インフレーション成型機とは
インフレーション成型機とは、樹脂をフィルム状に成型し、これを袋状に加工する加工機器です。
レジ袋やゴミ袋、平袋などの袋を効率的に生産可能です。加熱溶融した樹脂をリング状の金型から薄いフィルムよりなる輪環状に押出し、輪環の内側に冷たい空気を吹き込んでチューブ状のプラスチックに成型します。
さらに、チューブ状のプラスチックフィルムを所定の長さにカットしてチューブの所定の位置を熱などで接着して袋状に加工します。この成型機は樹脂を押出して加工するため、押し出し成型機の一種です。
インフレーション成型機の使用用途
インフレーション成型機は、生活用品や農業用品、工業用品の分野で使用されるフィルムや袋の製造に使用されています。
例えば、生活用品の食品用包装フィルムやポリ袋などの製造に好適です。成型機の輪環状のフィルムの内側に吹き込む空気の清浄度を高め、成型機の作業環境をクリーンな環境にすれば、チューブ状のフィルムの内側を非常にクリーンな状態にできます。よって食品の包装に使用されるラップや包装袋の製造に好適です。
この成型機では、単層のほか、複数種のプラスチックフィルムが重なっている多層のフィルムも製造可能です。多層オレフィン系フィルムの成型も可能で、農業用ハウスで使用するフィルムや米袋、肥料袋などの農業用品の製造にも使用されています。このほか、一般塗装フィルムなどの工業用品の製造にも使用されています。
インフレーション成型機の原理
インフレーション成型機の一般的な構成は、以下の通りです。
まず溶融樹脂を押し出す押し出し機があり、成型する形 (円環状) の開口部をもつ金型である丸ダイがあります。続いて、押し出されて円環状のフィルムになった樹脂の中に冷たい空気を送り込んで膨らませるとともに同時に空冷して固めるインフレーションおよび冷却部があります。
次に配されるのは締め付けロールです。締め付けロールは、固められてチューブ状に成型されたプラスチックフィルム内側の送りこんだ空気を締め出しながらひっぱる装置です。
続いて、巻き取りがあります。この装置は、チューブ状のプラスチックフィルムを巻き取り、カッターなどで必要な長さに切断して片側を熱溶着させて袋状にします。
インフレーション成型機のその他情報
1. インフレーション成型機の特徴
インフレーション成型機の特徴を、メリットとデメリットに分けて解説します。
メリット
インフレーション成型機は構造が単純で製造条件の調整やメンテナンスなどが容易です。押出し機では金型が押出製品の品質や精度を大きく左右します。そのため、金型は精巧に製作する必要があり、形状が複雑であると費用が高価になることがあります。
インフレーション成型機で使用する金型は、成型する形(円筒状)の開口部をもつ金型である丸ダイです。丸ダイは形状が比較的簡易であり、金型費用が比較的安価となります。また、この成型機では、連続で成型可能であるため、清掃単価も安価となります。
デメリット
インフレーション成型機には、チューブ状プラスチックフィルムのような薄肉成型品が製作できるメリットがある反面、厚肉製品は製造できない、小ロット生産には向かないなどのデメリットがあります。
また、インフレーション成型機で成型した商品は厚みが不均一になることがあります。さらには、魚の目のような透明の小球状の塊であるフィッシュアイや、表面の筋などの欠陥が発生する可能性があるので注意が必要です。
2. インフレーション成型機で成型可能なフィルム
インフレーション成型機では単層だけでなく、多層フィルムの成型も可能です。この場合、金型を複数のリングを重ねた形状のダイとし、リング間の複数の隙間にそれぞれ異なる樹脂を供給します。
これが押し出されると複数層のプラスチックフィルムが重なったチューブ状の多層フィルムとなります。あとは、単層フィルムと同様に冷却固化して巻き取って完成です。
また、高機能フィルムの製造も可能です。インフレーション成型でよく使用される塩化ビニル樹脂 (PVC) のほか、ポリエチレン (PE) などのポリオレフィン系の材料に顔料や帯電防止剤を添加した高機能のプラスチックフィルムも製造できます。さらに、加工や取扱いが容易となる様プラスチックフィルムと包装する製品のくっつきを防止する添加剤を加えた高機能なフィルムも製造可能です。
参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/sensor/plastic-molding/process/inflation.jsp