加工治具

加工治具とは

加工治具

加工治具とは、切断や穴あけなど部品を加工する際に使う加工用ツールをのぞく器具のことを言います。

例えば、加工する際にワークが動かないように押し付けなどで強固に固定したり、ものを切断する際の切断位置のガイドなどがあります。

加工治具の目的は、加工の品質を高めることや誰がやっても同じ加工ができるようにする、すなわち品質のばらつき抑制すること、加工作業を効率化して生産性を向上させることなどがあげられます。

加工治具の使用用途

例えば、バイスなどワークを切断したり穴あけ加工を行う際にワークを固定するのに使われます。

また、スポンジやプラスチックなどのワークを自由な形に切断する際、形状にあわせた加工治具(ガイド)にそって刃物を動かすことで形状のばらつきを減らし、誰でも簡単に短時間で加工するために使われます。

最近は、加工の自動化も進み、加工機へのワークの出し入れをする産業用ロボットなどの加工治具も増えてきました。

加工治具の原理

加工治具と一言で言っても、そのバリエーションは豊富です。

何十万円もかかる高級な加工治具から、テープを一定の長さにしてきるための治具のように100円均一で購入できるような治具まで多様です。

また、同じ保持するための加工治具でも単純にものを固定するバイスのような治具から、固定だけでなく、位置決めやワンタッチで簡単に固定ができるなど、創意工夫により生産性は大きく変わります。

最近、増えてきたロボットを使った加工治具はビジョンカメラを使ってワーク形状を確認、必要な加工作業を入力したり、加工後部品の目視検査を行ったり、単にワーク着脱だけでなくさまざまな機能が組み込まれ、生産性改善に大きく貢献しています。人が運ぶには大変な重たいワークも何度でも持って運ぶこともできます。ロボットには人の触覚に相当する力覚センサー、視覚に相当するビジョンカメラ(3Dビジョンカメラ)、頭脳に相当する人工知能の開発がすすめられ、人が行ってきた繰り返し作業を再現性高く行うことができます。

単動シリンダ

単動シリンダとは

単動シリンダとは、圧力の加えられた流体を利用して一方向の動きをするシリンダです。

一方向にのみ作動し、もう一方向にはバネまたは重力などの外部力によって戻される特徴を有します。単動シリンダは構造が比較的単純で製造コストが低く、他のタイプのシリンダに比べて経済的です。また、複動シリンダに比べてコンパクトで軽量なので、狭いスペースや軽量化が求められる用途に適しています。

また、一方向にしか動かないため、予測可能な動きを行います。制御が容易で、誤った操作による事故や機械の故障のリスクが低いです。

ただし、一方向の動きしか制御できず、動作パターンが複雑な場合には不適です。複数の位置での停止が必要な場合などには、制御装置やシステムを追加することもあります。

単動シリンダの使用用途

単動シリンダはさまざまな用途で使用されます。以下は単動シリンダの使用用途一例です。

1. 自動車

単動シリンダは、自動車のブレーキシステムに使用されます。ブレーキペダルを踏むことで、単動シリンダがブレーキに圧力を提供します。ブレーキパッドをディスクやドラムに押し付けて制動力を発生させることが可能です。

また、サスペンションにおいて単動シリンダが使用される場合も多いです。シリンダの動きによって車輪の上下動を制御し、乗り心地や車体の安定性を向上させます。

2. 製造業

自動機械や製造ラインにおいて、部品の組み立てや仕分けなどのタスクに単動シリンダが使用されます。ピストンが押し出されて部品を移動させることで、組立作業を自動化することが可能です。

また、材料や製品を押し出すために使用されます。プラスチックや金属の成形機の一部は、単動シリンダが型に圧力をかけて材料を押し出して形状を作りだす仕組みです。

3. 化学プラント

単動シリンダはバルブやゲートなどの開閉装置の制御に使用されます。シリンダの動きによって、バルブを開閉して流体の供給や停止を制御することが可能です。パイプラインや配管における流体制御に使用されます。

