玉軸受

玉軸受とは

玉軸受

玉軸受とは、転動体と呼ばれる構成要素に玉 (ボール) が使われている軸受けです。

ボールベアリングとも呼ばています。軸受とは荷重が作用する回転軸を支えつつ、かつ回転軸が滑らかに回転できるようにする機械要素で、滑らかに回転させることによってエネルギーロスを減らし、発熱を抑えることができます。
軸受は 「転がり軸受」 と「滑り軸受」 に大別され、玉軸受は転がり軸受に分類されます。滑り軸受にはブッシュなどが挙げられます。

玉軸受の使用用途

玉軸受の使用用途は主に自動車や鉄道、機械、飛行機などの乗り物です。その他には発電機といった大型の産業機械の回転軸や、エアコン、冷蔵庫、洗濯機といった家電、自転車やラジコンカー、ラジコンヘリなどにも用いられます。

玉軸受の原理

玉軸受は3つの要素から構成されています。

1. 軌道輪または軌道盤

軌道輪または軌道盤は、転動体である玉を挟み込んでボールが転がる軌道面を形成しています。ラジアル玉軸受の場合に軌道輪、スラスト玉軸受の場合に軌道盤と呼ばれます。

2. 玉 (ボール)

玉は2つの軌道輪または軌道盤の間を転がる部品です。軸受に作用する荷重の大きさによって、必要になるボールのサイズや個数が決まってきます。

3. 保持器

保持器の役割は軸受が回転する際に、個々のボール同士が擦れ合わないように位置を保つことです。隣り合うボール同士が干渉する場合には、お互いに逆方向に動いていることから摩擦抵抗が大きくなるため保持器を使うことでボール同士が接触することを防いでいます。軸受の組み立てを容易にする効果もありますが、回転数が低い場合などは保持器が保持器が省略される場合があります。

安定した回転を維持するためにはボールの転がり運動の摩擦を減らすことが大切です。そこでグリースを用いて潤滑します。潤滑剤は摩擦を減らすだけでなく、回転するベアリング内部で生じる熱を逃がし、軸受の寿命を延ばす役割を果たします。

また、シール付タイプは埃や潤滑オイル中に含まれる異物が侵入し、転動体や軌道輪の軌道面に傷がつくことを防ぎます。封入されたグリースが流れ出るのを防ぐ効果も大きいです。

玉軸受の種類

玉軸受は大きく2つに分類できます。荷重の方向が回転軸の軸方向と直行する方向のラジアル荷重と、回転軸の軸方向と同じ向きに作用するアキシアル (スラスト) 荷重が存在します。

1. ラジアル玉軸受

ラジアル玉軸受は、主にラジアル荷重を支持する軸受です。外観は中空で、平たい円筒形状をしています。ラジアル玉軸受では主に深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受が広く使われます。深溝玉軸受でもある程度のアキシアル荷重を支えることができますが、アンギュラ玉軸受はより大きなアキシアル荷重を1方向のみで支えることが可能です。その他に4点接触玉軸受や自動調心軸玉軸受などがあります。

2. スラスト玉軸受

スラスト玉軸受は、主にアキシアル荷重を受け持つ軸受です。一般的なスラスト玉軸受は2枚の穴が空いた円板が重なったような形状をしています。ラジアル玉軸受、スラスト玉軸受にも、ラジアル荷重とスラスト荷重の2つを同時に支えることができるタイプの軸受もあります。それらはアンギュラ玉軸受や複列玉軸受などと呼ばれています。

玉軸受のその他情報

ころ軸受との違い

玉軸受以外にも転がり軸受にはころ軸受 (ローラーベアリング) があります。ころ軸受では転動体にボールではなくころローラーが使われます。

玉軸受が荷重を点接触で支えるのに対し、ころ軸受では線接触で荷重を受けます。軌道輪と転動体との接触が点から線へと広くなるので、玉軸受に比べて大きな荷重に耐えることができます。

大きな荷重を支えられる分、軸受の寸法は大きくなります。また軸が受ける荷重の方向にも注意が必要です。ラジアル荷重とアキシアル荷重を同時に支える必要があればテーパーローラーベアリングを複数組み合わせて使います。

参考文献
https://koyo.jtekt.co.jp/products/type/angular-ball-bearing/
https://www.ntn.co.jp/japan/products/rollingbearing/radial_ball.html
https://koyo.jtekt.co.jp/2019/02/column01-04.html
https://koyo.jtekt.co.jp/2019/01/column01-03.html
http://www.sto-co.jp/shiyourei.html

チャッキバルブ

チャッキバルブとは

チャッキバルブ

チャッキバルブとは、流体の流れを一定方向に保ち、逆流を防止するためのバルブです。

チャッキ弁やチェックバルブ、逆止弁などとも呼ばれます。正流方向では弁が開き、流体が邪魔されずに流れる構造です。

一方、逆流方向では弁が自動で閉じ、流体が流れるのを防止します。

チャッキバルブの使用用途

チャッキバルブは、インフラや産業において幅広い分野で使用される製品です。以下は、チャッキバルブの使用用途一例です。

  • 水中ポンプが停止した際の逆流防止
  • 液体配管の立ち上がり部分での逆流防止
  • 異種液体の混合防止

家庭用温水器や水道配管などでも活用されており、生活にも密着した部品です。配管トラブルを解決するために非常に有用です。

ただし、チャッキバルブ周辺でウォーターハンマーが発生したり、ミネラル分の固化で弁体が開閉しなくなるトラブルが発生したりする可能性があります。使用時には配管系統を十分確認して、トラブルを未然に防止することが重要です。

