ノイズカットトランス

ノイズカットトランスとは

ノイズカットトランス (英: noise cut transformer, special isolation transformer) とは、ノイズ障害を未然に防ぐことを目的としたノイズ防止素子です。

1960年電研精機研究所が開発した商標で、一般名称は障害波遮断変圧器やノイズ対策用トランスですが、ノイズカットトランスとも呼ばれています。ノイズカットトランスは、トランス型のノイズ防止素子を実用化したものです。

ノイズの元になっているものと、ノイズによって妨害されている側の電気回路を分離絶縁するので、防止効果が高いのが特徴です。また、分離絶縁形であるため、劣悪な電磁環境下でも機能を発揮できます。

ノイズカットトランスの使用用途

現代の多くの機器は高速化され、多機能であることが私たちの生活を便利にしています。これらの機器は微小電圧によって動作しているため、外部から侵入するノイズにより誤動作を起こす可能性があります。

雷やアマチュア無線、自動車、放電機器、家電製品、医療機器などは、外部からのノイズ侵入が多いです。ノイズカットトランスを使用すれば、これらのノイズを防止し、自らが発しているノイズそのものも外部の回路に漏らさないことができます。

ノイズカットトランスの原理

ノイズカットトランスは、ノイズが2次側に侵入することを抑制します。ノイズには、コモンモードとノーマルモードがあります。

1. コモンモード

コモンモードノイズの場合、低周波 (数10kHz程度) のノイズであれば、絶縁トランスでも多少弱めることができます。しかし、ノイズの周波数が上昇すると、トランスの1次側と2次側との間に存在する静電容量が原因となって、2次側へのノイズの侵入が増加します。

この場合、ノイズカットトランスでは、1次側コイルと2次側コイルの間に静電シールドを加え、それを接地することによって、ノイズの侵入防止が可能です。

2. ノーマルモード

ノーマルモードノイズは、そのまま2次側に出力されるので、本来トランス自体に抑制効果はありません。例えば、雷によるノイズの周波数は、一般機器の電源の周波数 (50/60Hz) と比較して非常に高い周波数です。

これを利用し、電源の低い周波数は通し、高い周波数は弱める特性をフィルタにもたせることで、ノーマルモードにおけるノイズを抑制できます。

ノイズカットトランスの構造

ノイズカットトランスの構造は、従来の絶縁トランスの構造に加えて、コイルトランスの外周に、多重の包覆電磁遮蔽板を設けたものです。さらに、コイル配置や磁心材質と形状を高周波ノイズの磁束が、コイル相互に鎖交しないように作られます。これにより、静電容量結合と電磁誘導によるノイズの伝達を防止できるので、ノイズ遮断に対して非常に優れたトランスです。

ノイズをカットしたい時、概ね行う対策は、ノイズの発生源を絶縁することです。実際の絶縁対策は、回路上でほとんどの場合、フォトカプラを使用します。そして、フォトカプラを使わない場合の対応方法が、絶縁トランスです。

コストやスペースの問題から、基板上のフォトカプラで対応した方が望ましですが、基板が使用できない場合は、絶縁トランスを使用します。しかし、絶縁トランスも万能ではなく、1次側巻線から来たノイズの影響を、2次側巻線も受けます。ノイズカットトランスを使用すれば、この問題の解決が可能です。

ノイズカットトランスのその他情報

ノイズカットトランスのアース

電気回路のグランドとグランドの間で、電位の異なる場所やグランドが接地不可の箇所でも、ノイズを防止する施策はあります。まず、ノイズカットトランスを設置することです。

それでも効果がない時は、ノイズカットトランスを設置している場所をグランドとできる限り広い面積で接触させます。入力ケーブルと出力ケーブルをノイズが遮蔽できるシールド線にして、このシールド線とノイズカットトランスのケースを広い面積で取り付ける方法も効果的です。ノイズ除去効果の向上が期待できます。

参考文献
https://www.denkenseiki.co.jp/noise-blog/2345/
http://www.totora.co.jp/other/noise_cut_kouka.pdf
http://www.totora.co.jp/other/noise_cut_earth.pdf
http://www.sanwa-denki.com/kaisha/denken/shiryou01.pdf

FPGA

FPGAとは

FPGA

FPGAとは「Field Programmable Gate Array」の略で、設計者がフィールドで論理回路の構成をプログラムできる論理回路を集積したデバイスのことです。

専用ロジックICは回路が固定されていて、一部を変更する際もマスクなどの再設計/再製作が必要になりますが、FPGAは設計者が自由に回路を変更できる論理回路であることが特徴として挙げられます。

従来よりその目的に合致したデバイスとしてPLDがありましたが、そのPLDを大規模化しかつ回路構成をSRAMに書き込むことで、何度でも回路変更が可能としたのがFPGAです。FPGAは米国ザイリンク社によって開発されました。

FPGAの使用用途

FPGAは、車載用機器やデータ・センサー、ディープ・ラーニングなどに使用されています。CPUによるプログラム処理では間に合わない高速論理演算を実行する場合、大規模な論理回路が採用されます。その為に専用LSI (ASIC等) を設計/製造することが対応策の一つですが、専用LSIは回路変更が困難です。

一方、FPGAでは回路設計者がアプリケーション回路を自由に設計できるとともに回路変更も容易なので、論理回路の開発コストを大幅に低減できます。この特徴によりFPGAは多様な分野で広く使われるようになりました。

