ボールエンドミル加工

ボールエンドミル加工とはボールエンドミル加工

ボールエンドミル加工とは、フライス盤やNC工作機械などで行われる、切削加工方法の一つで、エンドミル(刃)の先が丸くなっている切削工具を用います。先端が球面なので、主に、凸曲面や凹曲面など、複雑な3D曲面の切削に適しています。他にも、R面をとった材料の外周切削や溝加工が可能です。他のエンドミル加工は、曲面加工が苦手で、工数が増えたり、精度が悪くなります。

ボールエンドミル以外では、スクエアエンドミルやラジアスエンドミルを使うことが多いです。他にも、先端に向けて細くなっているテーパエンドミルがあります。

ボールエンドミル加工の使用用途

ボールエンドミル加工は、曲面の加工に適しています。特にNC工作機による、倣い加工やR加工に使われています。また、ボールエンドミル加工は、曲面だけでなく、平面加工やポケット加工など、様々な成形ができます。しかし、刃の先端が球面なので、R無し加工はできません。

4軸、5軸加工機を利用すれば、多様な形状の切削が可能で、複雑な形状を必要とする、自動車や航空機の部品、金型などの製作に適しています。さらに、工具先端の周速ゼロ点対策もでき、刃の寿命や工作速度も上がります。

ボールエンドミル加工の原理

ボールエンドミル加工は、3D曲面の形状切削に必要な加工方法です。複雑化する金型や部品など、必須になっています。曲面に対しては、切削面を高精度に仕上げられ、高精度に仕上げれば、最終仕上げの手作業による磨き工程時間が減らすことができます。

ボールエンドミル加工のデメリットは、刃の先端が球面なので、平面切削時にカスプが残ります。そのため、表面の仕上がりがあまりよくありません。面粗度を良くするには、加工経路を重ねなければいけないので、切削時間がかかります。また、ボールエンドミルと切削する材料との接触点によって、加工面の精度が変わってきます。そのため、ボールエンドミルを傾けて、刃の良く削れるポイントで切削することにより、高精度の切削や工具の破損対策ができます。ただし、材料の曲面に合った角度を調整する必要があるため、プログラムの難易度が上がります。

エンドミルを傾斜させる加工は、3軸加工機ではできません。5軸加工機なら、時間短縮や高精度切削が可能になります。

線材加工

線材加工とは

線材加工

線材加工は、細長い形状の金属材料に大きな力を加えて、目的の形に成形する加工方法です。主な加工方法は「曲げ」「切断」「溶接」「鍛造」などです。

線材曲げ加工に使われる工作機は、フォーミングマシンやコイリングマシンです。フォーミングマシンを用いた製作が不可能な場合は、プレス加工機を使います。プレス加工機は、金型によって複雑な曲げ成形が可能です。

線材加工に使われる主な金属素材は「鉄」「ステンレス」「アルミニウム」「チタン」「カーボン」「メッキ線」「真鍮」「ニッケル」などです。

線材加工の使用用途

線材加工は、曲げが基本的な加工方法ですが、曲げ以外の加工を加えることによって、多種多様な製品が作られます。線材を溶接してメッシュ状にしたり、先端をネジ加工したりできます。

線材の先端加工は「ねじ切り」「面取り」「つぶし」「穴あけ」など、目的に合わせた成形ができます。

線材加工にて作られているものは「針金」「ネジ」「金網」「バネ」「ワイヤー」などです。具体的な商品としては「自動車シートのバネ」「服のハンガー」「照明器具の保護網」「フライヤーのバスケット」など、線材加工は、幅広い分野の製品製作に用いられています。

線材加工の原理

線材加工は、線状の金属材料に力を加えて成形する塑性の性質を利用します。主に曲げ加工によって材料を成形しますが、溶接やつぶしなどを組み合わせて、複雑な製品を作成できます。切削加工が少ないため、削り屑が出ず、材料の無駄を削減できます。しかし、線材曲げ加工は、切削のような精度はありません。

1. 曲げ加工

曲げ加工は、線材加工において基本的な工程です。NC工作機械のフォーミングマシンを用いれば、曲げ加工と切断ができ、複雑な曲げやバネ形状などが製作可能です。コイリングマシンは、単純なバネ形状を早く成形できます。どちらも金型が不要で、大量生産ができます。

2. 溶接加工

線材の溶接加工は、主にスポット溶接を用いて、材料同士を結合します。他にも、バット溶接は、線材の端部同士を繋ぎ合わせる場合に使用します。

溶接加工について詳しくみる

3. プレス加工

小ロット生産やNC機械での製作が難しい場合は、ベンダーや手曲げ加工機やプレス加工機を使います。プレス加工機では、金型を製作することにより、量産ができます。

プレス加工について詳しくみる

 

