SAWフィルタ

SAWフィルタとは

SAWフィルタとは、特定の周波数を持った電気信号を選択的に取り出すことができるフィルタです。

表面弾性波フィルタを意味する「Surface Acoustic Wave Filter」の頭文字をとっています。圧電素子を伝わる表面波を用いて、機械的振動をフィルタリングすることで、急峻な周波数依存特性の作成が可能であり、特定の周波数成分を通過、あるいは遮断することができます。表面波とは、媒体の表面を伝わる波で、表面から内部にかけて急激に振幅が減衰するのが特徴です。

SAWフィルタでは電気信号を入力すると、圧電素子によって機械的振動に変換され特定の振動数のみを選択し、再び電気信号に戻して出力します。

SAWフィルタの使用用途

SAWフィルタは、ロスが少なく、優れたカットオフ特性を持っていることからスマートフォン等の携帯端末、テレビチューナー、無線LANなどの無線通信機器での送信 (Tx) 受信 (Rx) の切り替え用フィルタであるデュプレクサ用途向けなどに非常によく用いられています。

急峻な共振特性を活用して、不要な周波数帯のノイズを低減する目的で使用されており、携帯電話で通話する際の音質向上などに貢献しています。SAWフィルタは、低コストなうえ、容易に小型化薄型化することができるため、携帯端末の高機能化になくてはならない存在です。

また、携帯端末で用いる通信周波数の端末一台あたりのバンド数も年々増加していることから、SAWフィルタを用いた周波数帯域 (Band) のふるいわけは、無線通信技術のコアであると言えます。

SAWフィルタの原理

SAWフィルタは、タンタル酸リチウムなどの圧電基板上に形成した櫛形電極において、弾性表面波のある振動モードを共振子として活用することにより、必要な周波数成分以外の信号を急峻にフィルタリングして減衰させる電気的なフィルタ特性を有しています。

実際のSAWフィルタは、圧電基板上に電極を櫛形に配置した構造をしています。これに駆動用の電極を持っており、入力した高周波の電気信号によって電圧が発生すると、櫛形に並んだ電極同士の間隔に応じた振動が発生するという仕組みです。

この振動は、複数の櫛形電極によって共振を起こすため、どんどん増幅されます。このときの振動が表面波となり、最終的に検出用の電極に伝播します。そこで、機械的振動を再び電気信号に変換することで、フィルタ機能を有するデバイスとなります。

どれくらいの周波数を透過させるかなどを表すフィルタ特性は、圧電体の物性値と電極構造次第です。表面波の伝播速度は材質ごとに異なるので、どのような圧電素材を使用するかで、フィルタの性能は大きく左右されます。

SAWフィルタのその他情報

1. SAWフィルタの市場

昨今のスマートフォンにおいては、増加の一途をたどる通信伝送容量に対応するため、変調帯域幅を拡大させるための様々な方式もさることながら、CA (キャリアアグリゲーション) やMIMOと呼ばれるマルチバンド化への対応がますます顕著になっています。中でも4G (LTE) や5Gに代表されるFDD変調方式では、時間分割多重でのTDD方式と異なり、送信と受信を同時に実施します。

よってTx (送信) Rx (受信) 周波数の振り分けに欠かせないフィルタは、その搭載数が増加の一途をたどっています。特にハイエンド機種においては、その端末はグローバルに世界各地で利用可能である必要があるため、モジュール化による小型化要求が顕著です。

一つの通信モジュールに複数のバンド対応フィルタが搭載され、その通信モジュールがさらに周波数カテゴリ毎に複数搭載されるため、SAWフィルタのマーケット (市場) は拡大し続けています。ローエンド機種では、モジュール化ではなく、ディスクリート商品を端末に搭載する場合も多いですが、ここでも周波数の拡大の波は続いており、数量、売り上げ規模共に増加傾向です。

SAWフィルタ-は取り扱うメーカーも非常に多く、日系の電子部品メーカーがその存在感を放っています。

2. BAWフィルタとの違い

SAWフィルタは、圧電体の基板上の弾性表面波を活用するフィルタ素子ですが、BAWフィルタはそれとは異なる原理を有しています。BAWフィルタにはFBAR型 (Film Bulk Acoustic Resonator) やSMR (Solid Mounted Resonator) 型と呼ばれる構造があります。

FBARは、共振器の下部に空洞 (キャビティ) を設けることで、圧電膜を自由に振動させる構成です。もう一つのSMRは、音響多層膜を共振器の下に設けることで、弾性波を反射させる構成をとっています。

SAWフィルタはコスト面で非常に優れているために、600MHz帯から2GHz近傍の主にLow Bandと呼ばれる周波数バンドで広く用いられるフィルタです。一方でBAWフィルタは工程が複雑でコストも高くなりがちですが、SAWフィルタと比較しての高Qと急峻なフィルタ特性を得やすい利点を有し、一部の1,800MHz帯のUS向けBandと2GHz以上の高い周波数領域で主に使われています。

