位置決めスイッチ

位置決めスイッチとは

位置決めスイッチとは、特定の位置に物体を正確に配置するために使用される接触式センサーです。

タッチスイッチや高精度スイッチなどとも呼ばれます。検出体が位置決めスイッチ先端の可動式ピンを一定ラインまで押し込むことで動作します。位置決めスイッチは、非常に高い精度で位置を検出することができる点が特徴です。これにより、正確な位置制御や位置検出が可能となります。

また、非常に高い精度で位置を検出することができるため、正確な位置制御や位置検出に対して有利です。ただし、位置決めスイッチは正確な位置検出のために正しく設置される必要があります。誤った位置や角度で設置されると、正確な検出ができない場合も多いです。

用途や仕組みはマイクロスイッチリミットスイッチに似ていますが、耐久性や精度が相違点です。位置決めスイッチは精度が高く、精密タイプであればミクロン単位の検出が可能です。300万回の耐久性を発揮する製品もあります。

位置決めスイッチの使用用途

位置決めスイッチはさまざまな用途で使用されます。以下は位置決めスイッチの使用用途一例です。

1. 製造業

組立ラインや生産ラインにおいて部品や製品の正確な位置検出や制御に使用されます。機械加工において工具の位置を検出し、正確な切削や加工を行うために使用される場合が多いです。

また、ロボットアームの位置制御にも位置決めスイッチが利用されます。これにより、ロボットが正確な位置にアームを配置して作業を行うことが可能です。

2. 医療

医療機器において、特定の位置や位置変化を検出するために使用されます。画像診断装置においては、撮影位置や患者の位置検出のために位置決めスイッチが利用される場合も多いです。手術支援ロボットにも位置決めスイッチが組み込まれており、手術器具やツールの位置を正確に検出し、手術を支援します。

3. 印刷機

印刷機において、用紙の位置や送り具合を正確に制御するために使用されます。印刷機の用紙送りシステムに位置決めスイッチが組み込まれていることも多いです。これにより、用紙の位置を正確に検出し、印刷ヘッドやインキ供給機器を適切に制御することが可能です。

位置決めスイッチの原理

位置決めスイッチは、物理的な接触に基づいて位置を検出するスイッチです。主にアクチュエータ、接点、スプリングなどで構成されます。

1. アクチュエータ

アクチュエータは、外部からの力や圧力によって押される構成部品です。これはスイッチの操作部分であり、外部から物理的に押されることでスイッチの状態を変化させます。スイッチの操作性や接触範囲を決定する部品です。

2. 接点

接点は、スイッチ内部で電気回路を開閉する構成部品です。アクチュエータの動きによって接点が開閉し、スイッチのON/OFF状態が切り替わります。一般的には、銀や金などの有価金属で製作させることが多いです。

3. スプリング

スプリングは、アクチュエータが離されたときにスイッチを元の状態に戻す役割を果たす構成部品です。スイッチの反応速度や感度を制御します。

位置決めスイッチの選び方

位置決めスイッチを選ぶ際はさまざまな要素があります。以下は選定に関する重要な要素の一例です。

1. アクチュエータの種類

アクチュエータはスイッチを操作する部分であり、操作性に影響を与えます。選択するアクチュエータの種類は、使用環境や応用に応じて慎重に検討することが必要です。ピンプランジャやトッププランジャ、ベベルプランジャなどから選定します。

2. 動作表示灯

位置決めスイッチには、スイッチの状態を視覚的に示す動作表示灯が付属する場合があります。これにより、スイッチの状態を容易に確認することが可能です。応用や環境によっては表示灯の有無や表示の明確さが重要な要素となることがあります。

3. 繰り返し精度

位置決めスイッチの繰り返し精度は、同じ位置での再現性を示す重要な要素です。スイッチが正確に同じ位置を検出できるかどうかは、特定の応用において非常に重要です。製造精度や設計によって異なるため、スイッチの仕様を確認することが重要となります。

4. 動作に必要な力

位置決めスイッチの操作には一定の力が必要な場合があります。この力は、アクチュエータを操作する際にかかる力です。適用する用途の持つ力に基づいて、適切な要件を持つ位置決めスイッチを選択する必要があります。

参考文献
https://www.metrol.co.jp/blog/2020/06/16/13119/

ワイヤー電極線

ワイヤー電極線とは

ワイヤー電極線とは、ワイヤー放電加工機で使用する工具です。
工作物(ワーク)を放電加工を行う場合、ワークと工具電極間に電圧印加させ放電現象を起こします。
その時発生する高熱(7000℃程度)で少しずつワークを加熱溶解します。

この加工の際に使用する工具が「ワイヤー電極線」です。
その電極線の直径はおよそ0.05~0.3mmと非常に細い金属線です。
また、電極線を構成する物質はほとんど黄銅亜鉛の合金)です。