チャッキバルブの原理

チャッキバルブの材質は主に、樹脂、青銅、ステンレス、鋳鉄等が使用されます。樹脂は一般的に計装エアー用のチャッキバルブなどに使用され、小流量・低圧力の用途が一般的です。また、1.0MPa以上の圧力では青銅などの金属製チャッキバルブが使用され、流れる流体の種類によって材質を使い分けます。

耐圧性能クラスは一般的にKで表現され、5K、10K、20Kなどが広く使用されます。10Kとは10kgf/cm2以上の圧力に耐えることを意味し、JIS規格では14kgf/cm2まで耐える製品として販売されています。

チャッキバルブの取り付け方法は、ワンタッチ継手、フランジ、ねじ込み、ウェハなどです。テフロンチューブなどによる計装エアー用途では、ワンタッチ継手が多く使用されます。また、小口径の金属配管ではねじ込み式が使用され、口径が大きくなるとフランジやウェハとする場合が一般的です。

チャッキバルブの種類

チャッキバルブは、主にスイングチャッキ、リフトチャッキ、ウエハチャッキ、ボールチャッキの4種類に分類されます。

1. スイングチャッキバルブ

円盤状のジスクの片端を蝶番のように取り付け、逆方向から液体が流れてきたときにジスクが閉まる構造のチャッキバルブです。構造が簡単なため、ビルや工場で広く使用されています。圧力損失が低い点が特徴です。

スウィングバルブは、主に上向き方向に流れる流体で使用されます。これはジスクの自重で逆流を強く防止することが可能なためです。水平方向の流体にも使用可能ですが、漏水が発生する場合があります。

また、逆流圧力が強い場合にはジスクが急閉して破損したり、水撃現象が発生したりします。これらを防止するために、一般的には逆流圧力が低いような用途で使用されます。

2. リフトチャッキバルブ

グローブバルブのような構造で、順方向の水流圧力によって開通するチャッキバルブです。自重でジスクが閉止するため、水平方向に取り付けるのが一般的です。耐久性が高い点が特徴ですが、グローブバルブと同様で圧力損失が大きい欠点があります。

3. ウエハチャッキバルブ

2枚の半円形弁体で構成されたチャッキバルブです。逆方向から液体が流れてきたときに半円形弁体が閉止することで逆流を防止します。非常に薄型で軽量な点が特徴です。

配管に挟み込んで取り付けることができるため、省スペースで安価です。また、スウィングチャッキバルブと同様で圧力損失も小さい利点があります。ただし、耐久性がやや低い欠点があります。

4. ボールチャッキバルブ

正流方向に液が流れると、ボールが押し上げられて配管流路が形成される構造のチャッキバルブです。逆流時にはボールが降りてきて閉止することで、逆流を防止します。

上記3つと異なり弁体が固定されていないため、汚水などの異物混入しやすい液体にも適用可能です。ただし、大口径のバルブとして製作しづらい欠点があるため、主に小口径の配管に適用されます。

参考文献
https://www.apiste.co.jp/column/detail/id=4600#h2_2
https://www.kitz-valvesearch.com/kiso/type_checkvalve.html
https://www.ishizaki.biz/smolensky/data/news/vol036.pdf

距離センサー

距離センサーとは

距離センサー

距離センサーとは、距離を測定するためのセンサーです。

最近は、自動車や産業機械の自動運転、先進安全システムの検知物体との衝突の防止などに活用されています。距離センサーは、大きくLiDAR (光学) を用いたもの、ミリ波を用いたもの、超音波を用いたものの3種類です。

多くのセンサーは、TOF (英: Time of Flight) と呼ばれるセンサーの仕組みを活用しており、方式ごとの信号を発信して、測定物から反射された信号を受信した時間から距離を測定しています。

距離センサーの使用用途

距離センサーの使用用途は、方式によって異なります。

1. LiDAR方式

LiDAR方式は、分解能が高いために位置や形状の認識精度が高い方式です。飛行機やドローンなどに取り付けて地形の3D形状測定を行う自動運転で、前方物体の形状認識などで使用されます。

また、障害物との距離を自動搬送車に認識させる安全装置や製品の形状や寸法を認識して自動仕分けする装置にも利用されています。

2. ミリ波方式

ミリ波方式は、測定距離が比較的大きく、環境変化に強い方式です。ある程度限られた範囲内で人間など動くものを検出する人感センサーや、セキュリティ用途でも使用されています。

また、自動車の運転を支援するアダプティブクルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキにも使用されています。また、後方からの接近物を感知して高速道路での車線変更のサポートなどをおこなうブラインドスポットモニターもこの方式です。

3. 超音波方式

超音波方式は、低コストで導入できる方式です。ただし、検知距離は10m程度と他の方式と比較すると短くなります。

安価に導入できるので、人が近づくと電気を点けるような人感センサーやコンベア上の荷物の検出などに好適です。また、自動車の駐車時の障害物検知にも使用されています。

4. ステレオカメラ

ステレオカメラも画像から距離を算出できるため、距離センサーとして分類されることがあります。距離の測定に優れたミリ波方式の距離センサーと組み合わせ、距離と共に画像で判断する自動車の運転支援システムに搭載されることもあります。

距離センサーの原理

多くのセンサーは、TOF (英: Time of Flight) と呼ばれるセンサーの仕組みを活用しています。方式ごとの信号を発信して、測定物から反射された信号を受信した時間から距離を測定しています。

1. LiDAR方式

LiDAR方式では、レーザー光が使用され、可視光の他、紫外線および近赤外線が用いられます。パルス状信号のレーザー光を送信して、測定物から反射光を受信するまでの時間を検出して距離を算出しています。

分解能が高く、小さなものでも検出可能で、精度が±数mm程度と高精度なのが特徴です。一方で、光が透過するものの測定や、埃の舞う環境の測定には向いていません。また、光の状態が複雑に変化する場所での測定にも不向きです。