単動シリンダの原理

単動シリンダは、シリンダ筒と呼ばれる筒状部品とその中を往復運動するピストンから構成されます。ピストンはシリンダ筒の内部に適合するように配置された部品です。

単動シリンダは一方向にのみ動作するため、流体の供給と排出が制御されます。流体は指定された経路を通じてシリンダ内に供給されます。

流体がシリンダ内に供給されると、その流体の圧力が増加する場合が多いです。この圧力の増加によってピストンは一方向に押し出されます。ピストンの動きは、シリンダ筒の内部容積の変化によって生じます。

押し出された後、流体の供給が停止されると単動シリンダは戻るための外部力が必要です。外部力にはばねや重力が使用されますが、ばねを使う製品が一般的です。外部力がピストンをシリンダの初期位置に戻し、シリンダが再び準備状態になります。

単動シリンダの選び方

単動シリンダを選ぶ際は、以下の要素を考慮します。

1. チューブの内径

チューブの内径は、シリンダの内部の直径を指します。大きなチューブ内径はより大きな圧力を生成できる反面、サイズが大きくなる場合が多いです。一方、小さなチューブ内径であればコンパクトな設計に適していますが、生成できる圧力は制限されます。使用する要件に基づいて、適切なチューブ内径を選ぶことが大切です。

2. ストローク

ストロークは、ピストンが往復する際の移動距離です。用途に応じて必要なストロークを選びます。ストロークが短すぎると必要な動作範囲をカバーできない場合があり、長すぎるとシリンダ全体が大きくなって設計に制約が生じる可能性が高いです。

3. 押込・引出特性

流体流入によって、押し込むか引き出すかを選ぶことが必要です。用途に応じて選定します。また、製品によっては押込速度と引出速度が異なる場合があります。

4. アンサースイッチ

シリンダの位置検出や制御信号の送受信に使用されるデバイスです。リードスイッチやリミットスイッチ、マイクロスイッチが使用されます。アンサースイッチを搭載した単動シリンダを選ぶことで、制御システムとの連携が容易になります。

アンサースイッチは、特定の位置にピストンが到達した際に信号を発生することが可能です。スペースの制約からリードスイッチが使用されます。したがって、リードスイッチ付きの製品は、シリンダ内部に磁石が内蔵しています。

参考文献
https://punjabisongspb.com/?p=173

シムリング

シムリングとは

シムリング (英: Shim ring) とは、部品と部品または部品と設備・設置場所の間に挟み込み、相互間の位置・レベル・間隔を調整する際に使われるシムの一種です。

リング形状をしており、均一な厚さを持ちます。その厚さを調整することで、部品の寸法公差、複数部品を組み立てた際の累積公差を吸収したり、現場で位置精度の微調整したりする役割を果たします。

シムリングの使用用途

シムリングは、一般的な機械や装置の組み立てにおいて、部品同士の間隔や位置の微調整が必要な場合に使用されます。

1. ベアリングなどの位置調整

図1.アンギュラベアリングのシムシング使用例

シムリングは、リング形状をしていることから、ベアリングの内輪、外輪に挿入し、軸方向の確実な固定や位置調整に使用されます。アンギュラベアリングやテーパローラベアリングでは、内外輪の位置調整によってベアリングの与圧 (プリロード) を調整するのに有用です。

ベアリング用のシムリングは、各種ベアリング型式の内輪、外輪に合わせた寸法の物が用意されています。他にも、歯車プーリなどの軸位置の調整用にもベアリングと同様に使用します。

2. ねじ・ボルト穴での位置調整

図2. 高さ合わせピンのシムリング使用例

通常のシムでは、ねじやボルト締結面部で部品同士の位置調整を行う際、部品に合わせた形状のシムが必要になります。シムリングをねじ穴部に配置することで、特殊形状のシムを使用しなくても締結面の位置調整が可能です。