ワイヤー電極線の使用用途

ワイヤー電極線は、いろいろな硬い金属部品を切削加工する際に使用されます。
通電可能なワークで有ればどのように硬くても放電加工が可能です。

  1. 特殊リングの加工
    ワイヤー電極線により特殊リングを高精度で切断します。
  2. 板ばね
    ワイヤー電極線を使って板バネを重ね切りします。
  3. メタルマスク
    簡単にメタルマスクの加工が可能です。
  4. 家電製品他
    家電製品やスマートホーンに使用される金属部品の精密加工に使用されます。
     また、航空機分野の精密部品加工にも使用されます。

ワイヤー電極線の特徴

ワイヤー放電加工機に使用する「ワイヤー電極線」は、電極としてのワイヤーを送り続けながらワーク金属を放電による熱で「糸のこ」のように切断します。
切断や異形加工する金属の形や厚さからワイヤーの径を決めますが。主に直径0.1~0.3mmの線を選択します。

放電加工機に使用されるダイス径により、電極線の直径が変わりますが太すぎるとダイスを通りませんし、細すぎても電極線が振れるので適切なサイズを選びます。
現在使用されている線径(単位mm)は下記のようになります。

・0.02,0.03,0.05,0.07,0.10,0.15,0.20,0.25、0.30

ワイヤー電極線の組成は、主に黄銅(銅と亜鉛の合金、亜鉛の組成が35~40%)が主になります。
黄銅は放電特性がよく、汎用型の電極線として大変広く使われています。

次いで使用されるのが、コーディングワイヤーと呼ばれるタイプです。
黄銅の表層に電気メッキで高純度亜鉛をコーティングします。

高純度の亜鉛層はワーク表面を均一で凹凸なく仕上げるため高速度加工が可能となります。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/110610283319/?list=PageCategory
https://sunroxedm.co.jp/product/
https://edm-expertnavi.com/492/
https://www.hitachi-metals.co.jp/products/auto/ml/discharge_wire.html
https://chb.co.jp/products-ct-wire/

ブシュ

ブシュとは

ブシュとは大きな意味では「部品同士の隙間を埋めるための部品」のことです。
よく機械部品で使われているのは、軸受け部品で使用されているブシュです。

軸受け部品は機械が稼働している最中、常に回転する軸と摩擦を起こしているため、グリスなどの潤滑油で摩耗を防ぐようにしても、完全にゼロにはできません。
そのため、削れた部分の再生が必要となるが、ブシュが使用されていれば、部品交換だけで機能を復元することができます。

ブシュの使用用途

ブシュには下記のような使用例があります。

  1. 自動車のサスペンションアームのジョイント部
    サスペンションアームと車体の間は、車体が走行中に振動で、お互いに摩擦が発生します。
    そのため、ジョイント部分にはゴム製のブシュが使われていて、振動の低減を可能にしています。
    ゴム製のため経年劣化をすると、走行時の振動やぐらつきが出るようになります。
  2. モーターとアームのリンク部
    蓋を開閉する用途で使われているモーターでは、蓋とモーターをつなぐアームの取付穴に無給油ブシュを入れることが多いです。
    アーム本体が削れると、部品交換が大掛かりになるためです。

ブシュの原理

ブシュには給油方式で無給油タイプと給油タイプの2種類あり、特徴が異なります。

  1. 無給油ブシュ
    定期的な給油が不要なので、給油しにくい場所でよく使われます。
    ただし、摩耗しやすいデメリットがあるので交換頻度が増えます。
  2. 給油ブシュ
    敵的な給油を行えば、摩耗は少なく交換頻度が下がります。
    ただし、給油を怠れば、かえって寿命は短くなるので管理が重要です。
    自動給油装置を同時に使用すれば、作業者の管理工数がかからなくなります。

またブシュに材質で強度が異なるため、使用用途によって適切な選定が必要です。
一般的な機械部品では、耐摩耗性を考えて強度の高い材質を選定しがちですが、ブシュは交換を前提とする部品です。
ブシュの強度が高すぎると、ブシュは摩耗しないのに、本体の部品側が摩耗してしまうため、部品交換のコストや作業工数が増加してしまいます。
ブシュは本体の部品の材質を考慮して、適切な材料を選定する必要があります。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/g0019.html
https://car-moby.jp/article/automobile-supplies/automobie-item/rubber-bush/

イケール

イケールとは

イケールとは機械加工で使われる治具の一種のことです。
ベースとなる面と直角方向に、加工する製品を取り付けるため、L字や立方体型をしている治具です。
各面は凹凸の無い品質の良い平面で製作されており、L字部や立方体は正確に90度が確保されています。
イケールにはクランパーワークガイドなどの、治具部品をとりつけるためのタップ穴や、通し穴、長穴などが用意されていて、様々な製品に対して多様な加工ができるようになっています。

イケールの使用用途

イケールの使用用途は以下のようなものです。

  1. 定盤上で加工品にケガキを行う
    加工品にドリル版で穴あけ加工をしたり、タップ加工をする場合などに、穴位置を事前にケガキするのにイケールを利用します。
    定盤とイケールで正確に90度を出したところに、加工するワークをセットして、ワークの端からの寸法をひろってケガキ線を針などで下書きします。
  2. 横型マシニングセンサーの治具に使用する
    横型マシニングセンターは主軸が横向きのため、加工する製品を主軸と平行に取り付ける必要があります。
    そのためイケール治具を利用して、ワークをクランプして穴あけ加工、フライス加工などを行います。