なお、SAWフィルタには、温度特性を制御補償するTC-SAWフィルタと呼ばれるフィルタがあり、低コストの他に温度制御による周波数管理が必要なアプリケーションで用いられています。

3. SAWフィルタと5G

5Gの市場においては、UHB (Ultra High Band) やSub6GHzといった3~6GHz帯の対応が多く、この市場ではWiFiとの共存や高い周波数での損失増加への補填を見据えて、より急峻な高いQ値のフィルタ特性が要求されるためにBAWフィルタの存在が大きいです。特に、USメーカー (BroadcomやQorvo) がBAWフィルタのシェアを獲得している状況です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep1985/3/4/3_4_11/_pdf
http://www.asnics.com/case/2018/10/16/3
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/08809/

電波暗箱

電波暗箱とは

電波暗箱とは、外部から内部へ電磁波を透過させない、また内部で発生した電磁波を反射させず外部へ漏洩させないように電磁シールド素材で覆った箱型の電磁波遮蔽装置のことです。

同様の機能を持ったものに電波暗室がありますが、こちらはその名の通り、電磁波を遮蔽する部屋であり、非常に大掛かりな施設です。一方で、電波暗箱はそれよりも小型のものを指し、価格も抑えられています。

電波暗箱は電磁波や高周波関連の測定器を覆うものや測定対象物を格納可能な箱型の形状をしているもの、製品によっては持ち運びができるようなものも販売されています。

電波暗箱の使用用途

電波暗箱は、外部からの電磁波の影響のない状態での無線システムの評価を実施したい場合や、開発途中で未認証の周波数信号の電磁波の外部での測定を実施したい場合などに広く用いられています。モバイルネットワークや無線LANRFIDなど無線通信を用いたシステムやそれに関する製品の開発において、試験を行う際は十分な注意が必要です。

試験の段階では、開発途中の製品は技術基準適合証明が取得できておらず、外部に信号電波が漏洩すると電波法違反になるためです。電波暗箱は、このような状況を防ぐために使用されています。また、反対に外部で使用中の電波の影響を排除した測定目的にも活用されます。

電波暗室でも同様の目的は達成できますが、電波暗室の設置は非常に高額な上場所も必要とするため、試験を行うものがさほど大きくなければ、電波暗箱のほうが導入しやすいです。

電波暗箱の原理

電波暗箱の原理は、暗箱の内部を電波吸収体と呼ばれる電磁波を吸収する素材で覆い、評価に際しその影響を排除することを可能としている点にあります。電波暗箱は内外からの電磁波を遮断することはもちろん、試験の目的で使用する際は内部で電磁波が反射しないことも要求されます。

そのため、電波暗箱の内部は電波吸収体で覆われているのが特徴です。電波吸収体の素材はフェライトを焼き固めたものやフェライト粒子やカーボンをウレタン樹脂などに練り込んだものなどが用いられます。この際、広い周波数帯で電波吸収を実現させるために、フェライトやカーボンの濃度に勾配をつけます。

しかし、実際には塗装によって勾配を実現するのは製造コストの観点から現実的ではありません。そこで、ピラミッド上の構造に加工してそれを並べることで、吸収材を何層にも積層した効果を得ています。

したがって、電波暗箱や電波暗室の内部の壁は、このような立体的幾何学形状をしています。電波吸収材のシールド特性に応じてピラミッドの山の高さを変えることで、吸収できる電磁波の周波数などをコントロールすることが可能です。

電波暗箱のその他情報

1. 電波暗箱で扱われる周波数帯

電波暗箱で遮蔽可能な周波数帯は、一般によく取り扱われるマイクロ波帯のLow Band帯である700MHzからSub6GHzの6GHzまでを扱うものが多いですが、ミリ波帯の30GHz程度まで評価可能な機種もあります。

高い周波数は比較的対応できますが、低い周波数はその波長が長いために小型化との両立には高い技術力が必要です。内部の電波吸収体の形状や素材を工夫し、複数の吸収体の組み合わせにより、各社遮蔽周波数の広帯域化を図っています。

2. 電波暗箱の性能指標

電波暗箱の性能指標は、電波を遮蔽可能な周波数とその電磁波のシールド (遮蔽) を意味する反射減衰量が代表的です。目安としては、反射減衰量 (絶対値) 10dBではほとんど効果はありません。20dBで最低限のシールド効果あると言えます。

平均値は30~60dBであり、このレベルはちょうど携帯電話がその電波を認知できずに圏外と扱われるレベルです。よって、所望の電波周波数で60dBのシールド効果が性能指標の目安です。また、電波暗箱内部においてシールド効果の性能指標である反射減衰量の分布値が、大きくばらつくのも好ましい状態ではありません。

実際にアンテナを内部に格納し、電波の指向性分布から好ましいばらつきを抑制された反射減衰量分布となるように、各メーカーにて電波吸収体の配置に創意工夫が施されています。

参考文献
http://www.micronix-jp.com/products/shield-box/
http://t-sato.in.coocan.jp/terms/rf-absorber.html