1. 車載用機器

車載用機器に採用される理由として、開発サイクルの短縮、変更に対する柔軟性、要求品質に適合したデバイスの登場などがあります。その具体例として、運転支援システムの映像解析が挙げられます。

運転支援システムでは、車載カメラから得られるリアルタイムの映像信号を瞬時に解析してドライバーの運転操作を支援する必要があり、低遅延かつ高精度なアルゴリズムが必要とされています。これに対応するには高速な演算処理が必要ですが、それを満足しかつデバイス内の電子制御機能を必要に応じて変更できるFPGAが適しています。

2. データ・センター

データ・センターの分野でもFPGAの採用事例が増えています。特にCPUに代わって、AI、セキュリティ、認証、リアルタイム解析、ディープラーニング等の処理を担います。また、大規模データシステムのパフォーマンスを向上させるためにFPGAを採用するケースもあります。ネットワーク/ストレージシステムに対して広帯域幅かつ低遅延の接続性を提供することで、データ処理の高速化を実現します。さらにデータ圧縮、フィル処理などにも対応します。

3. ディープ・ラーニング

ディープ・ラーニングの世界では、日進月歩で最適モデリングが変わっていくために、FPGAの回路変更の柔軟さが極めて有効です。この用途の様にシステムを頻繁に向上させる使い方には最適なデバイスです。

FPGAの原理

FPGAはプログラム可能な比較的小規模の論理ブロックを格子状に配置し、その間に縦方向と横方向に配線路を設けた構造を基本としたLSIです。一つの論理ブロックは小規模ですが、多くのブロックを組み合わせることで大規模な回路を実現しています。

基本的な論理ブロックは、LUT (Look Up Table) とフリップフロップ、更に付加回路を追加して基本論理ブロックが構成されます。また、論理ブロックは、配線路に設けられたスイッチ・マトリックス (トランスファ・ゲート) によって任意に接続できます。

LUTはSRAMを利用します。スイッチ・マトリックスのON/OFFも、SRAMに書き込まれたデータにより制御されます。尚、SRAMは電源が切れるとデータが消えてしまうため、FPGAは電源を投入する際に外部から回路情報 (コンフィグレーション・データ) を読み込みます。

FPGAの内部構成は、基本要素である論理ブロックの他、内部配線路、クロック専用配線、乗算器 (DSP) 、I/O部、PLL、ブロックRAMなどです。これらはどのような回路パターンであっても配線しやすいように、網の目状に並んでいます。

FPGAのその他情報

1. 設計ツール

従来FPGAの設計には、RTL (Register Transfer Level) が設計言語として使用されてきました。設計者のRTLをもとに、FPGAベンダーが用意しているツールからFPGAに書き込むダウンロードファイルが生成されていました。

しかし、最近は高位合成コンパイラといわれるツールがFPGAベンダーからリリースされています。この高位合成コンパイラを利用することで、効率的な設計が可能になると同時に、回路の検証時間も減少するようになりました。其の結果製品開発の期間を短縮することに貢献しています。

現在、FPGAベンダーが提供している高位合成コンパイラは下記の3つです。

  • モデルベース (DSP) コンパイラ
  • HLSコンパイラ
  • OpenCLコンパイラ

FPGAを用いて回路検討する際には、通常評価ボードを使用します。その評価ボードは、半導体ベンダー、評価ボードのメーカー、受託設計業者など、様々な会社から販売されています。そのため、評価ボードの種類も非常に多く、技術レベルや目的に応じたものを選択することが必要です。代表的なメーカーとして下記の6つが挙げられます。

  • HiTech Global
  • BittWare
  • TUL
  • IOxOS
  • ポートウェルジャパン
  • ANVENT

2. 市場

グローバルインフォメーション社の2020年4月のレポートでは、FPGA市場は2020年の59億米ドルに対し、2025年は86億米ドルと予測しました。年平均成長率 (CAGR) は7.6%となる見込みです。詳細な数値は明らかにされていませんが、FPGA市場をテクノロジー・ノードで分類すると、2019年は28nm未満の製品構成比率が最大になったようです。

更に、低消費電力製品の登場などにより、2025年に向けても28nm未満の製品が高い伸びを示すとの予測を示しています尚、2020~2025年のFPGA市場を牽引する用途としては、クラウド・コンピューティングに向けたハイパフォーマンス・コンピュータや5Gネットワーキングなどが挙げられます。

参考文献
https://www.sbbit.jp/article/cont1/37659
https://www.fsi-embedded.jp/kumico/column/45/
https://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1710/11/news002.html
https://jp.mathworks.com/discovery/fpga.html
https://www.intel.co.jp/content/dam/altera-www/global/ja_JP/pdfs/literature/wp/mcu_to_fpga_design_guide.pdf
https://qiita.com/kannkyo/items/0927114c3fa2545e9d76
https://www.gii.co.jp/report/mama930818-fpga-market-by-configuration-low-end-fpga-mid.html

リニアサーボモーター

リニアサーボモーターとはリニアサーボモーター

リニアサーボモーターとは、回転軸を内蔵していない電気モーターのうち、機械制御に活用されるサーボ機構に用いる直線動作が可能なモーターのことです。

一般的なモーターは回転型の運動をするのに対して、リニアモーターは一般的に直線型の運動をします。リニアモーター自体は、リニアモーターカーなどで広く知られている駆動推進のための装置であり、サーボモーターはサーボ機構において位置、速度等を制御する用途に使用するモーターです。

これまで、産業機械や測定器の直動システムにおいて、回転型のサーボモーターが主流でしたが、近年は永久磁石から発生する磁束とコイルに流れる電流との作用 (フレミングの左手の法則) により動くリニアサーボモーターが注目されています。