線材加工後は、酸化を防ぐために、それぞれの素材にあった表面の処理をします。表面処理の方法は「塗装」「メッキ」「ビニール、ナイロンコーディング」などを施します。

ベンダー加工

ベンダー曲げ加工とは

ベンダー加工

ベンダー曲げ加工とは、金属加工において基本的な加工技術で、材料をベンダー(曲げ加工機)にて、形状を変化させる加工方法のひとつです。金属板を曲げる加工機は、プレスブレーキと呼びます。また、管材を曲げる加工機は、パイプベンダーと呼びます。

プレスブレーキは、パンチ(上金型)がダイ(下金型)にプレスすることで、間に置いた金属板を曲げ加工します。加工できる板厚に制限はありますが、複雑な曲げや小さな部品の加工ができます。また、加工速度が速く、大量生産も可能です。

ベンダー曲げ加工の使用用途

ベンダー曲げ加工は、材料に圧力をかけて曲げます。この圧力の調整や金型によって、様々な曲げ加工が可能です。そのため、幅広い分野の製品がベンダー加工で製作されます。

ベンダー曲げ加工を用いて作られる製品の材料は、「鉄」「アルミニウム」「ステンレス」「真鍮」「」などです。加工する際は、素材の特性を考慮して、金型や機械を調整します。

ベンダー曲げ加工によって製作された部品などは、素材の特性や使用される場所によって変わってきます。窓や扉のサッシから、自動車、機械、建築、飛行機まで、様々な分野の製品に用いられています。

ベンダー曲げ加工の原理

ベンダー曲げ加工の主な種類です。

1. ボトミング

曲げ加工の中で最も使われている方法です。材料と金型が密着するため、曲げRが小さくなる特徴があります。V字の金型のパンチ(上金型)とダイ(下金型)を用いた曲げ加工です。

2. パーシャルベンディング

プレスの圧力を調整して、曲げ角度を自由に変更できます。ボトミングと比較すると、角度にムラがあります。また、スプリングバックの影響が大きいです。

3. コイニング

精度が非常に高く、曲げRを小さくできます。高圧力にて材料を曲げるため、スプリングバックがほとんどありません。しかし、大きな圧力を加えるため、大型設備になります。また、圧力に耐えられる金型が必要です。

ベンダー曲げ加工のメリット・デメリット

ベンダー曲げ加工のメリット

ベンダー曲げ加工のメリットは、複雑な曲げや大量生産が可能であることです。また、金型は汎用性があるので、違う素材や違う形状への加工でも利用できます。

ベンダー曲げ加工のデメリット

ベンダー曲げ加工のデメリットは、金型を使うため、金型製造の初期コストが必要です。他にも、加工できる材料の板厚は、加工機や金型にもよりますが、10mm程度までです。さらに、加工後には、弾性回復によって、材料が跳ね返る(スプリングバック)ことがあります。このスプリングバックを考慮して、金型製作や機械調整が必要になります。

真鍮加工

真鍮加工とは

真鍮加工

真鍮加工とは、真鍮という優れた素材を日常生活に役立つ形状や製品に変える方法のことです。

真鍮は展延性で、伸ばしたり曲げたりしても壊れにくい点が特徴です。結果として、繊細な板や線形状への成形が可能になります。さらに、熱を加えることでさらに加工が容易になる熱間鋳造性を持っています。そのため、多様な形状やパーツの製造が可能です。

また、真鍮は精密な切削が可能であり、複雑で詳細な製品、例えば、時計や精密機器の部品作りに使用されます。ただし、真鍮は酸化しやすく、その美しい変色する可能性があるため注意が必要です。変色を防ぐには、表面にメッキやクリアコートを施すことで真鍮製品を保護します。

真鍮加工の使用用途

真鍮は、その優れた加工性能と美しい外観から、多種多様な製品に応用可能です。まず、機械部品、ボルト、ナットなどの製作に真鍮が活用されます。精密な切削加工や曲げ加工が可能な真鍮は、こうした産業製品の製造において欠かせない素材です。

また、真鍮の魅力はその美しさでもあります。そのため、アクセサリーや装飾品の製作にも広く用いられています。延ばしたり切削したりして形状を作り出すことが可能な真鍮は、アーティストたちの創造性を刺激していることで有名です。

さらに、真鍮の高い電気伝導率は、コンセントや電気配線の製造に大いに役立ちます。そのため、真鍮は電子製品の一部として生活に存在しています。さらに、金管楽器、給水管、建築部品、家具金具など、真鍮加工は様々な分野で応用されている技術です。

