圧力制御弁

圧力制御弁とは

圧力制御弁

圧力制御弁(Pressure control valves)とは、作動油などの流体の圧力を制御する弁です。
例えば、ポンプからの吐出圧を圧力制御弁で調整して、各部品や配管の損傷を防ぎます。
このようなことから安全弁ともいわれます。

圧力制御弁は、以下の5つに大別されます。

  1. リリーフ弁(安全弁)
  2. 減圧弁
  3. シーケンス弁、アンロード弁、カウンターバランス弁
  4. ブレーキ弁
  5. バランシング弁

圧力制御弁の主な制御弁として、ハンドル式と電磁式の2タイプがあります。
電磁式を用いれば、外部のコントローラーから制御できるため、制御の幅が広がります。

圧力制御弁の使用用途

圧力制御弁がメインで使われているのは、建設機械業界。
油圧ショベルをはじめ、ブルドーザー、ホイールローダーやスキッドステアローダで、油圧機器や配管の保護を目的に使用されています。
油圧ショベルを例にとると、油圧ポンプ、コントロールバルブや走行モーターに用いられています。
建設機械においては、必要不可欠な存在となっています。

建設機械以外では、航空機や自動車においても使用されており、圧力制御弁は幅広い分野で求めらています・

圧力制御弁の原理

ここでは、リリーフ弁(安全弁)と減圧弁の原理を紹介します。

  1. リリーフ弁(安全弁)
    こちらは、設定圧を超過した場合に圧力を逃がし、機器や配管を安全に保つ機器のことです。
    設定圧は、本機器のハンドルでばねの力を調整して設定されます。流体が設定圧以下の場合は、ばねの押しつけ力の方が勝るため、本機器の入口から流体保管容器への経路は閉じられています。流体が設定圧を上回ると、流体がばねの押しつけ力に勝り、ばねを押し上げます。このようにして、流体保管容器への道ができて、流体がその容器へと流れていきます。
    このようにして、様々な損傷を防ぎます。
  2. 減圧弁
    こちらは、メイン回路の圧力より低い圧力で使用する場合に使う機器です。
    ばねの力を調整して圧力を設定します。一次側の高圧の流体は、設定された圧力に減圧されて、二次側に流れます。一部の流体は、本機器のあるポートより流体保管容器へと流れ、二次側の圧力が設定圧になるよう調整されます。
    このようにして、一次側の高圧の圧力が減圧されます。

参考文献
http://www.ishinotec.com/explain/architecture/%E5%9C%A7%E5%8A%9B%E5%88%B6%E5%BE%A1%E5%BC%81%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%81%A8%E5%86%85%E9%83%A8%E6%A7%8B%E9%80%A0
https://www.hydraulicspneumatics.com/technologies/hydraulic-valves/article/21884995/engineering-essentials-pressurecontrol-valves

デュワー瓶

デュワー瓶とは

デュワー瓶

デュワー瓶とは、1982年にJames Dewarにより実用化された断熱容器のことです。

日本語ではデュアー瓶やジュワー瓶と表記されることもあります。日常でよく耳にする「魔法瓶」や「サーモスの水筒」の先駆けでもあり、構造は類似しています。

デュワー瓶は3つの特徴的な構造により、長1時間の保冷や保温を可能にしています。

  1. 容器を構成する2枚の壁
  2. 2枚の壁の間に設けられる真空層
  3. 真空層に面した壁の反射による熱放射を遮断

デュワー瓶の使用用途

デュワー瓶は、低温や高温いずれの断熱にも優れているため、マイナス200℃程の液体窒素から、300℃近いオイルバスのオイルを入れる容器として利用されます。主に、化学実験や一時的に冷媒の保存、運搬に用いられます。

具体的には、BAM (ドイツ連邦材料試験研究所) 蓄熱貯蔵試験です。保温性を利用して、自己反応性を有する物質を保管する際の危険性を測定します。この試験にも、デュワー瓶を用いるようプロトコルが盛り込まれています。

デュワー瓶はステンレス製であることが多いですが、容器内を観察できるように透明のガラス製のデュワー瓶も近年開発されています。デュワー瓶内での作業がしやすいように口が広くなったタイプや、可能な限り内容物の蒸発を防ぐために口が小さくなったタイプなど種類が豊富です。

デュワー瓶の原理

デュワー瓶には、真空層が設けられており、熱の移動を遮断することで、断熱性能を示します。熱の移動には、「熱移動の3原則」と呼ばれる3つの要素があります。

1. 熱伝導

分子は常に分子運動をしており、この分子運動は高温ほど激しく運動します。高温で激しく振動する分子運動は次々に隣の分子へと伝わり、平衡を保とうとすることを熱伝導と言います。

2. 対流

気体や液体はあたためられることで分子運動が激しくなり、密度が低くなります。密度の平衡を保とうとして、気体や液体が循環し動くことを対流と言います。

3. 熱放射

熱放射は分子運動を介してではなく、電磁波が伝わることで熱が移動します。

真空では分子が存在しない (厳密には微量の分子は存在しますが無視できる程度) ため、熱伝導と対流がデュワー瓶の2つの壁に挟まれた真空層によって妨げられています。しかし、熱放射は真空であっても生じます。