リニアサーボモーターの使用用途

リニアサーボモーターの使用用途はさまざまです。特にサイズによって、使用用途は異なります。

1. 小径 (Φ4~12mm)

デスクトップタイプの装置に使われます。工業製品や生物バイオ関連などの観察用途が主です。高解像度化が進む画像とその画像処理が求められている分野では、シャフトモーターの高度な分解能が求められています。

2. 中経 (~Φ35mm)

このサイズは最も多く採用され高推力、高精度かつ高速であることが求められている分野、工作機械や半導体装置の各種位置決めや可動部などに広く使用されています。

3. 大径 (~Φ60mm)

その他、大きな加速推力が必要とされる特殊な機械に使用されます。

リニアサーボモーターの原理

リニアサーボモーターの直線的な動作は、磁石を軸としたシャフトとコイルが入った可動子から成り立つリニアモーターが、コイルに流れる電流と永久磁石から発生する磁束との作用、すなわちフレミングの左手の法則により推力が発生する原理を利用しています。

通常シャフトはステンレスでできたパイプの中に磁石を等間隔に詰め、可動子は、シャフトをの周りを覆うように巻かれた3相のコイルで構成されています。可動子はシャフトと接触せず、組み込まれても推力自体には影響はなく、取付けは簡単なことが特徴です。永久磁石から生じる磁気誘導束とコイルに流れる電流との作用によって推力が発生することで作動します。

シャフトを使用したモーターの特徴は、精度の高いリニアスケールを使用すると高精度の位置決めが可能であること、バックラッシュがないこと、コアがない状態であるためコギングがほとんど発生しないことなどです。なお、コギングとは、モーターにおいてシャフトと可動子との磁気的な引力が回転角度に依存して、細かく振動することを指します。

ねじやナットなどの機械構造を内部に持たないので、高速運動が可能です。運動精度が優れている一方で、固定されている側と運動する側が接触していないために剛性は低く、抵抗が大きい重切削には不適です。半導体などの電子部品や医療部品などの加工に使われている機器に使用されています。小型で、構造もシンプルであることが機器に組み込む際の利点です。

リニアサーボモーターのその他情報

1.リニアサーボモーターをアクチュエータに活用する際のメリット

昨今の高性能な工業機械で要求される項目に、高精度な加工と加工の高速化の両立があげられます。リニアサーボモーターが製品化される以前は、リニア動作用のアクチュエーターとして、回転型モーターとベアリングを構成要素とするボールねじの組み合わせで、回転方向の動力を直線方向の動力に変換していました。

従来手法では精度の向上と動作速度の両立が技術的に困難であり、メンテンナンスの頻度も多くなりがちなのです。しかし、リニアサーボモーターは非接触であるが故、高速動作に優れ、その位置決め精度も高精度化しやすく、メンテナンスの手間もいらない多くの利点を有します。

2.リニアサーボモーターをアクチュエータに活用する際の課題

リニアサーボモーターを工作機械に適用する場合の課題はその出力密度と制御性にあります。従来の回転型モーターとボールねじでの駆動と比較して動作の制御性が難しく、高い出力密度を確保するには高い技術力が求められます。

昨今のメーカーの技術革新により、これらの課題は克服され、徐々にリニアサーボモーターが工作機械や産業機器へ広く用いられるようになっています。

参考文献
https://www.pulsemotor.com/feature/shaftmotor2.html
http://www.taiyo-ltd.co.jp/kpl_jp/product/Catalogue/pdf/parker/Linea%20gijutsu.pdf

放射線測定器

放射線測定器とは

放射線測定器

放射線測定器とは、放射線の強さや放射線の量を計測する機器です。

放射線には主に5種類あり、それぞれ異なる原理で計測されます。また、計測する対象も空間などの放射線量を計測するものと、個人が累積して受けた放射線の量を計測するものがあります。

原子爆弾や核兵器、原子力発電所の事故などで怖いイメージがありますが、私たちが日頃暮らしている空間にも存在するものです。放射線測定においては、計測の対象とする放射線の性質によって、使用する計測器が異なります。

さらに、放射線量の高い場合、低い場合、あるいはアルファ線・ガンマ線・ベータ線・エックス線という放射線の種類によっても使用できる測定器が変わります。

放射線測定器の使用用途

1. シンチレーション式放射線測定器

シンチレーション式放射線測定器は、一般環境の空間放射線量率の測定に用いられます。また汚染源からの距離の変化で測定値が変動するため、汚染源がどこにあるのかという特定にも活用できます。

空間放射線量率とは、空間放射線の量を1時間あたりに換算したものです。また、空間放射線とは空間を飛び交っている放射線であり、宇宙から降り注いできるものや、自然界から発せられるものもあります。

空間放射量率の単位は、hGy/h (ナノグレイ毎時) です。Gy (グレイ) は人体を含む物質が吸収した放射線の量であり「吸収線量」とも呼ばれています。

2. GM (ガイガーミュラー) 管式放射線測定器

GM管式放射線測定器は、主にベータ線の測定に使われ、体表面汚染の程度の測定に使う測定器です。ガンマ線やエックス線の測定や、空間放射線量率にも使用可能ですが、精度はシンチレーション式に劣ります。