真鍮加工の原理

真鍮加工の原理は、物質科学と力学が深く関わっています。真鍮は銅と亜鉛の合金で、特定の物理的・化学的性質を有しています。真鍮の特性は微細な結晶構造に由来しており、結晶は加熱によって活性化し、物質内部での原子の再配置を可能にする点が特徴です。

1. 熱処理

熱処理は素材の核心であるこの結晶構造の再配置を促進し、素材の可塑性を高めます。可塑性の向上は真鍮を形成し、加工する際の重要な要素です。さらに、機械的な力が介入し、鍛造、圧延、押出し、旋盤加工といった様々な方法で素材を操作することで、真鍮は所期の形状と機能を得ることが可能となります。

2. 冷却

冷却によって加熱処理により活性化された結晶構造が再固定され、硬度と耐久性が確保されます。冷却速度や方法は、最終的な製品の物理的特性に大きな影響を与えます。

3. 研磨

研磨は真鍮製品の表面粗さを減少させ、鏡のような光沢をもたらします真鍮製品が放つ独特の美しさを生み出す要素であり、光学的な特性を向上させます。

真鍮加工の種類

真鍮加工には主にフライス盤、鋳型、レーザーカッター、プレス機、溶接機が使用されます。

1. フライス盤

フライス盤は、主に真鍮の切削加工に使用されます。多数の刃を持つフライスによって、真鍮を削って所望の形状に加工可能です。高精度な結果から、機械部品や精密製品の製造において重宝されます。

2. 鋳型

鋳型は、鋳造加工で使用されます。溶かした真鍮を鋳型に流し込み、冷却することで形状を定めます。鋳型の形状により、非常に複雑な形状の製品も作ることが可能です。

3. レーザーカッター

レーザーカッターは、高温のレーザー光線を利用して真鍮を切断する機械です。自由度の高いカットが可能で、細かいデザインの加工に適しています。特に、複雑な形状や精密なカットが必要な場合に活用されます。

4. プレス機

真鍮の曲げ加工には、プレス機やプレスブレーキが使用されます。特定の力を真鍮に加えて曲げ、所望の形状に成形します。強度の高い製品を効率よく作り出すことが可能です。

5. 溶接機

真鍮の溶接加工には、溶接機が使用されます。ただし、真鍮は高い熱伝導率を持つため、一般的な鉄材の溶接とは異なる手法が必要です。例えば、真鍮より低温で溶解する銀ロウを使ったロウ付けがよく行われます。

アルミ曲げ加工

アルミ曲げ加工とはアルミ曲げ加工

アルミ曲げ加工とは、アルミニウム板などをさまざまな部品や製品などに使用するための曲げ加工方法です。

アルミ曲げ加工には、主に「ロール曲げ」「プレス曲げ」「ベンダー曲げ」の3種類があります。アルミニウムは、鉄と比較すると柔らかく、軽い素材で、加工性に優れています。

しかし、粘り気が少ないため、小さすぎる曲げRで加工すると割れやすいです。また、伸びてしまうことがあるので、板厚や材質、曲げRを考慮して設計、加工しなければいけません。

アルミ曲げ加工で作られる加工品は、製造メーカーや作業者の能力によって精度が変わってきます。また、加工機械でもできることと、できないことがあります。

アルミ曲げ加工の使用用途

アルミ曲げ加工は、アルミニウムで作られた製品に対して行います。アルミニウムの軽さや柔らかさや加工のしやすさなどの特性を生かして、アルミ缶から宇宙船まで、幅広い分野で採用されています。

加工の観点で述べると、アルミニウム板をロール曲げで加工したものは、建築物の丸柱に巻かれていたり、プラントの配管などにも使われていたりします。他にも、建物のエンブレムや看板、扉などはベンダー曲げ、またはプレス曲げによって作られています。

質量の観点で述べると、アルミニウムは鉄の3分の1程度の質量しかありません。アルミニウムの軽さを利用して、鉄やなどでは重すぎて使えない製品にアルミニウムは利用される場合が多いです。身近な例として、近年の軽量化が進むスマートフォンが挙げられます。