熱放射を容器の外に伝えないように、真空を挟む2枚の壁の内側は鏡面仕上げになっており、鏡面で電磁波が反射することで、容器内の温度が保たれます。

デュワー瓶のその他情報

デュワー瓶を使用する際の注意点

デュワー瓶などの液体窒素を保冷する容器での事故は過去に多くあるため、十分注意して使用する必要があります。

  • デュワー瓶に蓋をしない
    液体窒素などを使用する際、デュワー瓶に蓋をしてしまうと、空気中の水がその蓋の隙間で凍結し、大爆発を起こす危険があります。
  • 革手袋を使用する
    デュワー瓶に液体窒素を入れたり、出したりする作業中は、革手袋の使用が推奨されています。他の手袋だと、液体窒素が手にかかった場合に手袋と手がくっついて取れなくなる恐れがあります。
  • 喚起を徹底する
    液体窒素が入っているデュワー瓶を誤って転倒させ、液体窒素を床にまいてしまった場合、液体窒素が急激に気化し、室内の空気の大半を占めて、窒息死する危険性があります。デュワー瓶を転倒させてしまった場合は、直ちに部屋から退出または、換気を徹底することが重要です。また、中が空でも転倒させた際にデュワー瓶の内側が損傷し、亀裂が起きている場合もあり、メンテナンスを受ける必要があります。

参考文献
https://www.jsrae.or.jp/annai/yougo/138.html
http://mahobin.org/episode.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsj1966/28/8/28_8_427/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/35/3/35_196/_pdf/-char/ja

ハニカムコア

ハニカムコアとは

ハニカムコア

ハニカムコアとは、六角形柱を隙間なく並べた構造体のことです。

ハニカムは蜂の巣を意味し、蜂の巣のような穴の開いた形状をしています。構造上90%以上が空気のため、軽い素材です。また、強度や衝撃吸収性もあり、軽さと強度が求められる用途に用いられています。

多くの空隙をもつことから、流れを一定方向に整える整流作用もあります。整流作用を利用し、ショーケースや風洞の整流板にも有用です。

ハニカムコアの使用用途

ハニカムコアは、軽量性と高い剛性が求められる分野で使用されており、理想的な材料として活躍しています。

1. 航空宇宙産業・自動車産業

飛行機や宇宙船の構造材料、自動車のボディパーツや自転車のフレームなどに使用されています。ハニカムコアは軽量でありながら剛性が高く、航空機の燃費向上や高い安全性を実現するのに役立ちます。

2. 建築業界

建物の外装パネル、内部の仕切り壁や天井材に使用されることがあります。軽量なため、建物全体の重量を軽減し、地震などの自然災害に対する耐久性を向上させることができます。

3. スポーツ用品

スキー板やスノーボードなどの製品に使用されることがあります。

ハニカムコアの性質

ハニカムコアは、構造から非常に高い剛性を持っています。剛性とは、物体が変形することなく外力に対して抵抗する能力のことです。ハニカムコアはその剛性から、衝撃を受けた際にも変形しにくく、安定した性能を発揮します。

内部のほとんどが空気なので、断熱性も高く、断熱用途にも有用です。特に素材自体の熱伝導性の低いペーパーハニカムは、優れた断熱性を示します。

ハニカムコアの種類

ハニカムコアには、アルミハニカム、アラミドハニカム、ペーパーハニカムなどがあります。

1. アルミハニカムコア

金属性のハニカムコアには様々なものがありますが、アルミは金属の中でも軽く、また圧縮強度にも優れています。アルミ箔をハニカム構造に成形したもので、軽さと強度を生かして、自動車、電車、航空機など、様々な分野で使われています。

2. アラミドハニカムコア

プラスチック製のハニカムコアには様々なものがありますが、その中でも強度、耐熱性に優れるアラミドを原料にしています。アラミドは引張強度、耐衝撃性、軽量性、柔軟性が高いです。その他、耐火性、化学薬品や熱に対する安定性も備えています。

アルミハニカムにとって替わり、航空機での使用が増えています。ただし、樹脂がもつ吸湿性による寸法変化、価格が高いなどの短所もあります。

3. ペーパーハニカムコア

紙をハニカム構造に成形したものです。紙はクラフト紙が用いられます。アルミやアラミドよりも軽量性に優れています。また、リサイクルが可能なため、環境にも優しい素材です。建材、梱包用品、展示スペースの仕切りなどで使われています。

紙であるため、耐水性や熱への安定性に弱点があります。現在では弱点を補う際に、表面に多孔質シリカの被膜をつける方法があります。

ハニカムコアのその他情報

ハニカムコアの製造方法

ハニカム構造は、シートを接着剤で張り付けて作製されます。作製方法には展張法とコルゲート法がありますが、展張法が一般的です。ここでは展張法の原理を説明します。

1. 材料切り出し、前処理
最初に原料ロールから、必要な分だけ切り出し、シート状にします。切り出したシートは前処理で脱脂を行います。金属材料の場合、エッチングを行います。

2. 積層
前処理が終わったら、シートに接着剤を塗布します。接着剤は全体に塗布するのではなく、一定間隔で線状に塗る部分と塗らない部分を作ります。接着剤を塗布したシートを何層にも重ねていきます。

3. 展張
重ねたシートを展張する (折りたたんだ状態から広げる) ことで、接着剤が塗られていない部分が持ち上がり、ハニカムコアが形成されます。用途により、ハニカムコアの両面に表面材を張り付けて、サンドイッチパネル構造にする場合があります。この場合は、張り付ける面の表面処理を行います。