作業員等の衣服や体表面に放射性物質が付着しているかどうかを測定する際や、研究実験における核種の分析にも使用されます。

3. 電離箱式放射線測定器

電離箱式放射線測定器は、空間放射線量率の測定に用います。ただし、電離箱式は強い放射線しか検知できないため、CT機器やレントゲン機器などエックス線を使った装置を製造する現場やそれらを使用している医療現場、原子力の作業現場など放射線の多い環境で使用する測定器です。

4. 個人線量計

個人線量計は装着した人が一定の期間中、どの程度放射線に被曝しているかを、累積量として計測します。個人線量計が使われるのは、放射性物質を扱う施設です。

原子力発電所など、放射線被曝の可能性が高い区域は管理区域として指定されており、立ち入る際には個人線量計を装着して、立ち入った間の被ばく線量を計測することが、法律によって義務付けられています。

放射線測定器の原理

放射線は物質を通過する際に、物質の相互作用を起こします。放射線測定器の原理は、放射線と物質間における相互作用を利用しています。

GM管式放射線測定器や、電離箱式放射線測定器では、放射線と気体間との電離作用を利用しています。電離作用とは、放射線が物質中の原子核の電子を、外側にはじき出す作用のことです。GM管式放射線測定器や電離箱式測定器では、電離作用によって生じた電流を電気信号へと変換することで、放射線量の値を算出します。

シンチレーション式放射線測定器では、物質間の励起作用を利用します。励起作用とは、放射線が原子核の電子にエネルギーを与えることで外側の軌道にはじき出す作用のことです。励起作用では、活性化状態で高エネルギー状態である励起状態から、安定な基底状態に戻る際に、もっているエネルギーを光として放出しますが、この際にからシンチレータ発せられる微弱な光を、光電子増倍管によって増幅し電気信号に変換することで放射線を計測します。

シンチレータはエックス線とガンマ線に反応して発光する物質で、放射線の測定には一般的にNal ヨウ化ナトリウム や、Csl ヨウ化セシウムが用いられています。個人線量計でも蛍光の原理が用いられており、個光刺激ルミネッセンス線量計や、蛍光ガラス線量計、電子式線量計と呼ばれるものがあります。

放射線測定器のその他情報

放射線の単位

放射線に関するニュースでは、普段聞きなれない単位が用いられることがあります。主な単位は、Bq (ベクレル) とSv (シーベルト) です。

ベクレルは、1秒間に崩壊する原子核の数を示したものであり、放射線物質が放射線を発生する能力を表します。一方でシーベルトは、人体が受けた放射線による影響の度合いを示すものです。2つの単位は放射線を発生する側と、放射線を受ける側で表したものになります。

参考文献
https://www.daitoku-scale.co.jp/magazine/9901281
https://www.keisokuten.jp/static/sp_rm.html
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h28kisoshiryo/h28kiso-02-04-02.html
https://www.jemima.or.jp/tech/6-03-02-06.html

電位計

電位計とは

電位計

電位計とは、回路の2点間の電位差によって、電位や電圧などを正確に計測できる機器です。

帯電した導体間の静電引力や静電反発力を利用することで、回路から電流を流しこまずに計測可能です。電位計の代表的な形式として、象限電位計と振動容量電位計が挙げられます。

象限電位計は金属製の可動片(4つに分割された円板間が針金でつり下げられている) によって測定し、電位のほかに微小電流、低力率 (供給電力中の消費電力の有効利用率が低いことの指標) などの測定にも利用可能です。

振動容量電位計は、入力と並列の電気容量を変化させることで直流の入力を交流に変換した後、更に増幅してその出力を読取るという仕組みです。しかし、取扱いに技能を必要とするため、近年ではデジタルマルチメーターが広く使われています。

電位計の使用用途

電位計は、通常の電圧計で評価が困難な場合によく用いられます。具体的な用途は、以下の通りです。

  • 内部の抵抗が高い電源における起電力を測定する場合
  • 結晶体、摩擦電気など圧電気のように高電圧であるものの電流がとれない場合
  • 電流を流せても陽極と陰極の分極が生じて、起電力の正確な値が測定できない場合

電位計は、一般的な電圧計と比較すると入力抵抗がKΩオーダーと非常に高いです。そのため、放射線や静電気、絶縁材料などの分野で電位、絶縁抵抗、電荷、微小電流の測定に使用されています。

電位計の原理

電位計は、静電気を計測する表面電位測定器の場合、静電誘導現象を用いて帯電した物体からの誘導電荷を電流に変換し、交流電圧値から帯電電位を測定しています。

表面電位測定器の測定部である表面電位のセンサは、静電誘導現象を利用しています。静電誘導現象とは、帯電した物体を導体に対して近づけた際に、帯電した物体に近い側に帯電した物体とは逆の極性の電荷が引き寄せられる現象のことです。

電位計において、静電界強度 (電場の強さを示す値で、帯電物体の帯電電位に比例する) を検出電極が受け取ると、誘導電荷が生じます。この静電界強度を振動電極で周期的に変化させると、誘導電荷も同調して周期的な変化をし、検出電極からアース(接地極)に変位電流が流れます。この際に流れた電流を抵抗により交流電圧信号に変換することで、帯電している物体の帯電電位を測定可能です。

測定される値は、距離、物体の大きさ、環境条件 (温度・湿度など) に影響をうけるため、これらの因子を一定にして比較検討を行う必要があります。

電位計のその他情報

1. 人体電位測定器について

電位計の中でも、特に人体の電位を正確に測定するための機器が、人体電位測定器です。人体電位測定器を用いると、測定した電位の値をもとに、作業者が持っている電子デバイスの帯電や工具類からの放電電流により、電子機器が破壊するかどうかを判定できます。