2. ミリ波方式

ミリ波方式は、ミリ波に該当する電磁波を用いた方式です。ミリ波には、パルス方式とFMCW方式があります。パルス方式は、パルス状の電波を送信し、測定物から反射された電波を受信するまでの時間を検出して距離を算出する方式です。

FMCW方式は周波数を時間とともに変化させた電波を送信し、送信信号と反射信号を干渉させて発生するビート周波数 (周波数差) から距離を算出します。ミリ波方式は遠くまで測定可能で、精度も±0.1mm程と優れており、明るい環境やほこりが舞う環境にも強いのが特徴です。

ただし、電波を吸収しやすい物質、具体的にはプラスチックや衣服、非金属物質などの素材には不向きです。

3. 超音波方式

超音波方式では、パルス状の超音波を送信し、測定物から反射された超音波を受信するまでの時間を検出して距離を算出しています。安価に導入でき、空間だけでなく、液中および固体中にも使用できるのがメリットです。

ただし、測定可能な距離が10m程度と短く、ある程度の大きさの対象物でなければ測定不能なのがデメリットです。また、音波のため音を吸収する物質には向いておらず、スポンジや発泡材の測定には向いていません。

4. ステレオカメラ

ステレオカメラでは、2つのカメラを用いて、測定物を撮影して、位置情報を取得しています。その2つのカメラの位置情報とカメラの設置距離から3点測量を行い、測定物までの距離を検出する仕組みです。

ステレオカメラは暗い道では画像データを収集しにくく、まぶしい逆光下では検出精度が落ちる弱点も併せ持ちます。

距離センサーのその他情報

身近な距離センサー活用事例

スマホ搭載されている距離センサーには、ToFセンサーが用いられています。測定した距離情報をスマホカメラのオートフォーカス機能の精度向上に利用しています。

これにより従来はピントを合わせることが難しかった環境下でも、被写体とカメラとの距離を高精度に算出できるようになり、オートフォーカス機能の性能が大きく向上しました。カメラと画像内のあらゆる箇所の距離を測定可能で、従来は2Dでしか捉えられなかったカメラ画像を3Dデータとして処理できるようになると期待されています。

応用すれば画像内の被写体認識精度が大きく向上するため、仮想現実 (VR技術) や拡張現実 (AR技術) 分野での適応に大きな期待が寄せられています。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/56/202/index.html
https://www.macnica.co.jp/business/maas/columns/134429/
https://news.mynavi.jp/article/20200320-smartphone_word/

デジタルタコメータ

デジタルタコメータとは

デジタルタコメーター

デジタルタコメータとは、産業機器でエンジンやモーターなどの回転数を読み取り、デジタル表示する装置です。

身近な例では、自動車に搭載されているタコメータがあります。自動車のタコメータは、エンジンの回転数を計測します。また、回転数とは、物体の回転運動の早さを表すものです。例えば、物体が1分間にN回だけ回転するとき、回転速度はN (rpm) と表記します。

rpmは「rotations per minute」または「revolutions per minute」の略です。rpm以外にmin-1と表記する場合もありますが、どちらも1分間あたりの回転回数を示しています。

デジタルタコメータの使用用途

デジタルタコメータは、様々な産業用機械の点検、メンテナンスの場面で使用されます。機械の運転状況を監視するために、常時計測されている場合もあります。研究開発の分野では、実験設備の回転数の測定にも用いられています。

私たちの日常生活の例では、車のタコメータが挙げられます。車にはデジタルタコメータだけでなく、アナログのタコメータも採用されるケースが多いです。アナログのタコメータの方が、デジタルタオメータよりも使いやすい点が、理由として挙げられます。

デジタルのタコメータは、目標のスピードを維持する場合に使いやすいと言われています。一方で、アナログのタコメータは、目標のスピードに調整する場合に使いやすいです。理由として、アナログの針の動きの速さから、速度変化の割合も感じ取ることができることが挙げられます。

MT車の場合は、エンジン限界回転数を超えないでシフトアップするために使われていました。近年は、AT車が大半となっており、自動車の状態の確認や燃費効率の良い運転をするために使用されます。

デジタルタコメータの原理

デジタルタコメータには、接触型と非接触型があり、それぞれ原理が異なります。

1. 接触型のデジタルコメータ

接触式は測定対象の回転軸に、デジタルタコメータの測定用の回転軸を直接接触し回すことで、回転数を測定します。接触させるには、対象となる回転軸の端面に接触させる方法と、回転軸の側面に接触させる方法があります。

  • 回転軸の端面に接触させる方法
    デジタルタコメータの回転軸は、測定対象の回転軸と同じ回転数で回り、そのまま測定値を読み取ることができます。
  • 回転軸の側面に接触させる方法
    測定対象の回転軸とデジタルタコメータの回転軸は同じ回転数で回転しません。それぞれの直径の違いから、回転数の割合の関係を求める必要があります。

2. 非接触型のデジタルコメータ

非接触型の場合は電磁式、光電式があります。

  • 電磁式
    測定軸の一部に着磁させ、デジタルタコメータの電磁式センサーを測定軸に近づけた際の磁界変化を変換して回転数を検知します。
  • 光電式
    測定軸に反射マークを設置し、デジタルタコメータから赤色可視光をその反射マークに向けて、反射された光を受光素子で受けアンプで増幅し回転数を計測します。

デジタルコメータのその他情報

切削加工機械での注意

エンドミルなどの切削加工を行う工具には、推奨切削速度というものがあります。その工具である材質のものを加工するために推奨される切削速度であり、工具や被削材の種類によって設定されています。

この推奨切削速度から、工作機械の回転数を設定する際は、工具径を使った計算が必要です。同じ推奨回転速度を得るためには、工具径が小さい工具ほど、高速で回転させなければなりません。この際に、加工機の能力を超えていないか確認します。

