ボルトテンショナ

ボルトテンショナとは

ボルトテンショナとは、オイルの圧力 (油圧) によってボルトを締め付けるために使用される油圧工具です。

ボルトテンショナによるボルトの締め付けは、ボルトにねじりトルクをかけることをせずに引張荷重を発生させるので、ボルトの材料強度を締結力として、最大限に発揮させることができます。また、直接軸力を調節可能で (軸力値コントロール) 、正確にボルトを締め付ける点も特徴です。

ボルトテンショナの使用用途

ボルトテンショナは正確なボルトの締め付けが可能なため、大型ボルトの耐久性がより必要とされる製造・工業現場などに導入されています。例えば、海洋上の風力発電用の巨大発電機 (プロペラ) や化学プラント工場など、高精度のボルトの締め付け・耐久性が必要な現場です。

さらには、東京スカイツリーのような巨大建造物にもボルトテンショナによる高精度・高耐久性のボルトの締め付けは必要不可欠です。そのほか、ボルトテンショナは従来のトルクレンチなどと比べて締結時に場所をとらないので、複雑な構造物の間など狭い空間にも使用できます。

ボルトテンショナの原理

ボルトテンショナの原理は、油圧を用いてボルトを引っ張ることです。ボルトテンショナの原理を理解するためには、ボルトの締結原理を理解する必要があります。ボルトやねじが締結力を発揮する原理は、ボルトやねじが引っ張られて、弾性力によって元の長さに戻ろうとする力によるものです。

鉄鋼材料などの頑丈なボルトを伸ばすための引っ張り力を得るために、ボルトでは螺旋形状を利用しています。ちょうど重たい荷物をある高さまで持ち上げる際に、直接持ち上げるのではなく、台車に乗せて斜面を使って運ぶと小さな力で持ち上げられるのと同じ原理です。

ただし、ねじの斜面を使った締結では、斜面で発生する摩擦のために、ボルト自体に張力に加えてねじりトルクも作用します。材料には張力以外にねじりトルクが同時に作用すると、単純に張力が作用した場合よりも低い張力で、材料が蘇生変形で伸びたり、破断したりする現象が起こります。

ボルトテンショナを使えば、ボルトにはねじりトルクを作用せず張力を与えられるため、ボルトの強度を最大限に活かすことが可能です。

ボルトテンショナの特徴

ボルトテンショナによるボルトの締結には、以下のようなメリットがあります。

1. ボルトの強度を最大限に発揮できる

原理の項で説明したとおり、ボルトにねじりトルクが作用すると、張力だけが作用している状態に比べて、低い張力でボルトは塑性変形で伸びたり、破断したりします。ボルトの材料強度よりも、低い締結力しか得ることができません。

それに対して、ボルトテンショナはボルトにねじりトルクが作用しないので、高い締結力が得られます。

2. 軸力が正確に把握できる

通常のボルトやねじを回転させて締結させる場合、ボルトが発生している締結力 (軸力) は分かりません。代用特性として締め付けトルクを計測する方法が用いられていますが、締め付けトルクから軸力を知る際に、ボルトのねじ面や座面の摩擦係数がわかっていなければなりません。

摩擦係数も正確に把握することは難しく、ある代用値を用いるのが一般的です。代用値として計算に用いた摩擦係数と実際の摩擦係数とに大きな差があると、十分な軸力が得られなかったり、締結作業によってボルトが破断したりするトラブルが発生します。ボルトテンショナを使えば、与えた油圧からボルトに与えた軸力を正確に把握できます。

3. 複数のボルトに同じ軸力を与えられる

ボルトテンショナは油圧を用いるため、1つの油圧発生源を複数のボルトテンショナに供給すれば、複数のボルトに対して、同じ軸力を同時に作用させることができます。

ボルトテンショナのその他情報

ボルトテンショナでの締結方法

ボルトテンショナは、まずボルトにナットを手もしくはトルクレンチなどで通常の締め付けを行った状態から始め、この状態でボルトテンショナをセットし、ボルトを座面に着座させます。

次にボルトテンショナの側面に油圧をかけるための高圧ホースを装着し、圧力の設定することができるので換算表に応じて設定します。圧力の設定は、ボルトの初期必要引張力と有効断面積からも換算可能です。

高圧ホースを接続した状態で圧力を徐々にかけていくと、油圧によりボルトが上へと引き上げられ、着座しているナットが浮きます。この浮いたナットを回して着座させることで、ボルトは数トンもの力で締め付けられた状態になります。ナットを回し終えた後、油圧を解放し締め付けたら完了です。

