ノイズカットトランス

ノイズカットトランスとは

ノイズカットトランス (英: noise cut transformer, special isolation transformer) とは、ノイズ障害を未然に防ぐことを目的としたノイズ防止素子です。

1960年電研精機研究所が開発した商標で、一般名称は障害波遮断変圧器やノイズ対策用トランスですが、ノイズカットトランスとも呼ばれています。ノイズカットトランスは、トランス型のノイズ防止素子を実用化したものです。

ノイズの元になっているものと、ノイズによって妨害されている側の電気回路を分離絶縁するので、防止効果が高いのが特徴です。また、分離絶縁形であるため、劣悪な電磁環境下でも機能を発揮できます。

ノイズカットトランスの使用用途

現代の多くの機器は高速化され、多機能であることが私たちの生活を便利にしています。これらの機器は微小電圧によって動作しているため、外部から侵入するノイズにより誤動作を起こす可能性があります。

雷やアマチュア無線、自動車、放電機器、家電製品、医療機器などは、外部からのノイズ侵入が多いです。ノイズカットトランスを使用すれば、これらのノイズを防止し、自らが発しているノイズそのものも外部の回路に漏らさないことができます。

ノイズカットトランスの原理

ノイズカットトランスは、ノイズが2次側に侵入することを抑制します。ノイズには、コモンモードとノーマルモードがあります。

1. コモンモード

コモンモードノイズの場合、低周波 (数10kHz程度) のノイズであれば、絶縁トランスでも多少弱めることができます。しかし、ノイズの周波数が上昇すると、トランスの1次側と2次側との間に存在する静電容量が原因となって、2次側へのノイズの侵入が増加します。

この場合、ノイズカットトランスでは、1次側コイルと2次側コイルの間に静電シールドを加え、それを接地することによって、ノイズの侵入防止が可能です。

2. ノーマルモード

ノーマルモードノイズは、そのまま2次側に出力されるので、本来トランス自体に抑制効果はありません。例えば、雷によるノイズの周波数は、一般機器の電源の周波数 (50/60Hz) と比較して非常に高い周波数です。

これを利用し、電源の低い周波数は通し、高い周波数は弱める特性をフィルタにもたせることで、ノーマルモードにおけるノイズを抑制できます。

ノイズカットトランスの構造

ノイズカットトランスの構造は、従来の絶縁トランスの構造に加えて、コイルトランスの外周に、多重の包覆電磁遮蔽板を設けたものです。さらに、コイル配置や磁心材質と形状を高周波ノイズの磁束が、コイル相互に鎖交しないように作られます。これにより、静電容量結合と電磁誘導によるノイズの伝達を防止できるので、ノイズ遮断に対して非常に優れたトランスです。

ノイズをカットしたい時、概ね行う対策は、ノイズの発生源を絶縁することです。実際の絶縁対策は、回路上でほとんどの場合、フォトカプラを使用します。そして、フォトカプラを使わない場合の対応方法が、絶縁トランスです。

コストやスペースの問題から、基板上のフォトカプラで対応した方が望ましですが、基板が使用できない場合は、絶縁トランスを使用します。しかし、絶縁トランスも万能ではなく、1次側巻線から来たノイズの影響を、2次側巻線も受けます。ノイズカットトランスを使用すれば、この問題の解決が可能です。

ノイズカットトランスのその他情報

ノイズカットトランスのアース

電気回路のグランドとグランドの間で、電位の異なる場所やグランドが接地不可の箇所でも、ノイズを防止する施策はあります。まず、ノイズカットトランスを設置することです。

それでも効果がない時は、ノイズカットトランスを設置している場所をグランドとできる限り広い面積で接触させます。入力ケーブルと出力ケーブルをノイズが遮蔽できるシールド線にして、このシールド線とノイズカットトランスのケースを広い面積で取り付ける方法も効果的です。ノイズ除去効果の向上が期待できます。

参考文献
https://www.denkenseiki.co.jp/noise-blog/2345/
http://www.totora.co.jp/other/noise_cut_kouka.pdf
http://www.totora.co.jp/other/noise_cut_earth.pdf
http://www.sanwa-denki.com/kaisha/denken/shiryou01.pdf

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