また、この計算をする際は、長さの単位にも注意が必要です。工具径は通常単位としてmm (ミリメートル) を使いますが、切削速度はm/minと、1分間あたりの加工長さをm (メートル) で表記しています。

参考文献
https://metoree.com/categories/tachometer/
https://www.onosokki.co.jp/HP-WK/products/category/h_revo.htm
https://car-moby.jp/article/car-life/automobile-inspection-maintenance/tachometer/
https://www.goobike.com/magazine/maintenance/attachment/3/
https://www.webcartop.jp/2018/07/252840/

クロムメッキ

クロムメッキとは

クロムめっき

クロムメッキとは、金属製品の表面をクロムで被覆する技術のことです。

クロムメッキには、硬く耐摩耗性が高い、摩擦係数が小さい、光沢があるといった特徴があります。自動車やバイクなどの外装部品、家電製品や家具などの装飾品に広く用いられています。

クロムメッキの種類は、装飾クロムメッキと硬質クロムメッキの2つです。装飾クロムメッキは、輝く光沢が美しいことが特徴で、主に装飾品に用いられます。一方、硬質クロムメッキは、硬く、耐摩耗性が高く、表面を傷つけづらいため、工業製品に用いられます。

かつては、6価クロムが用いられていましたが、現在では3価クロムを使用する場合が増えています。理由は、6価クロムが人体に有害となるため、欧州連合会 (EU) が2006年に施行したRoHs指令によって、「電気・電子機器有害物質の使用制限」が定められたからです。今後の社会情勢の変化から、より環境に優しい技術が求められることが予想されます。

クロムメッキの使用用途

硬質クロムメッキと装飾クロムメッキは、それぞれ使用用途が異なります。

1. 硬質クロムメッキ

産業機器の中で、耐摩耗性や低摩耗が求められる部品で使われます。硬質クロムメッキが使われている例としては、自動車のエンジン部品、金属の圧延などのローラー、金型、ドリルの刃などです。

2. 装飾クロムメッキ

耐食性と美しい光沢の意匠性が求められる部品で使われます。装飾クロムメッキが使われている例としては、自動車やバイクの外装部品、水栓金具、装飾用のアクセサリーなどが挙げられます。

クロムメッキの原理

クロムメッキで最も基本的な手法は、サージェント浴とよばれる液を用いる方法です。サージェント浴の代表的な組成は、無水クロム酸250g/L、硫酸2.5g/Lです。

メッキする製品をカソード (陰極) とし、鉛合金をアノード (陽極) とします。両極に直流電流をあたえると陰極で還元反応が発生し、クロムメッキが析出します。

硬質クロムメッキのその他情報

1. 硬質クロムメッキの工程

硬質クロムメッキで、多くの場合には、鉄鋼部品を素材として使います。硬質クロムメッキの工程は以下のとおりです。

  1. 素地仕上げ
  2. 素地洗浄
  3. マスキング
  4. 治具取付
  5. 陽極処理
  6. クロムメッキ
  7. 仕上げ

2. 装飾クロムメッキの工程

装飾クロムメッキでは、金属素材だけでなく、樹脂部品も素材として使われます。ニッケルの中間メッキをおこなってから、クロムメッキを行います。

  1. 素地仕上げ
  2. 素地洗浄
  3. マスキング
  4. 治具取付
  5. 陽極処理
  6. 銅メッキ
  7. ニッケルメッキ
  8. クロムメッキ
  9. 仕上げ

3. クロムメッキの有害性

クロムには酸化数の違いによって、三価クロムと六価クロムがあります。六価クロムは環境汚染や人体への有害性が報告されていることから、RoHS指令、RoHS2指令で使用が禁止されている物質です。具体的な六価クロムの毒性の例として、六価クロムが付着した皮膚や粘膜の損傷や肝不全や腎不全が報告されています。

クロムメッキ処理に関しては、従来から六価クロムを使用したものが主流でした。一方で、近年では六価クロムの有害性が広く知られるようになり、三価クロムを代替としたメッキ処理が使われるようになってきました。

三価クロムによるメッキ処理は均一性という点で優れている上、従来と同等の耐食性を有する手法も開発されています。また、人体に無害なので、作業性の面でも使用しやすいメッキ処理方法です。

4. クロムメッキの錆とマイクロクラック

クロムメッキには、マイクロクラックと呼ばれるひび割れが存在することが知られています。このクラックは表面から内部まで広がっているので、表面から水分や汚れが侵入してしまいます。これにより、内部の素材まで水分や汚れが浸透し、腐食の原因につながります。

一方で、この構造により、腐食の進行が抑制されているとも考えられています。クロムを陽極、内部の金属を陰極と見なすと、異種金属が水分や汚れによって間接的に接触した腐食電池が形成されていることがわかります。腐食電池に流れる電流は、表面積に比例するので、大きなクラックの場合、そこに電流が集中して急速に腐食が進行します。

マイクロクラックのように、微小なひび割れが多数存在している場合、電流がそれぞれの箇所に分散するので、腐食の進行を遅くすることが可能です。そのため、このような構造により、全体の腐食を抑制できると考えられます。腐食自体の対策として、クロムメッキ層の膜厚を増加させる、クロムメッキ層の下にニッケルメッキなどの別の金属のメッキ処理を行うなどの方法が挙げられます。

マイクロクラックの数や大きさは、クロムメッキ処理を行う際のメッキ浴温や電流密度と相関性があることが知られています。例えば、メッキ浴温を高く設定すると、クラックの数を少なくすることが可能です。しかし、高温になりすぎると、メッキ層が柔らかくなってしまい、本来の特性を得られません。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/65/3/65_123/_pdf/-char/ja
https://alfamek.net/plating-technology-information/h-cr013/
https://www.nomuraplating.com/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1954/16/9/16_9_15/_pdf
https://nakarai.co.jp/plating-white-rust-spot-rust-removal-repair
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/17/6/17_794/_pdf/-char/ja