また、人体電位測定器により、リストバンドや静電マット、静電靴等の静電気対策がどの程度人体の電位を低減可能か評価することも可能です。

2. 酸化還元電位計の注意点

電位計の中でも酸化還元電位計の場合は、電極の中の塩化カリウムが析出し、先端部の穴をふさいでしまうため、電極の先端部を乾燥させないよう注意が必要です。水を平均化させるために、電極で水をかきまぜながら計測します。

仮に酸化還元電位計の数値が異常を示す場合は、水アカや酸化皮膜などの付着などが原因である可能性が高いです。水アカがセンサに付着した時は、先端部を柔らかいブラシのようなもので軽くこすって水道水で洗い流します。

それでも酸化還元電位の数値が異常を示す場合は、中性洗剤を希釈したものを柔らかいブラシなどにつけて洗うと良いです。酸化皮膜がセンサに付着した際は、検知極研磨剤を使う必要があります。

輸送中の揺れで酸素が発生するため、購入したばかりでも酸化皮膜ができることがあります。また、きれいな水を測定する場合は、酸素量が多いため酸化皮膜の形成に注意が必要です。

参考文献
https://kotobank.jp/word/%E9%9B%BB%E4%BD%8D%E8%A8%88-102045
https://faq01.mitsubishielectric.co.jp/faq/show/6107?category_id=406&site_domain=default

https://ureruzo.com/orp-info.htm

高周波リレー

高周波リレーとは

高周波リレーとは、高周波信号を切り替える素子のうちの1つです。

高周波リレーは一般にコネクタをもたないため、はんだ付けを行って使用され、高周波特性は基盤の影響を大きく受けます。また、リレーを高周波回路で使用する場合、アイソレーション (接点が開いている場合の接点間 (回路間) の信号の漏れ) と、インサーション・ロス (接点が閉じている場合の信号の損失) という問題があります。

高周波リレーの使用用途

高周波リレーは、高周波回路と呼ばれる回路を有する機器に使用されています。高周波の信号を制御するためには、普通のリレーではなく、高周波に特化したリレーが必要です。

例えば、携帯電話基地局、放送機器、計測機器、無線機などが挙げられます。また、家庭内にも広く普及している無線LANやBluetoothも用途の1つです。いずれも、各種機器の内部における信号をスムーズに切り替えるという役目を担っています。

高周波リレーの原理

高周波リレーは、一般的なリレーと同様の構造をしています。

1. リレーの原理

リレーでは、鉄芯に巻かれたコイルに微小な電気が流れることで、電磁石の働きで鉄片が引き寄せられ接点同氏が接触し、回路がつながることで電源から直接、電装品へ大きな電気を流すことができます。端子間の電気が遮断されると、コイルに発生していた磁場が消滅し電装品の動作が停止する仕組みです。

高周波回路でリレーを使用する場合は、アイソレーションとインサーション・ロスが問題になります。

2. アイソレーション

アイソレーションは、リレーオフ時の出力端子間の抵抗に相当します。高周波ではリレーがオフ状態であっても、信号の漏れが発生します。アイソレーションは、この信号の漏れの度合いを示すパラメータです。

周波数が高くなると漏れが大きくなり、アイソレーションの値自体は小さくなる傾向があります。回路間での混信の原因になります。

3. インサーション・ロス

インサーション・ロスは挿入損失とも呼ばれ、接点が閉じている時に発生する接点間での信号損失を指します。周波数が高くなると接点間 (回路) での信号の損失が大きくなることで、正確に信号の伝達が不可能になり、発熱の原因につながります。

つまり、信号の周波数が高くなった際にも、接点が開いている際には接点間での信号の漏れが少なく、接点が閉じている時に信号の損失が少ないことが重要です。

4. リターン・ロス

信号経路の途中でインピーダンスが変化する箇所があると、信号の一部が受信側まで到達せずに送信側に戻る反射と呼ばれる現象が発生します。

信号反射の程度をリターン・ロスと呼び、入力電力と反射電力の比を用いて表します。反射の程度を示す他の指標としてVSWR (Voltage Standing Wave Ratio) があります。VSWRの値は、1に近いほど反射が少なく、良い特性であるという意味です。

高周波回路に使用されるリレーには、一般的なリレー特性以外に高周波特性が必要とされるため、上記のようにアイソレーションが大きく、インサーション・ロスが小さいことが必要です。また、信号の反射の程度を示すリターン・ロスは大きく、VSWRは小さく、抵抗の値を示す特性インピーダンスが適切であることが求められます。

高周波リレーのその他情報

高周波回路

高周波回路とは、高周波時の動作が低周波時の動作と異なる電子回路を指します。無線LAN等、周波数が数GHzに及ぶ電子信号を扱う回路は高周波回路です。

電子信号が高周波になると、電子回路の場所ごとに信号の電流や電圧レベルが異なることを考慮する必要があります。この振る舞いを扱う回路は、分布定数回路と呼ばれます。

参考文献
https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/backnumber/2004/12/p130-131.pdf
https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/backnumber/2004/08/p114-115.pdf
https://www3.panasonic.biz/ac/j/control/relay/device-hi/index.jsp
https://www.mskw.co.jp/support/car/relay

データロガー (記録計)

データロガー (記録計) とは

データロガー (記録計)  (英: data logger) とは、センサにより計測・収集した各種データを保存する装置です。

最速で10~1,000回/秒 (10~1,000Hz) の速度で記録するため、信号観測を行う装置の中ではやや遅いものを対象としています。コンピューターとは独立して動作し、記録できるというのが利点です。

