ASICとは
ASICは「Application Specific Integrated Circuit」の略で、通信や画像などの高速処理など特定の用途に特化して作成された集積回路のことです。
高い性能が得られること、コンパクトに作成できること、製造時のコスト削減につながることがメリットして挙げられます。しかし、FPGAと比較してソフトや回路の書き換えなどができないため、開発期間や開発費がかかることがデメリットです。
ASICの使用用途
ASICの使用用途は、家電や通信機器、画像処理、産業機器、コンピューターなど多岐に渡ります。
- ルーターにおける、高速なインターネット通信のための高速処理IC
- デジタルカメラにおける、高画質・高品質な画像の高速処理IC
ASICは特定の機能に特化しているため性能が高く、単価も安いです。しかし開発期間や設計試作に要する開発費の回収が可能かどうかを考慮する必要があります。
ASICの原理
ASICは一般的にセミカスタムのASICが採用されるため、下記ではゲートアレー型とセルベース型の原理を紹介します。
1. ゲートアレー型ASIC
ゲートアレー型ASICは半導体製造過程の内の配線工程までは既存のシリコンウェーハを用いて配線工程での用途に合わせて配線をカスタマイズする方法です。開発時は配線回路レイアウトに関する設計のみであるため、開発にかかるコストや期間を削減できるメリットがあります。
2. セルベース型ASIC
セルベース型ASICは半導体製造過程内のトランジスタ素子や抵抗、容量など全てのマスクの工程でIC内の回路をカスタマイズする方法です。設計最適化が可能なため非常に自由度が高く性能の良いASICを作成できます。しかし、開発にかかるコストや期間がゲートアレー型に比べて多くなります。
ASICのその他情報
1. ASICマイニング
ASICマイニングの概要
ASICマイニングとは、暗号資産 (旧呼称:仮想通貨) のためにASICを使用することを指します。暗号資産の世界では、ひとつひとつの暗号資産の取引を担保するためにマイニング (発掘) と呼ばれる作業が必要になります。
マイニングにはハッシュ関数が使われ、さまざまな値を探索し、特定の値を満たす場合にマイニングが成功します。一連の計算は膨大であり、このマイニングが成功することにより、暗号資産の取引が承認されます。このように膨大な計算に使用されるのがASICマイニングです。
ASICマイナーへの要求事項
ハッシュ関数の実行アルゴリズムを回路やICチップにまとめた専用ASICを搭載した機器はASICマイナーと呼ばれます。膨大な演算処理が必要であり、そのASICマイニング処理はハッシュパワーとも称されます。
このハッシュパワーを支える電力に関する議論は、昨今の環境問題と絡んで世界中で盛んに行われている状況です。よってASICのさらなる高速演算特性の向上と小型、低消費電力化への期待は大きいと言えます。
2. ASICの開発期間と開発費
ASICの開発期間はFPGAやプロセッサに比べて長くなるのが一般的です。理由は専用の用途に応じて集積回路設計が個別に必要になり、マスクを払い出した後は回路やレイアウト修正ができない為です。開発期間や工数に最も影響を与えるものとしては、試作回数と特性の最適化があげられます。
ただし専用設計なので、無駄な機能を削除し小さくできるASICチップの製造コストはFPGAとの比較では抑えられ、優れた特性が得られる利点があります。ASICを使う場合は開発費が回収可能かどうか良く見極める事が重要です。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1888/113/12/113_12_999/_pdf
http://repository.aitech.ac.jp/dspace/bitstream/11133/2754/1/%E7%B4%80%E8%A6%8149%E5%8F%B7%28p103-p109%29.pdf