半導体検査装置とは
半導体検査装置とは、半導体製造工程の中で行われる検査に用いられる装置の総称です。
半導体製造では、ウェーハ製造段階、回路パターン形成段階、パッケージング段階で検査が行われます。様々な機器に用いられている半導体チップは機能の根源を担っているものも多く、正常に動作することは勿論、機器動作の安全性の面においても高い信頼性を保証する必要があります。
今や最も集積度が高い半導体チップでは、一つのチップ上に数百億個のトランジスタが搭載されており、これを数十年に渡って正常に動作させるためには、設計から製造まで十分な検査が必要です。
半導体検査装置の使用用途
半導体検査装置は、半導体製造工程のいくつかの段階で製造不良を検出するために用いられます。
1. ウェーハ製造段階
ウェーハ製造段階では、単結晶のシリコンの塊から回路製造の基板となる円盤状のシリコンウェーハがスライスされ、表面研磨や熱処理が行われて回路形成前のウェーハが製造されます。この段階での検査項目としては、スライスされたウェーハの歪みやヒビ割れ、エッジの欠けや表面の欠陥、異物の付着を検出する外観検査が行われ、良品と判定されたウェーハが次工程に送られます。
2. 回路パターン形成段階
回路パターン形成段階では、ウェーハ上にトランジスタや配線となる薄膜層の形成、フォトマスクを用いたパターン転写、不要な部分を除去するエッチングといった工程を繰り返しながら必要となる回路パターンが形成されます。この段階での検査項目としては、ウェーハ検査時のような外観検査の他に、電気的特性や回路としての正常動作を確認する検査があり、ここをクリヤしたウェーハが次工程に送られます。
3. パッケージング段階
パッケージング段階では、ウェーハ状態から一つ一つの半導体チップとして切断 (ダイシング) され、このチップの電極端子がパッケージ側の接続端子にボンディングされてパッケージに封入されます。この段階は製品として完成された段階にあたり、検査項目としては、電気的特性やパッケージとの接続 (ワイヤボンディング) 不良を検出する検査があり、ここをクリヤすると出荷可能な製品となります。
半導体検査装置の原理
半導体検査には大別すると外観検査と電気特性検査があります。
1. 外観検査
外観検査では高解像度カメラを用いて、ウェーハのひずみや割れ、エッジの欠けなどを検出したり、ウェーハ上の異物付着などを検出します。表面検査装置ではウェーハを回転させながらレーザー光をウェーハ表面に照射し、その反射光の散乱の有無を検出することで表面欠陥や異物付着を確認します。
更に、高感度カメラを用いてダイシングの際の寸法不良や、ワイヤーボンディング時の接続不良などの検出も行います。
回路パターン形成後には、電子顕微鏡を用いて微細パターンの画像解析を行い、異物検出や回路パターンのずれなどを確認します。高感度カメラで異物を発見した後、パターン転写を行い、転写後にレーザー発信機とレーザー受信機によって異物の位置を特定します。そこに電子顕微鏡を位置付けることで、異物の詳細部分を画像として記録し、他の形状などの詳細情報と比較して解析および評価を行います。
2. 電気特性検査
回路パターン形成段階ではウェーハ状態のまま電気特性の検査が行われます。この検査では、チップに対してテストパターンと呼ばれる電気信号を入力し出力信号パターンを期待値と比較して判定するLSIテスタと、一つ一つのチップの電極端子に正確に信号接続するためのチップレベルの位置決め制御を行うウェーハプローバと、チップ内の数百~数万の電極端子に正確に当たるように位置決めされた同数の針 (プローブ) を持つプローブカードで検査が実施されます。
パッケージング段階での検査は出荷前の最終検査となり、ファイナル検査 (F検) とも呼ばれます。ここではF検用ボードと呼ばれるテスト用のボードを作成し、回路動作を検査します。
近年の大規模回路ではBIST (英: Built In Self Test) と呼ばれる手法も用いられます。BISTでは、回路を検査するテストパターンを発生する回路と、テスト結果を期待値と照合する回路を設計段階から半導体チップ内に作り込むことで検査時間を短縮可能です。
以上に述べたような高感度カメラとLSIテスタ、電子顕微鏡の他、半導体検査に多く利用されているものとしては、検査用に作られた画像解析ソフトウェア、赤外線カメラ等が挙げられます。
参考文献
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000182.pdf