イケールの原理

イケールは横型マシニングセンターで製品を加工する治具として使用されます。
イケールに固定されたワークの品質は、イケールの精度に大きく影響を受けるため、イケールの構造には重要な原理・原則があります。

横型マシニングセンターの主軸は床面と平行を向いていて、対面するイケール治具に固定されたワークとは垂直の関係になります。
そのとき、主軸とワークの関係が90度からずれていると、例えばフライス加工をすると、ワークの平面が斜めに加工されることになります。
その対策として、イケール自体を横型マシニングセンターでフライス加工をする方法があります。
そうすればイケールのワーク取付面は、主軸に合った精度に仕上がります。

ただし、パレットチェンジャを用いた生産ラインでは、1つのイケール治具が複数の横型マシニングセンターに搭載される場合があります。
複数の横型マシニングセンターはそれぞれ、わずかに主軸の向きに特徴があるので、すべてに合うようにイケール面を仕上げることができません。
その際に使われるのが、横型マシニングセンターの持つ治具の旋回機能で原点をわざと傾けて、垂直に加工する方法です。

参考文献
https://monozukuri.co.jp/equerre/
https://www.nabeya.co.jp/index_E.html

ルーツブロワ

ルーツブロワとは

ルーツブロワとは、主に空気を送風するための装置です。

ハウジング内のローターと呼ばれる一対の羽根形状の部品を回転させることで、空気を送り出します。羽根の枚数は2~4枚で構成されており、羽根の枚数が多いほど1回転当たりの送風回数が増えるため、効率が上がります。

1866年にルーツ兄弟が現在の構成を考えたことから、その名称で呼ばれています。ローターの形状は大きく分けて「インボリュート型」「サイクロイド型」「エンベロープ型」の3種類です。

ルーツブロワの使用用途

ルーツブロワは以下のような使用例があります

  • 水処理施設の活用例
    工場や学校、病院などにある水処理施設の浄化槽で、浄化槽内に空気を送りこむために使用されています。
  • 工業用掃除機
    工場で使われる掃除機や集塵機に搭載されていて、ごみと空気を吸引して空気だけを排気します。
  • バキュームカー
    へどろや汚物を吸引して清掃します
  • 溶接ヒューム
    工場の溶接工程で発生するヒュームを吸引して、フィルターに吸着させるのに利用されています。
  • エアブロー
    工場で製品についた水分を飛ばすためのエアブローの動力源として使われます。

ルーツブロワの原理

ルーツブロワはハウジング本体に吸気用の穴と、排気用の穴が開いていて、ローターが回転することで吸気側の穴から空気を取り込み、排気側の穴へ送風します。このときローターとハウジング内部、ローター同士はわずかな隙間を保ちながら、常に接触せずに回転し続けます。

回転方向は吸気側の部屋から、排気側の部屋に向けた方向に回転します。それにより、吸気側の部屋の空気を排気側の部屋へ押し込みます。

そのため、ローターとハウジング内部、ローター同士の隙間が狭ければ狭いほど、漏洩が起こらないため1回転当たりの吐出し流量が増加します。ただし、隙間を狭くし過ぎると異物の噛み込みよるロックで、回転不良を起こす場合があります。

使用する環境の清浄度を考慮したルーツブロワの選択が必要になります。ルーツブロワのローターは羽根の枚数が、2枚のタイプと3枚のタイプが主に使用されます。

2枚のタイプは1回転当たり4回空気を吐き出しますが、3枚タイプは6回の吐出しが可能なため、効率が上がりますが、ローターの加工難易度が高いためコストが上がります。

参考文献
https://www.weblio.jp/content/
https://www.anlet.co.jp/products/roots_blower/
https://www.taiko-kk.com/jp/roots_blower/

丸リベット

丸リベットとは

丸リベットはネジや釘、ボルトなどと同様に2つの部材を締結するために使用する部品です。

リベットは、頭部と軸からできています。丸リベットは頭部が球の一部を切り取ったような丸い笠の形をしていて、それに円形断面の棒状の軸が付いています。リベットで2つの部材を締結する際には、両方の部材に空けた小さな穴どうしを重ね合わせ、その穴にリベットの軸を貫通させて、頭部の反対側にでてきた軸の先端部分を潰してかしめることで部材同士が離れないようにします。

丸リベットは建築物や航空機などを始め、大小さまざまな製品で使用されています。

丸リベットの使用用途

丸リベットは、部材どうしを接合し、強力に固定するために使用されています。ねじとは異なり、かしめることで軸の先端を潰して固定します。接合した部材を後から取り外すことは想定されていないため、取り外し作業を必要としない箇所に用いられます。

また、リベットの丸くて薄い頭部は、触れても怪我をする危険性が低く、見栄えも良いことから、外部に露出した場所で多く使われます。

例えば、箱型のアルミ製の荷室を持ったトラックでは、外装のアルミパネルを箱のフレームに張り付けるために丸リベットを使用しています。トラックの荷室のパネルを見ると、薄い円形のリベットが多数使用されているのが確認できます。

