イケールとは
イケールとは、機械加工で工作物を固定するための治具のひとつです。
イケールとはフランス語で「直角」を意味し、ベースとなる面と直角方向に加工物を取り付けるために利用されます。形状はL字や立方体型などさまざまです。正確に90度に固定できるよう、精度の高い直角度・平面度を提供します。加工物をベース面に対して直角方向に固定したまま作業を行うためです。
イケールにはクランパーやワークガイドなどの、治具部品をとりつけるためのタップ穴や、通し穴、長穴などが用意され、さまざまな製品に対して多様な加工を可能にします。
イケールの使用用途
イケールは、工作機械で加工物を固定する際に使用されています。加工工程による、イケールの用途の具体例は以下です。
1. ケガキ
加工品にドリル版で穴あけ加工をしたり、タップ加工をする場合などに、穴位置を事前にケガキするのにイケールを利用します。定盤とイケールで正確に90度を出したところに、加工する加工物をセットして、端からの寸法をひろってケガキ線を針などで下書きをする作業です。
2. 横型マシニングセンサーの治具
横型マシニングセンターは主軸が横向きのため、加工する製品を主軸と平行に取り付ける必要があります。そのためイケール治具を利用して、加工物をクランプして穴あけ加工、フライス加工などを行います。
イケールの原理
イケールは横型マシニングセンターで製品を加工する治具として使用されます。イケールに固定された加工物の品質は、イケールの精度に大きく影響されるため、イケールの構造には重要な原理原則があります。
横型マシニングセンターの主軸は床面と平行に配置され、対向するイエールに固定された加工物との方向関係は垂直です。そのため、主軸と加工物の関係が90度からずれてしまうと、加工物の平面が斜めに加工される問題が発生します。この問題への対策としてイケール自体を横型マシニングセンターでフライス加工する方法があります。この方法を採用すれば、イケールの加工物取付面が主軸に合った精度の仕上げが可能です。
パレットチェンジャを用いた生産ラインでは、1つのイケール治具が複数の横型マシニングセンターに搭載される場合があります。複数の横型マシニングセンターはそれぞれ、わずかに主軸の向きに特徴があるため、すべてに合うようにイケールの面を仕上げることは不可能です。このような問題の解決として、横型マシニングセンターには治具を旋回させる機能を利用して、原点をわざと傾けて垂直に加工する方法があります。
イケールの種類
イケールには、「鋳造」「切削」「軽量」の3つのタイプがあります。それぞれの特徴を詳しく説明します。
1. 鋳造イケール
低予算で複雑な形状のイケールを大量生産可能です。鋳鉄、銅合金、アルミニウム合金、鋼、その他の特殊合金など、多種多様な素材に対応しています。穴の加工方法は柔軟に対応できますが、表面処理が施されていないため、注意が必要です。
2. 切削イケール
鋳造タイプにはない表面処理や、対応可能な穴の種類など、選択肢が多いのが切削タイプのメリットです。リブの寸法、長さ、高さ、厚さはご希望に応じて指定できます。マシニングセンターに取り付けて仕上加工行うことで、高精度の直角度と平面度の確保が可能です。
3. 軽量化タイプ
斜面やリブ構造を組み込むことで剛性を確保しつつ、軽量なイケールが求められる加工装置に対応します。さらに、切粉が溜まりにくい形状に仕上げる工夫も可能です。
加工物の設計に必要なイケールを選定する際には、使用する工作機械の要求を考慮し、適切な材質・強度・穴・表面処理が施されたイケールを選ぶことが重要です。