アルミ曲げ加工の原理

アルミ曲げ加工は、アルミニウムを塑性変形させることが基本の原理です。ロール曲げやベンダー曲げで金型を作らずに成型させ、アルミニウムに塑性変形を起こさせます。

金型を使用しないため、金型製作の時間もコストも削減可能です。しかし、アルミの特性から割れや伸びに注意し、なるべく大きな曲げRで設計、加工する必要があります。

アルミ曲げ加工は、主に「ロール曲げ加工」「プレス曲げ加工」「ベンダー曲げ加工」の3種類があり、それぞれ加工方法が異なります。

1. ロール曲げ加工

ロール曲げは、金属板をロールに通して、巻き力で曲げる加工方法です。ローラーの距離を変化させて、金属板の形状を調整できます。幅広い板を曲げられます。

しかし、機械によっては加工可能なアルミ板の厚みに違いがあるため、アルミの特性を把握して加工をしなければならないのです。

2. プレス曲げ加工

プレス曲げは、金属を金型に押し込んで成形する方法です。細かく分けると「L字曲げ」「U字曲げ」「V字曲げ」と呼ばれることもあります。

一般的な曲げ加工と共通する点が多い加工方法で、一般的な曲げ加工と同様にプレス加工機を使用する加工になります。

3. ベンダー曲げ加工

ベンダー曲げは、金属をプレス機にて曲げたり折ったりする加工方法です。直角曲げだけではなく、V形状やL形状など、様々な形に加工できます。また、Z形状のような複雑な形にも加工できます。

しかし、ベンダー曲げに向いているのは薄いアルミ板で、厚みのあるアルミ板は向いていません。金型の設計についても熟練の技術が必要なので難しい加工方法です。

アルミ曲げ加工のその他情報

アルミ曲げ加工の注意点

アルミ曲げ加工は、割れや伸びに注意が必要です。ロール曲げやベンダー曲げで金型を作ることなく成型させ、アルミニウムに塑性変形を起こさせます。

金型を使用しないため低コストですが、デメリットとしてアルミの特性から割れや伸びが起こる場合があることが挙げられます。アルミニウムは引っ張られると、鉄の一様伸びとは異なり、局部伸びが発生します。また、伸びが一様にならないため、割れが発生する場合も多いです。

割れを防ぐためには、圧延方向と直角の方向への曲げ加工、曲げ幅を大きくする加工を行う必要があります。また、金型を用いたプレス曲げの場合は、アルミが柔らかいため、金型の摩耗や傷が表面に出やすい点にも注意が必要です。

ヘアライン加工

ヘアライン加工とはヘアライン加工

ヘアライン加工とは、製品の質感を引き立てるための1種の表面処理技術のことです。

細やかな線が一定方向に並ぶその特性は、まさに髪の毛のような繊細さを感じさせます。金属に優雅な傷をつけることで、表面の艶を抑えて金属特有の質感を強調することが可能です。

製品に高級感と落ち着きをもたらし、様々な製品デザインに活用されています。一方で、ヘアライン加工の対極に位置するのが「鏡面加工」です。

鏡面加工は金属を磨き上げて鏡のような反射面を作り出します。美しさが際立つ一方、傷や汚れも目立つため、取り扱いには注意が必要です。

ヘアライン加工の使用用途

ヘアライン加工は、製品の美観を保ちながら実用性も兼ね備えた技術です。時計やインテリア、アクセサリー、キッチン用品、建材など、さまざまな分野で使用されています。

金属表面に繊細な線の凸凹を作ることで、指紋や傷が目立たなくなります。また、光の反射を和らげる効果があり、金属の質感と高級感を際立たせることが可能です。

さらに、ヘアライン加工は金属だけでなく、樹脂製品にも適用できます。樹脂でも金属のような質感と見た目を再現できるため、コストパフォーマンスに優れた選択肢として多くの製品で採用されています。家電製品やカーナビ、オーディオ、建材など、樹脂製品でもヘアライン加工の効果は大いに発揮されています。

ヘアライン加工はその多機能性から、あらゆる製品の品質向上とデザイン性の高め方に貢献しており、これからもその活躍の場は広がっていくことでしょう。

ヘアライン加工の原理

ヘアライン加工は、金属や樹脂などの素材の表面に細長い線状の傷をつけることで、特定のパターンを形成する表面処理の1種です。その名前の由来は、加工結果が人の髪のような細いラインに見えることから来ています。

研磨布やワイヤーブラシなどの研磨材を用いて、一定の方向に連続的に磨き、素材の表面に微細な線状の傷をつけることで加工します。その際、研磨方向は一定に保たれることが重要です。

一連の加工過程は、表面に独特の質感を与え、素材の高級感や落ち着きを強調します。また、ヘアライン加工によって傷や指紋が目立たなくなるという実用性もあります。

ヘアライン加工の種類

ヘアライン加工には直線ヘアライン加工、ランダムヘアライン加工、渦巻きヘアライン加工、クロスヘアライン加工、波状ヘアライン加工、網目ヘアライン加工、縞模様ヘアライン加工があります。それぞれの加工法が持つ独自の美しさと特性を理解し、製品に最適な方法を選ぶことが重要です。