その他、丸リベットは鉄橋のフレームの接合、飛行機や電車の外側パネルの取り付け、建築物の外板や屋根の取り付けや、工作機械、家具、家電製品から文具用品など、大きさと材質を様々に変えながら多方面で使用されています。

丸リベットの原理

丸リベットによる接合では、接合する2つの部材の両方にリベットの軸を挿入するための穴をあけ、その穴を正確に重ね合わせた上で、そこにリベットの軸を差し込み、穴の反対側に貫通させます。部材の裏側に出てきた軸をかしめることによって固定します。

すなわち、リベットを使ったかしめとは、軸の先端をかしめて軸を貫通させた穴よりも大きくすることで、反対側の頭と、かしめた部分とで部材どうしを接合することです。かしめをすることで軸の先端は塑性変形しており、かしめる力をなくしても形は元に戻ることはなく、半永久的に接合が保たれます。

その反面、リベットによる接合は、部材どうしの接合を切り離す場合には、かしめた部分をドリルで削り取るなりして壊さなければならず、手間がかかる上にリベットの再利用はできません。

丸リベットの種類

丸リベットは使用用途に合わせて大小さまざまなサイズがあるほかに、2種類の構造的違いと、いくつかの素材があります。

1 . 丸リベットの構造

丸リベットには軸が単純な棒状になったタイプのものと、頭から軸を貫いて中心部が空洞になったブラインドリベットと言われるタイプがあります。

軸が棒状のリベット
軸が棒状のタイプのものは、軸を接合させる素材の穴を貫通させた後、穴の反対側で軸の先端を道具を使ってかしめます。これには、カシメ機という機械が多く使われています。

ブラインドリベット
ブラインドリベットの場合には、あらかじめ、リベット中心部の空洞を貫く形でマンドレルという金属の棒が挿入されています。その棒の先端部には、軸の穴の内径よりも大きな頭が付いています。ブラインドリベットを接合する部材の穴を貫通させた後、リベットの頭部側からマンドレルを引っ張ることで、マンドレルの頭部がリベットの軸を外側に広げ、部材をかしめます。かしめが終了した後、マンドレルを反対側に落として作業が完了します。

ブラインドリベットによるかしめは、部材の反対側で工具を使う必要が無いのが最大の利点です。ブラインドリベットかしめには、リベッターという工具が用いられます。

2. 丸リベットの材質

リベットの材質には金属を中心に、プラスチックや、一部に木製のものがあります。

金属性
金属性の丸リベットには、鉄、ステンレス鋼、アルミ、銅などがあります。鉄製のものは、比較的安価で、強くて安定した接合が得られます。その一方で耐腐食性に劣るので、メッキや塗装などの処理が施されます。ステンレス鋼は、錆びに強いので外部で多く使用されています。アルミは比較的柔らかい金属なので、加工性に優れています。銅は装飾性に優れています。

樹脂製
樹脂製の丸リベットには、ナイロンやポリプロピレンで作られたものがあります。ナイロンは絶縁性に優れているので、電子部品どうしの結合で多く使用されています。一方、ポリプロピレンは耐薬品性に優れており、化学プラントなどで使用されています。

参考文献
https://neji-one.com/lineup/E0000000.htm
https://e-neji.info/%E3%83%AA%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A8%E3%81%AF
https://www.monotaro.com/k/store/%E4%B8%B8%E9%A0%AD%E3%83%AA%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%88/
https://www.monotaro.com/k/store/%E4%B8%B8%E3%83%AA%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%88/

丸ナット

丸ナットとは

丸ナットとは、円筒状の形状を持つナットです。

通常は金属製であり、一般的な六角形のナットと比べて外見が円筒状であることが特徴です。中央に軸穴が開いており、ねじやボルトを挿入してナットを回すことでねじやボルトを締め付けます。円筒状の形状を持つため、六角形のナットよりも緩みにくいとされています。これは、ナットの接合部が均等に力を分散しやすくなるためです。

特に振動や衝撃が発生する環境で使用する場合には安定した締結が求められるため、丸ナットが選ばれることがあります。また、円筒形状を持ち、見た目が美しいとされます。そのため、装飾的な要素が求められる場所で使用されることがあります。

家具や建築物の組み立てにおいて、丸ナットが使用されることも多いです。丸い形状のため、手で握りやすく、緩めやすい特徴があります。メンテナンスや修理作業を行う際に便利です。

丸ナットの使用用途

丸ナットは外観が美しくかつ外れにくい構造から、さまざまな産業や分野で使用されています。

1. 家具

丸ナットは、部品の固定や組み立てに使用されます。特に木製家具や金属製家具において、丸ナットが使用されることがあります。

2. インテリア・アート作品

丸ナットは装飾的な要素があるため、インテリアデザインやアート作品など、美的な要素を追求する場面で使用されることがあります。

3. 自動車

自動車の組み立てやメンテナンス時にも、丸ナットは使用されます。エンジンパーツやサスペンションなどの取り付けに使用されることがあります。丸ナットは安定性があり外れにくいため、自動車の安全性を向上させることができます。

 