参考文献
https://www.snfcore.co.jp/merit/
https://nikkal.net/archives/2009/03/a.html
https://kasyu-kogyo.com/2019/04/27/honeycomb/
https://dawnpendleton.com/
http://hexajapan.co.jp/product2.html
https://www.d-sinei.com/products/paper-honycomb/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/materia1962/24/6/24_6_471/_pdf

プラズマエッチング装置

プラズマエッチング装置とは

プラズマエッチング装置とは、半導体のLSI製造などの微細加工分野において、プラズマ化したガスを用いたエッチング装置です。

LSI (大規模集積回路) やその原版となるフォトマスク、スマートフォンのディスプレイなどは、基板上に非常に微細なパターンの形成を経て出来上がります。この工程で、現像工程に続くのがエッチング工程です。エッチングでは、現像されたレジストパターンに沿ってその下にあるシリコンやシリコンの酸化膜、金属膜等を削っていきます。

LSIの高集積化やディスプレイの高精細化が進むにつれて、パターンの微細化が進行しました。プラズマエッチング装置は、微細なパターンの形成に必要不可欠な装置です。

プラズマエッチング装置の使用用途

プラズマエッチング装置は、半導体デバイスの中でもメモリーやCPUなどの微細化と高集積化が進んだデバイス、フラットパネルディスプレイの中でもスマートフォンのような高詳細化が進んだディスプレイの製造工程で使用されます。これらのデバイスの製造においては、露光、現像、エッチング、レジスト剥離の工程を何回も繰り返します。フォトマスク上のパターンを光 (レーザー光) を使ってレジスト上に転写するのが露光工程です。

それに続く現像工程では、レジストの露光された部分 (あるいは露光されていない部分) を薬液によって除去します。その後に、レジストが除去された部分に露出したシリコンや金属膜を削るのがエッチング工程です。最後に、剥離工程においてレジストを除去することで、目的のパターンが基板上に形成されます。

エッチングには、薬液を使ってシリコンや金属膜を溶解するウエットエッチングと、プラズマ化した気体中のイオン粒子を使って削り取るドライエッチングがあります。ウエットエッチングでは、薬液がレジストの下部まで回り込み、エッチングが垂直方向以外にも進行するのが欠点です。

これに対してドライエッチングでは、エッチングがレジストパターンに沿って綺麗に垂直方向に進みます。プラズマ化したガスを使用することから、その装置をプラズマエッチング装置と言います。

プラズマエッチング装置の原理

プラズマエッチング装置は、真空チャンバーの中に、現像工程が終了したウエハーなどの被加工材料を置きます (以降、加工材料をウエハーで代表します) 。真空チャンバー内では、ウエハーを挟むように電極板が配置されています。すなわち、ウエハーを水平に置いた場合には、その上部と下部にあるのが電極板です。

チャンバーの中を真空にした後に、チャンバー内に加工用のガスを注入します。シリコンやシリコン酸化膜のエッチングには、フルオロカーボン系ガス(CF4, CHF3, C4F8など)やSF6ガスが使われます。金属膜のエッチングに使われるガスは、ハロゲン系ガス (Cl2, BCl3, HBrなど) です。有機系材料のエッチングには、酸素ガスや水素ガスが使われます。

チャンバーに高周波の電界をかけたり、磁界をかけたりすると、エッチングガスは電子とイオンが分離したプラズマ状態となります。そこに電極間に電圧をかけると電界が生じ、イオンがウエハーに叩きつけられる仕組みです。ウエハーにイオンが叩きつけられると、上部をレジストで守られていない、下地が露出した部分では、その部分の原子が弾き飛ばされて徐々に削られていきます。

プラズマエッチング装置の種類

プラズマエッチング装置はプラズマの発生方法によって、容量結合プラズマ (英: CCP, Capacitively Coupled Plasma) 方式、誘導結合プラズマ (英: ICP, Inductively Coupled Plasma) 方式、マイクロ波ECRプラズマ (英: ECR, Electron Cyclotron Resonance) 方式などがあります。容量結合プラズマ方式は、上下に配置された2枚の円盤状の電極板の間で、高周波の電界をかけてプラズマを発生させると同時に、下側の電極板の上に置いた加工物に電解で加速したイオンをぶつけることでエッチングが進行します。

他の2種類はプラズマの生成方法は複雑になりますが、加速したイオンでエッチングを行う原理は3種類とも同じです。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/77/2/77_2_162/_pdf
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2007_04/jspf2007_04-319.pdf
https://www.semijapanwfd.org/manufacturing_process.html

リニアエンコーダ

リニアエンコーダとは

リニアエンコーダとは、移動する装置の直線方向の位置をセンサで読み取る装置です。

移動量に応じて移動距離を出力するインクリメンタル型のものと、絶対位置を出力するアブソリュート型のものがあります。アブソリュート型なら、装置がどのような状態で電源を切られても、電源再投入時に現在位置を知ることができます。

デジタル表記で確実に測定できるほか、パソコンなどと接続し、測定結果を簡単・確実記録に残すことが可能です。

リニアエンコーダの使用用途

リニアエンコーダは、モーターや油圧、空圧を利用して位置決めを行う必要のある産業機器の中でも、複数の高精度な位置決めが必要とされる装置に利用されます。

代表的な用途は、計測機械、コンパレータ、測長システム用精密機器、半導体製造用検査装置および計測器などです。

リニアエンコーダの原理

リニアエンコーダは、位置検出のための目盛が組み込まれた直線状のスケールと、その目盛を読み込むセンサの2つの部品から構成されます。

なお、位置検出方法には、光学式と磁気式があります。

1. 光学式のリニアエンコーダ

光学式のリニアエンコーダは、スケールの目盛位置にスリットもしくは反射板があり、スリットに光が透過したかどうか、反射板の場合は光が反射してきたかどうかで位置を判断します。

