が進行することによるものです。

2. 光エネルギーの活性化

UV光が接着剤表面に照射されると、光硬化剤がエネルギーを吸収し、高い反応活性を持つ状態になります。これにより、接着剤分子内での化学結合の形成が促進されます。

3. 架橋反応の進行

光硬化剤の活性化によって、接着剤分子間や接着剤と接着面の間で架橋反応が進行します。この架橋反応によって、接着剤は液体から固体へと変化し、強固な結合が形成されます。

光学接着剤の種類

1. アクリル系光学接着剤

アクリル系光学接着剤は、アクリル酸エステルベースの化合物からなるもので、高い透明性と耐候性を持つ特徴があります。硬化が速く、UV硬化のプロセスに適しており、光学部品やディスプレイの組み立てに使用されます。

2. エポキシ系光学接着剤

エポキシ系光学接着剤はエポキシ樹脂を基にしたもので、高い強度と耐化学性を持つ特徴があります。金属やセラミックスなどの硬い材料の接合に適しており、光学部品と機械部品の接合に使用されることがあります。

3. シリコーン系光学接着剤

シリコーン系光学接着剤はシリコーンポリマーを主成分とするもので、柔軟性と耐熱性に優れた特徴があります。熱膨張率が低く、温度変化に対して安定した接合が可能です。光学部品の保護コーティングやレンズの組み立てに使用されます。

4. UV硬化シリコーン系光学接着剤

UV硬化シリコーン系光学接着剤はシリコーンとUV硬化剤を組み合わせたもので、柔軟性と高い耐熱性を兼ね備えています。特に高温環境下での使用に適しており、光学部品の組み立てや液晶ディスプレイの接合に使用されます。

5. 液晶系光学接着剤

液晶系光学接着剤は液晶ディスプレイの製造に使用されるもので、液晶セルの異なる層や部品の接合に適しています。異なる液晶材料の光学特性を維持しながら接合を行うため、高品質なディスプレイの製造に欠かせない材料となっています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/79/8/79_735/_pdf
https://www.kaneda.co.jp/jigyou/adhesive_bond.html
http://www.macoho.co.jp/special/adhesive-seminar/type-of-adhesive2/
https://www.klv.co.jp/technology/uv-curing-mechanism.html

ポリイミドテープ

ポリイミドテープとは

ポリイミドテープのイメージ図

ポリイミドテープとは、テープ基材にポリイミドフィルムを使用した粘着テープのことです。

ポリイミドは熱分解する温度が高いことから、耐熱性と絶縁性に優れています。主な用途は、電子基板への耐熱マスキングや耐熱絶縁です。

ポリイミドとはイミド結合でポリマー化している高分子の総称ですが、米国デュポン社が芳香族ポリイミドを用いたポリイミドフィルムを商品化したのが最初の工業利用です。

多くのポリイミドテープ製品では、シリコーン系粘着剤を用いているため、剥がした後も糊が残りにくいという利点があります。

ポリイミドテープの使用用途

ポリイミドテープは、基材であるポリイミドフィルムの超耐熱・超耐寒性から、主に高温下や高電圧下において使用されます。耐熱性が求められる鉄道や航空部品の補修から回路の絶縁処理など、様々な場所で応用が可能です。

薄く半透明のものが多く、小さな部品や細かな電子回路の補修に適しています。再剥離が可能なため、微調整を繰り返す場面でも活用できます。一般的な使用方法としては、はんだ付け作業時における電子回路のマスキング、プリント基板の絶縁・断熱があります。

その他にも、薬品耐性が高い製品が多いため、強酸性の薬剤を塗布する際に固定したり、部分エッチングの際の保護したりする際にも使用される場合が多いです。

ポリイミドテープの原理

イミド結合とポリイミド

ポリイミドテープは、ポリイミドフィルムにシリコーン系粘着剤が塗布された構造の製品が大多数を占めます。一部、シリコーン残渣を防ぎたい用途を対象に、ゴム系粘着剤製品や、アクリル系粘着剤製品も存在します。

ポリイミドテープの特長は、これらポリイミドフィルムと粘着剤の性質によるものです。ポリイミドの方が粘着剤より耐熱温度が高いため、一般的に製品の耐熱温度は粘着剤の種類によって決まります。

ポリイミドの性質

ポリイミドとはイミド結合でポリマー化している高分子化合物の総称ですが、ポリイミドテープに用いられるのは芳香族化合物がイミド結合で高分子化した芳香族ポリイミドです。非常に強い結合をしているため、強度が高く耐熱性や絶縁性に優れています。熱分解温度は500℃以上です。

優れた耐熱性をもたらしている、分子構造上の具体的な特性は以下の通りです。

  • イミド結合を介して芳香族同士が共役構造を持っている。
  • 芳香族環が同一平面に位置することにより、分子鎖が互いに密に充填 (パッキング) されている。
  • 極性の高いイミド結合が強い分子間力を有している。

また、熱を加えた際の膨張率も低いため、高温下で使用してもさほど膨張せず、寸法の誤差を抑えることができます。

ポリイミドテープのその他情報

ポリイミドテープに使用される粘着剤

カプトン®の構造と特徴

ポリイミドテープで使用される粘着剤にはシリコーン粘着剤、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤などがあり、粘着力や耐熱性などそれぞれ特性が異なります。ポリイミドテープのうち、米国デュポン社のポリイミドフィルム「カプトン®」を使用した製品は、カプトンⓇテープと呼ばれることがあります。

1. シリコーン系粘着剤</br /> シリコーン系粘着剤とはシリコーンゴム成分とシリコーンレジン成分からなる粘着剤のことです。シリコーンゴムは、それほど粘着性が高くないものの、耐寒性、耐熱性に優れています。そのため、使用温度領域が-60℃~250℃と幅広いのが特長です。