1. 直線ヘアライン加工

最も一般的なヘアライン加工の形態で、一定の方向に連続的な直線の線状の傷をつけます。シンプルな美しさと、傷や汚れを目立たせない特性が高く評価されています。

2. ランダムヘアライン加工

研磨の方向がランダムに変わる加工法です。無秩序な線状の傷が複雑なパターンを作り出し、豊かな質感と独特の表情をもたらします。

3. 渦巻きヘアライン加工

渦巻き状の線をつける加工法で、個性的で目を引くデザインが特徴です。主に装飾用品や一部のインテリアに使用されます。

4. クロスヘアライン加工

線状の傷を2つの異なる方向に交差させてつける加工法です。表面に幾何学的な模様を作り出し、独特な視覚効果を生み出します。

5. 波状ヘアライン加工

波状の線をつける加工法で、流動的で自然な雰囲気が特徴です。独特なリズム感があり、製品に動きと活気を与えます。

6. 網目ヘアライン加工

線状の傷を格子状に交差させてつけるもので、その名の通り網目のようなパターンを作り出します。繊細な線の交差が生み出す立体的な影が特徴で、視覚的な深みを製品に与えます。

7. 縞模様ヘアライン加工

異なる幅の線状の傷を一定のリズムで交互につけるものです。結果として表面に縞模様が生まれ、独特なリズム感とダイナミズムを製品にもたらします。

アルマイト加工

アルマイト加工とはアルマイト加工

アルマイト加工とは、アルミニウム表面に酸化皮膜を生成させる表面処理方法です。

アルマイト加工すると、アルミニウムの表面を腐食や傷、摩擦などから保護することができます。アルミニウムは酸化しやすいため、表面に薄い酸化皮膜を生成します。この酸化皮膜は、自然に作られ、錆びにくく、耐食性が高くなります。

しかし、自然に作られた酸化皮膜は非常に薄いため、他の物質と化学反応を起こして腐食してしまいます。また、アルミニウムは柔らかい素材なので表面が傷つきやすいです。そのため、アルミニウムにアルマイト加工を施し、厚くて丈夫な酸化皮膜を生成させます。

表面の被膜となる酸化アルミニウムは不動態と呼ばれる状態です。一度酸化アルミになると、変化しない性質を持っているため内側のアルミニウムを保護することができ、アルミニウムが腐食に強くなります。

アルマイト加工の使用用途

アルマイト加工されたアルミニウムは「耐腐食性」「耐摩耗性」「硬度性」が高くなるため、傷や摩擦に強くなります。また、酸化皮膜を形成した表面に染料を吸着させると様々な色をつけられるため、外観を美しくできます。

アルミニウムは熱伝導率が高く、軽くて持ち運びやすいことから鍋、やかん、バットなどの調理器具に使われています。また、加工性が高いため長期間屋外で使用される扉、サッシなどの建築材料や、自動車、電車、飛行機などの工業部品にも使用されています。屋外で使用される製品に使われていることが多いです。

同じ製品でもアルマイト被膜の厚みを変えて、地域ごとに対応可能な製品が販売されている場合があります。地域での仕様への適合可否が発生することがあるため、北海道や沖縄など首都圏近郊と気象条件が異なる地域へアルミ製品を出荷する際は注意が必要です。

アルマイト加工の原理

アルマイト (陽極酸化処理) は、電解液 (硫酸またはしゅう酸) の中で電気分解をさせてアルミニウムに酸化皮膜を形成させます。処理する製品を陽極側に取り付けて通電すると、電気分解によって酸素が発生し、アルミニウムの表面に皮膜を形成します。

アルマイト処理中のアルミニウム素地では、酸化反応と硫酸イオンの溶出反応が同時に起こります。形成された皮膜には無数の微細孔ができ、孔が規則正しく伸びています。さらに、耐食性を上げるために微細孔の封孔処理をします。

封孔処理には加圧蒸気や熱湯、金属塩を用います。電解液の種類、濃度、電流密度、温度等の電解の条件やアルミ合金の種類を組合せることで、シルバー、ブラック、ゴールド、アンバーなどの色を出したり (発色・着色) 、耐摩耗性を向上させて硬い皮膜をつくることもできます。