シムリングは、高さ合わせピンなどの高さ調整などでも使用されます。

3. フランジ面での位置調整

シムリングはフランジ面で締結穴を避けて内外周に配置することで、専用のシム形状としなくてもフランジ面の位置調整が可能です。

シムリングの原理

シムリングは、部品の間隔や位置を微調整するために使用される部品です。均一な厚さと薄いリング状の形状が特徴で、部品同士の間に挿入されることで、その厚さが間隔や位置を微調整できます。

シムリングの厚みは、一般的に数十μmと極めて薄いものから数mm程度まで、バリエーションは豊富です。材質は、鉄鋼やステンレス、真鍮などが用いられます。

シムリングの種類

シムリングには、通常のリング形状以外に以下の種類があります。

1. 切り欠きタイプ

切り欠きタイプ  (または割りタイプ) は、リングの一部を切り欠いた形状です。ボルトや軸などを完全に抜かなくても横から挿入、取り出しができるため組立時の厚さの調整が簡単です。 (図2. (b)参照) 

ただし、内外径の幅が狭い場合は、固定時傾きを発生する場合があります。複数個所で使用し、かつ各シムリングの切り欠きの方向を合わせないなど注意が必要です。

2. ラミネートタイプ

図3. ラミネートタイプのシムリング

ラミネートタイプ (または積層型) は、数十μmなど非常に薄いシムリングを接着剤で貼り合わせて全体の厚みを0.5mmや1mmなどとしたシムリングです。必要に応じてカッターなどで剥離し、厚みを調整して使用します。

シムリングのその他情報

シムリングを使用する際の注意点

シムリングは必要な厚みを得るために、数種類の厚みのシムリングを重ねて使用するものです。しかし、重ねる際にゴミやほこりなどの異物の混入、折れ曲がり、傷などによる厚みの変化などがあるため、組付け時には注意が必要です。

これらを回避するため、シムリングを重ねる場合は、極力重ねる枚数を減らします。シムリングと似た形状で、ワッシャーや中空スペーサがあります。これらもシムと同じように高さを変えることができますが、数mm以上高さを変える時に使用され、微調整に使うシムリングとは目的が異なります。

シムリングは厚みの差が微妙なため、見た目では違いがわかりにくいことも多いです。厚みや図番などの情報をレーザーやスタンプでマーキングしたもの、端部を厚み毎、色分けしたものなどもあります。

薄くて小さいシムリングは、組立途中で紛失することも多いため、紛失防止として片面に粘着剤を付けた状態や反射防止として黒く染めた状態で納入してもらうことも可能です。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/c-83796/
https://kikaikumitate.com/post-4771/
https://www.iwata-fa.jp/
https://mekacata.icata.net/

ボールガイド

ボールガイドとは

ボールガイドはボールの持つ転がり性能を利用して直動運動を非常に低摩擦で行うためのガイド部品です。主にシャフトに取り付けてシャフト長軸方向の直線運動に対して低摩擦の直線運動を行います。またボールガイドの他に似たものとしてローラーガイドがあります。

ボールを用いた低摩擦の代表的な部品としてボールベアリングが存在します。こちらは直動運動ではなく回転運動を支持することを役割としています。ボールの回転により低摩擦となる原理は同じです。

ボールガイドの使用用途

主に機械の直同機構の一部として利用されます。あくまでボールガイドは摩擦を抑える役割ですので、ボールガイドのみで利用されることはほとんどなく、シャフトによるブレ補正や搬送物を載せるステージやブラケットと組み合わせて使用されます。

ボールガイドの種類は様々です。シャフトにはめ込む円筒形状をしたボールブッシュやリニアブッシュ、構造の一部が平たくなっておりステージの役割も果たすことができるリニアガイドなどです。

ボールガイドの原理

ボールガイドはガイドポスト、ボールリテーナー、ブッシュの3つで構成されています。ボールに与圧がかかることでブッシュとガイドポストの間を転がることができます。安価である一方ローラーガイドに比べて耐荷重は少し弱めです。