シリコーンレジンは、シリコーンゴムの粘着性を補う粘着付与剤成分です。シリコーンゴム成分とシリコーンレジン成分の構成比を変化させることで、必要な粘着特性が得られます。元々の特性から更に耐熱性を向上させるため、過酸化ベンゾイルなどの架橋剤も使用されます。

シリコーンゴムやフッ素樹脂にも粘着することが可能で、耐水性や耐薬品性にも優れています。強酸性の水溶液に晒される場所で使用することもできます。また、空気を抜きやすいので貼る際に気泡が入りにくいのが利点です。再剥離性にも優れているため、糊残りせずに剥がすことができます。

2. シリコーン系以外の粘着剤
数は多くないながらも、アクリル系やゴム系の粘着剤を使用したポリイミドテープも存在します。シリコーン系粘着剤より耐熱性では劣るものの、シロキサンガスやシリコーン残渣によるはんだ付け不良を防ぎたい場合などに使用されます。電子部品のリフロー時のマスキングや、仮固定、部品・レンズの保護、部品搬送などの際に用いられます。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/c-23361/#
https://tape-omakase-navi.com/column/post-340/
https://www.tanimura.biz/dictionary/polyimide.html
https://www.neion.co.jp/blog/useful/adhesive#:

クロスローラーベアリング

クロスローラーベアリングとは

クロスローラーベアリングとは、内輪と外輪の間にローラーを直交させて配列した軸受のことです。

円筒形のコロを直交させて90°の角度で交互に配列しているため、高い回転の精度を維持したうえで、同時にあらゆる方面からの荷重を支えることができます。クロスローラーベアリングは、剛性が高いのが特徴で、通常のローラーベアリングを2個使用するところを、1個で済む場合が多いです。

クロスローラーベアリングの使用用途

クロスローラーベアリングは、高い剛性があり、省スペース化が可能なため、様々な用途のロボットなどの部品として用いられています。それぞれの特徴を活かした使用用途は、以下の通りです。

1. 剛性が高い

高い剛性を活かした使用用途として、産業用や工業用のロボットなどが挙げられます。具体的には、様々な動作を組み合わせて動く溶接ロボットです。また、工作機械の旋回部などに使用されることもあります。

2. コンパクトかつ精密

コンパクトかつ精密という特徴を活かした使用用途として、軽量化が求められる人型ロボットや農作業・介護・物流用のロボットスーツの関節部分、精密さが要求される計測機器及び医療機器などが挙げられます。また、小型で精密な動きが必要なIC製造装置などの用途もあります。

 

その他、航空・宇宙産業の最先端分野なども、使用用途の一つです。

クロスローラーベアリングの原理

一般のベアリングは、内輪と外輪の間にボールやローラーを入れる構造ですが、クロスローラーベアリングは、円筒形のローラーを使用し、90°の角度で交互に向きを変えて配列します。この構造により、様々な方向の負荷に対して荷重を支えることができます。また、接触面の面積が増えるため、より大きな負荷を支えることが可能です。

クロスローラーベアリングを回転テーブルに使用するという例で原理を説明します。テーブルのモーメント剛性を上げるために、通常のベアリングの場合は2個のベアリングを極力離した位置に設けて、作用点距離を大きくします。一方で、クロスローラーベアリングを使用すれば、単体で作用点距離が大きいため、非常にコンパクトで高い剛性を得ることが可能です。

クロスローラーベアリングのその他情報

1. クロスローラーベアリングの注意点

高精度な回転機構はベアリングだけでなく、取付部品の加工精度や組付け方法にも注意が必要です。

取付け部の剛性
クロスローラーベアリングのハウジングや押えフランジの設計では、部品の剛性や押えフランジの締め付けボルトサイズ、本数などを考慮する必要があります。強度が不足するとベアリングが変形したり、内部のローラー接触が不均一になることで早期破損の原因や、回転精度の悪化になります。

ハウジングの設計
ハウジングは、肉厚をベアリング断面高さの60%以上になるように設計します。また、ベアリングの取外し用に抜きタップというねじ穴を加工しておくと、ベアリングに負荷をかけずに取り外すことができ、取外し時のベアリング破損を防ぐことができます。

押えフランジの設計
押えフランジの肉厚は、ベアリング厚みの50~120%で設計し、フランジとハウジングの隙間は0.5mm程度にします。押えフランジの材質は鉄系が推奨されています。

締め付けボルト
締め付けボルトのサイズと本数は、ベアリング外径寸法によって決定します。例えば、外径100mmから200mmのベアリングの場合、フランジ締め付けボルトはM4からM8サイズを使用し、12本以上とされています。

押えフランジを取り付ける際には、ボルトの締め付け順序も重要です。ベアリングを均等に締め付けるため、対角にあるねじを少しずつ締めていき、締め付けが均一になるように組み立てていきます。

2. クロスローラーベアリングの与圧

クロスローラーベアリングは、通常のボールベアリングと同様に与圧をかけることが可能です。与圧をかけることで剛性が高くなり、回転精度が良くなりますが、回転摩擦が大きくなるため、回転動力の計算が必要になります。

与圧は通常、ラジアル隙間をマイナスにすることで与えます。与圧を与えたベアリングを取り付けるハウジングとシャフトの寸法公差はg5/H7が推奨されており、はめあいがしまりばめにならないように設定します。しまりばめになった場合には、与圧過剰で内部応力が高くなり、ベアリング破損の原因に繋がるため注意が必要です。

参考文献
https://www.ikont.co.jp/product/needle/ndl0803.html
https://www.thk.com/?q=jp/node/6727
http://www.h-precision.co.jp/technology/
https://www.ikont.co.jp/product/industry/robot/index.html