エアブラスト

エアブラストとは

エアブラスト

エアブラストとは、工業製品の表面を磨くために使用される技術です。

圧縮エアを用いて研削材を加工物に吹き付けることで、表面を磨き上げます。エアブラストには直圧式、ブロアー式、サクション式の3種類が存在し、用途に応じた選定が必要です。

研削材にもさまざまな種類があり、例えば金属の表面を磨く場合には、アルミナ、シリコンカーバイト、ダイヤモンドなどが用いられます。また、木材を磨く場合には、砂糖やナッツシェルなどの天然素材が用いられることもある点が特徴です。

エアブラストは、加工物の表面を綺麗に仕上げるだけでなく、表面に付着した汚れや錆を取り除けます。そのため、自動車や航空機などの大型の製品から、精密部品までさまざまな分野で使用されています。

エアブラストの使用用途

エアブラストは、さまざまな素材に対して加工できる技術であり、用途も多岐にわたります。まず、加工物の表面を粗す下地処理する際に使用されます。下地処理によって、塗装やコーティングの密着性が向上し、加工物の寿命を延ばすことが可能です。

さらに、不要な部分を削るバリ取りや精密切削にも利用されます。エアブラストによって微細な部分まで加工できるため、高精度の加工が可能です。また、表面のクリーニングや洗浄にも使用されます。特に、油や汚れが付着している部分に最適です。

そのほか、シリウス加工と呼ばれる表面を磨き上げる研磨にも使用されます。加工物の表面に研削材を飛ばすことで、表面の微細な凹凸を取り除くものです。結果として、光沢のある仕上がりとなります。

エアブラストの原理

エアブラストは大きく直圧式、サクション式、ブロワー式の3つの方法に分けられ、それぞれ原理が異なります。

1. 直圧式

直圧式とは、圧縮した空気を加圧タンクに入れ、圧力を上げてから研削材と共に噴射する方法です。3つの方式の中で最も噴射スピードが速い方法になります。

2. サクション式

サクション式は、圧縮エアーとホッパーからの研削材の流れで重力を利用しているため、重力方式とも呼ばれています。研削材が加工機のガン内部に収納され、そこで圧縮エアーが研削材を吸引し、ノズルから噴射されます。

エアガンと同じ原理で、エアブラストの中で最も使用されている方法ですが、直圧式と比べると噴射の力は弱くなります。

3. ブロワー式

ブロワー式は、ブロワーファンからの送風に研削材をのせて飛ばす方法です。コンプレッサが不要のためシステム購入のコストを抑えることができます。しかし、力が弱いため、硬い材質の加工には向きません。

エアーブラストのその他情報

1. エアーブラストとショットブラストとの違い

ブラスト (blast) とは、「強い一吹き」という意味を持つ言葉ですが、吹き付け方法や研削材の種類に応じて複数のブラスト処理が存在します。中でも主流なのが、エアーブラストとショットブラストです。

圧縮空気で研削材を飛ばすエアーブラストに対し、ショットブラストはモーターで高速回転する羽根車から発生させた強力な遠心力を噴射に利用するという違いがあります。吹付けの威力はショットブラストの方が強く、溶射の下地処理や頑固なサビ取りのように表面を荒く削りたいときにはショットブラストが適しています。

一方、エアーブラストは研削材の種類や粒径を調整することでよりソフトな出力が可能であるため、精度が要求される仕上げ加工にはエアーブラストが選択されます。

2. エアーブラストで使用される研削材の種類

エアーブラストは、粒状の研削材を空気の力で相手材に吹き付けることから、別名「サンドブラスト」とも呼ばれています。その「砂」のように細かな物質の種類は、樹脂やガラス (珪砂) といった低比重の素材がメインです。仮に金属の研削材を使う場合でも、アルミナのような軽金属に限定されます。

なぜなら、空気と混合させて噴射するエアーブラストの特性上、軽い素材のほうが混ざりが良く、効果的に吹き付けることができるからです。一方、ステンレスや亜鉛などの高比重素材を研削材として使用するには、ショットブラストが使われます。

3. エアーブラストによるバリ取り

エアーブラストが得意とする処理の1つにバリ取りが挙げられます。ノズルの先端部分に限定して処理を行えるため、複雑形状の相手材でも細部に発生したバリだけを狙い撃ちすることが可能となり、品質改善・省力化に寄与します。

金属ギアのバリ取りはもちろんのこと、工具の刃先のように適度なアールを持たせつつ、切削性を改善させる繊細なバリ取りにも対応可能です。エアーブラストによって発生する熱量を抑える工夫を行うことで、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂に対してもダメージを与えることなくバリ取りを行えます。

参考文献
http://www.sand-majic.com/blasting.htm
http://www.fujiblastech-thai.com/japanese/efficacyofblast.html
https://www.meishou-kougyou.jp/
http://blast-kakou.com/blast-technology/
https://www.fujimfg.co.jp/ApplicationBaritori.html