リニアガイドはボールがレールの面で接触する構造となっています。ボールの転がる転動溝も設けられています。そのため許容耐荷重が大きくなります。つまり荷重を受けながら運動させることが可能です。ただその分構造も複雑になり高価となってしまいます。

リニアブッシュは構造がコンパクトな一方転動溝を設けられていません。そのためボールの接触面積が小さく許容荷重が小さくなってしまいます。つまり荷重を受けながら運動させることができません。リニアブッシュを使用する際にはあくまで搬送をガイドするものとして荷重は別の所にかけなければなりません。例えばベアリングに固定させたシャフトの長軸方向に直線運動するためのガイドとして利用するなどです。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/special/linearguide/about/
https://eurotechno.co.jp/info/characteristics-of-ball-roller-guide/
https://www.thk.com/?q=jp/node/6714

PFCコントローラ

PFCコントローラとは

PFCコントローラ (英: Power factor correction controller) とは、力率の改善を行う力率改善回路 (PFC回路) を制御するコントローラです。

力率とは、皮相電力に対する有効電力の割合のことです。容量性や誘導性の負荷を持った回路に交流電圧を入力すると、入力電流に位相差が生じたり、波形が正弦波から歪むことで高調波電流が発生し、力率が悪化します。

そのため、実際に負荷で消費される電力よりも大きな電力を供給しなければならなくなります。PFC回路は位相差や高調波電流を改善することで力率を1に近づける回路のことで、その制御を行うのがPFCコントローラです。

PFCコントローラの使用用途

PFCコントローラは、交流の商用電源を直流に変換するACDCコンバータには必須となる回路です。電子機器の力率が低いと、負荷で消費される電力以上の余計な電力を供給する必要があるため、電力会社などの供給側に大きな負担をかけることになります。

それ以上に問題なのが、高調波電流による送配電設備の損傷です。国際規格IEC61000-3-2によって高調波電流の規制値が定められており、電子機器はこの規制値を守らなければなりません。

そこで、規制値をクリアするように、PFCコントローラを用いて力率を改善する必要があります。

PFCコントローラの原理

ACDCコンバータに入力された交流電圧は、ダイオードブリッジで整流されたあと、コンデンサで平滑化され直流電圧に変換されます。このときコンデンサの両端電圧とコンデンサに流れる電流がずれるため、入力される電圧と電流に位相差が生じます。

また、入力される交流電圧がコンデンサの両端電圧よりも低い期間は電流が流れず、高い期間のみ充電電流が流れるので、入力される電流の波形は正弦波から歪んで高調波電流が発生します。この平滑化コンデンサに起因する位相差や高調波電流が、力率を悪化させる要因です。

力率を改善するために、ダイオードブリッジと平滑化コンデンサの間にPFC回路を入れます。PFC回路は昇圧型のDCDCコンバータと同様の回路構成になっており、入力電流が正弦波に近づくように、スイッチング素子のオン/オフを制御します。

PFCコントローラの構造

PFCコントローラ内の回路はコイル、FET、ダイオードから構成されています。FETは電界効果トランジスタを指し、名前の通りトランジスタの1種です。

FETがON/OFFすることでコイルに流れる電流は急激に変化しますが、コイルは流れる電流の変化を緩やかにする性質を持ちます。これらの動作でコイルに流れる電流は、三角波となります。繰り返しスイッチング制御を行い、コイル電流のピーク値が正弦波状になるように制御しています。

PFCコントローラのその他情報

1. PFC回路の回路方式

PFC回路の回路方式には、1組のスイッチで構成されるシングル方式、2組のスイッチで構成され位相を180度ずらして駆動させることでリップル電流を抑えることができるインタリーブ方式の2種類です。

また、動作モードには、大電力 (200~500 W程度) 用途の電流連続モード (CCM) 、中電力 (100~200 W程度) 用途の電流臨海モード (CRM) があります。これらを目的や用途に応じて適切に選択することが大切です。