単一チャネルのロガーから、数百の入力を扱うことができるロガーまで、用途によって様々です。データロガーには、紙に記録するタイプと、デジタルやアナログでメモリーに記憶するタイプがあります。

データロガーの使用用途

データロガーは、温度、湿度をはじめ、振動、音、速度、加速度、電気量など、ほとんどの物理現象のデータ記録が可能です。複数のデータを同時に記録できるため、データ間の相関関係を調査する目的での利用されます。例えば、室内の気温、湿度、風速のデータなどです。

1. 室内の温度分布

データロガーは、数百の多チャンネルデータを記録できるので、エアコンによる室内の温度分布や風速分布、温度・湿度の降下速度などの評価が可能です。

2. クラッチの耐久性

自動車のクラッチにかかる圧力・応力・温度を記録して、耐久性の評価試験を行います。

3. 精密機器の物流試験

精密機器の輸送中の振動による破損や機能不良を評価するため、データロガーを使用して、実輸送試験や振動台上試験を実施します。

データロガーの原理

紙に記録するタイプのデータロガーでは、入力された信号に比例した位置にペンを移動させるペン・サーボと呼ばれる仕組みが備わっています。ペン・サーボは、記録紙の余白にチャネル番号やタグネーム、記録時間などの情報も印字が可能です。

ペーパーレスタイプのデータロガーでは、温度などのデータを内部のメモリに保存します。そして、おもに外部コンピューターにダウンロードして解析を行います。新しいモデルでは、保存したデータを本体でも解析が可能です。

記録の形式はそのモデルに依存しますが、専用のアプリケーションで視覚化、解析がスムーズに行えます。データロガーは、基本的にサンプルレートが低いため、1日単位だけではなく、1週間、1か月など長時間の記録も可能です。

データロガーの特徴

1. 設定・操作が容易

小型・軽量な設計で、設定や操作が容易になり、手軽に計測ができます。バッテリユニットや無線LANを活用して、現場での測定が簡単です。

2. 異種類のデータ同期

電圧、温度、ひずみ、加速度、パルスなど混在する種類のデータを完全に同期して保存・解析ができます。

3. データ解析が簡単

パソコンソフトが用意されており、簡単に解析が可能です。

データロガーのその他情報

1. ペーパー式アナログデータロガー

現在、データロガーの殆どがデジタル化された中で、ペーパー式のアナログデータロガーは稀少な製品となっています。長年愛用された記録幅100mmの機種があります。2~6チャンネル入力の伝統的な打点式機種と1~3入力のペン書式機種です。

入力の種類や目盛は固定仕様ですが、設定項目が少なく誰でも簡単に使えます。熱電対や測温抵抗体などの入力に対し、温度の目盛は直線的で読み取りし易いアナログ方式です。熱電対と測温抵抗体などの異なる種類の入力組合せも可能です。

取付方法はパネルを埋め込むタイプで、総重量は約1.6Kgのため持ち運びも便利です。

2. データロガーのペーパーレス化

最近の記録計は、ペーパーレス化が進み、ほとんどがペーパーレス記録計になっています。本体に操作パネルがないペーパーレスのデーターロガーは、パソコンから設定/操作/記録の検索/加工/表示/記録保存を行うため、操作するPCソフトの重要性が高まっています。

また、測定結果を画面に表示できるデーターロガーは、本体だけで記録されたデータの表示や検索が、容易に操作できる機能があります。現在では、カラー画像ディスプレイの複数チャンネル品や、測定結果表示をパソコンで実施するもの等、多彩な製品が開発されています。

参考文献
https://www.techeyesonline.com/tech-column/detail/Reference-Recorder-01/
https://www.chino.co.jp/products/recorders/el3000/
https://ednjapan.com/edn/articles/1812/04/news003_3.html

シグナルアナライザ

シグナルアナライザとはシグナルアナライザ

 

シグナルアナライザとは、複雑な変調のある信号でも検出できる、シグナル測定・評価・解析機器です。

測定器における周波数レンジ全体に入ってくる信号の振幅対周波数の測定と、既知あるいは未知の信号のスペクトラムの強さを測定できます。また、測定器の中間周波数 (IF) 帯域幅内の単一周波数における入力信号の振幅および位相も測定可能です。

シグナルアナライザは、周波数ドメインのスペクトラム測定に加え、高度な時間ドメイン解析ができます。携帯電話のように複雑なデジタル変調信号の変調品質を、高度化された信号解析処理によって解析することができる測定器です。

シグナルアナライザの使用用途

シグナルアナライザは、周波数のスペクトラム解析、時間ベースでの信号解析、変調信号品質の評価などに使用されます。

1. 周波数のスペクトラム解析

シグナルアナライザは、周波数のスペクトラム解析に使用されます。特にデジタル変調波形の信号歪を表現するACLR (隣接チャンネル漏洩電力) 等の評価に有効です。

用途としては、デジタル無線システムの端末や送信機械など、RF特性の試験が挙げられます。具体的には、搬送波の周波数、チャネル帯域幅、チャネルパワー、占有帯域幅、隣接チャネル漏洩電力比などです。