X線回折装置

X線回折装置とは

X線回折装置

X線回折装置とは、物質にX線を照射する際に生じる回折現象を計測する装置のことです。

計測によって得られた回折パターンを解析することで、対象物質の結晶構造に関する情報を得られます。X線回折装置は、X線を発生させるX線発生装置、回折角を計測するゴニオメーター、X線強度を計測する検出器などで構成されています。

X線回折装置は、単結晶や粉末、薄膜などの結晶性を有する物質の測定に使用されることが多いです。有機材料をはじめ、無機材料、合金、タンパク質など様々な材料の研究開発や分析に活用されています。

X線回折装置の使用用途

X線回折装置は、試料にX線を照射することで発生する回折現象を測定する際に使用されます。得られた回折パターンを解析することで、試料の結晶性や配向性、格子欠陥などの評価が可能です。

また、回折パターンは物質の結晶構造ごとに異なるため、既知の物質の回折パターンと比較することで、未知試料の同定や定性分析にも用いられています。X線回折装置は、アモルファス (非晶質) など結晶性のない物質の測定には不向きですが、結晶性を有する粉末や薄膜、合金など様々な物質を測定することができます。

X線回折装置の原理

ブラッグの回折条件

図1. ブラッグの回折条件

物質に照射されたX線は物質中の電子によって散乱されます。結晶など原子がある程度規則性をもって配列した物質の場合、散乱されたX線は互いに干渉し増幅または減衰し、ある特定の方向のみ散乱強度が大きくなります。これがX線の回折です。

X線の回折では、ブラッグの式 2d sinθ = nλ (d: 格子面間隔 θ: ブラッグ角 n: 整数 λ: 照射したX線の波長) が成り立つときX線の散乱強度が大きくなることが知られています。つまり、測定に用いる波長λを固定すれば、様々な回折角2θ (入射したX線と回折したX線のなす角) に対して、格子面間隔dをそれぞれ求めることが可能です。このようにして、測定した回折パターンから測定物質の原子配列を明らかにしていきます。

X線回折装置の種類

主なX線回折装置として、粉末X線回折装置、単結晶X線回折装置、薄膜X線回折装置が挙げられます。これらは、X線の照射や検出の仕方によって分類されます。

1. 単結晶X線回折装置 (SC-XRD)

単結晶X線回折装置

図2. 単結晶X線回折装置

結晶をある軸について回転させながらX線を照射し、回折パターンを2次元画像として測定する方法です。得られた二次元の回折パターンを専用ソフトウェアによって計算することで、結晶構造の三次元モデルを求められます。

2. 粉末X線回折装置 (PXRD)

粉末X線回折装置

図3. 粉末X線回折装置

照射するX線の入射角や検出器の位置などを動かして測定する方法で、回折角2θに対する回折強度がデータとして得られます。回折パターンが既知の物質の同定や定性分析に主に利用されます。用いる試料の量が少なくて済み、試料の調整が容易であることから、もっともよく利用されている測定方法です。

3. 薄膜X線回折装置 (GI-XRD)

照射するX線の入射角を基板表面にほとんど平行になるように固定し、検出器を動かすことで測定する方法です。基板表面と平行な方向に検出器を動かすIn-Plane測定も行えます。基板の影響が比較的小さく、表面に近い部分の情報が得られるため、薄膜や界面の結晶構造の同定や定性分析に主に利用されます。

 

それぞれ異なる特徴がありますので、使用目的や測定試料に応じて使い分ける必要があります。また、使用目的によっては、類似の測定装置であるX線散乱装置を用いる方がよい場合もあります。他にも、付属装置等を用いることで、光源の種類を変更したり、温度や圧力などの測定環境を変化させながら測定したりすることも可能です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/58/2/58_KJ00007515751/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai1937/78/12/78_583/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesion/44/5/44_5-5/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kogyobutsurikagaku/58/11/58_1003/_pdf

流体センサー

流体センサーとは

流体センサーとは、液体や気体の流れを検知し、測定を行う装置です。

流体には大きく分けて液体と気体があります。それらが流れているか、存在するかなどを主に物理現象を用いて検知するものを流体センサーと呼びます。流体センサーは、高速な測定とリアルタイムなデータ提供が可能です。

瞬時の変化や流体の振る舞いを正確に捉え、データを即座に解析・表示することができます。

流体センサーの使用用途

主に配管内で液体を移送したり、タンク内で液体を貯蔵したりする化学系・石油系のプラントで用いられます。

1. 工業プロセス制御

流体センサーは、工業プロセス制御において重要な役割を果たしています。例えば、製造ラインや化学プラントにおいて、液体や気体の流量や圧力を正確に測定し、制御することが必須です。

