極圧グリースとは
極圧グリースとは、潤滑剤の1種で、金属と金属の摺動部分での焼き付きを防止するために使われるものです。
グリースに必要な耐水性や付着性などのシール性能に加え、高荷重潤滑性能、金属表面保護性能、耐摩擦性能に優れています。高回転ベアリングや高負荷・高速の金属摺動部、高い負荷のかかるギアなどの潤滑、部品の保護を目的としています。
極圧グリースの使用用途
極圧グリースは、基油が受け持つ通常の潤滑能力を超えるような状態が発生した際に、耐えられるために使用されます。例えば、ギア同士のかじり、基油の潤滑許容範囲を超えた衝撃、砂など異物の混入などの極圧発生が挙げられます。このため、以下のような用途で使用されています。
1. 自動車のホイールベアリング
自動車のホイールには、回転する力が強くかかります。極圧グリースは、この部分の摩擦を減らし、スムーズな回転を助ける役割を担っています。
2. 工作機械のギア
工作機械のギアは、高い力がかかる部分であり、通常のグリースでは十分な潤滑ができません。極圧グリースを使用して、ギアの寿命を延ばし、効率的な動作を実現します。
3. 農業機械
農業機械は、土や砂などの異物が入りやすい環境で使用されるため、通常のグリースでは潤滑効果が低下しやすいです。極圧グリースは、そのような厳しい条件下でも潤滑性能を保ちます。
極圧グリースの原理
通常のグリースと違い、極圧グリースには極圧添加剤と呼ばれる特別な成分が含まれています。平常時の潤滑範囲は、基油および増ちょう剤の性能に依存します。しかし、極圧が発生したときには、そこに潤滑剤が介在していなければいけません。
極圧添加剤が含まれていることで、極圧が発生した際にも高い潤滑性能を発揮できます。極圧添加剤は、金属表面に薄い保護膜を作ることで、摩擦を減らす効果を発揮します。この保護膜は、強い圧力がかかると金属表面と化学反応を起こし、さらに強固な膜となります。これが、極圧グリースに高い圧力がかかる部分でも潤滑効果を持続させられる理由です。
極圧とは、点または線で接触した部分にかかる摩擦抵抗のことです。通常の潤滑油膜は荷重が増加するほど薄くなり、金属同士が接触して摩耗・摩擦が増加して焼付きを起こします。極圧添加物を使用すると、焼付きを避け、油膜の厚さ維持が可能になります。
極圧グリースの種類
極圧グリースには、主に以下のような種類があります。グリースの主成分である増ちょう剤によって、特徴が異なります。
1. リチウム系
リチウム系極圧グリースは、一般的な極圧グリースの中で最も多く使われています。高温・低温に対応できる性能と、耐水性に優れています。
2. カルシウム系
カルシウム系極圧グリースは、耐水性に優れているため、水に濡れることが多い環境で使用されます。ただし、高温には弱い特徴があります。
3. アルミニウム系
アルミニウム系極圧グリースは、リチウム系に比べて高温に強いです。しかし、耐水性はリチウム系よりも劣ります。
4. ポリウレア系
ポリウレア系極圧グリースは、高温に非常に強く、長寿命であることが特徴です。電気機器や高速回転機器など、高温や長時間の連続使用が必要な用途で使用されます。ただし、価格が高いことが欠点となっています。
極圧グリースのその他情報
極圧添加剤
高荷重の接触面は必ず高温を伴っており,この高い温度が極圧添加剤を反応させるきっかけになります。極圧添加剤は,常温や比較的低い温度では安定で、融着が起こるような高い温度になる前の少し低い温度で活性になって金属と反応します。
極圧剤は、一般に硫黄、塩素、リンなどを含んでいる物質です。硫化油脂、硫化エステル、サルファイド、塩素化炭化水素などのほか、ナフテン酸鉛や同一分子内に硫黄、リン、塩素の中の2つ以上の元素を含む化合物も使用されます。
参考文献
https://www.kyusha.net/?p=86
https://www.juntsu.co.jp/qa/qa1102.php