また、スーパーヘテロダイン方式スペクトラムアナライザの大きな特徴であるRF帯からマイクロ波帯にわたる広帯域な周波数範囲のスプリアス、高調波まで測定可能です。

2. 時間ベースでの信号解析

シグナルアナライザは、時間ベースでの信号解析にも用いられます。入力されたRF信号をデジタルIQデータ形式に変換し、取り込み、高速デジタル処理が可能です。

したがって、変調波などの信号に対し、時間を基とする多面的な解析ができます。5G変調時のSlot毎のPvT (PowerVs Time) 波形等の解析に有効です。

3. デジタル変調信号の変調品質

シグナルアナライザは、移動体通信の世界ではお馴染みの変調精度EVMの評価や、CCDF (Complementary Cumulative Distribution Function) 評価解析等にも使用されます。

通信方式をとるデジタル変調信号は、スペクトラム特性の他に、安定な通信状態を保つ目的で変調品質を測定する必要があります。その点でシグナルアナライザは、各種のベクトル解析アプリケーションと組み合わせることで、デジタル変調信号の変調品質も測定可能です。

シグナルアナライザの原理

シグナルアナライザは、測定信号の周波数を変換しただけの状態で一定時間分のメモリを取り込みます。そして、「デジタル化して記憶」「周波数の変換」「スペクトラム等に変換」のステップを踏んで解析結果を得る仕組みです。

まず、シグナルアナライザの入力部位に入った測定信号を、周波数変換部で中間周波数 (IF) に変換します。次に、IFに変換した測定信号をデジタルデータへと変換します。そして、デジタル化した時系列波形データをすぐに内部のメモリーへと取り込みます。このデータは、別途ハードディスクに保存することも可能です。

シグナルアナライザは、高速で処理できるという利点があるだけでなく、再現性が高いことも特徴です。ミリ波 (1~10mmまでの波長領域) 、サブミリ波 (0.1~1mmまでの波長領域) など高解像度基準での分析や解析に向いています。

シグナルアナライザのその他情報

1. シグナルアナライザとスぺクラムアナライザの違い

シグナルアナライザは、変調信号の解析ができるスペクトラムアナライザです。具体的には、シグナルアナライザは、時間ベースでの信号測定や解析において非常に高度な解析が可能です。

シグナルアナライザには、スペクトラムアナライザにはない独特の信号処理手法があります。スーパーヘテロダイン方式に加えて、高速のA/Dコンバータで一度デジタル信号に変換処理し、データをメモリに取り込んで、高速処理のフーリエ変換を行う手法です。

これにより、従来のスペクトラムアナライザでは時間応答の制限の為に解析不可能であった、複雑な時間応答成分を有するLTEや5Gと言った昨今のデジタル変調波形の解析が可能となっています。

2. シグナルアナライザの価格

シグナルアナライザは、対応機能や周波数レンジによって解析に必要とされる内部のメモリやデジタル処理能力が大きく異なるため、価格帯も広い傾向にあります。 最新の変調対応モデルの場合、数百万円台が標準的な価格帯で、古い機種や限定機能モデルだと数十万円の価格帯です。

参考文献
https://dl.cdn-anritsu.com/
http://www.rf-world.jp/bn/RFW12/samples/p008-009.pdf
https://www.anritsu.com/ja-jp/test-measurement/signal-spectrum-analyzer/signal-analyzers
https://www.techeyesonline.com/

恒温槽

恒温槽とは

恒温槽

恒温槽(こうおんそう)は、主に、科学実験で使用されている装置の一種であり、長時間温度を一定に制御可能な容器です。

主に気温を変化させるタイプと、水温を変化させるタイプ(恒温水槽)があります。卓上で使用できるタイプ、大型冷蔵庫のようなタイプ、一つの部屋を恒温槽として調節が可能なタイプまで用途・目的によってサイズや仕様は異なっています。

恒温槽の使用用途

一般的に実験室などで使用されることが多い恒温槽ですが、水・オイル槽並びに恒温乾燥器が多く使用されています。
恒温水・オイル槽では、主に化学・生物実験で、フラスコ内に試料を入れて、攪拌しながら温度を一定に保つ時などに使用します。

使い方は、シンプルで、機器に設置してある槽に水もしくはオイルを入れて、温度設定を行うというものです。ただし、実験を長時間行うので、水槽の場合は水の蒸発による減りに注意し、オイル槽の場合は、100℃以上での使用が主になるので、火傷に気をつけなければなりません。

また、恒温乾燥器・恒温高湿槽については、半導体の乾燥や微生物の培養、実験以外にも器具の乾燥にも使用されます。

使い方はシンプルで、扉を開け、槽内部に試料を入れて、昇温速度・目的温度・保持時間などを設定し、乾燥や試料の観察を行います。なお、温めるだけでなく、低温実験にも使用可能な冷却機能付属した機器もあります。ただし、冷媒にフロンなどを使用する場合があるので、専門の業者に委託が必要になってきます。

一方で、近年ではペルチェ素子を使用した恒温槽もあります。ペルチェ素子は電流の向きを変えることで冷却と加熱を行うことが可能です。省電力、フロンレス、小型であり細かい温度コントロールが可能なことが特徴です。

恒温槽の放熱・冷却

図1. 恒温槽の放熱・冷却

恒温槽の原理

恒温槽は基本的に温度を保つ容器、加熱(または冷却)器、温度センサーと温度制御装置で構成されています。湿度を調整する場合は加湿器や除湿器、容器内の温度を均一にするためのファンや撹拌機などが用途に応じて設置されます。加温湿気、冷却器、除湿器によって温度を変化させ、温度センサーによって目的の温度に維持します。

恒温槽は主に温度を一定に保つために設計されていますが、用途によっては温度を一定時間ごとに上昇、下降を反復させたり、一定の勾配で上昇、下降させたり、プログラムを設定することも可能です。