2. 有効電力・皮相電力

  • 有効電力
    負荷で消費する電力のことです。 (負荷で消費しない電力を無効電力と呼びます。)
  • 皮相電力
    交流電源から出力される電力のことです。負荷に加わる電圧実効値と電流実効値の積で計算されます。前述した有効電力と無効電力は、共に皮相電力から出力されるものです。そのため、有効電力と無効電力の合計が皮相電力になります。

参考文献
https://ednjapan.com/edn/articles/1206/18/news008.html
https://techweb.rohm.co.jp/knowledge/si/s-si/05-s-si/7389

板金ブラケット

板金ブラケットとは

板金ブラケット

ブラケットは機械部品などを固定するために用いられる支持具や取り付け金具のことで、板金加工により製作されたブラケットを板金ブラケットといいます。

板金ブラケットは曲げ加工、穴およびタップ加工、けが対策でC面取やR加工などの加工を行うケースが多いです。

重量物を保持するために、強度を増すためのリブ構造を溶接したり曲げ加工やプレス加工(三角リブ加工)なども用いられます。

板金の素材は重量物の場合は鉄系、軽いものの場合は鉄系だけでなくアルミ系が使われることが多いです。

板金ブラケットの使用用途

産業用機械や光学機器、計測機器、自動車や家電製品など幅広い分野の機器で比較的強度を必要としない機械、電気部品の固定に使用されています。

部品の固定だけでなく、取付穴を単純な穴加工ではなく、長丸穴などにすることで、固定部品の位置を調整できる機構を設けることもあります。

強度が必要な箇所は機械加工品を使うことが多いですが、板金の方がかなりコストが安くできるため、リブ構造などを溶接でおこない、強度を稼いで重量物の固定にも使用されています。

板金ブラケットの原理

最近は高出力なレーザーが安価で手に入るようになり、レーザー加工機の加工の性能が向上しています。これまでは切断するのが難しかった厚い板金も切断可能になり、板厚が9mmなど、機械加工品と変わらない厚みの板金ブラケットを比較的安価に製作することができるようになりました。

数を多く作る場合は、タレットパンチプレス(通称タレパン)や金型を製作、プレス加工を行うことで、かなり安価に製作することができます。

板厚が1mm以下と薄い場合でも、バーリング加工と呼ばれる絞り加工+タップ加工を使うことで十分な強度をもったタップをつくることができます。

板金用に溶接ナットや溶接スペーサなど容易されており、比較的簡単に付加機能を追加することができ、多機能をもった板金ブラケットを製作することができます。

通常の板金ブラケットは曲げ加工がありますが、曲げ部周辺の穴がひきのばされるなど、形状に影響することがあるので、注意が必要です。

参考文献
http://seikanbankinkakou.com/fundamental-knowledg/4635.html

NCフライス盤

NCフライス盤とは

NCフライス盤

NCフライス盤は,金属加工を行うときに使用されるNC工作機械と呼ばれるもののうちの一つです。NC工作機械とは,金属の不要な部分を切り落として目的とする製品の形状に仕上げる金属加工機械です。NCとは,Numerically Controlled;数値制御の頭文字をとったもので,演算装置により,自動で制御が可能であるという意味です。あらかじめ機械に加工プログラムを入力し,同じものを高い精度で作ることができます。フライスというのは工具の名称で,回転させて加工物を削ります。

NCフライス盤の使用用途

NCフライス盤は,金属の切削加工を行う場面で主に使用されます。多くの金属加工メーカの生産現場で,複雑な形状をした機械部品,金型の製作,加工に使用されています。NCフライス盤に搭載されているNC制御システムは,コンピュータによる自動加工であるため,大量の部品を作業者によるばらつきが発生することなく,加工を行うことができるという特徴があります。この特徴ゆえ,機械部品や金型の製作依頼を大量に受注して生産する必要がある機械系メーカに需要があります。