高精度かつ高分解能の用途に利用されますが、水・油・ほこりなどが発生する環境で使用するためにはカバーが必要です。カバーをしつつ、センサーが動く必要があるので、構造が複雑で大型化する傾向があります。

2. 磁気式のリニアエンコーダ

磁気式のリニアエンコーダは、スケールの目盛位置に磁力を持たせ、磁力の変化を感知して位置を判断します。磁気を感知する構造のため、水・油・ほこりに強く、構造が簡単で小型なものが多いのが特徴です。

アブソリュート型のものは特定パターンのスリット、反射板、磁力をスケール側に用意し、パターンの組み合わせで絶対位置を把握します。しかし、距離がなくなるとそのパターンが不足してしまうため、補助的に位置を把握する機構と併用して対応する場合もあります。

インクリメンタル型のものは、一定の移動距離を移動するたびにパルス信号を発生します。連続で動作したときに位置ずれが発生することもあるため、定期的に原点復帰動作が必要です。

リニアエンコーダのその他情報

1. 位置検出の高精度化

半導体の急速な進歩に伴い、ムーアの法則に応じて高集積化が進み、半導体産業が発展しています。この半導体産業の進歩がさまざまな電子機器へ波及しており、各種製品の電子制御化や高精度化が進んでいる状況です。

高集積化、高密度化が進むにつれ、半導体をつくる製造装置や機械部品の精度を上げる必要があり、位置検出の高精度化が重要になります。半導体製造装置や工作機械などで精密に位置を制御するためには、物体を移動させるためのアクチュエータとそのアクチュエータの精密な位置を検出する手段が必要です。

そのため、直線的な精密位置検出を行えるリニアエンコーダが採用されます。可動部と固定部にそれぞれスケールと検出器を設置し、距離を精密に検出します。

2. リニアエンコーダの分解能と取り付け

リニアエンコーダは、高精度に位置の測定をできるため、工作機械や半導体製造の精密機器に多く用いられています。ミクロンオーダーやミクロン以下の分解能を持つものも一般的です。

リニアエンコーダの精度を保つためには、設計する際の取り付け方法や精度が重要です。リニアエンコーダの性能を発揮するための取り付け精度については、各製品やメーカーの取り扱い説明書を確認します。

リニアエンコーダの精度はミクロンオーダーなので、センサとスケールの距離、ヨー、ロール、ピッチそれぞれに対し1mm以下の取り付け精度が求められます。また、必要に応じて、取り付け用の精密治具の設計・製作や、取り付ける際に人の手による調整などを行います。

参考文献
http://www.encoder-world.com/encoders.html
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/2486/
http://kikaikumitate.com/post-11935/
https://core.ac.uk/download/pdf/145776997.pdf

静電靴

静電靴とは

静電靴

人は歩行などの動作を行う際に、衣服などが摩擦することから起こる静電誘導によって帯電します。

この現象はなんらかの措置を取らなければ、人は常に可燃性物質の着火や電撃などを誘発する危険な帯電状態にあることを意味します。これを回避するためには、発生した静電気が人体に蓄積しないように靴底から床へ逃がす静電靴を装着することが簡単かつ効果的です。

静電靴を取り扱う上での注意点として、靴底が磨り減ったり塗れていたりすると本来の性能維持が困難ですので、使用前の目視確認が安全の第一歩となります。

静電靴の使用用途

静電靴は、日本では大きく分けて3通りの使い方があります。

1つ目は静電気によって爆発・火災・電撃のような事故・災害が起きる可能性のある場所での使用になります。
例:石油、化学、塗装、印刷などの可燃性物質を取り扱う各種工場。

2つ目は静電気に起因する電子素子の破損、汚れなどのような生産障害が発生する可能性のある場所での使用です。
例:電子機器製造工場(通常はクリーンルーム)。

3つ目は高圧電線の点検など、高電圧下での使用です。
高圧電線の点検は冬季でも欠かさず行う必要があるため、安全靴は0℃環境下での使用も考慮されて設計されています。

静電靴の原理

人体の帯電を安全なレベルに保持するには、発生した静電気を数100ms以内に床へ逃がし、人体の帯電電位を数10V以下に抑制することが必要とされています。

この条件を満たすためには靴の電気抵抗値を1.0×10^9Ω以下にしておくことと定めた上で、静電靴には電気抵抗値に基づいた3種類の規格が存在します。(JIS T8103規格)

一般静電靴:1.0×10^5≦R≦1.0×10^8 (1.0×10^5≦R≦1.0×10^9)
特種静電靴:1.0×10^5≦R≦1.0×10^7 (1.0×10^5≦R≦1.0×10^8)
  導電靴:R<1.0×10^5 (R<1.0×10^5)
*測定温度23℃±2℃、()内は0℃環境下での基準値

さらに、静電気の発生は湿度も重要な要因となりますので、湿度12±2%、25±3%,50±5%の3段階で、より数値の低い乾燥した状態で使用基準を満たした製品ほど安定性の高い静電靴とされています。