参考文献
https://www.bolt-engineer.net/bolt-tensioner/structure.html
http://ith.co.jp/product/bolttensioner/what_is_bolt_tensioner

ホットプリンター

ホットプリンターとは

ホットプリンターとは、熱によって印刷を行うプリンターのことです。

具体的には、印刷ヘッドからインクを噴射するのではなく、熱転写リボンや感熱紙を用いて印刷を行うプリンターの総称です。POSなどで使われるレシートへの印刷や製品の包装などへの印刷に良く使われています。

特に高精度な印刷が求められる場面や特殊な材料に対する印刷でその真価を発揮します。一般的なプリンターとは異なり、熱を駆使して、インクの定着性を高めるだけでなく、材料の特性を活かした印刷が可能となります。

ホットプリンターの使用用途

ホットプリンターのテクノロジーは、多様な産業でその有用性が認められています。具体的な使用用途は、以下の通りです。

1. 医療品のマーキング

医療品には高度な精度と耐久性が求められます。ホットプリンターは、清潔性や防水性を維持しながら、高精度で文字やコードを印刷できます。

2. 自動車部品の識別

耐久性と高温環境下での安定性が求められる自動車部品に、ホットプリンターは非常に適しています。

3. 電子機器のシリアル番号

微細な印刷が必要な場合でも、ホットプリンターは高い解像度で確実な印刷を行います。これは、品質管理や追で非常に価値があります。

4. 食品パッケージの日付表示

熱によってインクを定着させることで、冷凍・解凍プロセスに影響されにくい印刷が可能です。

5. 航空機・宇宙部品

高度な環境条件下でも性能を維持する必要があるこれらの部品に、ホットプリンターでの印刷は長期間にわたる耐久性と信頼性を提供します。

ホットプリンターの原理

ホットプリンターのプリンタテープは、インクではなく箔を用います。約150℃に熱した金属活字をプリンタテープを介して被捺印物に押し当てることで活字部分の箔が剥離し、被捺印物に転写されます。

熱によって転写される箔テープは活字側から、フィルム・剥離層・カラー層・接着層から成ります。インクと異なり、ドライなため、熱転写後に乾燥の時間を設ける必要はありません。印字後のボイル処理にも強く、紙だけでなくポリエチレンやラミネート紙に対しても綺麗可能です。

安定した印字のためには、活字を押し当てる際の圧力と温度が重要です。ホットプリンターを用いると、プリンタテープの交換や転写温度に達するまでに時間がかかる欠点もあります。

そのため、2000年頃からは活字を用いず非接触で熱転写できるサーマルプリンターが多く普及されるようになりました。サーマルプリンターは活字を用いないので、文字以外のバーコードも印字できる点に魅力があります。

ホットプリンターの種類

ホットプリンターはその使用目的や技術に応じていくつかの主要なカテゴリーに分類されます。

1. 熱転写プリンター (英: Thermal Transfer Printers)

熱転写プリンターは、熱を用いてリボンからインクを紙やラベルに転写します。一般的にはバーコード、ラベル、プラスチックカード印刷に使用されます。

2. ダイレクトサーマルプリンター (英: Direct Thermal Printers)

このタイプのプリンターは、印刷する素材自体に熱を直接適用し、色を変化させる方法で印刷します。レシートやラベル印刷によく使用されますが、長期保存には向いていません。

3. ホットスタンピングプリンター (英: Hot Stamping Printers)

熱と圧力を使って特殊なフォイルを素材に転写する方法です。高級なパッケージや資格証明書、ラベルに使われます。

4. レーザー焼き付けプリンター (英: Laser Annealing Printers)

高熱のレーザーを用いて材料の表面を変質させることで、永続的なマーキングを施します。特に金属やセラミックスなどの硬質素材に適しています。

参考文献
https://www.edm-net.co.jp/products/hp/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/marker/inkjet/example/process/contact-type-printer.jsp

ブースターポンプ

ブースターポンプとは

ブースターポンプ

ブースターポンプは、他の真空ポンプなどと同時に使用することにより、大きな排出速度を生み出すためにポンプになります。単体で大気圧下の使用はできません。同時に使用するポンプが供給する圧力の大きさによって、排出する速度や圧力が変動するので、変動率などを正しく調べてから装置などへ導入する必要があります。ポンプが動作する時は、輸送する流体の体積を変化させることによって、流体を輸送する容積式のポンプが主に使用されます。

