IPトランシーバー

IPトランシーバーとは

IPトランシーバ

IPトランシーバーとは、大手通信事業者の通信回線を利用した無線通信機システムのことです。

IPは「Internet Protocol」の略で、データの送信元と受信先を設定するためのルールや手順を指します。インターネット上ではIPのルールに則ってPCからPCまでデータをやり取りしています。

IPトランシーバーは電話回線で電波を飛ばすため、従来の無線機と異なり通話エリアが広いのが特徴です。地下やトンネル内のように遮断物が多い場所でも通話できます。携帯電話と無線の長所を併せ持ったハイブリットな通信手段です。

IPトランシーバーの使用用途

IPトランシーバーは通常の無線とは異なり、免許が不要で誰でも気軽に使用できます。また、携帯電話が届くエリアであれば全国どこでも使用可能です。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 建設現場
  • イベントなどの警備業務
  • トラックやタクシー運転手の通話手段
  • 工場や倉庫における相互連絡用通話
  • テーマパークや競技場における相互連絡用通話
  • 宿泊施設における室内-フロント間通話
  • 病院における相互連絡用通話
  • 学校行寿などの教師相互連絡用通話
  • 防災・危機管理

IPトランシーバーの原理

IPトランシーバーは一般的な無線機とは異なり、無線音声電波を飛ばしていません。音声をパケット化して電話回線で送信し、受信機器で音声に復元しています。つまり、携帯電話のようにインターネット回線で音声を符号化・圧縮して通信を行う仕組みです。

多人数に一斉通信できる点が特徴で、最近では携帯電話のアプリケーションでIPトランシーバーを利用することも可能となりました。

IPトランシーバーのその他情報

1. IPトランシーバーのメリット

IPトランシーバーは一般的な無線機と動作原理が異なり、大規模なインターネット回線を使用して送受信を行っています。インターネット回線は今や日本全土に広がっており、インフラの一部となっています。したがって、IPトランシーバーには以下のような利点があります。

  • 暗号化が施されるため、盗聴を受けずに安心して利用できる
  • 1対多数での通信もできる
  • GPSを利用してIPトランシーバーを持つ人の動向を確認できる
  • 災害時抑制率が低いデータ回線を利用しているため、有事の際も利用できる確率は高い

2. IPインカムとは

IPインカムは従来のトランシーバーや無線機では実現不可能な新しいコミュニケーションシステムです。IPインカムには2つのタイプがあります。

  • ネットワークトランシーバーシステム
    トランシーバーや業務無線機をインターネット通信網に接続するシステムです。このシステムにより、業務無線機では電波が届かない超高層ビルのでの通話が可能になります。また、本部と全国の店舗間と結ぶ広域拠点間通信網としても利用可能です。
  • IP無線機
    外見はトランシーバーですが、ドコモなどの通信事業者回線を利用して日本全国が通話圏内になります。一般のトランシーバーのように通話距離や不感地帯を気にせず利用可能です。また、IP無線機はトランシーバーのように全員一斉につながる通話ができます。そのため、大規模イベントや建築現場などで利用されます。

3. アプリ版のスカイトランシーバ

スカイトランシーバーはスマートフォンをIPトランシーバーとして活用できる専用アプリです。NECネッツエスアイがサービス提供しています。専用の業務用無線機の持ち運びが不要で、音声通話機能だけでなくテキストチャット機能や発信者位置情報機能などを搭載しています。

テキストチャット機能は、同一チャンネルを利用する相手にテキストを一斉同報できる機能です。発信者位置情報機能は、音声発信者の位置情報をマップで確認できる機能を指します。アプリを利用すれば、端末にかかるコストを抑えつつ、便利なIP通信が可能です。

参考文献
https://www.mcinc-products.jp/vpt/vpt_faq/vpt_faq_1/
https://www.sanwa-sys.co.jp/guide/gyoushu.html
https://skytc.jp/ip-wireless/ip-wireless-structure/
https://www.musen.tokyo/column/1427.html
https://www.incom.ne.jp/ipincom/

FCコネクタ

FCコネクタとは

FCコネクタ

FCコネクタとは、光ファイバ用の端子である光コネクタの一種です。

2つの光ファイバケーブル間を接続するため使用される部品であり、精密機器である光機器同士を接続するという非常に重要な役割を担う部品です。

FCコネクタの先端は、光ファイバケーブルの先端が差し込まれるセラミックなどよりなるフェルールを備えています。この部品は、フェルール同士を繋ぐ光アダプタと共に使用されています。光アダプタに2本のフェルールを差し込み、これらを金属製の部材によりネジ止めして固定しており、安定した強固な固定が可能です。

FCコネクタの使用用途

FCコネクタを含む、光コネクタを用いた2つの光ファイバケーブル間の接続は、人手によって簡単に着脱できる上に、接続部分の強度も十分に高いレベルを保てます。そのため、光コネクタを利用して光ファイバケーブルを繋ぐ方法は、様々な場面で使用されており、非常に汎用性が高い方法です。

光コネクタのなかでもFCコネクタは、ネジ締め方式を使って光ファイバ同士を接続しています。そのため、2つの光ファイバケーブル間の固定に強度が求められる接続の際に好適です。光学計測器や光通信システムなどでの利用に加え、CATVやLANや公衆通信回線などでも使用されています。

FCコネクタの原理

FCコネクタの原理を、以下の3点に分けて解説します。

1. FCコネクタの構造

FCコネクタは、光ファイバケーブルの先端が差し込まれ、端部に光ケーブルの接続面が露出するフェルールと呼ばれるセラミックよりなる部材を有します。その外周側にフェルールを保持する金属製のハウジング、さらにその外周側にナット式の締結部材をもつ構造です。