NCフライス盤の原理

NCフライス盤は,機械のコントロールを担う「NC装置」と,NC装置に指令を与える「NCプログラム」で構成されています。

NC装置は,指令された加工内容に沿ってNCフライス盤の動きをコントロールするシステムです。
NC装置の構成は,作業者が機械の操作を行うパネル部,数値演算を行う中枢部,シーケンス機構,サーボ機構で成り立っています。

ここで,NC工作機械の中枢部で行われている数値演算の原理を簡単に説明します。加工プログラムには,「Gコード」と呼ばれる一種のプログラミング言語のような指示コードが使われます。このGコードを機械のパネル部で直接打ち込むか,間接的に送り込み,機械に指令を伝達させます。Gコードは非常に簡潔なコードで,簡単な命令と座標で構成されています。

シーケンス機構では,センサーや周辺機器の作動をコントロールします。

サーボ機構では,サーボモーターの制御を行うことによって指令通りの切削位置,スピードで部品の加工を行います。 

参考文献
https://www.senban.jp/target/cnc/nc_gaiyou.html

NC自動旋盤

NC自動旋盤とは

NC自動旋盤

NC自動旋盤とは、数値制御方式の自動旋盤のことです。

NCはNumerical Controlの略で、数値制御を表します。CNCはComputer Numerical Controlの略で、数値制御にコンピュータを用いたものを指します。現在ではNCもCNCも同意と捉えることができます。

自動旋盤は旋盤の一種ですが、特に長い棒材から連続して複数の部品や粗形材を加工するものを言う場合が多くあります。よってNC自動旋盤は、数値制御によって棒材から連続して複数の部品の加工ができる旋盤を指します。

NC自動旋盤は、材料交換や段取り換えの手間が省けるため長時間の無人運転が可能であり、継続的な量産が可能な機械です。例えば2メートル以上の長い材料をそのまま機械に格納して、あらかじめ作成したプログラムに従って自動的に送り出し、加工することができます。

NC自動旋盤の使用用途

NC自動旋盤は特に大量生産に用いられる工作機械です。また切削加工なので、鋳造や鍛造などの工法よりも高い寸法精度が要求される部品の加工にも用いられます。

加工される材料では、まず金属が挙げられます。鉄鋼材料はもちろんステンレス、、アルミニウム合金、チタン、といった様々な種類の金属の加工に用いることが可能です。

金属以外に樹脂部品の加工にも用いられます。樹脂は射出成形によって複雑な形状に加工できますが、寸法精度が高くはありません。NC自動旋盤による切削加工を加えることによって、射出成形では達成できない寸法精度を得ることができます。

NC自動旋盤によって作られる部品には、ボルトやナット、シャフト類の部品があり、自動車、鉄道、航空機、航空宇宙関連などの輸送機器から、時計や医療機器などの精密部品まで幅広く利用されています。

NC自動旋盤の原理

NC自動旋盤は、主軸の長手方向の動きと、刃物の径方向の動きを、サーボモーターによりプログラムを用いて動かします。特に、長手方向や径方向の動き量・速度などの制御は、数値制御方式により行います。そのため、製品ごとにNCプログラムを作成し、機械にプログラムを入力しなければなりません。

最近のNC自動旋盤では、数値制御部がコンピューター制御に代わり、主軸を回転させての丸物切削加工に加えて、主軸の回転を止めてエンドミルによる切削加工などが可能です。また付加加工のDカットや、横穴加工、横タップ加工等が可能となっています。

NC自動旋盤の種類

NC自動旋盤は、まず供給する材料の種類によって分けることができます。棒材加工機 (バーワークマシン) と粗形材 (チャックワークマシン) があります。

バーワークマシンはNC自動旋盤として多く扱われる、長い棒材から連続して複数の部品を切り出していく方式のものです。一方でチャックワークマシンは、加工前の材料や粗形材を都度1回ずつ掴んで加工し、取り外すものをいいます。