ブースターポンプの使用用途

ブースターポンプは、住宅や施設の設備、生産工場などで使用されます。住宅や施設では、建物の最上階に貯水タンクを設置せずに、ブースターポンプの引き上げによって最上階まで水道水を輸送するときに使用されます。これにより、保守や点検、スペースの削減ができます。また、生産工場では、真空ポンプの空気排出速度の向上の面で使用されます。それにより、半導体の製造や真空梱包、真空乾燥などの生産性を向上させることができます。

ブースターポンプの原理

ブースターポンプの動作原理を説明します。ブースターポンプは、吸い込み口と吐き出し口が付いている容器の中に、繭のような形をした2つのロータがあり、そのロータにモータが接続されている構造になります。製品によっては、逆流防止弁や流量の制御にための圧力センサや制御盤が付属されています。

動作時は、吸い込み口から吸入した流体を2つのロータが回転します。回転した場合、ロータ間の隙間に流体が入り込み、回転と共にその流体が圧縮され、吐き出し口側に移動し、加速した状態で吐き出されます。このローターは外部からの流体の流入がなければ、空転するのみで流体の排出が行えません。圧力センサや制御盤が搭載されているブースターポンプでは、吸い込み口と吐き出し口の圧力差と入力値によって、歯車の回転数を調整し、吐き出し速度や圧力を入力値に近づけるフィードバック制御を行います。回転の仕組み上、逆流も可能となるため、逆流防止弁付属の製品や、逆流が起きないシステムで使用する必要があります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/23/12/23_12_729/_pdf
https://ulvac-kiko.com/support/pump07_mechanical.html

ブロー成形機

ブロー成形機とは

ブロー成形機

ブロー成形機とは、プラスチック加工の一種で、樹脂を熱で溶解し、型に移動させてガスを吹き込み、冷却することで内部が空洞の製品を作成する機械のことです。

特に、内部が空洞のボトルや容器などの成形に適した加工方法です。成形工程では、溶かした樹脂を型に移動させ、固まらせるまでの過程で、成形方法がいくつかに分類されます。

樹脂をエアーの力で押し出して型通りに作成する「押し出し方式」、一度射出成形した後にエアーを送り、型通りに作成する「射出方式」、一度樹脂を延伸させた後にエアーを吹き込み、型通りに作成する「延伸方式」があります。

ブロー成形機の使用用途

ブロー成形機は、液体を保存するための容器の製造工程で利用される機械です。ペットボトル、マヨネーズ容器、薬や薬品のプラスチック製容器などがその使用例として挙げられます。

ブロー成形機の選定に際しては、製品に適した加工方法を選ぶことが重要です。主に3種類の加工方法があり、それぞれが異なる製品に適しています。また、価格や大きさ、生産スピード、不良品の製造割合なども考慮することが大切です。

適切な製品を選定することで、効率的かつ高品質な容器の製造が可能です。また、環境に配慮した素材を使用することで、持続可能な製品開発にも貢献できます。

ブロー成形機の原理

ブロー成形機の動作原理を、押し出し方式、射出方式、延伸方式に分類できます。ブロー成形機は、樹脂を加熱して溶解させる加熱部、金型、エアー吹き出し口、冷却装置、それぞれの工程に樹脂などを移動させるためのアームなどで構成されています。

1. 押し出し方式

押し出し方式は、加熱し液体にした樹脂を押し出しスクリューなどにより内部が空洞のパイプ状にして型に押し出し、内部の空洞部分にエアー吹き出し口を当てます。そして、エアーを吹き出すことで、型の表面に樹脂を押し当て、冷却することで加工する方法です。ブロー成型機の中では、用いられている方式になります。

2. 射出方式

射出方式は、エアーを吹き出すことができる型にあらかじめ樹脂を固定した状態で、別の型に移動させ、エアーを吹き出すことで、型の表面に押し当て冷却する方式です。2段階で加工し、寸法精度が高いことが特徴です。

3. 延伸方式

延伸方式は、押し出し方式の押し出し過程において、一度樹脂を延伸させた後に、エアー吹き出し口からエアー吹き出すことで、加工する方法です。他のブロー成型の方法に比べて、強度が高いことが特徴です。

ブロー成形機のその他情報

ブロー成形機と併用する機械

ブロー成形機は、プラスチック製品の製造において重要な役割を果たしますが、その過程で他の機械と連携して効率的に生産を行うことが一般的です。主に樹脂供給機、温度調節機、冷却装置の3種類の機械と併用されます。

適切な機械を併用することで、高品質な製品を短時間で生産し、市場への対応力を高められます。

1. 樹脂供給機
樹脂供給機は、ブロー成形機に樹脂を適切な量で供給する役割を果たします。樹脂供給機によって、樹脂のロスを抑えつつ、生産効率を向上させることが可能です。また、樹脂の品質管理や環境対策にも貢献します。