2. 光アダプタの構造

FCコネクタは、それ単体で用いられるものではありません。2つのFCコネクタ間を繋ぐ金属製の光アダプタと共に用いられます。光アダプタの形状は円筒状の部材の長さ方向の中央の外周側に円筒状の締め付け部材が配されているものや、締め付け部材が正方形になっているものなどがあります。いずれにしても中心の円筒状の部材の貫通穴内には円筒スリーブと呼ばれる部材が配された構造です。円筒スリーブは長さ方向に切れ目が入った円筒状の部材で、外周がある程度伸縮する構造です。

3. FCコネクタの接続方法

2つのFCコネクタ間を接続するには、光アダプタの中心の貫通穴の両端から光ファイバケーブルの端面が露出したフェルールを挿入します。光アダプタ内の円筒スリーブには長さ方向に切れ目が入っており、適度に伸縮するため、フェルールの外周側からの確実な固定が可能です。フェルールを確実に固定した後、ナット状の締結部品で光アダプタとフェルールを固定します。これで2つのFCコネクタ間の接続が完了です。

FCコネクタはナット式の部材でネジ留めするため、非常に安定して強固な固定が可能なことがメリットですが、ネジ留め作業ができる空間が必要であるデメリットもあります。

FCコネクタのその他情報

1. FCコネクタの歴史

FCコネクタは、元々NTTが開発したものです。マルチモードファイバ用として1977年に開発されました。その後、1979年には、シングルモードファイバにも適用可能であると確認されました。光ファイバケーブル網がどんどん普及し、日本国内で広く使用されています。

2. FCコネクタとSCコネクタ

FCコネクタは、光学計測器や光通信システムなど基幹伝送系に使用されてきました。80年代中頃には、アクセス系でも光ファイバを導入する流れとなり、これに応じて開発されたのがSCコネクタです。NTTが開発し、1986年に実用化されました。

LANやCATVなどのアクセス系に使用するには、高密度で多くの光コネクタを実装する必要があります。そのため、低コストで高密度実装が可能であり、着脱も容易にできる光コネクタが必要でした。

これに対応すべく、SCコネクタは、金属部品を使用せず、内部に光ファイバケーブルを持つフェルールをプラスチックよりなるハウジング内に収納しています。コネクタ同士を繋ぐ光アダプタもプラスチック製です。加えて、光ファイバケーブルを繋ぐ貫通穴があります。FCコネクタでは光アダプタ内にフェルールを挿入しネジ止めで固定していました。一方でSCコネクタでは、ハウジングを構成するプラスチックの可撓性を利用してフェルールを光アダプタ内に固定することで、2つの光ファイバケーブル間の接続を可能としています。

参考文献
https://www.fiberlabs.co.jp/tech-explan/about-optical-connector/
https://www.panduit.co.jp/column/naruhodo/4239/
https://www.opcom.co.jp/techinfo/hikarisystem/h-basis/
http://www.seof.co.jp/basic/basic_01.html
https://www.omron.co.jp/ecb/product-info/basic-knowledge-series/basic-knowledge-of-connectors/part1-connector-from-the-beginning/usages/usage03

FAシステム

FAシステムとは

FAシステム (Factory Automation system) とは、工場や物流倉庫やプラントなどの産業に関わる業務などを自動化したシステムの総称のです。

主な目的は、省力化による人員の削減、危険回避、加工精度の向上や加工のバラつきの低減による品質の向上、加工速度の向上による収益の拡大などです。

FAシステムの使用用途

FAシステムは、例えば人間が持つには重いものや大きいもの、小さすぎるもの、形が不定なもの、熱いもの、冷たいもの、大量なものなどを移動する際に使用されています。また、人間が扱うには硬いものや柔らかすぎるものを高い精度で加工したり、人間にとって危険な作業などを行ったりすることも可能です。

FAシステムの対象は、基本的に加工、組み立て、マテリアルハンドリング、管理の4分野を指します。人間が行うと危険であったり、そもそも非現実的であったりする作業を安全にかつ確実に行えるように機械を組み合わせてシステムを作ります。

設置する会社や取り扱う製品などによって量や形状、材質、仕入れ形態、加工内容などの特色が異なるため、FAシステムを設置する会社の特色に合わせた特注品として、システムを構築する場合が多いです。

FAシステムの原理

FA機器として導入される例としては、ストッカー、搬送機、パーツフィーダー、加工機、検査機等が挙げられます。これらを組み合わせて、システムとして構築します。

システムには専用設計されたのものから汎用機械を簡易にカスタマイズしたものまで、さまざまです。そのため、基本的に規模や予算などを指針に、導入を検討します。

1. ストッカー

原材料や仕掛品などを一時的に保管する機器を指し、主に搬入口、保管部、搬出口などで構成されています。装置には、一部を人手に頼り一部を自動化した半自動のものから、全てを自動で行う全自動のものまであります。ものの形状や大きさや重さなどによって、選定したり専用設計したりします。

2. 搬送機

機器同士あるいは工程同士で原材料や仕掛品、加工品、完成品などを搬送する機器を指し、コンベア式、昇降式、パイプライン式、レール式、自走式などの種類があります。搬送するものの形状や大きさや重さなどによって、選定したり専用設計したりします。

3. パーツフィーダー

加工や組み立てを行う際に、その部材を供給する機器を指します。例えば、ネジを締める機械にネジを供給するパーツフィーダーは、バラバラに投入された多数のネジの方向を揃えて1個づつ順番にネジ締め機に供給するような動作をします。