また、機械の構造によっても種類が分かれます。長手方向に主軸側が移動する主軸台移動形と、長手方向に工具側が動く主軸台固定形の2種類です。主軸台移動形にはガイドブッシュという、材料を固定する部位があります。材料が固定されている部位 (チャック) と、工具が接触する加工部位との距離が離れていると、加工時にたわみが生じて加工精度に影響する場合があります。ガイドブッシュがあれば、工具の接触による材料のたわみを抑制することが可能です。

NC自動旋盤のその他情報

NC自動旋盤の長所と短所

NC自動旋盤の長所は、1μmなどの寸法の微調整もコンピューターで動作量に補正をかけて調整するため、セッティング変更が簡単となり、職人のカンやコツを必要とする部分が少なくなったと言う点です。結果として技術の伝承が従来よりも容易になったということも利点の1つです。

短所としては、簡単な部品でも加工するためにはプログラムが必要なこと、また加工時間が比較的長いことがあげられます。このような点からも、大量生産に適した工作機械といえます。

参考文献
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1606/24/news054_6.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/machining/cutting/nc-lathe.jsp
https://cmj.citizen.co.jp/special/

インフレーション成型機

インフレーション成型機とは

インフレーション成形は加熱溶融した樹脂を開口をもった金型に押しあて、開口部から押し出された部位を商品とする押出し成形の一種で、袋状のフィルムに特化した成形法のことを言います。

押出用金型はリング状の開口部をもち、溶融樹脂が薄いフィルム状に押し出します。押し出しながら冷却空気を吹き込むことで一定の大きさに膨張させて袋状に成形します。

単層フィルムだけでなく、同時に多層フィルムを成形することも可能です。

インフレーション成型機の使用用途

食品用ラップフィルムやポリ袋などのフィルムを製作する時に使われます。

また、多層オレフィン系フィルムを成形し、農業用ハウスで使用するフィルムや米袋、肥料袋をはじめ一般塗装フィルムや食品包装フィルムを製作する際に使用されています。

塩化ビニル樹脂(PVC)だけでなくポリエチレン(PE)などポリオレフィン系の材料に顔料や帯電防止剤、フィルムと製品をくっつきにくくするAB剤などの添加剤を加えて高機能なフィルムを成形することができます。

インフレーション成型機の原理

インフレーション成形機の一般的な構成は、以下の通りです。

まず溶融樹脂を押し出す「押し出し機」があり、成形する形(円筒状)の開口部をもつ金型である「丸ダイ」、押し出されてフィルム状になった樹脂に空気を入れて膨らませ、膨らんだ樹脂を空冷して固まらせる「インフレーション・冷却部」、フィルム内部の空気を締め出しながらひっぱる「締め付けロール」、チューブフィルムを巻取り、カッターなどで必要な長さに切断、片側を熱溶着させて袋状にする「巻取り」からなります。

インフレーションは構造が単純で金型費用が安価、連続で成形できるので製品単価が安価になる、薄肉成形品が製作できるというメリットがある反面、厚肉製品はできない、小ロット生産には向かないなどのデメリットがあります。

また、インフレーション成形機で成形した商品は厚みが不均一になったり、表面に筋などの欠陥が発生する可能性があるので注意が必要です。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/sensor/plastic-molding/process/inflation.jsp

オイルレスベアリング

オイルレスベアリングとは

オイルレスベアリング

オイルレスベアリング (英: Oilless Bearing) とは、滑り軸受の1種で、オイルやグリースなどの潤滑材を給油せず、潤滑性のある材質を使用した軸受です。

一般の滑り軸受は、軸受と軸の間に油やグリースなどの潤滑剤を塗布し、摩擦を低減させ摺動性を維持しています。しかし、オイルレスベアリングは油やグリースなどの潤滑剤の塗布が不要、もしくは給油量や給油回数を低減できる軸受です。

オイルレスベアリングは、JIS B0162 滑り軸受-用語定義及び分類の用語において、自己潤滑軸受、無潤滑軸受、固体潤滑軸受、多孔質自己潤滑軸受、焼結含油軸受が該当します。