2. 温度調節機
温度調節機は、ブロー成形機で加工される樹脂の温度を一定に保つために使用されます。樹脂の加工温度が適切であることが、製品の品質や成形速度に大きく影響するので、温度調節機は欠かせない存在です。

3. 冷却装置
冷却装置は、ブロー成形機で加工された製品を迅速に冷却し、製品の品質を維持するために使用されます。冷却速度が速いほど、製品の歪みや変形を防ぎ、生産効率を向上させることが可能です。また、冷却装置は、エネルギー消費の削減や環境負荷の軽減にも貢献します。

参考文献
http://www.krk.co.jp/tech/blowmolding.html
https://www.hatachi.co.jp/feature/htbm/htb/

電空レギュレータ

電空レギュレータとは

電空レギュレータとは、電気信号によって空気の圧力を制御する装置です。

より精密な量産を可能とするために、空気圧を電気信号などで柔軟に変更させる必要がある製造現場で使用されます。多くの電空レギュレータは、コイルによって動作する圧力調整弁を用いて圧力を制御します。

制御の方法は、圧力センサと入力値を用いたフィードバック制御です。IoTのネットワークプラットフォームに対応している製品も多く、採用することで工場の自動化にも適しています。

電空レギュレータの使用用途

空電レギュレータは、自動車や家電、化学製品、食品、精密機器、製薬の工場などで利用されます。使用用途としては、塗装やはんだの出力調整や精密な空気との混合、不純物の除去などです。

電空レギュレータを選定する際は、対応している圧力や流量の範囲、使用する電力量、耐久性などの考慮が必要です。

1. 塗装スプレーの噴出量調整

スプレー塗装ガンの最適空気量制御を電空レギュレータを使用することで、自動車の外装の塗装工程における塗装スプレーの噴出量調整を行います。

2. はんだの供給

基盤の製造工程におけるはんだの供給にも電空レギュレータは使用されます。流体のディスペンサの制御が可能です。

3. 空気の供給

電空レギュレータでは、空気の流量制御が可能です。そのため、食品工場における空気との混合過程における空気の供給などに使用されます。

電空レギュレータの原理

電空レギュレータは吸い込み口と吐き出し口が付いている容器、コイルによって動作する圧力調整弁、圧力センサ、制御盤などで構成されています。圧力センサは吐き出し口についており、制御盤に接続されています。

圧力の制御は、コイルに接続されている磁界によって移動する弁が、電流量に応じて移動することで行います。弁の開閉によって、空気の吐出量を調整することで圧力を変動させます。動作時は吸い込み口から吸入した空気が圧力調整弁を通過し、吐き出し口から吐き出されます。

その際に、吐き出し口の圧力センサによって圧力が測定され、制御盤に送られる仕組みです。圧力センサーから送られてくる圧力値に対して、電気信号として外部から送られてきた入力値が、どの程度の差があるかを計算します。

その差に対して、どの程度の空気を吐出するかを計算し、弁の開閉によって吐出量を調整します。

電空レギュレータのその他情報

1. 不感帯

電空レギュレータは、電磁弁をPWM制御で制御することができます。Dutyの上昇と共に電磁弁を通過する流量は増加する仕組みです。

しかし、不感帯と呼ばれるDutyが低く流量が流れない領域があり、供給圧力の影響を受け、供給圧力の増加と共に減少する傾向があります。これは、供給圧力の上昇と共に弁座からエアが漏れ出しやすくなるために起きる現象です。

2. フィードバック制御

電空レギュレータの課題として、アクチュエータの劣化や供給圧力条件による不感帯の変化が挙げられます。この課題から定常偏差 (目標値に対して、制御圧力が到達しない量) が発生します。

定常偏差を無くすための1つの手段が、内部の制御基板に搭載されたCPUで補正成分を疑似的な入力信号として可変する方式です。従来制御ループの構成が維持されるため、制御性が容易に維持できます。

3. 使用時の注意事項

配管する前に必ず配管内のフラッシング (圧縮空気の吹き流し) を十分に行う必要があります。切り屑や錆などが混入は、作動不良の原因です。

また、電空レギュレータには内部に精密機器を使用しているため、圧縮空気は固形物などを除去した清浄な空気を使用する必要があります。清浄な空気でないと、耐久性や作動特性に悪影響を及ぼします。

参考文献
https://www.ckd.co.jp/company/giho/pdf/Vol04/CKDgh_Vol4_02.pdf
https://official.koganei.co.jp/downloader/catalog/ETR600/2