数値を持ち出すと難しいですが、簡単に記載すれば「人体に生じた静電気を靴のインソール⇒中底⇒本底の導電路⇒靴底⇒地面と瞬時に逃がす」非常にコストパフォーマンスの良い安全靴と表現できます。

参考文献
https://www.midori-esd.jp/performance/
https://www.simon.co.jp/knowledge_shoes/antistatic

アスピレータ

アスピレータとは

水流式アスピレータ (循環型) のイメージ

図1. 水流式アスピレータのイメージ

アスピレータとは、主に流体を利用して減圧状態を作り出し、吸引を行うための器具です。

流体のベンチュリ効果を利用しており、最も手軽な部類の製品では、水道の水流を利用して安価で手軽に減圧状態を作り出しています。一方、水道の水圧では減圧が安定しないこともあります。この点を解消する目的で開発されているのが、循環式などの製品です。

図2. 乾式アスピレータのイメージ

アスピレータの使用用途

化学・生物学の研究開発分野などにおけるアスピレータの主な用途は、以下のとおりです。

また、医療用としては、以下のような用途で使用されています。

  • 鼻水の吸引
  • 外科手術での体液の排出
  • 美容整形外科での脂肪吸引
  • 歯科処置時の唾液吸引
  • 子宮内容物の吸引・除去

更に特殊な用途として、医療用アスピレータを用いてトラフグの耳石を収集する研究などが挙げられます。

アスピレータの原理

ベンチュリ効果の模式図

図3. ベンチュリ効果の模式図

流路の中に他よりも径の細い場所を作ると、その場所を水が通過する時に、太い場所よりも圧力が低くなります。これをベンチュリ効果といいます。流体を用いて減圧するアスピレータは、この原理を使用しています。

1. 水流式アスピレータ

水道の水流を利用する最も簡単なアスピレーターは、T字管構造をしています。材質には、金属・ガラス・プラスチックなど、様々なものがあります。T字管の水平線にあたる管の内部は一部細くなっており、分岐して垂直線にあたる管が付き、垂直方向へは水が流れ込まないような構造です。

T字の水平線にあたる管の一方を水道の蛇口へ、もう一方を排水口へ接続し、T字の垂直線にあたる管が吸引口となります。水平方向に水を流すと、管内の細くなった部分で流速が増すため、ベンチュリ効果によって圧力が低下します。

この減圧になった水流に周囲の空気が流れ込み、結果として吸引口が減圧となるという仕組みです。

2. 循環式・乾式

前述の水道を利用したアスピレータでは、水温や設置状態によって水圧に差があります。このため、減圧状態が一定しない、もしくは真空度が足りない等のデメリットが考えられます。

この点を改善した製品が循環式です。循環式では、ポンプで槽内の水を循環することによる水流で減圧するため、減圧が一定となり、水道につなぐタイプよりも長時間の使用に向いています。また、槽内に氷または冷却パイプなどを用いて冷却を行うことも可能です。冷却によって、真空度をより維持しやすくなります。

乾式のものでは、ダイアフラムドライポンプなどを内蔵して吸引が行われます。特に、生化学実験などにおける、細胞培養の培地交換、上澄み除去、DNA・RNA濾液除去、廃液処理などの吸引作業に用いられる製品に多いです。

アスピレータの種類

アスピレータの種類は、主に、水道に直接つなぐ水流式・循環型水流式・乾式 (ダイヤフラムポンプ) など、に分けられます。また、用途別では、化学用途・生物学用途・医療用などにわけられます。特に化学用途の場合は、取り扱う物質が有害であることが多く、排水汚染をしないように注意が必要です。

状況に応じて、コールドトラップやフィルターを使用することが求められます。生物学用途・医療用などのアスピレータは、乾式のポンプ型であることが多く、また卓上で取り扱いやすい小型を選択するのが一般的です。

アスピレータのその他情報

排水汚染

アスピレーターでは、吸引された気体は水流とともに排出されてしまいます。そのため、沸点の低い有機溶媒の吸引ろ過に使用する場合には、排水に有機溶媒蒸気が含まれてしまいます。

排水汚染の防止には、コールドトラップを取り付けたり、水を循環して利用する装置を使用したりすることが必要です。

参考文献
https://doi.org/10.14894/faruawpsj.6.6_439
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3020060270

風速センサー

風速センサーとは風速センサー

風速センサー (風速計) とは、空気などの気体の流れる速さを測定するセンサです。

センサの方式や種類も多く、使用する場所、目的によって適切なセンサを選定する必要があります。配管内部の気体の流れる速さを測定する際にも使用できますが、配管のように流れる向きが一定の閉じた空間の風速を測定する流量計が用いられ、そこから計算で換算される場合が多いです。

配管を使用した流体の測定は流速よりも流量が重視されることが多いことが、理由として挙げられます。また圧力を測定することで、風速を算出する場合も多くあります。

風速センサーの使用用途

風速センサーは工業用、スポーツ競技、気象観測など様々な用途で使用されています。具体的な使用用途は、以下のとおりです。

1. 屋内

  • 空調設備のメンテナンスや検査
  • 分煙効果の確認
  • 換気扇の風速測定
  • 空調設備の排気測定
  • 室内の対流測定
  • クリーンルームの空気環境調査
  • 製造現場での室内環境調査