NCルータ

NCルータとは

NCルータ

NCルータとは、数値制御 (NC) 技術を用いて木材、プラスチック材、金属材などを刃物で切削加工するための装置のことです。

一度数値制御データを作成すれば、同じ製品を何度も同じ精度で作り出すことが可能です。また、装置によっては同時に複数個の加工ができるものもあります。NCルータは工作機械の1種であり、その歴史は古く自動化機械加工技術の始まりの1つとして挙げられます。

従来の手作業による切削作業を自動化し、高速、正確、効率的な加工を可能にしました。特に、複雑な曲面や穴あけなどの加工が得意です。現在では、NCルータはコンピュータ数値制御機能を持つため、CNC (Computed NC) とも呼ばれます。コンピュータによって制御されることで、高度な切削加工を実現し、大量生産にも適した装置となっている点が特徴です。

CNC技術によって、さまざまな素材の加工に対応できるNCルータが開発され、自動車や家具、建築材料などの製造業界で広く利用されています。精密加工が必要な産業分野での需要が高まっているため、今後もますます重要な装置となります。

NCルータの使用用途

NCルータは、木材、プラスチック材、金属材などの切削加工に用いられます。数値制御技術によって高精度かつ高速な加工が可能となり、手作業では実現が難しい細かい加工や複雑な形状の製品を加工することにも優位性を持つ点が特徴です。

また、製品の試作部品や小ロット部品の制作に欠かせない機器として広く用いられています。例えば、業務製品や家電製品、住宅設備、自動車製品など、幅広い産業分野で使用可能です。試作部品や小ロット部品は、一般的に量が少ないため、手作業での加工では生産性が低下してしまいます。NCルータは、数値制御データを作成すれば、一度に多数の部品を加工することが可能です。

そのほか、樹脂部品を成形するための型の加工にも使用されます。樹脂部品の製造では、金型が必要となりますが、金型の製造には高度な加工技術が必要です。金型の製造において、高精度な切削加工を可能とするため、重要な役割を果たしています。

NCルータは、さまざまな素材に対応できるため、製造業界で幅広く用いられているだけでなく、工芸品の制作や建築材料の加工など、用途の分野は幅広いです。

NCルータの原理

NCルータの原理は、数値制御によって部材を加工することで成り立ちます。部材はNCルータ上のテーブルにチャックで固定し、上部から回転する刃物によって加工します。刃物もしくはテーブルの移動は、加工するための数値制御データによってコントロールされる点が特徴です。NCルータは、自動で刃物を切り替える装置を搭載したものもあり、加工部位により刃物を切り替えて加工できます。また、複数を同時に加工できる装置もあります。

NCルータが加工するために必要なのが、NCデータと呼ばれる数値制御データです。NCデータはNC制御盤に直接打ち込めますが、多くの時間がかかってしまうため、最近ではCAD/CAMデータを変換して作ることが主流となっています。

CADとは、設計を行うソフトであり、CAMとはCAD上で作られた形状データを元に、NCルータの加工データを作成するシステムです。NCルータは、CAM上で作られたデータを用いて、部材を正確かつ効率的な加工が可能です。NCルータは、高精度かつ高速な加工を可能にする優れた装置であり、製造業界で広く利用されています。

NCルータの種類

NCルータは、主に木工用NCルータ、金属用NCルータ、プラスチック用NCルータの3種類があります。

1. 木工用NCルータ

木材加工に特化したNCルータで、木工製品の加工に適しています。木材の種類や厚みによって刃物を切り替えられるため、幅広い種類の木材を加工することが可能です。また、高精度な加工が可能であり、木工製品の細かな部品や装飾品なども製作できます。

2. 金属用NCルータ

金属加工に特化したNCルータで、金属の素材に応じた強度や粘り気を考慮して刃物を切り替えられます。金属部品や加工機械の製作に適しており、高精度かつ高速な加工が可能であるため、大量生産にも対応できます。

3. プラスチック用NCルータ

プラスチック素材の加工に特化したNCルータで、樹脂製品の製造に適しています。プラスチックは種類が豊富で、それぞれの素材に応じた刃物を選択することで、高精度な加工が可能です。

また、プラスチック素材は金属に比べて柔らかく、熱に弱いため、温度調節にも注意が必要です。プラスチック用NCルータは、それらの特性を考慮して設計されています。

参考文献
https://www.kousakukikai.tech/cnc-machine-tools/
https://manualzz.com/
https://www.kda1969.com/pla_machining/rt_index.htm
https://www.fact-cam.co.jp/document/column/archives/000241.html

工業用顕微鏡

工業用顕微鏡とは

工業用顕微鏡とは、半導体や電子部品および液晶ディスプレイなどを製造する際のプロセス検査や解析などに使用される顕微鏡です。

データ解析をしやすいように、ほとんどの工業用顕微鏡はデジタルカメラやCCDの映像をパソコンに取り込めるようになっています。

工業用顕微鏡の使用用途

工業用顕微鏡は、半導体や電子部品などの工業製品の製造プロセス検査や解析などに使用されています。工業用顕微鏡としては、光を照射して反射光により表面観察する金属顕微鏡が最も一般的です。

金属顕微鏡は、セラミックの組織や金属および合金、部材の研磨面や電子部品といった不透明な工業用品の表面観察に用いられています。このほか、磁気ヘッドや液晶、フィルムなどの製品製造時の開発や分析、検査などにも使用されています。