極圧グリース

極圧グリースとは

極圧グリースとは、潤滑剤の1種で、金属と金属の摺動部分での焼き付きを防止するために使われるものです。

グリースに必要な耐水性や付着性などのシール性能に加え、高荷重潤滑性能、金属表面保護性能、耐摩擦性能に優れています。高回転ベアリングや高負荷・高速の金属摺動部、高い負荷のかかるギアなどの潤滑、部品の保護を目的としています。

極圧グリースの使用用途

極圧グリースは、基油が受け持つ通常の潤滑能力を超えるような状態が発生した際に、耐えられるために使用されます。例えば、ギア同士のかじり、基油の潤滑許容範囲を超えた衝撃、砂など異物の混入などの極圧発生が挙げられます。このため、以下のような用途で使用されています。

1. 自動車のホイールベアリング

自動車のホイールには、回転する力が強くかかります。極圧グリースは、この部分の摩擦を減らし、スムーズな回転を助ける役割を担っています。

2. 工作機械のギア

工作機械のギアは、高い力がかかる部分であり、通常のグリースでは十分な潤滑ができません。極圧グリースを使用して、ギアの寿命を延ばし、効率的な動作を実現します。

3. 農業機械

農業機械は、土や砂などの異物が入りやすい環境で使用されるため、通常のグリースでは潤滑効果が低下しやすいです。極圧グリースは、そのような厳しい条件下でも潤滑性能を保ちます。

極圧グリースの原理

通常のグリースと違い、極圧グリースには極圧添加剤と呼ばれる特別な成分が含まれています。平常時の潤滑範囲は、基油および増ちょう剤の性能に依存します。しかし、極圧が発生したときには、そこに潤滑剤が介在していなければいけません。

極圧添加剤が含まれていることで、極圧が発生した際にも高い潤滑性能を発揮できます。極圧添加剤は、金属表面に薄い保護膜を作ることで、摩擦を減らす効果を発揮します。この保護膜は、強い圧力がかかると金属表面と化学反応を起こし、さらに強固な膜となります。これが、極圧グリースに高い圧力がかかる部分でも潤滑効果を持続させられる理由です。

極圧とは、点または線で接触した部分にかかる摩擦抵抗のことです。通常の潤滑油膜は荷重が増加するほど薄くなり、金属同士が接触して摩耗・摩擦が増加して焼付きを起こします。極圧添加物を使用すると、焼付きを避け、油膜の厚さ維持が可能になります。

極圧グリースの種類

極圧グリースには、主に以下のような種類があります。グリースの主成分である増ちょう剤によって、特徴が異なります。

1. リチウム系

リチウム系極圧グリースは、一般的な極圧グリースの中で最も多く使われています。高温・低温に対応できる性能と、耐水性に優れています。

2. カルシウム系

カルシウム系極圧グリースは、耐水性に優れているため、水に濡れることが多い環境で使用されます。ただし、高温には弱い特徴があります。

3. アルミニウム系

アルミニウム系極圧グリースは、リチウム系に比べて高温に強いです。しかし、耐水性はリチウム系よりも劣ります。

4. ポリウレア系

ポリウレア系極圧グリースは、高温に非常に強く、長寿命であることが特徴です。電気機器や高速回転機器など、高温や長時間の連続使用が必要な用途で使用されます。ただし、価格が高いことが欠点となっています。

極圧グリースのその他情報

極圧添加剤

高荷重の接触面は必ず高温を伴っており,この高い温度が極圧添加剤を反応させるきっかけになります。極圧添加剤は,常温や比較的低い温度では安定で、融着が起こるような高い温度になる前の少し低い温度で活性になって金属と反応します。

極圧剤は、一般に硫黄、塩素、リンなどを含んでいる物質です。硫化油脂、硫化エステル、サルファイド、塩素化炭化水素などのほか、ナフテン酸鉛や同一分子内に硫黄、リン、塩素の中の2つ以上の元素を含む化合物も使用されます。

参考文献
https://www.kyusha.net/?p=86
https://www.juntsu.co.jp/qa/qa1102.php

木工旋盤

木工旋盤とは

木工旋盤

木工旋盤とは、木材をとりつけて回転させる工作機械です。

刃物などを当てて形を削り出すウッドターニングという木材を高速回転させ、刃物を当てて削る作業のために使われます。仕組みが陶芸で使う「ろくろ」と同じことから、日本では「木工ろくろ」とも呼ばれます。一般家庭でも使えるミニサイズから卓上で使えるものまで型もさまざまあります。