アルマイト加工で形成された酸化皮膜は、絶縁性があり電気を通しません。そのため、耐電圧性を求められる電子機器や半導体製造装置などに利用されています。また、耐腐食性や撥水性の特性を利用して工業製品、建材、家庭用品、装飾品、輸送機器など幅広い分野で利用されています。

アルマイト加工のその他情報

アルマイト加工の歴史

アルマイト加工の歴史は古く、陽極酸化皮膜の存在は、1846年ファラデーが発表したといわれています。日本では、理化学研究所創立当初 (大正6年) から研究が開始され、大正12年鯨井恒太郎、植木栄の二人により出願された「アルミの電気絶縁性皮膜の製法」「アルミニウムおよびアルミ合金の防銹法」が日本で初めての陽極酸化皮膜に関する特許となります。その後、耐食性に優れた酸化皮膜の製法が確立されました。

昭和初期には、日本アルミ製造所、那須アルミの2社からアルマイト加工した製品が発売されるようになりました。昭和9年にアルマイト加工を専業とする理研アルマイトが設立され、委託加工を開始しました。弁当箱、湯沸し、鍋などが世に出回り始めたことから、アルマイトの名前が普及し、陽極酸化とアルマイトは同義語として使われるようになりました。

参考文献
https://www.dhk.co.jp/library/alumite/

マラソン

マラソンとは

マラソンとは、農薬の1種で、有機リン系の殺虫剤です。

主成分はマラチオン (英: Malathion) で、淡黄色澄明可乳化油状液体の乳剤等に加工されて商品になることが多いです。安全性については、毒劇物に該当しない普通物としての扱いで、日本では半世紀以上使用されている農薬になります。

マラソンは、神経末端での情報伝達を制御する役割を担っているコリンエステラーゼ活性を不可逆的に不活性化します。その結果、駆除対象生物に神経麻痺を与えて殺虫効果を発揮します。

イネ、果樹類、豆類、野菜類、花き類のアブラムシやハダニなど登録されている種類は幅広いです。さらに、価格も比較的安価でホームセンターなどでも購入できるため、家庭菜園の方からプロの農家まで広く使用されています。

マラソンの使用用途

マラソンの使用用途は、害虫の防除です。即効性があり早く防除の効果がでることと、多くの農作物と害虫に登録があることが大きな特徴です。

効果的に防除できる害虫として、野菜類や花き類に発生するアブラムシやハダニ類、イネに発生するツマグロヨコバイやウンカ類、果樹に発生するアブラムシやケムシ類、カイガラムシ類、豆類に発生するハダニ類やコガネムシ類が挙げられます。

有機リン系の殺虫剤の場合、アブラナ科の農作物に散布すると、薬害がでるため使用ができないことがあります。しかし、マラソンはキャベツやブロッコリー、ハクサイなどのアブラナ科の農作物にも登録があるため使用可能です。

マラソンには葉や茎から吸収されて、植物体に広がっていく浸透移行性があります。そのため、直接農薬が当たらなかった害虫で、葉や果実をなめたり、口にする害虫にも効果的です。

マラソンの特徴

長所

  • イネや果樹、野菜類、花き類まで幅広い農作物と、アブラムシ、ハダニ類、カイガラムシ類、コガネムシ類など幅広い害虫に登録があり使用できます。
  • 浸透移行性があるため、葉や果実をなめたり、口にする害虫に対しては散布時に直接農薬を当てなくても防除の効果がでます。
  • 低価格でホームセンターでも購入できるため、家庭菜園の方にも使いやすいです。

短所

  • 薬剤や散布機のコストがかかります。コストに見合う効果がでるか検討してから使用することが大切です。
  • 薬剤が植物体内に残り、効果を発揮する残効性が短いです。1度散布し害虫を駆除しても、再度害虫が発生してしまう可能性があります。

マラソンの種類

マラソンは形状により、次のような種類に分類ができます。

1. マラソン乳剤

マラソン乳剤は液体で、水に希釈して使用し、水に希釈すると乳濁色になるのが特徴です。野菜類、果樹類、花き類などのアブラムシやハダニ類、アザミウマ類など幅広い農作物、害虫に登録があります。なお、希釈して農作物に散布を行います。

2.マラソン粉剤

マラソン粉剤は粉状で、野菜類、果樹類、花き類などのアブラムシやハダニ類、アザミウマ類など幅広い農作物、害虫に登録があります。粉剤をそのまま散布するので、手軽に行えるが特徴です。