また、基板におけるはんだ接合面の観察や、溶接部の溶け込みの深さなど、細かな観察も可能です。さらに、金属加工における鋳造や熱処理および冶金などを行なった後の評価分析にも使用されています。

工業用顕微鏡の原理

工業用顕微鏡として最も一般的な金属顕微鏡には、試料の上方から観察する正立顕微鏡と下方から観察する倒立顕微鏡があります。正立顕微鏡は、よくある一般的な顕微鏡のタイプです。対物レンズの下に試料があり対物レンズの上から観察します。倒立顕微鏡では対物レンズの先端が上側になっており、試料を下から観察します。

正立顕微鏡と倒立顕微鏡のいずれにおいても、光源は対物レンズの内側に設けられています。この光源から試料表面に光を照射し、試料表面からの反射光により試料表面形状を観察する仕組みです。なお、対物レンズと接眼レンズの間にプリズムやレンズを挟んでおり、対物レンズ側から試料に照射され反射してきた光は拡大して観察されます。倍率は50倍~1,000倍程度です。

工業用顕微鏡として使用される金属顕微鏡には複合的な機能を持つ機種が多くあり、反射照明による明視野法や暗視野法、微分干渉法が可能な機種が豊富です。反射照明の暗視野法においては、細かい傷やクラックや細孔などが輝いて見え、試料表面の観察に適しています。反射照射の微分干渉法においては、明視野法では困難な細かい凹凸の検出が可能で、検査工程において多く使用されています。

工業用顕微鏡の種類

工業用顕微鏡には、前述したように正立顕微鏡と倒立顕微鏡があります。

1. 正立顕微鏡

一般に正立顕微鏡では、照明方法によって透過・反射どちらも選択できるものが多く、光学系の設計も容易なことがメリットです。

2. 倒立顕微鏡

倒立顕微鏡は観察する面を下向きに置くため、光軸に対する観察面の水平出しが容易にでき金属分野などで多く利用されています。

工業用顕微鏡のその他情報

1. 複数の機能を有する工業用顕微鏡

工業用顕微鏡としては、効率よく観察するべく金属顕微鏡としての機能だけでなく、他の機能も有するものがあります。例えば、通常の光学顕微鏡偏光顕微鏡走査型プローブ顕微鏡などの機能も有しており、複数の観察方法を持つ機種もあります。

また、工業用顕微鏡は工業用品の製造プロセス検査や解析などに使用されることから、CCDやデジタルカメラの映像をPCに取り込めるようになっているのが一般的です。これにより、データ解析が容易に行えるため、検査や解析の効率がよくなります。

さらには、顕微鏡機能だけでなくカメラ、三次元測定などいくつかの機能を複合的に持つ工業用顕微鏡もあります。

2. 工業用顕微鏡と測定顕微鏡の違い

工業用顕微鏡は、広い意味では製造業などの工業界で使われる顕微鏡の総称です。そのため、光学顕微鏡だけでなく、電子顕微鏡やデジタルマイクロスコープなども工業用顕微鏡に該当します。しかし、工業用顕微鏡としては、光学式の金属顕微鏡のみを指すのが一般的です。

金属顕微鏡は測定対象の表面に光を当てる反射照明を用いることが多く、主な使用目的は表面観察です。一方の測定顕微鏡は反射照明手段以外に透過照明手段も持っています。また、測定対象を載せるステージにはデジタルスケールやカウンタを標準で搭載しており、測定するための機構や機能を有しています。

すなわち、工業用顕微鏡は観察が主な用途であり,測定顕微鏡のようなステージの移動量や拡大された観察像に倍率保証はあまり必要とされません。

参考文献
https://www.nsl.nikon.com/jpn/industrial-products/microscope/industrial-microscope
https://www.wraymer.com/metallurgical/index.html
http://www.microscope.jp/knowledge/03.html
https://www.olympus-ims.com/ja/microscope/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/microscope/beginner/microscope/metal.jsp
http://www.microscope.jp/knowledge/03-2.html

寸法測定器

寸法測定器とは

寸法測定器

寸法測定器とは、対象物の寸法を測定する器具や機械です。

その種類は多様で、人の手で測定するノギスやマイクロメータから、最近では自動で寸法を測定できるタイプ、非接触で工具も不要なタイプも販売されています。

機械による寸法測定は、人による測定よりも誤差が少なく、かつノギスやマイクロメータでは測定できない箇所の測定を可能としています。

寸法測定器の使用用途

寸法測定器は、様々な分野で利用されています。ノギスやマイクロメータなどの人の手による測定器は、部品のサイズの測定などに好適です。一方、画像寸法測定器や投影型の寸法測定器に代表される機械による寸法測定器には多くの種類があり、人手では測定に時間がかかる測定自体が難しい製品の寸法測定に好適です。

例えば、画像寸法測定器は短時間の測定が可能であるため、寸法測定だけでなく製品の全数検査にも利用されています。当該測定器では、シャフトに加工された溝の長さ、幅、位相測定などの精密な測定が可能です。

具体的には、クランクシャフトのジャーナル径、ガラス管の外径、シートの蛇行、ウエハの外径の測定などが挙げられます。投影型の寸法測定機では、引張試験時の伸びや細りといった変動も測定できます。

寸法測定器の原理

寸法を測定する機械はノギスをはじめとして数多くあり、原理も多様です。この項では「画像寸法測定器」と「投影型の寸法測定器」を解説します。

1. 画像寸法測定器

画像寸法測定器では、測定器のイメージセンサと被測定物の距離を固定した状態での画像を撮影します。すると、1画素の中に映り込んでいるもののサイズが自ずと決まるため、画像全体のデータを統合すれば、被測定物のサイズが分かる仕組みです。