4. 加工機

原材料に対して曲げプレス、打ち抜きプレス、切削、組立、溶接、加熱加工、冷却加工、化学処理などの加工を施す機器を指します。加工の内容や素材の種類、大きさ、形、重さなどその組み合わせは千差万別なので、FA業者と詳細に打ち合わせて仕様を決めながら準備するのが一般的です。

5. 検査機

主に加工済みの品質の確認に利用します。検査には物理的な大きさなどを測長するレーザー測長機や、傷やムラの有無を視覚的捉える画像検査装置、力やトルクを計るもの、温度などを計るものなど、検査対象に応じてそれに適した検査装置と搬送や位置決めなどを行なう機器を組み合わせたような構成をしているのが一般的です。

FAシステムのその他情報

FAシステムの応用

昨今のFAでは、工程毎に用意されたFA機器またはシステムをEthernetなどで連結する場合が多いです。原材料の使用量や加工数量、仕掛かり数量、不良数量などの情報を集約して工場全体を一元管理することで、日程管理やコスト管理をするようなシステム構築をしている事業所が増えています。

ERPパッケージ

ERPパッケージとは

ERPパッケージ

ERP (英: Enterprise Resource Planning) パッケージとは、企業のさまざまな業務を統合的に管理するシステムのことです。

会計管理、販売管理、物流管理、生産管理、人事給与管理などの機能が1つのシステム基盤で提供されるため、企業内の情報を一元化ができます。これにより、部門間の情報共有や業務連携がスムーズになり、業務効率や迅速性が向上します。

また、ERPパッケージは業務プロセスを標準化し、属人化やバラツキを減らし、品質やコストの改善にも寄与します。さらに、各部門の状況や全社的なパフォーマンスをリアルタイムで把握できるため、経営層は正確な意思決定が可能です。

ERPパッケージは全社規模でシステムを運用可能なため、設備や人材の最適化も図れます。ERPパッケージは、企業の競争力向上に欠かせないシステムです。

ERPパッケージの使用用途

ERPは、「会計業務」「生産業務」「販売業務」「物流業務」「人事業務」などの業務を効率化するために使用されています。企業の基幹業務は、部門ごとに必要な情報自体や情報の取り扱い手法が大きく異なるため、これまでは部門ごとに導入された個別のシステムで管理し、情報は部門ごとに独立したデータベースで処理されてきました。

しかし、企業の業務全体の流れを通して考えた場合、情報は最終的に会計業務に集約されなくてはならないため、これら別部門の個別の業務情報は全てが関連しています。これまでは人事管理の給与情報や販売管理の仕入れ売り上げ情報を会計処理に反映するために、別部門ごとのデータベースを跨いで、手間暇とコストがかかってしまいました。

ERPパッケージを導入することで、別部門ごとの業務管理を連携し、効率的に運用できます。

ERPパッケージの原理

基幹システムは、企業の主要業務を支えているさまざまなシステムのことを指しています。「業務系システム」「バックオフィス系システム」と呼ばれいて、業務ごとに独立したシステムとなっているのが一般的でした。

しかし、別部門ごとに自部門に都合の良いように独自に作り込まれた別々の基幹系システム同士は、互いに必要なデータ連携が非常に難しく、部分的・分断的にしか互いのデータを取り扱えませんでした。経営データのリアルタイムで迅速かつ正確な分析が重視される現代ビジネスでは、この問題は大きな損失を招きます。

それに対してERPパッケージでは、複数の基幹系システムがあらかじめ統合 (パッケージング) されていることから、最初からデータベース及びマスターデータを1つに統合して扱っているため、連携処理は一切不要です。リアルタイムで、一元的なデータ分析が可能となっています。

ERPパッケージは、別部門間を跨いだデータをやりとりする際の手間とコストがなくなるだけでなく、さらにはリアルタイムでその企業の経営状況を把握するのに必要な情報が、迅かつに正確に得られるようになります。企業経営層は経営改善に必要な最適な判断を、これまで以上に的確にかつ迅速に下すことが可能です。

ERPパッケージの種類

1. オンプレミス型ERPパッケージ

ERPパッケージを導入する会社にサーバーを導入しシステムを構築、社内で運用を行うものです。会社に合わせた機能を追加開発する等の柔軟な対応が可能で、社内ネットワークを活用するためセキュリティの安全性も高いです。

一方、サーバーの購入等の初期費用や保守にかかる人件費などの維持費等をすべて会社で用意する必要があり、コストも上がる傾向にあります。

2. クラウド型ERPパッケージ

会社にサーバーを設置せず、インターネット上でERPパッケージが利用できるものです。ネットが繋がればいつでもどこでも操作ができます。サーバーが不要のため導入までの期間も短縮され、初期コストや運用コストの削減につながります。

一方、インターネット環境が必ず必要であることから、ネットワークで障害が起きた場合に利用できなくなる場合もあります。また、インターネット上ですべての情報を管理しているため、情報漏洩の可能性も考慮する必要があります。

3. ハイブリッド型ERPパッケージ

オンプレミス型とクラウド型の利点を活かしたハイブリッド型と呼ばれる、重要な機密情報が含まれるような機能をオンプレミス型で運用し、ネットワーク上にあっても問題ないデータをクラウド型で利用するタイプもあります。

ERPパッケージのその他情報

ERPパッケージの市場動向

近年のERPパッケージ市場の動向としては、パッケージライセンスの売上高は増加傾向にあります。市場拡大にはDX (デジタル技術の活用による業務やビジネスの変革) が後押ししたとの分析もあり、ERPの活用が進んでいます。