2. 屋外

  • 屋外や高所などの安全管理・風速管理
  • クレーンや屋外現場に固定し測定
  • 気象観測
  • ドローン飛行条件の確認

風速センサーの原理

図1. 風速センサーの原理

風速センサーはいくつかの種類があり、それぞれのセンサーで風速を測定する原理が異なります。

1. 風杯風速センサ

カップのような形状をした風杯が風の強さによって、表側と裏側でうける風圧による力が異なることを利用して回転します。この回転数を測定することで、風速を測定するタイプです。共に回転するという動作を伴うため、風速の変化に対しての応答が遅く、また微風速度域の測定には不向きです。

2. 超音波風速センサ

屋外用途として用いられます。超複数の方向に設置された超音波送受信器であるトランスデューサーが風が吹くことで、ドップラー効果により送受信のタイミングが変化することを利用し、風速と風向きを同時に測定が可能となっています。可動部がないため耐久性にも優れています。

3. 風向風速計

風杯風速センサと同様に、プロペラの回転数から風速を測定すると同時に垂直尾翼が風見鶏になっており、風向きにあわせて自動的に風向きにあわせて全体が回転します。この垂直尾翼の向きから風向も測定できるタイプです。

図2. 風速センサーの種類

4. 熱線式風速計

室内用途で多いタイプです。センサー先端に熱によって抵抗値が変化する抵抗体が設置されており、風を受けるとセンサが冷却されて熱線の温度が下がります。流れが速いほど冷却は早いため、この流速と冷却熱量の関係を利用することで抵抗値風速を測定します。

この関係式は、KINGの関係式と呼ばれています。屋外であると太陽の熱などで温度が変化してしまうため正確な測定ができません。構造が簡単なため、コンパクトな測定器です。また、風温や湿度などほかの特性も同時に測定することができます。

5. ピトー管式風速センサ

産業用途でよく使用されています。ピトー管式風速センサは、風の流れに対して正面と側面に小さな穴を設け、その圧力差を測定してベルヌーイの定理から風速を測定するタイプです。空気の流れに対して垂直に向けていないと正確な流速は得られませんが、原理が単純なため安価なものが多くあります。

6. ベーン式風速センサ

ベーンホイール風速センサは、流体により回転するベーン (羽根車) の回転数を計測して速度を演算します。回転数は速度に対して比例するという原理に基づきます。回転数は流体の密度、圧力および温度からの影響はほとんど受けません。

ベーンの回転数は、近接スイッチやフォトカプラによりカウントされます。熱線式に比べて、熱の影響を受けないため屋外でも使用可能ですが微風領域の精度が低くなり、応答速度も遅いため風速が小刻みに変化する場合には適しません。

風速センサーの選び方

図3. 風速センサーの選定

風速センサーを選ぶ際は、まず屋外で使用するか、屋内で使用するか決めます。用途によって選ぶべき風速計が大きく異なるためです。

また、風速センサーを固定して使うか、持ち運びしながら使うかによっても適切な風速計は変わります。この2つの観点を軸に選定した場合は、図3のようになります。例外ももちろんあるので、あくまでも参考程度にしてください。

用途によって風速計の種類が決まったら、最後に風速センサのスペックを決めていきます。例えば、熱線風速計ではプローブによって測定風速範囲や使用温度、測定精度、応答速度などが異なります。

参考文献
http://www.kanomax.co.jp/technical/detail_0038.html
https://www.transtech.co.jp/product/tsi_anemometer_appnote_1

ドラフトチャンバ

ドラフトチャンバとは

ドラフトチャンバ

ドラフトチャンバとは、化学実験や生物実験などにおいて人体に影響を及ぼす可能性のある有害物質を取り扱う際に用いる、局所排気装置の1種です。

局所排気装置は大きく分けると、有害物質を覆うような形の囲い式と、開放状態で有害物質の側に吸い込み口(フード)が置かれた外付け式の2種類があります。ドラフトチャンバは囲い式の局所排気装置に分類されます。

囲い式の中でもカバー型、グローブボックス型、ドラフトチャンバ型、建築ブース型の4種に分類されます。

ドラフトチャンバ型は作業台が広く、前面に大きく開く上下(または左右)スライド扉からの操作性が良いのが特徴的です。

ドラフトチャンバの使用用途

事業者は下記3つの法律または規則に基づいて、労働者の健康と安全を守るためにドラフトチャンバ(または適切な局所排気装置)を取り付ける義務が生じます。

  1. 労働安全衛生法第二十二条(要約)
    ガスや排気から労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない
  2. 特定化学物質障害予防規則 第二章(要約)
    第1類および第2類特定化学物質を取り扱う事業場では局所排気装置を設置しなければならない
  3. 有機溶剤中毒予防規則 第五条 (要約)
    第1種および第2種有機溶剤を取り扱う作業場所には局所排気装置を設置しなければならない

ドラフトチャンバ内に有害物質を置き、作業者は前面のスライド扉を少し開け、手のみ中に入れて作業します。

この時、決してドラフトチャンバ内に頭を入れてはいけません。正しい使い方をすることで、気化・飛散した有害物質の吸い込みだけでなく、万が一爆発が生じた場合に作業者の安全を守ることができます。