流体センサーは、その高い測定精度とリアルタイムなデータ提供により、生産性の向上や品質管理の向上が期待できます。

2. 環境モニタリング

環境モニタリングにおいても、流体センサーは重要な役割を果たしています。水質や大気中のガス成分、湿度などの測定に利用可能です。

地下水や河川の水質監視、大気中の有害物質の検出、農業における土壌の湿度管理など、環境保護や資源管理に寄与しています。

3. 医療診断

医療診断においても、流体センサーは欠かせない存在です。血液、尿、呼気などの生体試料を測定し、診断やモニタリングに利用されます。血圧計や呼気ガス分析装置、体液分析装置などに組み込まれ、正確なデータを提供することで、医療の精度向上と効果的な治療をサポートしています。

4. 自動車

自動車業界での用途は、エンジン冷却液やブレーキ液のレベルや流量の測定、エアバッグのガス供給などです。また、燃料噴射システムやエキゾーストシステムの制御にも流体センサーが活用され、燃費の向上や排出ガスの削減に寄与しています。

流体センサーの原理

一般的な流量センサーにはさまざまな種類がありますが、代表的な原理としては熱式センサーや振動式センサー、圧力センサーなどがあります。

1. 熱式センサー

熱式センサーは、流体の熱伝導率を利用して流量を測定するという仕組みです。センサー内部には加熱体と測定体があり、加熱体から発せられる熱が流体によってどれだけ伝わるかを検知します。流体の流れが速いほど熱の伝わり方が変化し、それをセンサーが検知して流量を算出します。

2. 振動式センサー

振動式センサーは、流体の流れによって生じる振動を検知して流量を測定することが可能です。センサーには振動子があり、流体の流れによって生じる圧力変化によって振動子が振動します。振動の特性を検知し、それを流量として計測することで正確な流量測定を行います。

3. 圧力センサー

圧力センサーは、流体中の圧力の変化を検知する仕組みです。タンクの中に入っている流体の重さを圧力として検出しています。

圧力そのもの (絶対圧力) を測定する圧力式と、大気圧やある圧力との差 (差圧) を測定する差圧式に分けられます。手軽に利用できますが、液体の比重の変化に対応することができません。

流体センサーの特徴

流体センサーには、様々な用途で活躍するための特徴がいくつかあります。

1. 高い感度と正確性

流体センサーは、微小な変化や微量の流体を検知することができる高い感度を持っています。さらに、高い測定精度と再現性を備えており、正確なデータを提供可能です。これにより、微量の試料や微細な流れを測定する場合でも、信頼性の高い結果を得ることができます。

2. 耐久性と安定性

流体センサーは、耐久性と安定性に優れてることも特徴です。特殊な素材やコーティングにより、腐食や摩耗に対して耐性を持ちます。また、環境変動による影響を最小限に抑え、安定した測定結果を提供します。これにより、長期間の安定した運用が可能です。

3. 広範な測定範囲

流体センサーは、幅広い測定範囲に対応することができます。流量、圧力、温度など、さまざまなパラメータを測定することが可能です。また、一つの装置で複数のパラメータを測定する多機能センサーも存在します。このような広範な測定範囲は、異なる要件に応じた測定に適しています。

制御リレー

制御リレーとは制御リレー

制御リレーとは、電気信号を受け取って、機械を制御するためにデジタル信号を出力する部品です。

ある入力が起点となり別の出力に影響を及ぼす様子が、バトンリレーをイメージさせることからこの名前が付けられました。

制御リレーの使用用途

制御リレーは産業や日常生活に幅広く使用される部品の1つです。以下は制御リレーの使用用途一例です。

  • 自動搬送設備の制御用
  • PLC (プログラマブルロジックコントローラー) 内部
  • パーソナルコンピュータ内部
  • エアコンや自動掃除機などの家電製品内部
  • 自動車やバイクなどの搬送車輛内部

主にセンサーや押しボタンからの入力信号を別の機器へ受け渡す目的で使用されます。制御を行っている場所で使用するため、産業機器だけでなく電化製品などにも使われています。

制御系統が複雑な場合は制御リレーによって再現すると数百点必要となり煩雑なため、PLCやPCなどを使用して演算出力します。ただし、数点のリレーを使用するのみであれば電磁リレーなどを用いたほうが安価で簡単に制御を導入することが可能です。

制御リレーの原理

制御リレーには2種類あり、接点がある有接点リレーと無接点リレーに分けられます。

1. 有接点リレー

有接点リレーは、接点を機械的に動作させて接点信号を出力するリレーです。動作原理から、メカニカルリレーとも呼ばれます。電磁コイルや接点などで構成されています。

入力となる電圧信号を受信すると、内部の電磁コイルが励磁されます。励磁された電磁コイルは電磁石の役割を果たし、可動鉄片と共に動く可動接点を動作させます。可動接点は固定接点と接触または引き離され、電気接点信号を出力します。

入力電圧がなくなると、内部の復帰ばねで押し戻されることで、接点が定位置に戻ります。電磁コイルは鉄心の周辺に銅線を巻き付けた構造であり、絶縁の為にニスを塗りつけられています。