マラソンその他情報

使用上の注意点

  • 散布時は手袋やマスクを着用し、目や鼻、肌に直接かからないように注意が必要です。
  • 農作物の受粉を助けるためのミツバチに影響が出るため、ミツバチを放飼中の施設では使用をさける必要があります。また、近隣で養蜂をおこなっている場合、関係機関に情報を提供する必要があります。
  • 1回の栽培において、使用回数が定められているため注意が必要です。また、マラソンの成分を含む農薬の総使用回数も定められているため、全体の農薬使用回数も制限があります。
  • 河川や湖、沼などの水産動植物に影響を及ぼすため、河川や養殖池などに飛散、流入しないように注意が必要です。また、薬剤の使用残りや容器の洗浄水は河川等に流してはいけません。

ブロマシル

ブロマシルとは

ブロマシルの構造

図1. ブロマシルの構造

ブロマシル (英: Bromacil) とは、化学式C9H13BrN2O2で表される有機化合物です。

IUPAC命名法による名称は 5-ブロモ-3-sec-ブチル-6-メチルウラシルです。ダイアジン系殺草剤の主成分として知られています。CAS登録番号は314-40-9です。

ブロマシルの使用用途

ブロマシルの主な使用用途は除草剤です。元々はアメリカ合衆国のデュポンが開発した除草剤であり、日本では1965年4月30日に農薬登録を受けました。現在では、液剤、水和剤、粉粒剤、粒剤などの緑地管理用除草剤として加工され、非農耕地用に主に散布されます。宅地、緑地、工場敷地、墓地、公園、駐車場、道路、グラウンド、畜舎敷、鉄道敷等の土壌全面に対して均一に散布して使用される物質です。

多年生、一年生を問わず、管理地に生えているイネ科の雑草を枯らす場合に使用しますが、使用量と適用回数に制限があります。雑草の生育ステージを問わず、発生前から生育期まで、どの時期からでも適用することが可能な除草剤です。

ブロマシルの性質

ブロマシルとウラシルの構造の対比

図2. ブロマシルとウラシルの構造の対比

ブロマシルは分子量261.1157、融点151.1〜151.6℃であり、常温での外観は象牙色粉末固体です。かすかにみかんのような臭いを帯びており、210℃で分解します。

エタノール及びアセトンに溶けやすく、アセトニトリルにやや溶けやすく、水に極めて溶けにくい性質を示します。密度は1.6g/mLです。ブロマシルの構造的特徴は、ピリミジン骨格を分子構造内に持ち、ウラシルの誘導体であることにあります。

ブロマシルの種類

ブロマシルは、ブロマシルを含む除草剤製剤や残留農薬試験を始めとした分析などに用いる標準物質としての販売があります。

1. 除草剤

ブロマシルを成分とする除草剤としては、「ウィードコロン」「ハイバーX」「ボロシル」などの製品名が知られていますが、これらの他にも多くの製品が販売されています。粒状の製剤が特に多く見られますが、粉粒剤、水和剤、液剤などもあります。

2. 標準物質

ブロマシルは、残留農薬試験などの各種分析に用いる標準物質としても販売されています。標準物質としての製品は、試薬メーカーなどより販売されている場合が多く、容量の種類は100mgや250mgなどの小容量が主流です。冷蔵で取り扱われるべき試薬製品とされることもあります。

ブロマシルのその他情報

1. ブロマシルの作用機序

植物における光合成とブロマシルによる阻害のイメージ

図3. ブロマシルの作用機序

ブロマシルの除草剤としての作用機序は、光合成における化学反応であるヒル反応を阻害することにあります。ヒル反応とは、葉緑体中のチラコイド膜において、クロロフィルが光エネルギーを使って水を分解し、プロトン・酸素分子及び電子を生み出す反応です。

散布後の土壌における残効性は4ヶ月以上あり、根から植物体内に速やかに吸収されます。散布直後から雑草の生育を長期に渡って抑制します。

2. ブロマシルの有害性

ブロマシルは、前述の通り人体や環境への有害性が指摘されている物質です。GHS分類では下記のように分類されています。取り扱いの際には、適切な局所換気装置と全体換気装置を設置し、保護衣や保護メガネなどの適切な個人用保護具を使用することが必要です。また、廃液などの廃棄物も適切に処理することが求められます。

  • 急性毒性 (経口) : 区分4
  • 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性: 区分2B
  • 発がん性: 区分2
  • 生殖毒性: 区分2
  • 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) : 区分1 神経系
  • 水生環境有害性 (急性) : 区分1
  • 水生環境有害性 (慢性) : 区分1

特に、水生生物有害性があることから、不適切な廃棄によって水産動植物 (藻類) の生育に影響を及ぼす可能性があります。本剤を使用する場合や散布器具等を洗浄する場合は、養殖池や河川等に流入したり飛散したりすることのないように注意が必要です。