また、テレワークや非対面での業務が近年では推奨される中で、クラウド型のERPパッケージの活用が急速に進みました。

参考文献
https://www.grandit.jp/erp/
https://www.clouderp.jp/blog/what-is-an-erp-package
https://ferret-plus.com/11576
https://www.clouderp.jp/blog/market-share-of-erp-package.html
https://www.clouderp.jp/blog/cloud-erp-or-onpremises-erp.html

AD変換ボード

AD変換ボードとは

AD変換ボードとは、様々なアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を持ったボード (基板) のことです。

自然界のあらゆる現象はアナログ信号で取得されるため、数値計算やデジタル信号処理、制御などをする際は、AD変換ボードを使ってデジタル信号に変換する必要があります。AD変換ボードには組込用途に応じて、様々なインターフェースを持つ製品がリリースされています。

パソコン内蔵用のPCI-Expressや他の基板のドータカードとして接続するFMC、USBなどのインターフェースを持つ製品がリリースされています。

AD変換ボードの使用用途

AD変換ボードは、主に各種センサで取得されるアナログ信号をマイコンなどで処理するためにデジタル信号に変換する際に使用されます。

1. 測定・監視

AD変換ボードは、温度、圧力、光、音などの物理量をデジタル信号に変換するために使用されます。これにより、センサからの信号を取得し、測定や監視を行うことが可能です。例えば、工場での製品品質管理や、環境モニタリングなどが挙げられます。

2. データ収集・処理

AD変換ボードは、アナログ信号をデジタル信号に変換することにより、データを取得し、処理するために使用されます。例えば、医療機器での心電図信号の取得や、音声処理などが挙げられます。

3. 信号処理

AD変換ボードは、デジタル信号処理を行うために使用されます。例えば、音声のフィルタリングや、波形解析などが挙げられます。

AD変換ボードの原理

A/D変換は、以下のような標本化、量子化、符号化のステップでアナログ信号をデジタル信号に変換します。

1. 標本化 (英: Sampling)

連続な信号であるアナログ信号の振幅値を離散的な周期で切り出します。この時の周期を「サンプリング周期」と言い、記号としては主にTsで表します。計算式は下記の通りです。

サンプリング周期: Ts = 1/Fs (Fs: サンプリング周波数)

2. 量子化 (英: Quantization) 

標本化によって離散的な周期 (サンプリング周期) で切り出された振幅値を、デジタル信号に変換できるように離散的な振幅値に近似します。この時、量子化によって生まれる誤差を「量子化誤差」と呼び、以下の式で表されます。

量子化誤差= (標本化した値) – (量子化した値)

入力された電圧を基準となる電圧と比較することで量子化を行います。比較するやり方によって、高精度な変換や高速なサンプリングが可能な方式があります。

3. 符号化 (英: Coding)

量子化によって近似した離散的な振幅値を0と1の2値で表す符号に変換します。

AD変換ボードの種類

AD変換ボードの種類はAD変換方式により区分されます。主要な方式は、以下の3種類です。

1. 逐次比較

逐次比較型のAD変換方式は、アナログ信号を電圧の比較によってデジタル信号に変換する方式です。アナログ信号を比較対象の電圧と比較して、次々にビットを決定していきます。

最大分解能は18ビット、最大サンプルレートは10MHz程度です。アンチエイリアシングフィルタが外付けで必要となります。

2. デルタシグマ

デルタシグマ型のAD変換方式は、アナログ信号をデジタル信号に変換するために、デルタシグマ変調技術を利用する方式です。最大分解能は32ビット程度で最も高分解能が得られる方式ですが、最大サンプリングレートは1MHz程度で低速です。

3. パイプライン

パイプライン型のAD変換方式は、アナログ信号をパイプライン構造の複数のステージに分割し、並列に処理することで高速な変換を実現する方式です。各ステージでアナログ信号をデジタル信号に変換し、次のステージに渡します。

最大サンプルレートは1GHzで、最大分解能は16ビット程度です。回路が複雑になるので、コストが高くなります。

AD変換ボードの選び方

1. 分解能

必要とされる分解能を持つAD変換ボードを選択します。例えば、フィードバック制御に使用する場合は、精度要求から決定します。

2. サンプリング周期

対象となる信号の周波数範囲によりサンプリング周期を決めます。理論上は周波数範囲の2倍のサンプリング周期が必要となりますが、実際には10倍必要と言われています。

3. 入力チャンネル数

AD変換ボードは、1チャンネルのものから数百チャンネルのものまで、さまざまな種類があります。測定する信号の数に応じて、必要な入力チャンネル数を選択する必要があります。

4. 入出力インターフェース

AD変換ボードは、USB、FMC、PCI Expressなどのインターフェースを持っていることが多いです。使用するインターフェースに合わせて、適切なインターフェースを選択する必要があります。

5. ソフトウェア

AD変換ボードには、測定用ソフトウェアが付属していることがあります。このソフトウェアは、データの収集、処理、表示、保存などの機能を提供するものです。使用する目的に合わせて、必要な機能を持ったソフトウェアがあるかどうかを確認する必要があります。

6. コスト

必要な精度、サンプリングレート、入力チャンネル数などに応じて、適切な価格帯のものを選択する必要があります。

参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/ad-converters/ad_what1
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/ad-converters/ad_what2

5相ステッピングモーター

5相ステッピングモーターとは

ステッピングモーターとは、パルス信号によって回転角度や回転速度を制御できるモーターであり、正確な位置決めが必要な際に使用されるモーターです。

ステッピングモーターの中でも、1パルスに対して動く角度が0.72°のものを5相ステッピングモーターと呼びます。

5相ステッピングモーターの使用用途

ステッピングモーターは、特に精密な位置決め精度が求められる機械に使用されます。

具体的には、FA用の機械、半導体やFPD (フラットパネルディスプレイ) 、太陽光パネル製造装置、分析機器、医療機器、精密ステージなどにおいて、特に高精度な制御が求められる部位などです。