任意のプログラムを設定する際には、恒温槽本体のプラグラム装置に依存するため、個々の製品の機能によります。また、通信インターフェースを内蔵している製品であれば、パソコンを利用して遠隔操作も可能です。データ記録に関しても、直接恒温槽の内蔵メモリーに記録できるタイプと、外部の機器に保存できるタイプがありますので、使用用途によって仕様を選ぶ必要があります。

恒温槽の構造

恒温槽の構造

図2. 恒温槽の構造

恒温槽は、おおよそ1辺が30cm〜数mの大きさで、実験室などに設置が可能です。

一般的な構造は、槽の外枠、一部機器では、周囲からの温度変化の影響を防ぐため扉や断熱材がついており、槽内を外界と遮断できる構造となっています。また、長時間、温度を一定に保つための制御が設置されています。

個別機器に着目しますと、恒温水槽の場合は、槽全体は外枠で覆われているものとそうでないものに分かれます。いずれの場合でも水をいれるケースが設置されており、水の蒸発温度以下で温度制御されます。また、100度以上の実験を行う場合、水では温度を保つことができないため、オイルで加熱を行う装置もあります。

他に恒温乾燥器などでは、タイマーや昇温プログラムが導入されており、実験用途に合わせた温度・昇温速度を設定することが可能になっています。

恒温槽の種類

 

主な種類はインキュベーター、恒温乾燥機、恒温水槽、環境試験器(サイクル試験器、恒温恒湿槽など)があります。インキュベーターは科学実験においては微生物や細胞の培養に用いられます。また産業領域においては卵をふ化させるための孵卵器、医療領域においては、低出生体重児の体温を適切に維持するための保育器もインキュベーターに含まれます。恒温乾燥機や恒温水槽、環境試験器は生化学分野、有機化学分野など幅広く用いられ、様々な目的で分析試験に使用されます。

ASIC

ASICとは

ASIC

ASICは「Application Specific Integrated Circuit」の略で、通信や画像などの高速処理など特定の用途に特化して作成された集積回路のことです。

高い性能が得られること、コンパクトに作成できること、製造時のコスト削減につながることがメリットして挙げられます。しかし、FPGAと比較してソフトや回路の書き換えなどができないため、開発期間や開発費がかかることがデメリットです。

ASICの使用用途

ASICの使用用途は、家電や通信機器、画像処理、産業機器、コンピューターなど多岐に渡ります。

  • ルーターにおける、高速なインターネット通信のための高速処理IC
  • デジタルカメラにおける、高画質・高品質な画像の高速処理IC

ASICは特定の機能に特化しているため性能が高く、単価も安いです。しかし開発期間や設計試作に要する開発費の回収が可能かどうかを考慮する必要があります。

ASICの原理

ASICは一般的にセミカスタムのASICが採用されるため、下記ではゲートアレー型とセルベース型の原理を紹介します。

1. ゲートアレー型ASIC

ゲートアレー型ASICは半導体製造過程の内の配線工程までは既存のシリコンウェーハを用いて配線工程での用途に合わせて配線をカスタマイズする方法です。開発時は配線回路レイアウトに関する設計のみであるため、開発にかかるコストや期間を削減できるメリットがあります。

2. セルベース型ASIC

セルベース型ASICは半導体製造過程内のトランジスタ素子や抵抗、容量など全てのマスクの工程でIC内の回路をカスタマイズする方法です。設計最適化が可能なため非常に自由度が高く性能の良いASICを作成できます。しかし、開発にかかるコストや期間がゲートアレー型に比べて多くなります。

ASICのその他情報

1. ASICマイニング

ASICマイニングの概要
ASICマイニングとは、暗号資産 (旧呼称:仮想通貨) のためにASICを使用することを指します。暗号資産の世界では、ひとつひとつの暗号資産の取引を担保するためにマイニング (発掘) と呼ばれる作業が必要になります。

マイニングにはハッシュ関数が使われ、さまざまな値を探索し、特定の値を満たす場合にマイニングが成功します。一連の計算は膨大であり、このマイニングが成功することにより、暗号資産の取引が承認されます。このように膨大な計算に使用されるのがASICマイニングです。

ASICマイナーへの要求事項
ハッシュ関数の実行アルゴリズムを回路やICチップにまとめた専用ASICを搭載した機器はASICマイナーと呼ばれます。膨大な演算処理が必要であり、そのASICマイニング処理はハッシュパワーとも称されます。

このハッシュパワーを支える電力に関する議論は、昨今の環境問題と絡んで世界中で盛んに行われている状況です。よってASICのさらなる高速演算特性の向上と小型、低消費電力化への期待は大きいと言えます。

2. ASICの開発期間と開発費

ASICの開発期間はFPGAやプロセッサに比べて長くなるのが一般的です。理由は専用の用途に応じて集積回路設計が個別に必要になり、マスクを払い出した後は回路やレイアウト修正ができない為です。開発期間や工数に最も影響を与えるものとしては、試作回数と特性の最適化があげられます。

ただし専用設計なので、無駄な機能を削除し小さくできるASICチップの製造コストはFPGAとの比較では抑えられ、優れた特性が得られる利点があります。ASICを使う場合は開発費が回収可能かどうか良く見極める事が重要です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1888/113/12/113_12_999/_pdf
http://repository.aitech.ac.jp/dspace/bitstream/11133/2754/1/%E7%B4%80%E8%A6%8149%E5%8F%B7%28p103-p109%29.pdf