なお、ドラフトチャンバを含む局所排気装置を設置・移設・変更する際には、工事開始の30日以上前までに所轄の労働基準監督署に届出を行う必要があります。

ドラフトチャンバの原理

ドラフトチャンバの原理

図1. ドラフトチャンバの原理

ドラフトチャンバは単に換気を行うだけではありません。排気ダクトを通った空気はスクラバーを通ることで有害物資が除去され、屋外へ排気されます。

従来の定風量方式ドラフトチャンバでは、扉の開閉に関わらず定量の空気を排気します。そのため、適切な給気を行わなければ排気と給気のバランスが崩れ、ドラフトチャンバが稼働している部屋の陰圧を保てなくなります。

また、定風量方式では空調された空気が多量に外に排気されることから、省エネの観点から問題視されてきました。

これらの欠点を補うものが、変流量(VAV: Variable Air Volume)方式です。

変流量方式では、扉の開閉度に応じて必要な排気風量を自動的に算出して排気するため、空調された空気を無駄に排気することを抑えることができます。

なお、ドラフトチャンバの扉の前面の風速については、有機溶剤中毒予防規則および特定化学物質障害予防規則によってて定められています。

有機溶剤中毒予防規則では制限風速が0.4m/s以上、特定化学物質障害予防規則では0.5m/s以上の排気をしなければなりません。

ドラフトチャンバのその他情報

1. スクラバーの役割

ドラフト内の空気には揮発した溶媒や試薬、微細な粒子などが混入しているため、そのまま待機中へ排出することはできません。そこで、排ガス中に含まれる有害な物質をトラップするため、スクラバーという設備を通します。スクラバーはトラップの方法によって、乾式と湿式に分類されます。

  • 乾式スクラバー
    排ガス経路に活性炭フィルターや不織布フィルターが設置されており、粉塵や揮発した有機溶媒を捕集します。フィルターの種類を変えることで、様々なガスに対応できます。
  • 湿式スクラバー
    シャワーノズルからアルカリ性の洗浄水を噴射し、水溶性ガスを溶解・中和します。酸性の蒸気を中和できる点は乾式にないメリットですが、非水溶性蒸気を捕集できないのがデメリットです。

なおドラフトの定期的な自主点検では、スクラバーの詰まりや破損の有無も確認が必要です。点検の際は、フィルターや洗浄水に有害物質が含まれていることを前提に、保護具を着用して作業を行います。

2. 簡易ドラフトチャンバー

卓上に置いて使用できる簡易ドラフトチャンバーも存在します。透明なボックス形の本体に送風装置と排気ダクトホースがついており、機種によっては排ガス処理のためのフィルターも備わっています。使用時は水平な台の上に置き、排気ダクトホースを局所排気設備につないで送風します。

ドラフトチャンバーを導入できない場合の代替品として使えますが、あくまで簡易的なものであるため、以下の点に注意が必要です。

  • 作業スペースが狭いため、作業中に試薬瓶やビーカーに手が当たって倒し、内容物が飛散する恐れがあります。必要最小限の試薬のみをボックス内に入れる配慮が必要です
  • 排気ダクトホース内にガスや蒸気が滞留し、片付ける際に吹き出して吸引する恐れがあります。使用後もしばらく局所排気を回し続け、ホース内の空気を十分に置換する必要があります。
  • 排気フィルターも簡易的なものであるため、多量のガスが発生する場合は処理しきれない可能性があります。排気はスクラバーを通してから処理するか、少量の試薬のみ扱うよう制限を設けます。

3. ドラフトチャンバの自主点検義務

ドラフトチャンバを設置する事業者は、1年以内ごとに1回の定期自主点検を行わなければなりません。これは特定化学物質等障害予防規則第三十条に記載されており、義務付けられています。

点検内容としては、

  • フード、ダクト及びファンの摩耗、腐食、くぼみその他損傷器具の有無及びその程度
  • ダクト及び排風機におけるじんあいのたい積状態
  • ダクトの接続部における緩みの有無
  • 電動機とファンとを連結するベルトの作動状態
  • 吸気及び排気の能力
  • 上記以外に、性能保持するため必要な事項

が挙げられています。事業主は上記を満足するための自主点検を行い、その結果を検査表に記載する必要があります。また、この検査表は3年間保存することが義務付けられていますので、ドラフトチャンバを導入する際には留意してください。(同法令三十五条に規定されています。)

異常が生じた場合は、メーカーに相談のうえ対策方針を確定させる必要があります。また、修繕が必要な場合はその結果を同じく保存しておく必要があります。

4. ドラフトチャンバの点検に用いる風量計

点検項目の中に排気能力確認というものがあります。ドラフトチャンバの排気が正しく行われているかを確認するためのものです。
法令によれば、

  • 有機溶剤中毒予防規則の適用範囲では、最低0.4 m/s以上
  • 特定化学物質等障害予防規則にてガス状の排気を行う場合は、0.5m/s以上
  • 同法令にて粒子状の排気を行う場合は、1.0m/s以上
    を満足している必要があります。

これらの排気能力を点検するために風量計(風速計)を用います。

風速計には、熱線式風速計やベーン式風速計などの種類がありますが、規定はありませんのでいずれかを任意で選択可能です。
ただし問題となるのが、風速計が正しく値を測定しているのかどうかというものです。点検に用いる風速計が全く機能していなければ点検結果に虚偽の内容を含むことになりますので、
風速計そのものの校正を忘れないように留意してください。

