ブランクフランジとは
ブランクフランジ (英: Blank Flange、Blind Flange) とは、配管の接続に使用する継手で管フランジの一種です。
配管の端部で使用流体の流れを遮断し閉止するためのフランジで、一般的に「閉止フランジ」「ブラインドフランジ」なども同義語として使用されます。フランジとは、パイプ (配管) やダクトなどの「つば」状の平板を示し、配管のパイプ同士、装置とパイプの接合に用いられる部品です。
なお、JIS B0151 鉄鋼製管継手用語では、「閉止フランジ (へいしフランジ) 」として「管の端末を閉じるために用いる管フランジ」と定義されています。
ブランクフランジの使用用途
図1. ブランクフランジの使用例
ブランクフランジは、配管端部の開口部を完全に塞ぎ閉止する場合に使用します。この方法は、配管端部で流体を遮断するとともに、開口部からの異物侵入を防ぎ、大気に触れることなく閉止が可能です。
例えば、ブランクフランジは工場や発電所などで応急的、または一定期間の閉止用として使用されます。この場合、消火水や洗浄用水など常設設備ではない配管で、流体を流すときのみブランクフランジを取り外し、パイプやホースをフランジ接続する使用方法です。
ブランクフランジを使用する場合は、必ず管端には相手側となるフランジが取り付けられていて、ガスケットを挟み込みブランクフランジを取り付けます。相手側フランジは、ブランクフランジと同仕様・同材質・同サイズを選定します。
ブランクフランジの原理
図2. ブランクフランジによる閉止と対角締付
ブランクフランジの他の管フランジとの違いは、フランジ中央にパイプ用貫通穴がなく、ボルト穴だけがある点です。ブランクフランジの締め付けは他の管フランジと同様で、フランジ間にガスケットを挟み込み、ボルト・ナットで締め付け密着力を高めます。
ボルト・ナットは均等に締め付ける必要があり、不均等な場合は漏洩することがあります。ボルト・ナットを均等に締め付ける方法は「対角締付」で、対角の順にナットを締める方法です。また、ガスケット材質やボルト・ナットの規定トルク値で締め付けることが重要で、必要な締め付けトルク値まで徐々に強めて締め付けていきます。
なお、高温流体の配管で使用する場合は、実際に高温流体を投入した後に、熱膨張によりねじ部が緩むことがあるため、ボルト・ナットの増し締めが必要です。
ブランクフランジの種類
ブランクフランジの選定は、流体の種類・圧力・温度・流量などを基準として、呼び径 (配管・パイプ径) 、呼び圧力、ガスケット座の種類、材質などを選択します。
1. 呼び径
呼び径は、使用する配管 (パイプ) と同じ呼び径を選定します。JISの鋼製管フランジでは、10A (3/8B) ~1,500A (60B) まであります。
2. 呼び圧力
呼び圧力は、使用流体の圧力・温度・フランジの材質によって分類され、各規格の基準によって選定します。各規格の呼び圧力の例は下記の通りです。
- JIS規格: 5K, 10K, 16K, 20K, 30K, 40K, 63K
- ASME/ANSI: クラス150, 300, 400, 600, 900, 1500, 2500
- ISO: PN10, 16, 20, 50, 110, 150, 260, 420
3. ガスケット座の種類
図3. ガスケット座の種類
ガスケットに面する座面の形状は下記の4種類があり、ガスケットの種類によって選定します。
- 全面座 (FF)
- 平面座 (RF)
- はめ込み形 (MF)
- 溝形 (TG)
4. 材質
材質は、炭素鋼、オーステナイト系ステンレス鋼などを使用します。JIS B2220 鋼製管フランジでは下記の材質を使うのが一般的です。
材質 | 圧延材 | 鍛造材 | 鋳造材 | 材料グループ番号 | |||
規格番号 | 材料番号 | 規格番号 | 材料番号 | 規格番号 | 材料番号 | ||
炭素鋼 | G3101 G4051 | SS400 S20C | G3201 G3202 G4051 | SF390A SFVC1 S20C | G5101 G5151 | SC410 SCPH1 | 001 |
G4051 | S25C | G3201 G4051 | SF440A S25C | G5151 | SC480 | 002 | |
– | – | G3202 | SFVC2A | G5151 | SCPH2 | 003a | |
低合金鋼 | – | – | G3203 | SFVA F1 | G5151 | SCPH11 | 013a |
– | – | G3203 | SFVA F11A | G5151 | SCPH21 | 015a | |
ステンレス鋼 | G4304 G4305 | SUS304 | G3214 | SUSF304 | G5121 | SCS13A | 021a |
– | – | – | – | G5121 | SCS19A | 021b | |
G4304 G4305 | SUS316 | G3214 | SUSF316 | G5121 | SCS14A | 022a | |
– | – | – | – | G5121 | SCS16A | 022b | |
G4304 G4305 | SUS304L | G3214 | SUSF304L | – | – | 023a | |
G4304 G4305 | SUS316L | G3214 | SUSF316L | – | – | 023b |
JIS規格の材質選定は、配管内を流れる使用流体の「最高使用圧力」と「流体の温度」により、「呼び圧力」と「材料グループ番号」を選択します。材料グループ番号に分類された規格材料から、フランジ製造方法、使用環境やコストなどにより材質を選定します。
ブランクフランジのその他情報
1. 規格
ブランクフランジの規格も一般のフランジと同様に、各種規格があります。代表的な例は、以下の通りです。
- JIS B2220 鋼製管フランジ Steel pipe flanges
- ASME/ANSI B16.5 Pipe Flanges and Flanged Fittings, NPS1/2 Through NPS24 Metric/Inch Standard
- ISO 7005-1 Pipe flanges-Part 1: Steel flanges for industrial and general service piping systems
- JPI-7S-15 石油工業用フランジ (JPI: 日本石油学会)
- JPI-7S-43 石油工業用大口径フランジ
2. ガスケット
図4. ガスケットの種類
ブランクフランジに使用するガスケットは、使用流体の温度と圧力によって選定します。下記は代表的なガスケットの種類です。
うず巻形ガスケット
V字形断面の金属フープ (金属薄板) と、フィラー (テープ状のシール材) を重ね、うず巻状に成型したガスケットです。密閉性 (シール性) が高く、高温・高圧流体で多く使用されます。
ジョイントシートガスケット
炭素繊維などにゴムを配合し、シート状に加硫圧延したガスケットで、フランジ座面寸法に合わせて切断して使用します。
リングジョイント
オーバルとオクタゴナル2種類の断面形状で、軟鋼、ステンレス鋼、モネルなどの材質のメタルガスケットです。主に石油工業界のJPI規格で使用されています。