恒温槽

恒温槽とは

恒温槽

恒温槽(こうおんそう)は、主に、科学実験で使用されている装置の一種であり、長時間温度を一定に制御可能な容器です。

主に気温を変化させるタイプと、水温を変化させるタイプ(恒温水槽)があります。卓上で使用できるタイプ、大型冷蔵庫のようなタイプ、一つの部屋を恒温槽として調節が可能なタイプまで用途・目的によってサイズや仕様は異なっています。

恒温槽の使用用途

一般的に実験室などで使用されることが多い恒温槽ですが、水・オイル槽並びに恒温乾燥器が多く使用されています。
恒温水・オイル槽では、主に化学・生物実験で、フラスコ内に試料を入れて、攪拌しながら温度を一定に保つ時などに使用します。

使い方は、シンプルで、機器に設置してある槽に水もしくはオイルを入れて、温度設定を行うというものです。ただし、実験を長時間行うので、水槽の場合は水の蒸発による減りに注意し、オイル槽の場合は、100℃以上での使用が主になるので、火傷に気をつけなければなりません。

また、恒温乾燥器・恒温高湿槽については、半導体の乾燥や微生物の培養、実験以外にも器具の乾燥にも使用されます。

使い方はシンプルで、扉を開け、槽内部に試料を入れて、昇温速度・目的温度・保持時間などを設定し、乾燥や試料の観察を行います。なお、温めるだけでなく、低温実験にも使用可能な冷却機能付属した機器もあります。ただし、冷媒にフロンなどを使用する場合があるので、専門の業者に委託が必要になってきます。

一方で、近年ではペルチェ素子を使用した恒温槽もあります。ペルチェ素子は電流の向きを変えることで冷却と加熱を行うことが可能です。省電力、フロンレス、小型であり細かい温度コントロールが可能なことが特徴です。

恒温槽の放熱・冷却

図1. 恒温槽の放熱・冷却

恒温槽の原理

恒温槽は基本的に温度を保つ容器、加熱(または冷却)器、温度センサーと温度制御装置で構成されています。湿度を調整する場合は加湿器や除湿器、容器内の温度を均一にするためのファンや撹拌機などが用途に応じて設置されます。加温湿気、冷却器、除湿器によって温度を変化させ、温度センサーによって目的の温度に維持します。

恒温槽は主に温度を一定に保つために設計されていますが、用途によっては温度を一定時間ごとに上昇、下降を反復させたり、一定の勾配で上昇、下降させたり、プログラムを設定することも可能です。

任意のプログラムを設定する際には、恒温槽本体のプラグラム装置に依存するため、個々の製品の機能によります。また、通信インターフェースを内蔵している製品であれば、パソコンを利用して遠隔操作も可能です。データ記録に関しても、直接恒温槽の内蔵メモリーに記録できるタイプと、外部の機器に保存できるタイプがありますので、使用用途によって仕様を選ぶ必要があります。

恒温槽の構造

恒温槽の構造

図2. 恒温槽の構造

恒温槽は、おおよそ1辺が30cm〜数mの大きさで、実験室などに設置が可能です。

一般的な構造は、槽の外枠、一部機器では、周囲からの温度変化の影響を防ぐため扉や断熱材がついており、槽内を外界と遮断できる構造となっています。また、長時間、温度を一定に保つための制御が設置されています。

個別機器に着目しますと、恒温水槽の場合は、槽全体は外枠で覆われているものとそうでないものに分かれます。いずれの場合でも水をいれるケースが設置されており、水の蒸発温度以下で温度制御されます。また、100度以上の実験を行う場合、水では温度を保つことができないため、オイルで加熱を行う装置もあります。

他に恒温乾燥器などでは、タイマーや昇温プログラムが導入されており、実験用途に合わせた温度・昇温速度を設定することが可能になっています。

恒温槽の種類

 

主な種類はインキュベーター、恒温乾燥機、恒温水槽、環境試験器(サイクル試験器、恒温恒湿槽など)があります。インキュベーターは科学実験においては微生物や細胞の培養に用いられます。また産業領域においては卵をふ化させるための孵卵器、医療領域においては、低出生体重児の体温を適切に維持するための保育器もインキュベーターに含まれます。恒温乾燥機や恒温水槽、環境試験器は生化学分野、有機化学分野など幅広く用いられ、様々な目的で分析試験に使用されます。

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