一般的に「木工」である机・タンスなどとは異なり、丸みのあるもの (お皿・ボウル・つぼ・ペンなど) を作ることができます。

木工旋盤の使用用途

木工旋盤は使い方・削り方を学ぶと一般人でも円、円柱形状を作ることが可能です。具体的にはお椀やお皿などの食器やお花などを飾る花器、丸脚のイスなどの様々なパーツが挙げられます。他にも抽斗の取っ手、アクセサリー、小物なども作製可能です。

テーブルや椅子にプロが作っているような装飾を削り出し、豪華に見せることができます。何年間も修行が必要な装飾も比較的簡単に施すことが可能になります。

木工旋盤の原理

本体が大きいほど作製できるものの幅が広がり、大きいものでも小さい作品の作製は可能です。作品作りに使用できる範囲は、テールストックからヘッドストックまでの長さが最大加工長さとなり、センターからベッドまでの高さを2倍した長さが最大回転直径となります。

回転センタとドライブセンターで材料の両端を保持し、材料の中心を求めてから両端にドライブセンターと木槌を使って少し跡が残る強さで本体に固定します。

ドライブセンターを使用せず、ドリルチャックで材料を保持することで細い材料を固定できます。ドリルチャックは元々ドリルを掴むためのものですが、ドリルに限らず、範囲内であれば木材の丸棒なども掴めます。

チャックで材料を固定することも可能です。チャックはジョーを開閉させることで材料を固定します。外側・内側のどちらからでも固定できます。内側から固定する場合、事前にジョーが入る窪みを用意する必要があります。

木工旋盤のその他情報

木工旋盤のバイトの種類

木工旋盤のバイトは一般的な鉄工用と同じくハイス鋼のものが使われていますが、鉄工用は刃物台にバイトを取り付けて使用するのに対し、木工旋盤は手持ちで加工するため彫刻刀のような見た目をしていることが特徴です。

また、バイトにも様々な種類があり、大体の寸法まで荒く削る「ラフィングガウジ」や美しい表面に仕上げる「スキューチゼル」、材料の切り離しに使う「パーティングツール」、お椀やボウル作りに最適な「スクレーパー」など、製作物や用途によってバイトを使い分けていく必要があります。具体的には次のようにして使い分けます。

1.ラフィングガウジ
主に角材から丸棒にするために使われる荒削り専用のバイトです。繊維が縦向きの木材 (センターワーク) に使用できますが、横向きの木材 (フェイスワーク) に使用すると木材が割れたり脱落して事故を招く恐れがあるため使用する際は必ず繊維の向きを確認することが重要です。

2.スキューチゼル
刃先が薄く平らな形状をしているのが特徴で、ラフィングガウジである程度まで削った後に使用します。切削面が綺麗になるため仕上げの加工に使用する他、平らな形状を活かしてチャックで固定する部分の加工に使用します。

3. パーティングツール
鋭く尖った刃先が特徴で、パーティングという名前の通り材料を切り離す時に使用する他、ワークに細い溝を掘る時に使用するツールです。

4.スクレーパー
板状の刃が特徴で、主にお椀やボウルといった滑らかにカーブしていく内側の形状を作る時に使用します。刃先の形状は真っ直ぐなものから緩やかにカーブしている形状のものまで様々な種類があり、緩やかにカーブしている刃先のものは「ラウンドスクレーパー」と呼び、カーブを描くような加工に最も適します。

参考文献
https://simplife-plus.com/tsukuru/woodturning_start/
https://www.off.co.jp/item/H_0023.html

四角ナット

四角ナットとは

四角ナット

四角ナットとは、ねじやボルトと組み合わせて使う四角形状の固定具です。

四角ナットのように外形が四角であっても、厚みが薄いものは板ナットと呼ばれます。そのほか、スクエアナットも別名として挙げられます。

T溝ナットや2穴のナットプレートなども四角ナットの1つです。一般的に広く使われている外形が六角形状の六角ナットは、ねじを締めるもしくは緩めるときにナット側とボルト側の両方を工具で固定する必要があり、両手が塞がってしまいます。

それに対して、四角ナットは溝に嵌めるなど角や面を合わせることでナットを固定する必要がなくなるため、ボルト側のみを締めるだけです。設置箇所に合ったナットを使用することで、締め付け作業を容易にします。

四角ナットの使用用途

四角ナットの主な用途は、建築部材用・電子部品用・車載用部品などです。四角ナットによって固定する部材としては、プレス製品や樹脂成形品、木材などが挙げられます。

これらの部材は四角ナットを使用する上で、必要となる溝や壁形状を形成しやすく、四角ナットを使用しやすい製品です。また、部材を締結するために四角ナットは、ねじやボルトと組み合わせて使用されます。