3. ブロマシルの法規制情報

ブロマシルは、有害性ゆえに各種法令によって規制を受ける物質です。労働安全衛生法では名称等を表示すべき危険物及び有害物、名称等を通知すべき危険物及び有害物に指定されています。法令を遵守して正しく取り扱うことが必要です。

参考文献
https://www.env.go.jp/water/sui-kaitei/kijun/rv/254bromacil%20.pdf

フェニトロチオン

フェニトロチオンとは

フェニトロチオン (C9H12NO5PS) とは、殺虫剤に分類されアブラムシやカメムシ類、ケムシ類などの害虫から農作物を守る用途で使用される農薬の成分です。

フェニトロチオンを含む農薬は、マイクロカプセル剤、エアゾル剤、油剤、乳剤、水和剤、粒剤、粉剤等に加工されます。加工された農薬は、MEPと省略されることが多いです。

1961年に初回登録をされてから現在まで、長く使用されています。農薬としての安全性については、毒劇物に該当しない普通物としての扱いです。

フェニトロチオンの使用用途

フェニトロチオンの使用用途は、害虫の防除です。イネ、果樹、野菜などの農作物に使用することができ、アブラムシやアザミウマ類、カメムシ類、カイガラムシ類など幅広い害虫に登録があります。

フェニトロチオンを含む農薬の使用方法は、農薬の散布です。水に希釈して農作物に散布する方法と土壌に散布して、地中に染み込ませる方法があります。

その他、家庭用の殺虫剤として、不快害虫であるハエ類、蚊の駆除に用いたり、シロアリの駆除などにも用いられます。アブラムシ類、ダニ類、アザミウマ類、カメムシ類、カイガラムシ類、ヨトウムシ類などの害虫防除に使用しますが、適用作物群ごとに対象となる害虫が指定されているため、防除したい害虫を確認してから使用することが大切です。

フェニトロチオンの原理

フェニトロチオンは有機リン系の農薬で、農薬の作用機構による分類ではアセチルコリンエステラーゼ阻害のグループ (1B) です。フェニトロチオンの作用機作は、本剤が害虫体内に吸収されるとオキソン体 (P=O基) に酸化され、神経と神経の伝達物質の代謝に不可欠なコリンエステラーゼと結合してその活性を低下させます。

害虫の神経伝達機能が阻害された結果が、殺虫効果につながると考えられています。

フェニトロチオンの種類

フェニトロチオンは使用する成分量で次のような殺虫剤に分けられ、使用されています。

1. スミパイン乳剤

スミパイン乳剤は有効成分にフェニトロチオン (MEP) を80.0%含む、黄褐色液体状の殺虫剤です。水に希釈して使用し、水に希釈すると白色の乳濁色になるのが特徴です。

スミパイン乳剤は、マツやサクラ、樹木類のカミキリムシ類やキクイムシ、ゾウムシなどに登録があり、使用できます。特にマツでは、マツノマダラカミキリやキクイムシ類、シンクイムシ類などマツの害虫を同時に防除できることが大きな特徴です。

また、散布方法も通常の液体散布だけでなく、ガンノズル散布や無人ヘリコプターによる散布など数種類あり、幅広い用途に対応しています。

2. スミチオン乳剤

スミチオン乳剤は有効成分にフェニトロチオン (MEP) を50.0%含む、黄褐色液体状の殺虫剤です。スミパイン乳剤同様、水に希釈して使用し、水に希釈すると白色の乳濁色になるのが特徴です。

スミチオン乳剤はイネや果樹類、ジャガイモや豆類などの野菜類のアブラムシやアザミウマ、カメムシ類など多くの農作物と害虫に登録があります。また、ホームセンターなどでも購入することができるため、家庭菜園の方から農家の方まで幅広く使用されています。

3. スミチオン水和剤40

スミチオン水和剤40は有効成分にフェニトロチオン (MEP) を40.0%含む粉末の殺虫剤です。使用方法は水に希釈して、農作物に散布します。

スミチオン水和剤40は、リンゴやナシ、ブドウ、オウトウなどの果樹多くの果樹のアブラムシやシンクイムシ、カメムシ類、カミキリムシ類に登録があり使用できます。

フェニトロチオンその他情報

使用上の注意点

  • 使用時は手袋やマスクを着用し、目や鼻、肌に直接かからないようにします。
  • ミツバチに対して影響があるので、ミツバチの巣箱やその周辺、受粉促進でミツバチを放飼中のハウスなどでは使用できません。
  • 水産動植物に対して影響があるので、河川や養殖池などに流入しないようにします。