また、接点には電気抵抗を低減する目的で、接点には銀合金や金が使用されます。これらは人が容易に触れないように、一般的にはケーシングなどで保護されています。

2. 無接点リレー

無接点リレーは半導体を使用することで、物理的に接点を動作させずに接点信号を出力する部品です。動作原理から、ソリッドステートリレーとも呼ばれます。ソリッドステートリレーはフォトカプラが主要部品です。

まず、入力端子に電圧を掛けると、フォトカプラ内部のLEDが励磁されます。LEDは内部の受光素子に向けて光を発生させます。受光素子には光によって導通するフォトトランジスタなど用いられているため、LEDの光によって接点信号を出力します。

無接点リレーの特徴は、有接点リレーのような機械的な接触が発生しないため、開閉動作による金属摩耗がないことです。伝達速度も速いので高速・高頻度開閉に適しています。その他、絶縁性が良くノイズ対策が不要、小型化が容易、動作音が全くしないという特徴があります。

ただし、定格以上の電圧・電流を加えると半導体素子がすぐに壊れるのが欠点です。熱に弱く、十分な放熱対策が必要になります。また、有接点リレーに比べると高額です。

制御リレーの種類

制御リレーの接点には次の3種類があります。

1. a接点

a接点とは、入力端子に信号を入力していない場合は接点を開放しており、入力されると導通する接点です。ノーマルオープン接点や、メーク接点とも呼ばれます。信号絶縁のみを行う最も一般的な接点です。

2. b接点

b接点は、入力端子に信号を入力していない場合は接点を導通させており、入力されると開放する接点です。ノーマルクローズ接点や、ブレイク接点とも呼ばれます。

a接点とは反対の動きをするのが特徴で、入力信号を反転出力させることができます。インターロック用回路や異常時遮断回路に多く使われます。

3. c接点 (トランスファ接点) 

c接点は、a接点とb接点を組み合わせた3端子接点です。コモン端子とa接点端子、b接点端子の3端子を持ちます。入力端子に信号を入力していない場合はコモン―b接点端子間が導通しており、コモン―a接点端子は開放しています。

入力端子に信号を入力すると、コモン端子―b接点端子が開放し、コモン―a接点端子が導通します。正転―逆転切替の回路などに使用されます。また、c接点は有接点リレーのみに適応されるのも特徴の1つです。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/36/65/index.html
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/18/77/
https://www.omron.co.jp/ecb/product-info/basic-knowledge-series/basic-knowledge-of-relays/part1/basics
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/2377/

電波暗箱

電波暗箱とは

電波暗箱とは、外部からの内部への電磁波を透過させない、また、内部で発生した電磁波を反射させずかつ、外部へ漏洩させないように電磁シールド素材で覆った箱型の電磁波遮蔽装置です。

同様の機能を持ったものに電波暗室がありますが、こちらはその名の通り、電磁波を遮蔽する部屋であり、非常に大掛かりな施設になります。一方で、電波暗箱はそれよりも小型のものを指し、価格も抑えられています。製品によっては持ち運びができるようなものも販売されています。

電波暗箱の使用用途

モバイルネットワークや無線LAN、RFIDなど無線通信を用いたシステムやそれに関する製品の開発において、その試験を行う際は注意が必要です。試験の段階では、開発途中の製品は技術基準適合証明が取得できていないので、外部に信号電波が漏洩すると電波法違反になるためです。電波暗箱はこうした状況を防ぐために使用されています。

電波暗室でも同様の目的は達成できますが、電波暗室の設置は非常に高額で、場所も必要とするため、試験を行うものがさほど大きくなければ、電波暗箱のほうが導入しやすいという背景があります。

電波暗箱の原理

電波暗箱は、内外からの電磁波を遮断することはもちろんですが、試験の目的で使用する際は内部で電磁波が反射しないことも要求されます。

そのため、電波暗箱の内部は電波吸収体で覆われています。電波吸収体の素材はフェライトを焼き固めたものやフェライト粒子やカーボンをウレタン樹脂などに練り込んだものなどが用いられます。この際、広い周波数帯で電波吸収を実現させるために、フェライトやカーボンの濃度に勾配をつけます。しかし実際には塗装によって勾配を実現するのは製造コストの観点から現実的ではありません。

そこでピラミッド上の構造に加工してそれを並べることで吸収材を何層にも積層した効果を得ています。

したがって、電波暗箱や電波暗室の内部の壁は、このような立体的幾何学形状をしています。

電波吸収材のシールド特性に応じてピラミッドの山の高さを変えることで、吸収できる電磁波の周波数などをコントロールすることができます。

参考文献
http://www.micronix-jp.com/products/shield-box/
http://t-sato.in.coocan.jp/terms/rf-absorber.html