四角ナットの原理

四角ナットは四角い外形の稜線のうち最低1つが、締結される部品の壁形状に沿うように配置されることによって、締結作業時のボルトとの供回りが抑制されます。四角ナットによって締結される部品が、ナットの回転を止める働きをします。

つまり、四角ナットを使う際には、四角ナットによって締結される部品の表面に、四角ナットと接する壁形状が必要になるということです。

四角ナットの種類

四角ナットは、JIS B1163 で規格化されています。このJISではねじサイズがM3からM24まで、形状は高さ、正四角形の一辺の長さ、対角長さが規定されています。機械的性質として、強度区分は4T,5T,6Tです。

全ての四角ナットを規定しているわけではなく、木材用に使用する四角ナットは対象外となっています。四角ナットで特に厚さが薄いものは、板ナットと呼ばれます。板ナットと四角ナットの違いは厚みですが、用途によって使い分けられるのが特徴です。

例えば、M4サイズのめねじの場合、板ナットの厚み1.8ミリメートルに対して、四角ナットは厚さ3.2ミリメートルと2倍近く差があります。これは四角ナットは六角ナットの厚さを基準としていますが、板ナットは板材にめねじが欲しい部位に対して使うことを目的としているために、四角ナットよりも薄くなっています。

板ナット以外にも四角ナットには多様な形状が存在します。代表的なものは菱型ナットタイプ・長方形ナットなどです。これらはプレス品等の金属品や樹脂成型品に組付けようのスペースを作り出し、小ねじやボルトを用いて締結します。そのほか、特殊ナットと呼ばれる管用・ローレット・異形・特殊四角・小判・偏芯穴・複数穴などが存在します。

四角ナットのその他情報

1. 四角ナットの材質と表面処理

四角ナットの主な材質はスチール、ステンレスなどです。さらに、一般的なナットと同様に表面処理が施され、三価クロメートやユニクロメッキ、クロメートメッキ、ニッケルめっき、クロームメッキ、四三酸化鉄被膜などの処理が行われます。また、表面処理を行わない「生地」も存在します。

2. 四角ナットの製造方法

四角ナットは、主に冷間圧造・冷間鍛造と呼ばれる方法で製造されます。四角ナットを使う上で大切な外形の寸法が安定する方法です。もちろん、大量生産にも適しています。

数量が少ない場合には切削加工が最適です。コストを低減させるためには、JISに定められた規格品を用いたり、規格外の形状であっても使用量を増やし冷間圧造・冷間鍛造で生産したりする方法が効果的です。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/vona2/mech_screw/M3303000000/M3303060000/
https://morisita-fastener.co.jp/products/category.php?c=7
http://takaaki19790625.blog69.fc2.com/blog-entry-23.html
https://www.monotaro.com/s/c-91502/
https://special-nut-collar.com/product_tech_info/insert-nut-2-2/
https://www.akaneohm.com/column/denshoku2/
https://www.nbk1560.com/

ロータリーバー

ロータリーバーとは

ロータリーバーとは、マイクログラインダを使用する場合に使われる先端工具です。

鉄などの切削、面取りやバリ取り、切削面の整形などに使用されます。緩やかな曲線のような加工も可能で汎用性が高いです。小さな工具でありながら、細かい加工が可能であるため、精密機器や電子部品の製造など、細部まで正確な加工が必要な分野で広く使用されています。また、DIYや工作愛好家の間でも手軽に使える工具として使用されます。

ロータリーバーの使用用途

ロータリーバーは、一般的な加工物やアルミニウム、真鍮、マグネシウム、プラスチックなどの非鉄金属、樹脂、ステンレス、ニッケルクロムチタンなどの難切削材の切削に使用されます。

特に、専用の刃を使用することで、ロータリーバーは炭素繊維強化プラスチック (CFRP) のような難切削材の切削が可能です。また、ハンドツールやロボットによる切削加工にも使用されます。

具体的には、自動車部品や航空機部品などの製造プロセスでの切削加工が挙げられます。また、DIYや工作愛好家の間でも、細かい部品の切削や加工が必要な場合に使用され、用途に合わせて刃形状を選択することで、多様な加工が可能です。