なお、溶接用の丸ナットは薄い鉄板に対して、ネジ加工による部品の締め付けが難しい場合などに使用します。スポット溶接などであらかじめナットを先付けして用います。

クロスインサート方式の丸ナットは構造的に接続が難しい場合や、材質的に弱い場合などでも取り付けることが可能です。

丸ナットの原理

丸ナットはパーツ同士を固定するために使用され、ボルトやねじと一緒に用います。丸ナットがねじやボルトを締め付けることで締結力を発生させます。ナットを回すことで、ねじやボルトがナットに対して軸方向に移動し、接触面積が増加します。これにより、摩擦力が増大し、ねじやボルトが締まります。

摩擦力は、ねじやボルトが外れにくくなる重要な要素です。丸ナットは円筒状の形状を持ち、力を均等に分散する特徴があります。これにより、締結力がねじやボルトの周囲に均等にかかり、安定した固定が可能になります。

ただし、締結作業や使用方法には適切な知識が必要です。安全に使用するためには、適切なトルクや締結手順を守ることが大切です。

丸ナットの種類

丸ナットにはさまざまな種類が存在します。使用状況や要件に応じて、適切なサイズや材質の丸ナットを選択することが重要です。以下は丸ナットの種類一例です。

1. 一般丸ナット

一般的な形状の丸ナットです。円筒状の外見を持ち、中央に軸穴が開いています。ねじやボルトを通して締結するために使用されます。

2. フランジ付き丸ナット

円筒状のナットの底部にフランジが付いた丸ナットです。フランジは締結する部材の表面に対して広がっているため、より広い接触面積と安定性を有します。部材の振動や衝撃に対しても強い点が特徴です。その特徴から、自動車のエンジン部品などにも使用されます。

3. 横穴型丸ナット

円筒状の形状を持ちながらも、側面に横方向に穴が開いている丸ナットです。横穴によって、ねじやボルトを追加で固定することが可能です。横穴にピンやワイヤーを通すことで、ねじやボルトの緩みや回転を防ぐことができます。これにより、締結の安定性が向上します。

バイクや自転車などの自動車系スポーツ用具では、横穴型丸ナットが使用されることがあります。また、家具などにも広く使用されます。

参考文献
https://www.weblio.jp/content/%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%88
https://jp.misumi-ec.com/vona2/mech_screw/M3303000000/M3303140000/
https://www.monotaro.com/s/c-104771/q-%E4%B8%B8%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%88/
https://ktc.jp/kiso/lesson/screw.html

ブランクフランジ

ブランクフランジとは

ブランクフランジ_図0

ブランクフランジ (英: Blank Flange、Blind Flange) とは、配管の接続に使用する継手で管フランジの一種です。

配管の端部で使用流体の流れを遮断し閉止するためのフランジで、一般的に「閉止フランジ」「ブラインドフランジ」なども同義語として使用されます。フランジとは、パイプ  (配管) やダクトなどの「つば」状の平板を示し、配管のパイプ同士、装置とパイプの接合に用いられる部品です。

なお、JIS B0151 鉄鋼製管継手用語では、「閉止フランジ (へいしフランジ) 」として「管の端末を閉じるために用いる管フランジ」と定義されています。

ブランクフランジの使用用途

ブランクフランジ_図1

図1. ブランクフランジの使用例

ブランクフランジは、配管端部の開口部を完全に塞ぎ閉止する場合に使用します。この方法は、配管端部で流体を遮断するとともに、開口部からの異物侵入を防ぎ、大気に触れることなく閉止が可能です。

例えば、ブランクフランジは工場や発電所などで応急的、または一定期間の閉止用として使用されます。この場合、消火水や洗浄用水など常設設備ではない配管で、流体を流すときのみブランクフランジを取り外し、パイプやホースをフランジ接続する使用方法です。

ブランクフランジを使用する場合は、必ず管端には相手側となるフランジが取り付けられていて、ガスケットを挟み込みブランクフランジを取り付けます。相手側フランジは、ブランクフランジと同仕様・同材質・同サイズを選定します。

ブランクフランジの原理

ブランクフランジ_図2

図2. ブランクフランジによる閉止と対角締付

ブランクフランジの他の管フランジとの違いは、フランジ中央にパイプ用貫通穴がなく、ボルト穴だけがある点です。ブランクフランジの締め付けは他の管フランジと同様で、フランジ間にガスケットを挟み込み、ボルト・ナットで締め付け密着力を高めます。

ボルト・ナットは均等に締め付ける必要があり、不均等な場合は漏洩することがあります。ボルト・ナットを均等に締め付ける方法は「対角締付」で、対角の順にナットを締める方法です。また、ガスケット材質やボルト・ナットの規定トルク値で締め付けることが重要で、必要な締め付けトルク値まで徐々に強めて締め付けていきます。