サーボプレス

サーボプレスとは

サーボプレスは、プレス機の一つで、従来難しいとされていた加圧部の速度や回数を制御することができる加工装置です。

加圧部はCNCで制御されるサーボモーターで駆動しており、加圧する際の圧力や、加工を行う速度や位置などを厳密に指定することができます。

サーボプレスは、複雑な加工でも焼付き不良などを起こさずに均一に仕上げることができます。

また、材料ごとに適切な条件を設定できるので、これまでは加工困難だった素材でも扱えるというメリットがあります。

サーボプレスの使用用途

サーボプレスは高い加工精度と短い加工時間を兼ね備えており、難材料も扱えることから従来のプレス機から徐々に置き換えられてきています。

とくに、自動車産業ではドアやボンネットをはじめとする車体部品のために、アルミニウムやチタンなどの合金類やカーボン繊維強化プラスチックなどを利用した軽量化が進められています。これらの素材はいずれも従来のプレス機では加工が困難なもので、サーボプレスはこれらを高品質・高効率に加工することができます。

サーボプレスの原理

サーボプレスで加圧の際に厳密な設定ができるのは、サーボモーターを利用しているためです。

サーボモータは、自身の状態(回転数やトルクなど)を常にモニターし、設定した値になるようにフィードバックをかけることができるモーターシステムです。これによって、プレス機の速度を可変にしたり、正確な位置決めを行ったりと自由自在に設定吸うことができます。

従来のプレス機では、一定の速度でしか動作しないので、ゆっくり加圧する必要がある素材を加工する際は、作業時間がかかってしまう問題がありました。しかし、サーボモーターはプレス機が材料に接触して、加圧するときだけ速度を落とし、最下点までプレスしたらもとの位置には素早く戻す、などといった複雑な設定も可能です。こうすれば、加工精度を保ちながら作業時間を大幅に短縮することが可能です。

また、サーボプレスはコンピューター数値制御(CNC)化されたプレス機なので、簡単に外部装置との連携を行い更に複雑な動作をプログラムすることができます。

参考文献
http://www.amada-f.or.jp/r_report2/ftr/2017/201701-0101.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/73/2/73_2_175/_pdf

ブレーキライニング

ブレーキライニングとは

ブレーキライニング

ブレーキライニングとは、ブレーキ装置の部品である摩擦材です。ブレーキは運動エネルギーを摩擦によって熱エネルギーへ変換して制動します。ブレーキライニングは、その摩擦を得るための摩擦材を指します。

ただし、物理的接触が無い回生ブレーキではブレーキライニングは使用しません。一般的に、ディスクブレーキに取り付けられたものをパッドと言い、ドラムブレーキに取り付けられたものをシューと言います。

ブレーキライニングの使用用途

ブレーキライニングは、ブレーキ装置が組み込まれた機器に使用されます。産業用から民生品まで幅広く用いられており、主な使用例は以下の通りです。

  • 自動車の前輪に使用されるディスクブレーキ内部
  • 大型車に使用されるドラムブレーキ内部
  • 自転車や洗濯機に使用されるバンドブレーキ内部
  • エレベーター巻上機に使用されるディスクブレーキ内部

ブレーキライニングの原理

ブレーキライニングを使用するブレーキ装置としては、ディスクブレーキ・ドラムブレーキ・バンドブレーキなどがあります。それぞれの原理は以下の通りです。

  • ディスクブレーキ
    ディスクブレーキでは、シャフトと一緒に回転するローターをブレーキライニングで挟み込み摩擦を発生させます。
  • ドラムブレーキ</br /> ドラムブレーキでは、シャフトと一緒に回転するドラムにブレーキライニングを押しつけて摩擦を発生させます。
  • バンドブレーキ
    バンドブレーキはシャフトと一緒に回転するドラムをブレーキライニング付きバンドで締め付けて摩擦を発生させます。

どのブレーキも運動エネルギーを熱エネルギーに変換させます。ブレーキライニングを選定する際は、使用温度や摩擦係数などの条件があります。さらに、ブレーキ時の不快音や振動の発生具合などの要素も存在するため、摩擦材の材料の種類や配合は多岐に亘り、10種類以上の原材料を配合して作られています。

ブレーキライニングのその他情報

1. ブレーキライニングとパッド

ブレーキライニングとブレーキパッドは、どちらもブレーキに使用される摩耗部分です。ドラムブレーキの場合は「ブレーキライニング」、ディスクブレーキの場合は「ブレーキパッド」と呼称します。

どちらも摩耗材として、ブレーキ時に摩耗して対象物を減速させます。自動車の場合は、雪や泥の影響を受けても確実に機能する材質が使用されます。

レーシングカーのように高速運転と急停止を繰り返す車両の場合、ブレーキライニングの発熱量が多く、真っ赤に変色します。この状況でもブレーキ能力を損なわない材質が使用されます。車両にあったブレーキライニング使用するために、交換時はメーカー純正が望ましいです。

2. ブレーキライニングの交換

ブレーキライニングは使用とともに摩耗するため、定期交換部品に指定されています。交換時期は走行距離確認や摩耗量測定によって決定します。走行距離が長いとブレーキの回数も増加するため、ブレーキライニングの摩耗が進行しやすいです。