5相ステッピングモーターの原理

ステッピングモーターは、一般的なモーターと同様に主に「ローター」と「ステーター」で構成されています。ただし、回転角度を高精度で制御するために、ローターやステーターには以下のような特長があります。

1. ローター

ステッピングモーターの内部にある回転子のことです。ローターは4つの部品で構成されています。2つのローター、マグネット、回転軸です。2つのローターの外周にはそれぞれ小歯 (こば) が50歯ずつあります。

小歯は等間隔なので、1ピッチは7.2°になります。このローターが互いに3.6°ずれた位置で組み合わされ、永久磁石を内包しています。この構造によって一方のローターがN極、もう一方のローターはS極に磁化されます。

2. ステーター

ステーターはローターの外側にある固定子であり、一般的なモータと同様に鉄芯に巻線が巻かれています。特に5相ステッピングモーターでは、ローターを挟んで対向する位置に1セットで「相」が構成されA相からE相まで、合計10個並んでいます。

それぞれの相の固定子にも小歯が設けられており、そのピッチは7.2°ピッチです。

5相ステッピングモーターの特徴

ステッピングモーターは、主に以下のような特長があります。

  • 小型で高トルクを発生させることができるため、頻繁に起動と停止が可能。
  • 停止している時でも保持力が発生するため、機械的なブレーキが無くても停止位置を保つことが可能。
  • 取付角寸法が同等のサーボモーターと比べ、より大きな慣性負荷を駆動することができる。

5相ステッピングモーターは、このような特長に加え、高精度での位置決めが可能なため、顕微鏡用のXYステージの駆動などに使用されています。

5相ステッピングモーターのその他情報

1. 5相ステッピングモーターの動作手順

  1. ステーターのA相に電流を流して、S極に励磁します。すると、N極に磁化されているローターの小歯がひきつけ合って停止します。この時隣のB相磁極の小歯と、もう一方のS極時磁化されているローターの小歯とのずれは0.72°です。
  2. 次にステーターのB相に電流を流し、N極に励磁します。するとB相磁極の小歯と、0.72°ずれていたローターの小歯が引きつけ合うので、7.2°だけ回転して停止します。

上記の動作を繰り返すことによって、ローターを7.2°ずつ回転させます。A相からB相、C相と次々に励磁するステーターの相を連続的に変化させます。制御用の電気信号は「電源のON/OFFの1サイクルを1パルス」とし、1パルスが入力されると、1ステップ角度  (5相の場合は0.72°) だけモーターの出力軸が回転します。

2. 5相ステッピングモータの配線

5相ステッピングモーターは、配線方法によってその特性が変わります。機器の設計に際しては、この配線方法を意識することで、その機器に適したコストと性能のバランスを得ることが可能です。配線方法には、スター結線やペンタゴン結線、新ペンタゴン結線があります。

3. 5相ステッピングモーターの制御

ステッピングモーターは、その回転速度を時間に応じて設定することでその特性を最大限に発揮します。回転速度を時間に応じて設定することを一般的には運転パターンと呼び、2通りのパターンがあります。

自起動運転パターン
モーターの回転速度を最初から最後まで同じ速度で動かす運転パターンです。速度と時間をグラフにすると、四角形 (矩形) になるため、矩形駆動と呼ばれます。

台形駆動運転パターン
モーターの回転速度を最初は遅く、徐々に高速にし、最大の速度で一定期間回転したあと、徐々に低速にもどして、停止する運転パターンです。速度と時間をグラフにすると台形になるため、台形駆動と呼ばれます。

モーターの回転速度は、下記の要素で決定されます。

  • 選んだモーターの特性
  • 動かしたい対象物の質量
  • 動かしたい対象物に加わる摩擦
  • モーターに加える電力
  • モーターの配線方法
  • モーターの励磁方法

特に急激に動かし、急激に止めたい用途で使用するときは、選んだモーターの特性、特にローターイナーシャが最重要となります。

4. 5相ステッピングモーターと2相ステッピングモーターの違い

5相ステッピングモーターは2相ステッピングモーターに対して、一般的には極端に高額になりますが、5相ステッピングモーターは、2相ステッピングモーターにより1ステップ (モーターへの回転指示の最小単位) あたりのモーターの回転角度を小さくでます。よって下記の特性が欲しいときは、5相ステッピングモーターが選ばれます。

  • 微小角度で回転させたいとき
  • 騒音を低くしたいとき

参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/products/stepping/overview_1/
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/webseminar/stkiso_2_1_2/
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/webseminar/stkiso_2_2_1/
http://www.mekatoro.net/digianaecatalog/orien-sougou/book/orien-sougou-P0021.pdf

材料混合機

材料混合機とは

材料混合機

材料混合機とは、2種類以上の材料を機械的にかき混ぜることで、必要な混合状態を実現できる機械のことです。

材料混合機は、固体と固体、固体と液体、液体と液体、気体と液体など、異なる形態の材料を混合できます。材料混合機には、重量計量式と容量計量式の混合機があります。

重量計量式の混合機は、材料を質量で計測しながら混合するため、容量計量式に比べて、材料の形状大きさによる計量誤差が少なく、より確実に高精度な計量をしながら混合が可能です。一方、容量計量式の混合機は、スクリューでの供給と時間で材料を計量しますが、質量計量式の混合機に比べて安価です。