非接触での撮影が可能であり、柔らかいものや大きなものも測定できます。そのため、ピラミッドなどの大きな建築物の寸法測定にも使用されています。

2. 投影型の寸法測定器

投影型の寸法測定器では、被測定物にゆがみのない平行な光を当ててシルエットをスクリーンに拡大投影し、投影された像を用いて寸法測定を行います。拡大率が一定であるので、拡大された像の寸法を測定すれば被測定物の元の寸法が分かる仕組みです。

非接触で測定できることと、小さな形状や複雑な形状も測定できることがメリットです。なお、照明を被測定物により反射させ、その画像から測定するタイプもあります。

寸法測定器の種類

寸法測定器には、上述したもの以外に様々な種類があります。 大きく分けて、「機械による寸法測定器」と「人手で測定する寸法測定器」の2つです。

1.  機械による寸法測定器

機械的な寸法検出器には、「画像寸法測定器」や「投影型の寸法測定器」以外にもたくさんの種類があります。ここでは、上記以外のよく使用される寸法検出器について解説します。

レーザー変位計
レーザー変位計は、三角測量を応用した寸法測定器です。被測定物にレーザーを照射し反射光を検出して寸法を測定しており、反射光を検出するセンサーをレーザー照射方向に対して傾けた状態で配置しているのが特徴です。

被測定物の反射面がレーザー照射方向に対して垂直に上下するとセンサーの受光面が変位するため、基準面との差異から厚みなどが測定できます。レーザー変位計には、上記の三角測量を応用した方式以外に、マルチカラー共焦点方式や共焦点方式もあります。

レーザー透過型外径測定機
レーザー透過型外径測定機は、レーザーが被測定物をスキャンして投影した像から寸法を測定する装置です。被測定物によりレーザー光が遮られた部分と遮られていない部分を比較して外径などを測定しています。レーザー光を照射する方式としては、多面鏡が回転してレーザー光を反射して平行なレーザー光とする方式が主流です。

2. 人手による寸法測定器

人手で測定する寸法測定器は金属加工の分野でよく使用されています。

ノギス
金属加工で最も手軽に使えるのがノギスです。固定された基準側と稼働する測定側の2個のツメで被測定物を挟み、0.05mm単位で測定します。

マイクロメータ
マイクロメータはノギス同様、被測定物をダイヤルゲージで挟み込み、測定します。ただし、マイクロメータは、0.01mm単位の測定が可能で、ノギスよりも高精度の測定が可能です。

可動部のない寸法測定器
可動部のない寸法測定器としては、ピンゲージや限界栓ゲージ、ブロックゲージおよび隙間ゲージなどがあります。これらは所定の大きさに応じて非常に精密に加工されており、可動部はありません。

例えば、ピンゲージであればピンの直径が非常に精密に加工されているため、当該孔部にピンを挿入できれば加工精度が保たれていると判断されます。

参考文献
https://www.ubiquitous-tech.com/product/techmeasure/

タイムサーバ

タイムサーバとは

タイムサーバとは、インターネットなどのTCP/IPネットワーク上で現在時刻の情報を配信するサーバです。

NTP (英: Network Time Protocol) でサーバ間の時刻同期や、クライアントに正確な現在時刻を知らせることができます。このプロトコルを各クライアントのPCは利用してタイムサーバに通信し、現在時刻を取得可能です。

さらに、クライアントのPCのみならず、ネットワーク上に存在するルーターをはじめとする各種ネットワーク機器も、正確な時刻に同期した処理を行うためにタイムサーバから時刻データを取得しています。ネットワーク上の機器が、タイムサーバを使った時刻同期により、システム内の機器全てが同一時刻で記録可能で、機器間のログをつきあわせられます。

タイムサーバの使用用途

タイムサーバは、正確な時刻を必要とする機器に時刻データを提供するのに使われています。

1. ITシステム

ITシステムにおいては、正確な時刻同期が必要です。例えば、複数のサーバがある環境では、それらのサーバ間で正確な時刻同期が必要です。

ログファイルのタイムスタンプが正確になり、トラブルシューティングを行いやすくなります。

2. セキュリティ対策

セキュリティ対策においても、例えばログイン時刻の正確な記録を取ることで、不正ログインの検知や調査が行いやすくなります。

3. ビジネス分野

ビジネスにおいても、正確な時刻同期が必要な場合があります。例えば、国際取引においては、異なる国の取引所や銀行があるため、正確な時刻同期が必要です。

また、オンラインショッピングにおいても、正確な時刻同期が欠かせません。注文や決済など、時間に関わるトランザクションが多数発生するため、正確な時刻同期が不可欠です。

4. 科学技術分野

科学技術分野においても、正確な時刻同期が必要です。天文学や気象学などの観測において、正確な時刻同期が必要です。これらの観測結果を正確に記録し、より正確な予測や分析が可能になります。

 

以上のように、タイムサーバは多岐にわたる用途で使用されています。正確な時刻同期が必要な場面は、ITシステムやビジネスだけでなく、科学技術分野などさまざまです。タイムサーバが提供する正確な時刻情報は、いろいろな場面で貢献しています。

タイムサーバの原理

タイムサーバは、通常、NTP (Network Time Protocol) プロトコルによって、時刻情報を共有します。NTPは、TCP/IPネットワーク上で時刻同期を行うためのプロトコルであり、正確な時刻同期を実現するためのさまざまな機能を提供します。

NTPでは、クライアントがタイムサーバに対して時刻情報を要求します。タイムサーバは、自身が保持している正確な時刻情報をクライアントに送信します。この時刻情報には、原子時計やGPSなどの高精度な時計から取得した正確な時刻情報が含まれます。クライアントは、受信した時刻情報を自身の時計に反映させ、正確な時刻同期を実現します。