なお、高温流体の配管で使用する場合は、実際に高温流体を投入した後に、熱膨張によりねじ部が緩むことがあるため、ボルト・ナットの増し締めが必要です。

ブランクフランジの種類

ブランクフランジの選定は、流体の種類・圧力・温度・流量などを基準として、呼び径 (配管・パイプ径) 、呼び圧力、ガスケット座の種類、材質などを選択します。

1. 呼び径

呼び径は、使用する配管 (パイプ) と同じ呼び径を選定します。JISの鋼製管フランジでは、10A (3/8B) ~1,500A (60B) まであります。

2. 呼び圧力

呼び圧力は、使用流体の圧力・温度・フランジの材質によって分類され、各規格の基準によって選定します。各規格の呼び圧力の例は下記の通りです。

  • JIS規格: 5K, 10K, 16K, 20K, 30K, 40K, 63K
  • ASME/ANSI: クラス150, 300, 400, 600, 900, 1500, 2500
  • ISO: PN10, 16, 20, 50, 110, 150, 260, 420

3. ガスケット座の種類

ブランクフランジ_図3

図3. ガスケット座の種類

ガスケットに面する座面の形状は下記の4種類があり、ガスケットの種類によって選定します。

  • 全面座 (FF)
  • 平面座 (RF)
  • はめ込み形 (MF)
  • 溝形 (TG)

4. 材質

材質は、炭素鋼オーステナイト系ステンレス鋼などを使用します。JIS B2220 鋼製管フランジでは下記の材質を使うのが一般的です。

材質 圧延材 鍛造材 鋳造材 材料グループ番号
規格番号 材料番号 規格番号 材料番号 規格番号 材料番号
炭素鋼 G3101 G4051 SS400  S20C G3201  G3202 G4051 SF390A SFVC1  S20C G5101 G5151 SC410 SCPH1 001
G4051 S25C G3201  G4051 SF440A S25C G5151 SC480 002
G3202 SFVC2A G5151 SCPH2 003a
低合金鋼 G3203 SFVA F1 G5151 SCPH11 013a
G3203 SFVA F11A G5151 SCPH21 015a
ステンレス鋼 G4304 G4305 SUS304 G3214 SUSF304 G5121 SCS13A 021a
G5121 SCS19A 021b
G4304 G4305 SUS316 G3214 SUSF316 G5121 SCS14A 022a
G5121 SCS16A 022b
G4304 G4305 SUS304L G3214 SUSF304L 023a
G4304 G4305 SUS316L G3214 SUSF316L 023b

 

JIS規格の材質選定は、配管内を流れる使用流体の「最高使用圧力」と「流体の温度」により、「呼び圧力」と「材料グループ番号」を選択します。材料グループ番号に分類された規格材料から、フランジ製造方法、使用環境やコストなどにより材質を選定します。

ブランクフランジのその他情報

1. 規格

ブランクフランジの規格も一般のフランジと同様に、各種規格があります。代表的な例は、以下の通りです。

  • JIS B2220 鋼製管フランジ Steel pipe flanges
  • ASME/ANSI B16.5 Pipe Flanges and Flanged Fittings, NPS1/2 Through NPS24 Metric/Inch Standard
  • ISO 7005-1 Pipe flanges-Part 1: Steel flanges for industrial and general service piping systems
  • JPI-7S-15 石油工業用フランジ (JPI: 日本石油学会)
  • JPI-7S-43 石油工業用大口径フランジ

2. ガスケット

ブランクフランジ_図4

図4. ガスケットの種類

ブランクフランジに使用するガスケットは、使用流体の温度と圧力によって選定します。下記は代表的なガスケットの種類です。

うず巻形ガスケット
V字形断面の金属フープ (金属薄板) と、フィラー (テープ状のシール材) を重ね、うず巻状に成型したガスケットです。密閉性 (シール性) が高く、高温・高圧流体で多く使用されます。

ジョイントシートガスケット
炭素繊維などにゴムを配合し、シート状に加硫圧延したガスケットで、フランジ座面寸法に合わせて切断して使用します。

リングジョイント
オーバルとオクタゴナル2種類の断面形状で、軟鋼、ステンレス鋼、モネルなどの材質のメタルガスケットです。主に石油工業界のJPI規格で使用されています。

スリッター

監修:株式会社キンダイ

スリッターとは

スリッター

図1. スリッター

材料を搬送しながら送り方向に切断することをスリッティング又はスリットと言い、スリッターとは材料を送り出し、送り方向に任意の幅で切断する機器を指します。

スリッターは、材料をスリットする機構のみの機器もありますが、材料を送り出す機構、材料をスリットする機構、そして一定幅にスリットされた材料を巻き取る機構までを含んだ装置を指す場合も多いです。

材料は刃物でスリットしますが、刃物の構成や材質、形状、位置関係など用途により使い分けています。

スリッターの使用用途

スリッターは、フィルム、両面テープ、粘着テープ、箔、金属、ゴム、不織布、紙、ガラス繊維、繊維、レザー、ターポリン、複合材料、発泡剤、ビニールやカーボンシートなど、薄物の材料を任意の一定幅に切り分ける用途で使用されます。これらロール状に材料を作られる材料は、原反 (げんたん) の幅が広く、その後の2次加工、3次加工で使用しやすい幅に切り分けるためにスリッティング (スリット) を行います。

例えば、家庭で使用されるアルミホイルであれば、原反は1200mm程度の幅でつくられます。これを商品として使用する為には、300mm幅や100mm幅に切る (スリットする) 必要が有ります。このような時にスリッターを使用して加工します。