材料混合機は、さまざまな工業分野で利用されており、食品、化学、農業、医療、建設、プラスチック、化粧品など、多岐にわたる分野で使用されています。材料混合機を使用することで、均一な混合が可能になり、製品の品質向上や製造工程の効率化に貢献します。また、混合機の種類や材質を選ぶことで、特定の要件に合わせた混合が可能です。

材料混合機の使用用途

材料混合機は、物質の混合が必要なさまざまな業界で使用されています。例えば、医薬品業界では薬剤の混合、食品業界では添加物の混合、化粧品業界では化粧品の原料の混合などが挙げられます。また、化学品業界では接着剤、塗料、インク、シーリング材などの製造に使用され、用途は非常に幅広いです。

材料混合機は、大量の材料を効率的に混合できるため、大型プラントからラボレベルまで、あらゆる規模の製造現場で使用されています。材料混合機の特徴は、混合する材料の種類によって、適した攪拌翼が用意されていることです。これにより、固体と液体のような混合するのが難しい材料でも効率的に混合できます。

材料混合機は、混合精度や生産性を向上させることができる装置です。製造現場では欠かせない機器であり、材料の混合に必要な機能を備えた製品を提供しているメーカーも多数存在しています。

材料混合機の原理

材料混合機は、2つ以上の固体を効率的に混合するために、攪拌力や転動力を加え、混合槽内で運動させています。粉粒体の混合では、流体同士のような自己拡散性がないため、攪拌翼が必要です。

混合進行中には、均質化プロセスと偏折化プロセスが同時に進行するので、混合する材料固体の粒子径分布や比重に差がある場合、均質化と偏折化の強さの違いが生じます。そのため、装置設計や運転条件を考慮することが必要です。

混合機の混合槽の内部には、バタフライ翼、アンカー翼、パドル翼、タービン翼などを組み合わせた多軸ミキサーが使用され、低速軸と高速軸を組み合わせることで、局部フローを解消し、全体を均一に混合できます。ただし、用途によってはバタフライミキサーのように、1軸でも対応可能な場合もあります。

材料混合機の原理を理解し、混合する材料固体に応じて適切な装置を選択することが、効率的で均一な混合を行ううえで重要です。

材料混合機の種類

材料混合機は主にリボンブレンダー、パドルミキサー、バタフライミキサー、ドラムミキサーの4種類が存在します。

1. リボンブレンダー

リボンブレンダーは、螺旋状のブレードを回転させることで、材料を混合する機械です。リボンブレンダーは、粘土や乾燥剤、化粧品、飼料などの粉粒体や顆粒状の材料の混合に適しています。

2. パドルミキサー

パドルミキサーは、短いパドル状のブレードを装備したミキサーで、軸を中心に回転させることで、材料を混合します。パドルミキサーは、固体と液体の混合に適しているため、化学反応の前処理などにも利用されます。

3. バタフライミキサー

バタフライミキサーは、2枚のバタフライ状のブレードを回転させることで、材料を混合する機械です。バタフライミキサーは、水と油の混合や、化粧品など比重が異なる液体の混合に適しています。

4. ドラムミキサー

ドラムミキサーは、円筒形の容器に、内部にあるブレードを回転させることで、材料を混合する機械です。ドラムミキサーは、乾燥剤や飼料の混合に適しています。

参考文献
https://www.inouemfg.com/kongouki/
https://www.kawata.cc/products/products_cat/weighing/
http://www.hiroshimamm-chemtech.com/knowledge/knowledge-858/

ネジポンプ

ネジポンプとは

ネジポンプ

ネジポンプとは、ネジ状の回転体と筒状固定体を組み合わせて構成されるポンプです。

回転ポンプの1種で、ネジ型の回転体が回転することによって流体をポンプの吐出口に向かって移送します。別名はスクリューポンプです。

ネジの数の違いによって、1軸ネジポンプ、2軸ネジポンプ、3軸ネジポンプがあります。

ネジポンプの使用用途

ネジポンプはその構造上の特性から、多様な用途に使用されます。特に粘度が高い液体や緩やかに固形物を含む液体を移送することができるため、産業界で広く使用されています。以下はネジポンプの主な使用用途です。

1. 食品産業

ペースト状の液体、ジャム、ソース、シロップなど、食品産業で使用されるさまざまな液体を移送するために使用されます。ネジポンプは液体を傷つけずに移送可能で、製品品質を保持することができます。

2. 化学工業

酸やアルカリ溶液、石油製品など、多様な化学物質を扱うために使用されます。粘度が高い液体を移送することができるため、高粘度の化学物質を扱えます。

3. 石油化学工業

石油化学工業では、粘度の高い重油などを移送するためにネジポンプが使用されます。また、高温の液体を扱う際にも有用です。ネジポンプは摩耗が少ないため、長期間の運転が可能です。

4. 農業分野

農業分野では、畜産業や酪農業などで使用されます。牛乳や液体肥料など、粘度の高い液体を移送するために使用されます。また、ネジポンプは自己吸引性が高く、搾乳機などで使用されることもあります。

5. 建設業

建設現場では、コンクリートポンプやセメントポンプなどで使用されます。ネジポンプは、緩やかに固形物を含む液体を移送することができるため、建設現場での用途が非常に多岐にわたります。

ネジポンプの原理

ネジポンプは、固定された筒状部品 (ステーター) と、回転する螺旋状部品 (ローター) で構成されます。ローターが回転することによってステーター内部の液体が吸い上げられ、螺旋状の形状に従って吐出口へと移送されます。

液体をポンプ内部に吸い上げるための自己吸引力が非常に高く、ポンプが液体上方に位置していなくても吸い上げることが可能です。また、回転部品が液体に触れることがないため摩耗が少なく、高粘度の液体を扱えます。

