アルマイト加工とは
アルマイト加工とは、アルミニウム表面に酸化皮膜を生成させる表面処理方法です。
アルマイト加工すると、アルミニウムの表面を腐食や傷、摩擦などから保護することができます。アルミニウムは酸化しやすいため、表面に薄い酸化皮膜を生成します。この酸化皮膜は、自然に作られ、錆びにくく、耐食性が高くなります。
しかし、自然に作られた酸化皮膜は非常に薄いため、他の物質と化学反応を起こして腐食してしまいます。また、アルミニウムは柔らかい素材なので表面が傷つきやすいです。そのため、アルミニウムにアルマイト加工を施し、厚くて丈夫な酸化皮膜を生成させます。
表面の被膜となる酸化アルミニウムは不動態と呼ばれる状態です。一度酸化アルミになると、変化しない性質を持っているため内側のアルミニウムを保護することができ、アルミニウムが腐食に強くなります。
アルマイト加工の使用用途
アルマイト加工されたアルミニウムは「耐腐食性」「耐摩耗性」「硬度性」が高くなるため、傷や摩擦に強くなります。また、酸化皮膜を形成した表面に染料を吸着させると様々な色をつけられるため、外観を美しくできます。
アルミニウムは熱伝導率が高く、軽くて持ち運びやすいことから鍋、やかん、バットなどの調理器具に使われています。また、加工性が高いため長期間屋外で使用される扉、サッシなどの建築材料や、自動車、電車、飛行機などの工業部品にも使用されています。屋外で使用される製品に使われていることが多いです。
同じ製品でもアルマイト被膜の厚みを変えて、地域ごとに対応可能な製品が販売されている場合があります。地域での仕様への適合可否が発生することがあるため、北海道や沖縄など首都圏近郊と気象条件が異なる地域へアルミ製品を出荷する際は注意が必要です。
アルマイト加工の原理
アルマイト (陽極酸化処理) は、電解液 (硫酸またはしゅう酸) の中で電気分解をさせてアルミニウムに酸化皮膜を形成させます。処理する製品を陽極側に取り付けて通電すると、電気分解によって酸素が発生し、アルミニウムの表面に皮膜を形成します。
アルマイト処理中のアルミニウム素地では、酸化反応と硫酸イオンの溶出反応が同時に起こります。形成された皮膜には無数の微細孔ができ、孔が規則正しく伸びています。さらに、耐食性を上げるために微細孔の封孔処理をします。
封孔処理には加圧蒸気や熱湯、金属塩を用います。電解液の種類、濃度、電流密度、温度等の電解の条件やアルミ合金の種類を組合せることで、シルバー、ブラック、ゴールド、アンバーなどの色を出したり (発色・着色) 、耐摩耗性を向上させて硬い皮膜をつくることもできます。
アルマイト加工で形成された酸化皮膜は、絶縁性があり電気を通しません。そのため、耐電圧性を求められる電子機器や半導体製造装置などに利用されています。また、耐腐食性や撥水性の特性を利用して工業製品、建材、家庭用品、装飾品、輸送機器など幅広い分野で利用されています。
アルマイト加工のその他情報
アルマイト加工の歴史
アルマイト加工の歴史は古く、陽極酸化皮膜の存在は、1846年ファラデーが発表したといわれています。日本では、理化学研究所創立当初 (大正6年) から研究が開始され、大正12年鯨井恒太郎、植木栄の二人により出願された「アルミの電気絶縁性皮膜の製法」「アルミニウムおよびアルミ合金の防銹法」が日本で初めての陽極酸化皮膜に関する特許となります。その後、耐食性に優れた酸化皮膜の製法が確立されました。
昭和初期には、日本アルミ製造所、那須アルミの2社からアルマイト加工した製品が発売されるようになりました。昭和9年にアルマイト加工を専業とする理研アルマイトが設立され、委託加工を開始しました。弁当箱、湯沸し、鍋などが世に出回り始めたことから、アルマイトの名前が普及し、陽極酸化とアルマイトは同義語として使われるようになりました。