クロスローラーベアリングとは
クロスローラーベアリングとは、内輪と外輪の間にローラーを直交させて配列した軸受のことです。
円筒形のコロを直交させて90°の角度で交互に配列しているため、高い回転の精度を維持したうえで、同時にあらゆる方面からの荷重を支えることができます。クロスローラーベアリングは、剛性が高いのが特徴で、通常のローラーベアリングを2個使用するところを、1個で済む場合が多いです。
クロスローラーベアリングの使用用途
クロスローラーベアリングは、高い剛性があり、省スペース化が可能なため、様々な用途のロボットなどの部品として用いられています。それぞれの特徴を活かした使用用途は、以下の通りです。
1. 剛性が高い
高い剛性を活かした使用用途として、産業用や工業用のロボットなどが挙げられます。具体的には、様々な動作を組み合わせて動く溶接ロボットです。また、工作機械の旋回部などに使用されることもあります。
2. コンパクトかつ精密
コンパクトかつ精密という特徴を活かした使用用途として、軽量化が求められる人型ロボットや農作業・介護・物流用のロボットスーツの関節部分、精密さが要求される計測機器及び医療機器などが挙げられます。また、小型で精密な動きが必要なIC製造装置などの用途もあります。
その他、航空・宇宙産業の最先端分野なども、使用用途の一つです。
クロスローラーベアリングの原理
一般のベアリングは、内輪と外輪の間にボールやローラーを入れる構造ですが、クロスローラーベアリングは、円筒形のローラーを使用し、90°の角度で交互に向きを変えて配列します。この構造により、様々な方向の負荷に対して荷重を支えることができます。また、接触面の面積が増えるため、より大きな負荷を支えることが可能です。
クロスローラーベアリングを回転テーブルに使用するという例で原理を説明します。テーブルのモーメント剛性を上げるために、通常のベアリングの場合は2個のベアリングを極力離した位置に設けて、作用点距離を大きくします。一方で、クロスローラーベアリングを使用すれば、単体で作用点距離が大きいため、非常にコンパクトで高い剛性を得ることが可能です。
クロスローラーベアリングのその他情報
1. クロスローラーベアリングの注意点
高精度な回転機構はベアリングだけでなく、取付部品の加工精度や組付け方法にも注意が必要です。
取付け部の剛性
クロスローラーベアリングのハウジングや押えフランジの設計では、部品の剛性や押えフランジの締め付けボルトサイズ、本数などを考慮する必要があります。強度が不足するとベアリングが変形したり、内部のローラー接触が不均一になることで早期破損の原因や、回転精度の悪化になります。
ハウジングの設計
ハウジングは、肉厚をベアリング断面高さの60%以上になるように設計します。また、ベアリングの取外し用に抜きタップというねじ穴を加工しておくと、ベアリングに負荷をかけずに取り外すことができ、取外し時のベアリング破損を防ぐことができます。
押えフランジの設計
押えフランジの肉厚は、ベアリング厚みの50~120%で設計し、フランジとハウジングの隙間は0.5mm程度にします。押えフランジの材質は鉄系が推奨されています。
締め付けボルト
締め付けボルトのサイズと本数は、ベアリング外径寸法によって決定します。例えば、外径100mmから200mmのベアリングの場合、フランジ締め付けボルトはM4からM8サイズを使用し、12本以上とされています。
押えフランジを取り付ける際には、ボルトの締め付け順序も重要です。ベアリングを均等に締め付けるため、対角にあるねじを少しずつ締めていき、締め付けが均一になるように組み立てていきます。
2. クロスローラーベアリングの与圧
クロスローラーベアリングは、通常のボールベアリングと同様に与圧をかけることが可能です。与圧をかけることで剛性が高くなり、回転精度が良くなりますが、回転摩擦が大きくなるため、回転動力の計算が必要になります。
与圧は通常、ラジアル隙間をマイナスにすることで与えます。与圧を与えたベアリングを取り付けるハウジングとシャフトの寸法公差はg5/H7が推奨されており、はめあいがしまりばめにならないように設定します。しまりばめになった場合には、与圧過剰で内部応力が高くなり、ベアリング破損の原因に繋がるため注意が必要です。
参考文献
https://www.ikont.co.jp/product/needle/ndl0803.html
https://www.thk.com/?q=jp/node/6727
http://www.h-precision.co.jp/technology/
https://www.ikont.co.jp/product/industry/robot/index.html