螺旋状に刻まれたローターとステーターの間には、液体が通るためのクリアランスがあります。このクリアランスは一般的には非常に狭く、数百分の1ミリ程度です。このクリアランスによってローターとステーターの螺旋状の形状が作り出す吸い上げ力が発生し、液体を吸い上げることができます。

ネジポンプの種類

ネジポンプには、いくつかの種類が存在します。以下はネジポンプの種類一例です。

1. 一軸ネジポンプ

単一のスクリュー (ローター) とステーターから構成されたネジポンプです。液体を吸い上げるスクリューには螺旋状の溝が刻まれており、回転によって液体を移送します。一軸ネジポンプは、主に低圧の流体移送に使用されます。

2. 二軸ネジポンプ

二軸ネジポンプは、2つのスクリューが向かい合わせに配置されたポンプです。各スクリューは回転しながら反対方向に進み、液体をポンプの吐出口に向かって移送します。高粘度の液体を移送するために使用されます。

3. 三軸ネジポンプ

三軸ネジポンプは、3つのスクリューが同心円状に配置されてたポンプです。各スクリューの回転によってポンプの中心に向かって移送されます。三軸ネジポンプは、高粘度の液体を扱うために使用され、一般的には石油化学工業分野で使用されます。

4. バキュームネジポンプ

バキュームネジポンプは複数のスクリューを使用し、液体を吸い上げるための真空圧力を発生させるポンプです。液体の自己吸引や真空処理に使用されます。

ネジポンプの選び方

ネジポンプを選ぶ際には、対象液体の粘度、密度、粒度、腐食性などの特性を把握することが重要です。液体の特性に応じて、スクリューの形状や材質、ポンプの回転数などを調整する必要があります。

また、使用目的に合わせたタイプを選択することが重要です。食品産業で使用する場合は、ステンレス鋼製のポンプを選択することが多いです。

長期間運転する際は、メーカーの信頼性も欠かせないポイントになります。メーカーの評判や品質、サポート体制などを調べ、信頼性の高いメーカーから購入することが望ましいです。

ファイバアンプ

ファイバアンプとは

ファイバアンプ (光ファイバアンプ) とは、光信号を増幅するために用いるアンプです。

光ファイバ内で光信号を伝播させる際に、光信号が伝送あるいは分配によって減衰してしまうため、その光信号を補う役割があります。従来、光信号を増幅するために、半導体ICなどで電気的に増幅した後、光に再変換し、再度送信し直すという方法をとっていました。

これに対しファイバアンプでは、光信号そのものを直接、光ファイバ内で増幅することが可能であるため、光通信の分野で広く用いられています。

ファイバアンプの使用用途

ファイバアンプ (光ファイバアンプ) は、光ファイバによる光通信分野で、特にファイバ内部の伝搬中の光の減衰が課題となる長距離の光通信用途で広く用いられています。

主流である希土類元素ドープファイバーを用いた光信号の増幅は高出力です。また、半導体による電気的な増幅では対応不可能な高い変調周波数や波長多重された光信号に対しても増幅可能なため、情報量の多い光信号に対応しています。

その特性を活かし、光通信の中でも長距離中継システム、光多分配システム、光周波数多重化システムなどで用いられています。

ファイバアンプの原理

ファイバアンプ (光ファイバアンプ) は、主に希土類ドープファイバーとポンプレーザーダイオード (ポンプLD) によって構成されており、誘導放出という物理現象を活用して光信号を増幅する原理を有しています。

まず、希土類イオンをポンプLDで励起すると、入力された信号光がトリガーとなり、誘導放出を起こすことで電気信号への変換をせずに光信号のまま増幅がなされます。他の構成部品は、入力された信号光とポンプ光を合成するためのWDMカプラ、増幅された光が発振するのを防ぐ光アイソレータが使われており、ドープに用いる希土類イオンの種類と光ファイバの材質を変更することで、異なる波長帯の光も増幅可能です。

希土類イオンとしてはそのエネルギー準位に対応し、Prイオンは1.3μm帯、Erイオンは1.5μm帯及び0.85μm帯、Tmイオンは1.4μm帯及び2μm帯、Ybイオンは1.0μm帯の増幅に用いることができ、特に1.3μm帯、1.4μm帯、0.85μm帯などの増幅は石英ファイバではなく、フッ化物ファイバを使用します。

ファイバアンプの種類

1. エルビウムドープファイバアンプ (EDFA)

長距離光通信用の石英系の光ファイバは波長1.55μmに最小損失を有するため、この付近の波長の半導体レーザーを光源に活用した長距離光通信伝送網が構築されています。長距離光通信の伝送網は長いものでは数100km以上にも及ぶので、その損失をかつては光から電気信号に変換し電気的に増幅したのち、再度光へ変換して光ファイバに入射していました。

エルビウムドープ光ファイバアンプ (EDFA) の出現により、0.98μm及び1.48μmのポンプレーザーダイオードからの入射光との併用で1.55μm帯の光信号をそのまま増幅できるため、現在の長距離光通信方式での主流の技術になっています。

2.ファイバラマンアンプ (FRA)

エルビウムドープ光ファイバアンプの他に、昨今着目されているファイバアンプに、ファイバラマンアンプ (FRA) があります。FRAは光ファイバに強い光を入射すると、その光が励起光から約100nm程度長波長側に比較的広帯域なゲインを得ることが可能です。

波長を自由に設定可能で、比較的広帯域なゲインを有する物理現象であることから、波長多重光ファイバ通信 (WDM) への応用展開が期待される技術です。ただし、高パワーな励起光が必要であることが課題となっています。そのレーザー光開発の技術も含め、各メーカーが技術開発にしのぎを削っている状況です。