オイルレスベアリングの使用用途

オイルレスベアリング_図1

図1. オイルレスベアリングの使用例

オイルレスベアリングが使用されるケースは、下記のような場合の摺動部や回転部です。

  • 構造や設置場所の制約から給油や給脂ができない箇所
  • 高温、低温雰囲気環境
  • 水中や化学薬品を使用するような腐食性雰囲気環境
  • 粉塵などが混入する雰囲気環境
  • 衝撃荷重および振動の多い箇所
  • 起動、停止が頻繁でオイルなどの潤滑剤が有効ではない箇所

オイルレスベアリングは、産業用機械や自動車や鉄道車両、産業用ロボット、コピー機やプリンターなど幅広い分野で、摺動部および回転部に使用されています。高温用バルブや製鉄設備などに使用されている場合は、耐熱性に優れた特徴を活用している一例です。

また、オイルなどの潤滑剤を使用していないことを活用した使用例では、食品製造機器や医療・介護機器、水門や水車などの水中機器があります。図1は、水平 (左右) 、垂直の3軸方向のテーブル位置調整機構で、垂直方向の軸支持にオイルレスベアリングが使用されています。

オイルレスベアリングの原理

滑り軸受では、ベアリング (軸受) とシャフト (軸) が接触しているため、シャフトが回転すると摩擦が発生し、摩耗が進展します。オイレスベアリングは、摺動面にオイルなどの潤滑剤などを使用せずに、自己潤滑性を持たせ、潤滑被膜を形成し摩擦を低減させます。

オイルレスベアリングに、自己潤滑性を持たせるための方法は下記のとおりです。

  • 固体潤滑剤を摺動面に埋め込む
  • 固体潤滑剤を金属組織内に分散させる
  • 金属組織内に含油させる
  • 自己潤滑性に優れた樹脂材を使用する

オイルレスベアリングの種類

オイルレスベアリング_図2

図2. 材質による種類

1. 材質による分類

オイレスベアリングの材質別の種類は、大きく分けて「金属系」「樹脂系」「複合系」の3つがあります。

金属系
金属系のオイルレスベアリングは、銅合金などの摺動面に自己潤滑性に優れた固体潤滑剤を埋め込んだ「固体潤滑剤埋込型」、金属組織内に分散させた「固体潤滑剤分散型」と、鋳鉄などに含油させた「含油成長鋳鉄型」があります。

樹脂系
樹脂系のオイルレスベアリングは、熱可塑性樹脂の「ポリアミド樹脂 (PA) 」「ポリアセタール樹脂 (POM) 」「ポリウレタン樹脂 (PUR) 」「芳香族ポリアミド樹脂」、また熱硬化性樹脂の「フェノール樹脂 (PF) 」「四ふっ化エチレン樹脂」などがあります。

複層系
複層系のオイルレスベアリングは、自己潤滑性のある材質と強度や熱伝導性に優れた材質を組み合わせ成形したベアリングです。

2. 形状による分類

オイルレスベアリング_図3

図3. 材質による種類 (金属系)

軸受として使用する場合は、円筒形の「ブッシュ」、つば付き円筒形の「フランジブッシュ」、スラスト荷重を受ける場合は、つば付き円筒形の「フランジブッシュ」、円盤状の「スラストワッシャ」があります。また自動調心形の「球面滑り軸受」があります。

オイルレスベアリング_図4

図4. 材質による種類 (樹脂系、複層系)

オイルレスベアリングのその他情報

メンテナンス性

オイルレスベアリングは、給油装置が不要です。オイル消費がほとんどなく、無給油で使用できるものもあります。

設備費や運用費用を削減し、定期的なメンテナンスも発生しません。ただし、摩耗は進展することがあるため、その際はベアリングの取り換えが必要になります。

参考文献
https://www.oiles.co.jp/bearing/oiles_bearing/about.html