走行距離が短い場合も、急ブレーキの多用や過荷重によって早期摩耗が発生する場合があります。定期点検時に摩耗量を測定し、交換基準値に近い場合にはブレーキライニングの交換が推奨されます。ブレーキライニングの摩耗は、ブレーキ音の変化で分かるケースも多いです。

ブレーキライニングが摩耗してくると、ブレーキをしたとき「キーッ」という甲高い音が鳴ります。ブレーキライニングの摩耗によって金属部分同士が接触し始めるためです。ブレーキ時に不快音が聞こえた場合には、早急にブレーキライニングを交換する必要があります。この状況で走行を続けると、制動力の低下により重大事故が発生する恐れがあります。

参考文献
https://www.akebono-brake.com/product_technology/special/
https://www.kobetoyopet.com/service/expendables/brake/
https://www.akebono-brake.com/product_technology/product/automotive/friction_material/

サーモモジュール

サーモモジュールとは

サーモモジュール (英: Peltier device) とは、電流を流して冷却・加熱させる熱電素子のユニットです。

ペルチェモジュールや熱電クーラーとも呼ばれます。サーモモジュールは、各種の冷却・加熱装置に使用される半導体素子のモジュールです。流れる電流の方向をクイック変換することによって、対象物の温度制御管理を高精度に、かつ素早く加熱・排熱させることができます。

この現象は電流が流れるとペルチェ効果が起きることによるもので、工業用としてのみでなく、身近な日常生活用品にも取り入れられています。ペルチェ効果は、フランスの物理学者ジャン・シャルル・ペルチェが1834年に発見した現象です。発見当時は2つの異なる金属を使用しましたが、現在では効率の良い半導体が使われます。

サーモモジュールの使用用途

サーモモジュールの素子は一般に、クリーンな素子として幅広い分野で活用されています。例えば、計測・分析分野では、分光光度計やガス分析装置の除湿に、光学分野ではプロジェクターや監視カメラの冷却などに用いられています。

また、小型・軽量・フロン不要といった特徴を有しており、民生分野ではコンピュータのCPUの冷却やエアコン、空気清浄機、ドライヤー、クーラーボックス、ワインクーラー、医療機器などが用途です。生産コストの低減や高い信頼性を期待できることから、身近な家電民生品にも採用されています。

サーモモジュールの原理

1. ペルチェ効果

サーモモジュールは、2種類の金属の接合部分に直流電流を流すことによって、片方の金属からもう一方の金属へと熱が移動する現象を利用しています。これをペルチェ効果と呼び、サーモモジュールに直接電流を流すと素子の両面に温度差が生じます。

このとき低温側で吸熱、高温側で発熱作用が起きることにより、熱が低温側から高温側へ移動することが可能です。さらに、電流の極性を変化させることによってポンピングする熱方向を変え、また与える電流の大きさを変化させることによって熱量の大きさも変えることが可能になります。

このペルティエ効果を利用して、冷却・加熱・温度制御を容易に行うことができます。

2. 熱電半導体素子

近年、最も採用されている熱電半導体素子は、NとPの特性を明確に持つブロック、もしくは適切にドープされたビスマステルライドの合金を溶接したものです。材料に方向性があることが特徴です。そして、N材料のもつ余分な電子とP材料の不足電子に差が生じることで、熱エネルギーを移動させるのが原理です。

サーモ・モジュールはPとNの半導体素子を、PN交互に直列に接続したパターンをセラミクス基板で挟み、ユニット化したものです。

サーモモジュールのその他情報

1. サーモモジュールのメリット

冷却装置は、一般に冷媒を使用して、コンプレッサなどの機器が必要です。一方、サーモモジュールは冷媒・コンプレッサが不要で、小型・軽量・無振動などのメリットがあります。また、環境に優しい冷却・加熱装置と言えます。高精度の温度制御ができるのも利点です。ただし、効率の面では改善の余地があります。

電子装置の冷却に多く使用されるヒートシンクは、放熱のみです。一方、サーモモジュールは環境温度以下まで冷却が可能であり、効率的な冷却が可能です。

2. サーモモジュールの用途拡大

光通信網に使われる半導体レーザーは、通信情報伝達を安定して行うために、レーザーの波長を一定に保つ必要があります。波長を安定させるのに重要なのは、温度です。この用途にサーモモジュールが多く使われるようになっています。

また、家電製品でイオン発生器が付いた商品が発売されています。浄水式では、カビや雑菌の発生源となる成分が放出されされますが、サーモモジュール式は、空気中の水分を冷やして結露させることで、有害成分のない、きれいなイオンを省電力で発生できます。

さらに、病原体の有無を検査するPCR法は、DNAの反応を増幅して検査します。この場合、精密な温度制御による正確な温度サイクルが必要のため、サーモモジュールが使用されます。PCR検査装置の小型化・卓上化が可能になり、最近では、複数個の検体容器を搭載してパラレルに高効率な検査が可能です。

参考文献
https://www.yhtc.jp/
https://www.z-max.jp/peltier/about/
http://ferrotec-global.com/tech_2_2.php?lang=ja