ファイバアンプのその他情報

1. ファイバセンサへの展開

狭い場所の検出用にファイバユニットの光電センサとファイバアンプをセットにしたファイバセンサと呼ばれる製品も工業用途を中心に広く扱われています。ファイバセンサは一般にパルス変調光を用いており、狭い空間の非破壊検査用途や色の識別が可能であり、高速な応答性を有しています。

高温環境下でのワーク確認や排出確認などに適したセンサ用途での使用が可能です。

2. 次世代向け光ファイバアンプ

旺盛な光通信用途の需要に応えるべく、従来からの1.55μm (C-Band: 1.53~1.565μm) の長波長光源用光ファイバアンプに加えて、近年、より短波長帯であるO-band (1.26~1.36μm) やS-band (1.46~1.53μm) 用の光ファイバアンプが注目されています。

これらのバンド用途に最適化された独自の光ファイバアンプを、特殊な材料を開発することにより製品しているメーカーがあります。

参考文献
https://www.fiberlabs.co.jp/tech-explan/about-amp/
https://optipedia.info/laser/handbook/glossary/hi/fiber-amplifier/
https://www.fiberlabs.co.jp/products-list/index-optical-commun/rd-amp/

SMAコネクタ

SMAコネクタとは

SMAコネクタ

SMAコネクタ (Sub Miniature Type A) とは、同軸ケーブルに多く使用される小型コネクタです。

マイクロ波用途のコネクタの中でも小型・高性能なコネクタです。螺旋状の接続部においてネジで締める構造をしており、外部の振動や衝撃に対して安定性が高い構造を有します。また、高周波信号が伝送される際にも信号の品質を保持しやすく、信頼性が高い点も特徴の一つです。

SMAコネクタは米軍規格MIL-STD-348でインターフェイスが定められています。一般のコネクタ用としては、DC~18GHzの周波数帯域までで使用可能です。特に高周波対応用のコネクタとしては25GHzまで使用可能な製品もあり、使用頻度が高い同軸コネクタの一つです。

SMAコネクタの使用用途

SMAコネクタは、マイクロ波帯で一般的に使用されるコネクタです。N型コネクタと比較すると小形のため、主に機器内部の配線に使用されます。以下は使用用途の一例です。

1. 精密計測機器

スペクトルアナライザーは電波の周波数スペクトルを分析する装置です。これらの精密計測機器は高周波信号を正確に受信する必要があります。SMAコネクタは信頼性が高いため、精密計測機器での信号伝送に適しています。

2. 移動体通信基地局

移動体通信とは、スマートフォンなどに利用される無線通信です。これらの通信を成立されるために、基地局と呼ばれる中継装置を設置する必要があります。この基地局とアンテナを接続するためにSMAコネクタが使用されます。

また、移動体通信の基地局では他にも、コントローラや送受信機器などの外部機器を接続することも必要です。SMAコネクタはこれらの接続にも使用され、信頼性の高い通信を実現します。

3. 小型通信機器

無線LANデバイスやGPSレシーバーなどの小型通信機器では、SMAコネクタがアンテナとの接続に使用されます。SMAコネクタは小型で信頼性が高いため、これらの通信機器での高速かつ安定した通信が可能です。ワイヤレスセンサーやドローンなどの小型デバイスにもSMAコネクタが使用されることがあります。

SMAコネクタの原理

SMAコネクタは高性能な超小型コネクタの一つです。ケーブルには一般的なフレキシブルケーブルなどが使用されます。需要に応じて、外部導体に銅パイプ用いたセミリジッドケーブルやセミフレキケーブルも利用可能です。

外径が4.2mmで内径は1.27mmの製品が多いです。内導体を支えている絶縁物には、多くの場合テフロンが用いられます。コネクタの寸法精度も高いだけでなく、カップリングナット部にステンレスが使用されている製品も存在するため、機械的強度も高いです。

取扱いが容易な点も特徴の一つです。はんだ付け作業が不要なコネクタのため、作業時間を短縮することができます。ネジの開け閉めによって接続状態を解除できるため、取付け・取り外しも容易です。

ストリップラインと呼ばれる接続方法を使用する場合、伝送ラインの露出が無くなるため、電波の回り込みを抑えることが可能です。これにより、増幅器設計する際に問題となる発振をおさえることができます。

SMAコネクタの選び方

SMAコネクタを選ぶ際は、以下の選定要素を考慮することが重要です。

1. 材質

導体材料や絶縁材料には、製品によって様々な材質が使用されます。導体材料には一般的に真鍮が使用されますが、金メッキされた真鍮やステンレス鋼などの導体を使用した製品も多いです。金メッキされた真鍮は耐食性が高く、信号のロスを最小限に抑えることが可能です。

絶縁材料にはインピーダンスを安定化し、外部からの干渉を防ぐことが求められます。ポリエチレンやテフロンなどの絶縁材料が一般的に使用されます。

2. インピーダンス

SMAコネクタのインピーダンスは一般的に50Ωです。ただし、75Ωの製品も一部存在します。使用する機器との整合性を考慮して、適切なインピーダンスのコネクタを選択する必要があります。

3. 絶縁抵抗

SMAコネクタの絶縁抵抗は電気的な絶縁の品質を示す指標です。高品質な絶縁材料を使用し、適切な絶縁抵抗を確保する必要があります。これにより、信号のロスなどを最小限に抑えることができます。

参考文献
http://www.yuetsu.co.jp/product/connector/sma/
http://www.takitek.co.jp/item/sma/index.html
https://www.jae.com/connectors/series/detail/id=64231
https://www.stack-elec.co.jp/?p=259