スリッターの原理

スリッターは、基本的には上刃と下刃を組み合わせて材料を切断しますが、切り方にはいくつかの方法があります。また、ロールに巻かれた材料を紙管やプラスチックコアごとスリットするロールスリッターという特殊な方法があり、業界ではこのロールスリッターを「ブツ切り」「輪切り」「押し切り」「大根切り」など、様々な名称で呼ばれています。

1. シェアカット (またはシャーカット)

剪断 (英: shear) での切断です。丸形状の上刃と下刃をそれぞれすり合わせて切断します。厚手のフィルムや、用紙などに使われることが多いようです。

2. レザーカット (またはフェザーカット)

狭い溝形状のあるローラーの溝部分に先端が鋭利なレザー刃または丸刃を入れるか、又は空中で材料を切断します。レザー刃や丸刃は下刃やローラーには触れません。やわらかい材料を切断する場合に使用されることが多いです。

3. スコアカット

丸形状の上刃をローラー (金属又はゴム) に押し当て、その圧力により材料を切断する方法です。

4. ギャング刃によるカット

上刃と下刃の両方ともに角刃を用いて切断します。一般的には上刃と下刃はすり合わせず、微小なクリアランス (隙間) を設けて使用します。

5. ロールスリッター

ロールスリッター

図2. ロールスリッター

丸刃1枚でロールに巻かれた材料を紙管やプラスチックコアごとスリットするのが特徴です。丸刃の形状選定は、原反の材質、巻き硬さやスリット幅に応じて大きく変わり、片刃と両刃を使い分けて主に使用します。

片刃のメリット
片刃は両刃に比べて刃先が鋭利な点から、切れ味の良さやスリット面の綺麗さは両刃よりも圧倒的に優れています。品質の良さだけではなく、寸法精度も両刃より高精度に仕上がります。他にも、刃先の鋭利さを活かして細い幅のカット(スライスカット) も得意としています。

両刃のメリット
両面に刃がついており、刃先が片刃よりも鈍角になるため、材料に対する力が均等に加わり片刃よりも直進性に大変優れています。巻き硬さが硬い材料や重量物などをスリットするのに最適な形状です。それに加えて太い幅をスリットする際にも同様に直進性が必要になるため、両刃を使用すると綺麗にスリットでき、刃先角度が片刃よりも鈍角なので刃先が摩耗しにくい点もメリットの一つになります。

主な切断方法を紹介しましたが、切断する材料や刃物の当て方等でそれぞれ適した方法を採用します。切断対象の材料は、厚み、硬さ、単体なのか複層あるのか、等の検討が必要です。刃物側では、刃に駆動をかけるのか/従動にするのか、刃物の刃先角度、刃物を押し当てる力、刃物のトー角/キャンバー角など、いくつもの要因が有ります。求める切断端面の品質や刃物の寿命を考慮して、切断方法を決めますが、これらはノウハウとなっており非常に奥深いものです。

スリッターのその他情報

1. スリッターとロールスリッターの違い

図3. スリッターとロールスリッターの比較

両製品ともに「材料を指定幅にカッティングする」という観点においては共通ですが、特に近年「スリッターとロールスリッターの名前が似ているのでわからない」「どっちが良いスリット加工ができるの」「どうやってスリットしているの」など、さまざまな疑問点をよく耳にします。

2.スリッターの特長

  • 指定した巻き長さに巻き取りながら、スリット加工をしたい
  • 生産性に優れたスリット加工をしたい
  • 高精度かつ高品質を追求したい

上記ようなニーズをお持ちの方は、スリッターが最適な機械になります。

スリッター機械は、複数枚の刃物を使用してロールtoロールで材料を巻き出してスリットを行い、指定された巻きメーター数で材料を巻き取る機械です。連続した1枚のシートをスリットすることが可能なため、安定した精度で加工を実現することができます。

また、スリッターには前述したスリット方式があり、材質、切断幅、加工条件を基に「シャーカット方式」「レザーカット方式」「スコアカット方式」「ギャング刃によるカット」を使い分けてスリットを行なうことができるので、不織布、紙、フィルム、シート、塩ビや各種シートなど、さまざまな材料をスリット加工することができます。

具体例は下記の通りです。

  1. 500mのロール長さを100mに小割りにしながら指定幅にスリットが可能
    ➝小割りにすることで、次工程の作業効率を向上
  2. 連続した1枚のシートを複数枚の刃物で、同時に指定幅にスリット加工が可能
    ➝生産性及び切断面が非常に良好

3. ロールスリッターの特長

  • 新人の方や女性の方にも、操作・メンテナンスがしやすいスリッターがほしい
  • 材料が必要なときに必要な分だけスリット加工をしたい
  • できるだけ低価格でスリッターを導入したい