参考文献
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-1/hor1-1-1-4-0.htm
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-29-2-0.htm
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-21-2-0.htm
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/66/12/66_568/_pdf&ved=2ahUKEwjJtOzjoY_tAhWXAYgKHZRMA4AQFjACegQIAhAB&usg=AOvVaw1IM8TcIt5jrH63Pegu3VxR
http://ehs.k.u-tokyo.ac.jp/_src/259/fh_lecture_handout200828091129.pdf
https://axel.as-1.co.jp/asone/s/C0070400/
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-29-5-0.htm
https://www.testo.com/ja-JP/products/flow-meter

遊星減速機

遊星減速機とは遊星減速機

遊星減速機 (英: planetary speed reducer) とは、遊星歯車を使用した減速機のことです。

中心の太陽歯車 (サンギア) と、その周りに複数の遊星歯車 (プラネタリギア) 、そのさらに外側に内歯車 (インターナルギア) 及び遊星歯車キャリアによって構成されています。入力軸と出力軸が同一軸上に配置したり、複数の遊星歯車を設けたりできるため、コンパクトな設計が可能です。

遊星減速機の使用用途

遊星減速機は、大きな動力を使用した産業機器などで利用されます。入力と出力が同軸上でかつコンパクトなため、装置自身もコンパクトにできることが大きな利点です。

自動車では、トルクコンバータ式のオートマチック車の変速機や、4輪駆動車のセンターデフに利用されます。また、自転車の内装型変速機は、遊星減速機です。シールド掘削機やガントリークレーン等多くの産業機械の駆動に、遊星減速機が使われます。

そのほか、通常の使用方法と異なりますが、トヨタ車のプリウスにも使用されています。エンジン駆動力を遊星歯車キャリアに、発電機を太陽歯車に接続し、内歯車を出力として構成することで、エンジンの出力を駆動と発電に振り分ける機構に利用しています。

遊星減速機の原理

遊星歯車機構を減速機として使う場合は、内歯車を固定し、太陽歯車が回転すると、遊星歯車が太陽歯車の周りを自転しながら公転運動を行います。この公転運動を出力として取り出すことで、減速機としての使用が可能です。

遊星歯車の軸がある遊星歯車キャリアが、遊星歯車の移動に合わせて入力軸と同軸の円運動行います。遊星歯車は太陽歯車の周りに複数個設置することができるため、入力に対して力を分散することができ、コンパクトで大容量の動力を伝達することが可能です。

遊星減速機の種類

遊星減速機には3種類の歯車を組み合わせた遊星歯車減速機が知られており、自動車のトランスミッションや、ディファレンシャルギアなどに古くから使われています。それ以外に同様の機能をもちながら、構成要素が違う減速機システムがいくつか存在します。

歯車の代わりにローラーを用いたものや、トロコイド系曲線歯車を使ったもの、ローラーとフレキシブルに外径を連携させる遊星機構を持ったものなどが製品化されています。それぞれに違った特徴があり、使用される条件により選定が必要です。

遊星減速機のその他情報

1. 遊星減速機の長所・短所

遊星減速機は、平歯車を組み合わせた一般的な減速機構に比べて、以下の長所と短所があります。

長所

  • 減速比が大きい
    入力軸と出力軸が一直線に配置されているので、装置の機構設計がしやすいです。同じ減速比であれば、減速機のサイズをコンパクトにすることが可能で、省スペースを実現できます。
  • トルク容量が大きい
    複数の遊星歯車を使うことで、トルク容量を大きくすることができます。
  • 増速機にも利用できる
    遊星減速機は、入力軸と出力軸とを入れ替えれば、増速機への利用が可能です。
  • 低騒音

ただし、下記のような短所も存在するため、用途や目的などを考慮した上で選定することが大切です。

短所

  • 設計・組み立てに技術が求められる
    機構が複雑で精度が要求されるため、設計、組立に技術が必要です。
  • 高価で重量が重くなる
    部品点数が多いため、また、重量が重くなります。
  • メンテナンスが必要

2. 遊星減速機の設計

遊星歯車機構は、入力軸と出力軸を同一軸上に配置可能で、2個以上の遊星歯車で負荷を分担して、同じトルク容量でも装置をコンパクトにできる特徴があります。遊星減速機の設計は、機構の構造が複雑で、高い技術力が必要です。

内歯車をもっとも外側に持つ機構のため、減速比によって機構の外径に制限がかかり、太陽歯車と遊星歯車が干渉を起こさないように考慮するなど、難点が数多くあります。

3. 遊星減速機の減速比

太陽歯車の歯数と遊星歯車の歯数と和に対して、太陽歯車の歯数の比によって、遊星減速機の減速比が決定されます。太陽歯車と遊星歯車のギア比が1の時に、減速比が4となり、構造的にプラネタリギアを4個配置する形となります。

一般的には3~5の減速比で用いられることが多く、それ以上の減速比を確保することも可能です。しかし、減速比を大きくとると太陽歯車が小さく、遊星歯車が大きくなるため、遊星歯車の配置が3個以下となり、動力伝達的には不利になります。

また、公転運動を行うため、遊星歯車に遠心力が働き、内歯車との干渉を起こしてしまうため、各部品の固定方法や寸法関係に工夫をする仕組みが必要です。

参考文献
https://www.khkgears.co.jp/gear_technology/intermediate_guide/KHK388.html
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/kikaikiso_0112/
https://motor-fan.jp/tech/10008985
https://cyclo.shi.co.jp/product/gmoter/saikuro6000/
https://www.hds.co.jp/products/
https://www.khkgears.co.jp/gear_technology/intermediate_guide/KHK388.html