また、NTPでは、タイムサーバが複数ある場合、クライアントは複数のタイムサーバから時刻情報を取得可能です。これにより、より正確な時刻同期が実現できます。さらに、時刻同期において発生するネットワーク遅延や時計の誤差を補正するための機能も提供しています。これにより、より正確な時刻同期を実現可能です。

タイムサーバのその他情報

クロック階層

NTPは、負荷分散の目的から階層構造を取って運用されています。これをStratumと呼んでいます。Stratumは0,1,2…と順次採番されており、数字が大きくなるほど大元のタイムサーバから離れていくため、誤差が大きくなります。

Stratum0は原子時計で、Stratum1は日本においてはNICTのタイムサーバです。原子時計から取得した極めて高精度の時刻をもって、自身でRTCにより刻時している時刻に補正をかけて運用しています。

参考文献
https://www.idcf.jp/words/ntp.html
https://liginc.co.jp/464201

リモコン受光モジュール

リモコン受光モジュールとは

リモコン受光モジュールとは、テレビ等のAV機器をはじめ、さまざまな場面で機器を制御するために使用されているリモコン送信機からの光信号を受信するユニットです。

具体的には、リモコン送信機からの光信号を受信して、これを電気信号に変換するとともに信号を増幅し、さらにデジタル信号に変換します。この信号を出力とすることにより、後段に組み込まれる機器制御用マイコン等に信号を送出します。

リモコン受光モジュールの使用用途

リモコン受光モジュールは、リモコン送信機と対に使用され、家電品や音響機器などにも広く用いられています。その用途の代表例は、テレビやブルーレイおよびHDDレコーダーやプレーヤ等のAV機器やAVコンポ等のオーディオ機器をはじめ、エアコンや照明器具等の家電機器です。

一般的なテレビの場合は、電源のオン・オフ、音量制御、チャンネル選択、入力の切り替え、メニュー表示や選択等、機器が有するほぼ全ての機能をリモコン送信機で制御可能です。よってこれらの機能を送信機から受けた信号をもとに、テレビ本体の制御用マイコンに信号出力すべく、リモコン受光モジュールにて光から電気的な信号へ変換しています。

リモコン受光モジュールの原理

リモコン受光モジュールの原理は、リモコン送信機から送信される変調された光信号を受信し、復調動作の後、後段のマイコンに制御信号を伝達するため、受け取った光信号をデジタル信号へ変換し出力する機能を有する点にあります。

リモコン受光ユニットに照射される光の波長は通常は940nmまたは960nmの近赤外線の光です。リモコン送信機は、リモコンの電池の寿命を長くする目的で、信号がONとなる期間を数パーセントに抑えるため元の信号を37.9KHzで変調をかけて送信します。リモコン受光モジュールで受信するのは、この変調された光です。

リモコン受光モジュールでは、受光素子で受けたのち、この信号を増幅してさらに37.9KHzの変調波を復調し、3~6V程度のデジタル信号として出力します。これは、後段に接続されるマイコン等の電源電圧の動作電圧と合わせる目的のためです。リモコン信号を受信したマイコンは信号の中身を解析し、その結果に応じて機器の制御を行います。

リモコン信号で用いられるデータフォーマットには複数の種類があります。いずれのフォーマットも同様の光の波長と変調周波数が使用されていますが、データ構造が異なるため互いの信号が干渉して誤動作しない配慮が施されています。

リモコン受光モジュールの特徴

リモコン受光モジュールの特徴として挙げられる項目には、EIAJで規定されているバンドⅠに対応した受信回路を指すことが多いですが、バンドⅢに対応するものを含む場合もあります。リモコン送信機から送られてくる近赤外線の変調光を受光するフォト・ダイオードの出力は、遠距離もしくは壁からの反射光を検出する場合は微弱な信号になりますが、機器の至近距離から操作された場合は非常に大きな信号となります。

従って、その信号を受ける増幅回路には80dB以上の広いダイナミックレンジが求められ、それを実現するのが内蔵のAGCです。照明器具が発する光を受けるとそれがノイズとして悪影響を及ぼすので、フォト・ダイオードは可視光カット特性 (近赤外光は透過) を持った樹脂で覆われ、照明器具の光の影響を除去可能です。

さらに、高周波で点滅するインバータ蛍光灯の影響から逃れるため、急峻な通過特性を備えるバンドパス・フィルターが設けられています。なお、リモコン受光モジュールの出力端はオープンコレクタ構成が一般的ですが、それは出力信号を受けるプロセッサー側の電源電圧に適合するためで、プロセッサーの入力端子にプルアップ抵抗を設けて信号を受信します。

リモコン受光モジュールのその他情報

1.  リモコン受光モジュールのノイズ対策

リモコン受光モジュールが利用される環境にノイズ源 (インバータ蛍光灯などの外乱光ノイズ、電源リップル、電源回路の電磁ノイズ等) がある場合は、その影響によりリモコンの受信距離が短くなることがあります。そのため、それらを避ける工夫が必要です。

電源リップルや電源回路のノイズ混入は回路設計上で対応できますが、蛍光灯の影響を防ぐには天井方向からの光を遮断するなど構造上の工夫が必要です。

2. リモコン受光モジュールの使用上の注意点

リモコン受光モジュールは非常に高いゲインを持たせているので、ノイズに対しても敏感に反応します。従って、シールド・ケースがついているリモコン受光モジュールであれば、それを確実にGNDに接続することが重要です。

一般的なリモコン受光モジュールは、室内で使用することが前提になっています。屋外で使用する場合、フォト・ダイオードに太陽光が廻り込むと、フォト・ダイオードの電流出力が極めて大きくなり、それを受けるアンプ回路が飽和してリモコン送信機からの近赤外光を受信することができません。

従って、屋外で使用する機器 (例えばカメラ等の撮影機材) では、太陽光による飽和対策が施された仕様を有するリモコン受光モジュールを採用します。