ロータリーバーは、精密な切削加工が必要な場面で必要不可欠な工具です。加工物の材質や形状に応じた刃を選択することで、正確かつ美しい仕上がりを実現できます。

ロータリーバーの原理

ロータリーバーは、回転するバーに取り付けられた刃が加工物に接触し、切削力をかけることで材料を削り取ります。

ロータリーバーにはクロスカット、スパイラルカット、アルミカット、エムシーカットなどの種類があり、使用用途に応じて刃型を選択が必要です。

クロスカットは切削抵抗が小さく、機械的振動を最小限に抑えられるため、炭素鋼やステンレスなどの硬い材料の切削が可能です。スパイラルカットは切削量が多いため、切削時間の短縮に役立ち、針状の切り粉が排出されます。アルミカットは加工物の溶着を防ぐ刃形状であり、アルミニウムやマグネシウム合金の切削に適しています。エムシーカットは刃の数が少なく、粗加工が可能です。

また、ロータリーバーには専用のダイヤモンドカットなどの刃があり、炭素繊維強化プラスチックのような難切削材の切削にも使用されます。ハンドツールやロボットによる切削加工にも使用され、さまざまな分野で広く利用されています。切削形状や材料に適した種類を選択することで、より効率的かつ正確な切削加工が可能です。

ロータリーバーの種類

ロータリーバーは、切削形状や材質などによってハイスピードスチールロータリーバーとキャブライドロータリーバーの2種類を使い分ける必要があります。

1. ハイスピードスチールロータリーバー

ハイスピードスチール (HSS) 製のロータリーバーは、金属やプラスチックなどを加工する際に一般的に使用されます。HSSは比較的硬度が高く、温度変化にも強いため、高速回転するロータリーバーの刃先を摩耗させることなく、長時間の使用が可能です。また、HSSロータリーバーはカービングなどの細かい作業にも適しています。

2. キャブライドロータリーバー

キャブライド (硬質合金) 製のロータリーバーは、金属や木材などの堅い素材を加工する際に使用されます。キャブライドは、タングステンやタンタルなどの金属を主成分とする合金であり、非常に高い硬度を持っています。そのため、キャブライドロータリーバーは切れ味が鋭く、堅い素材でもスムーズな切削が可能です。ただし、比較的高価であるため、長期間の使用には向いていません。

参考文献
https://www.muraki-ltd.co.jp/tool/products/tip/rotarybar.html
https://www.fukudaco.co.jp/products/types/tool-connector/end/end03.html
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/486/
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/223000305544/?HissuCode=5122

ストッパシリンダ

ストッパシリンダとは

ストッパシリンダは、搬送ラインなどでストッパ機能を持つシリンダです。

ピストンロッドに横方向の荷重が加わる用途に使える横方向荷重に強い角形状であり、スペースを取らないため、ベルトコンベアなど搬送ラインの自動化・省スペース化を実現します。

低ブレークアウェイ特性・耐久性に優れており、取り付け高さは全長を変えることなく調整可能です。ワークを止めるために必要な距離に応じて上下のストローク量を変更できます。

ストッパシリンダの使用用途

ベルトコンベア・ローラコンベア・チェーンコンベアなど搬送系ラインでストッパ機構として使用されています。

スプリング・モータ・ソレノイドのオン・オフの組み合わせによってワークの上下左右方向への移動・移動検出・パレットの部分的通過が可能です。

エア源のない搬送ラインではコントローラーレスで使用できる電動のものが使用され、抗力値をダイヤルによって調整可能なため、用途によってソフト停止へ変更できます。

ストッパシリンダの原理

トッパシリンダは、シリンダ機構によりワーク停止時の騒音や衝撃がほぼゼロになります。

ショックアブソーバが調節可能なため多種多様に使用でき、単独または複数の移動に対応可能です。押し出し方向の設定・回転により90°ピッチで搬送方向もできます。

ロック機構をつけるとスプリング反力によるパレットの反発を防止でき、キャンセルキャップをつけるとレバーがパレット通過位置の状態に戻り、パレットを部分的に通過させることが可能です。

レバー検出スイッチをつけ、ワークの衝撃を吸収してレバーが直立した状態になるとスイッチをオンに切り替え、パレットが所定の位置にきたことを検出するします。また、ロッドパッキンにより内部へ水分・粉塵が侵入することを防止します。本体は丈夫な構造となっており、長寿命で使用できます。エア方式と電動方式は互換性があります。

参考文献
https://www.smcworld.com/upfiles/pgpdf/SP147X-019J.pdf
https://www.festo.com/cat/en-gb_gb/data/doc_JA/PDF/JA/DFST_JA.PDF
https://www.smcworld.com/products/ja/s.do?ca_id=214
https://www.ckd.co.jp/kiki/jp/product/detail/8/STK