上記ようなニーズをお持ちの方は、ロールスリッターが最適な機械になります。

ロールスリッターは、丸刃1枚でロールに巻かれた材料を紙管やプラスチックコアごと、そのまま「ブツ切り」でスリットします。

新人の方や女性の方にも操作しやすい機械にしてほしい、材料が必要なときに必要な分だけスリットしたいなどのニーズがありますが、「この人しかこの機械は扱えない」という従来の属人的な機械では、多様性が増している現代のニーズには応えることができません。その点を加味したロールスリッターは、タッチパネル入力で簡単に各種設定をすることができ、新人の方や女性の方にも安心して使用することが可能です。

具体例は下記の通りです。

  1. カット幅、カット個数及び各種設定後に、自動ボタンを押すだけで自動カッティング
    ➝新人の方や女性の方にも安心してタッチパネル操作が可能です。
  2. 必要な分だけ直ぐにスリット加工ができるので、待ち時間なく効率的に作業できます。
    ➝在庫削減や納期短縮に大きく貢献します。

ロールスリッターの動画

 

参考文献
https://www.ns-slitter.co.jp/about
http://www.nihon-slitter.co.jp/about/
https://sanai-3377.co.jp/process/slit.php
https://www.kobelco.co.jp/advanced-materials/technical/copper/1174602_17318.html

本記事はスリッターを製造・販売する株式会社キンダイ様に監修を頂きました。

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電磁波解析

電磁波解析とは

電磁波解析とは、製品開発の初期段階からコンピュータを使った数値解析を行う手法の一種です。

CAE (英: Computer Aided Engineering) の一種で、高周波領域を対象に電界や磁界の可視化を行い、EMC (英: Electromagnetic Compatibility) の対策検討などに用いられます。

電磁波の支配的な方程式であるマクスウェル方程式 (英: Maxwell’s equations) を用いて、シミュレーションを行い、電磁波の挙動を算出します。2次元領域での導波路解析や、3次元領域での共振解析、過渡解析などが可能です。

電磁波解析の使用用途

電磁波解析の使用用途は、製品開発時のコンピュータを使った数値解析や、開発途中での不具合時の解析などが一般的です。

電磁波解析は電磁界解析の一種で、高周波を用いる無線通信用の回路やアンテナ・レーダーなどの解析や、EMCの電磁両立性解析などにも用いられます。電磁波解析は製品開発時の数値解析の一分野となっており、電磁気学を用いた応用製品の設計や開発にはなくてならない道具です。

電磁波解析の種類

例えば束縛のない放射問題のEMC解析に有効なモーメント法 (英: Method of Moments, MoM) は、一様な誘電物質の構造の解析には優れています。ただし不均一な構造の解析には適しません。

有限要素法 (英: Finite Elements Method, FEM) と呼ばれる手法では、構造の全面積をメッシュし解析を行い、不均質構造のモデリングには適しています。しかしモーメント法ほど効果的に放射問題をモデル化できません。

有限差分領域法 (英: Finite Difference Time Domain, FDTD) と呼ばれる手法では全空間のメッシュを行い、モーメント法や有限要素法と異なり時間領域での解析を行います。そのため過渡解析に適しており、複雑な不均質構造のモデリングに優れています。

電磁波解析の原理

コンピュータを使用した電磁波解析では、一般的にグリッドと呼ばれる空間を分割して、媒体をモデル化し、それぞれのグリッドごとにマクスウェル方程式を解きます。計算に用いる空間の離散化はコンピュータのメモリを消費し、グリッドが多いと方程式を解くための時間が長いです。

大規模な電磁波解析の場合には、コンピュータが使うメモリ量やCPU時間によって、計算の制限を設定します。必要な解析に合わせて、絶縁境界、周期境界、対称境界、インピーダンス境界のような各種境界条件だけでなく、タイムステップや周波数などを設定可能です。

電磁波解析ではそれぞれの瞬間で全時間領域のマクスウェル方程式を解き、有限要素法でモデル化された場合には基本式の係数をまとめた逆行列を、転送行列法では行列の積を、モーメント法では積分方程式を解きます。分割ステップ法やビーム伝播法で計算する際には、FFTと逆FFTを解きます。

電磁波解析の選び方

電磁波解析は電磁界解析の一種で、ノイズ解析などに用いられる手法はさまざまなものがあり、手法ごとに特徴が異なります。例えば、積分方程式または微分方程式による解析を行うのか、どの手法を選ぶのか、十分な検討が必要です。

そして高周波回路の近似が使われている理由を理解する必要があります。解析手法の特徴を考慮して、設計のフィードバックが重要です。

電磁波解析の構造

電磁波解析の計算結果は、数値とともに見やすい色分けしたグラフやコンター図で表現されます。電磁気は目視できず難しい現象であり、視覚的に表示すると、電磁界に詳しくない人や非エンジニアも現象を理解しやすいです。

電磁場解析ソフトウェアは電磁界シミュレータ (英: electromagnetic field solver) とも呼ばれます。解析可能な構造の次元で2.5次元と3次元に分類されます。2.5次元のシミュレータでは複数の層で構成されており、それぞれの層に2次元の図形が存在する構造を解析可能です。ただし同一の層には異なる電気物性を有する構造を配置できません。

参考文献
https://www.muratasoftware.com/support/download/files_seminar/femtet_hertz_1.pdf
https://www.cadjapan.com/products/search/industry_manufacture/cae_electromagnetic.html